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山田医院だより

第27巻 第7号(第318号)

高齢者の筋肉~たんぱく質について~

骨格筋量は一般に20-30歳代をピークとして徐々に低下、特に60歳代後半から70歳代にかけて急速に低下します。

加齢に伴う筋肉量の減少、筋力の低下はサルコペニアと言いますが転倒、骨折のリスクになるだけではなく糖尿病、脂質異常症などとも関連、生活習慣病のリスクになるために高齢者の機能的自立を維持するにはサルコペニアの予防を念頭に置いた栄養摂取と運動が重要になります。
このサルコペニアの進行には加齢に伴う全身性の慢性炎症、疾患による臥床の増加また活動量の低下、エネルギー・たんぱく質の摂取量の低下などが原因となります。

筋肉の維持、増加にはたんぱく質の摂取が不可欠ですが高齢者はたんぱく質不足に陥りやすい傾向があります。
単に食欲の低下だけではなく嗜好の変化、身体活動の減少も問題です。 なお筋肉を作る効率が低下する「同化抵抗性」というものがあり高齢者は若者に比べると筋肉の合成速度は低下しています。 高齢者は筋肉を合成する際にも筋量を維持する際にも若年層に比べると多くのたんぱく質を摂取することを要します。(高齢者こそ若者以上に意識してたんぱく質を意識して摂取する必要があります。)

現在日本人のたんぱく質の摂取の指標としては高齢男性は60g、女性は50gが1日の必要量となっています。
基本的には1食当たり20gのたんぱく質を取ることが目標です。 20gと言ってもピンときませんが例えばゆで卵1個でタンパク質は6g、納豆1パックで6g、ツナ缶、サバ缶は1缶でおおよそ30gです。

たんぱく質の摂取量だけではなく摂取のタイミングも大切です。
日本人は夕食に偏りがちですが、3食分均等に摂取するほうがよいとされています。
筋肉の合成は朝がピークでもあり特に不足しやすい朝食での摂取を意識することが大切です。 3食しっかりと摂りましょうと言われると負担に感じるかもしれませんが朝食だけでも意識してと言われると前向きになれそうです。

なお、「ロイシン」はたんぱく同化作用のあるアミノ酸ですがこれを含むたんぱく質を運動後に摂取すると効率よく筋肉が合成されます。 ロイシンを多く含む食品は牛肉、卵、白身魚です。

その他たんぱく質を摂るコツとしては
①ちょい足し:ご飯にいりごま(小さじ1で0.4g)、のり(1枚で0.9g)などを添える。
②手軽な食品を利用:サバやイワシなどの青魚の缶詰の積極的活用。
③消化吸収を高める:唾液の分泌を促す「酢の物」の利用、卵は消化吸収をよくするために半熟で、野菜は加熱して柔らかくするなど、、、。そのほかにきな粉は良質なたんぱく質やカルシウム、大豆イソフラボンも含む優秀食品です。

次に運動についても考えてみましょう。 まず日常の歩数を増やすことを優先します。
ウオーキングなどの有酸素運動は同化抵抗性を改善するために筋肉ができやすくなります。 ただし歩くだけでは筋量を増やすことは出来ずあくまでも筋量の維持にとどまります。 筋量増加には筋トレが不可欠です。 高齢者においては自重トレーニング(スクワットなど)、ゴムバンドを使う筋トレがお勧めです。

筋トレの「鍵」は習慣化できるかどうかが重要です。 習慣化していない人に勧めても継続は難しいのが現状です。 まずは毎日1-2回から始めて、これを今既にある習慣とセットにします。
例えば「朝食後に椅子から立ち上がる際にそのまま立つのではなくスクワットを2回行う」「コーヒーを入れる待ち時間に2回だけ腰を落とす」などの工夫です。 このようにすることで意識せずとも自然に運動が習慣化しやすくなります。 この手法は「ハビットスタッキング」という言葉もあるほど有名な方法です。

最後に管理栄養士で料理研究家の関口絢子さんが訴える少食さんのための7つの黄金法則を紹介します。
①食べられないを責めない
②栄養素密度を意識する
③吸収力を最大化する
④品数や量を追わない
⑤食べやすさ・飲み込みやすさを工夫する
⑥調理法で栄養を守る
⑦無理のない食習慣を確立する。
これは少食であっても健康であり続けるための大切な7つの考え方です。

今回は第一三共株式会社発行のBRIDGE2026年5月号から抜粋をしました。

山田医院 医師 山田良宏

手の痛みについて

指が痛くてスマホを操作しづらい、ペットボトルや瓶の蓋が開けにくい、手が動かしにくい、手がこわばる、手指がしびれる、指が痛い、指が曲がって伸ばせない、手首が腫れている、などなど、そんな手の不調をいっぱい感じるようになったこの頃です。 50代女性の10人に1人が手の痛みがあると回答しているとの説もあります。 日本外科学会は2022年、更年期女性に多く見られる手指の痛みやこわばり、腫れ、しびれ、変形などの不調を『メノポハンド』と名づけました。 メノポとは更年期を意味するメノポーザルの略です。 そこで手のトラブルについて、調べることにしました。

手や指の不調は、もともと中高年に多いそうですが、近年は若年層でも増えているという事です。 原因としては、使いすぎによるもの、加齢や、女性ホルモンのエストロゲンに関係しているといわれています。 部位や症状によって病名が異なります。 特に多いものをあげてみました。

①ばね指=腱鞘炎のひとつで、指のスムーズに曲げ伸ばし出来ない、指を動かすと引っ掛かる感じがして痛む。

②手根管症候群= 親指から薬指の半分にかけて痛みやしびれがある。親指と人差し指できれいな丸が作れない。

③ヘパーデン結節=変形性関節症のひとつで、指の第一関節に腫れや変形が生じる。指先に力が入りにくく、物をつかみにくい。

④母指CM関節症=変形性関節症のひとつで、親指の付け根が痛く、瓶の蓋が開けられない、ズボンの上げ下ろしの時に痛い。

治療法

①保存的治療=テーピングや装具で患部固定、痛みが強いときは消炎鎮痛剤、ステロイド注射などを用います。症状に合わせた内服薬(リウマチ薬、ビタミンB12など)もあります。改善しない場合は、痛みや変形を治す手術を検討することもあります。

②手をいたわるセルフケア=パソコン入力時はパットやタオルなどを置く、同じ指を使いすぎない、音声入力を活用、柄の太いペンを使う。朝や寒い日は手の血流が悪く、こわばりや痛みが出やすいので、ぬるま湯や入浴で温めるのもいいでしょう。

③手のストレッチ=親指以外の指と手首を10秒ほどグッと後ろに伸ばす。 両手の人差し指から小指までの指先を合わせた状態で、親指を前方向にグルグルまわす、後ろ方向も同様に行います。関節の柔軟性が増して来ます。

④その他=女性ホルモンのエストロゲンには、関節や腱を保護する働きがあります。更年期や出産後は、エストロゲンが大きく変動するそうです。なので、エストロゲンが多く含まれる納豆などの大豆製品を積極的に取りたいです。大豆イソフラボンが腸内細菌の代謝されてできるエクオールという成分がエストロゲンに似た作用があるといわれています。エクオールのサプリメントの活用も一つの方法です。

指の不調は、部位、症状によって治療方法がことなります.気になる方は、主治医にご相談下さい。

 

(2026、6/6 日本経済新聞 参照)

山田医院 看護師 橘 智子

冷房との付き合い方

厳しい暑さが続く夏は、熱中症の危険性が高まります。 熱中症は屋外だけでなく、自宅などの室内でも多く発生しています。 特に高齢者は暑さを感じにくく、体温調節機能も低下するため、気づかないうちに重症化することがあります。 暑さを我慢せず、冷房を適切に利用することが大切です。

冷房を上手に使う4つのポイント

① 室温を確認しましょう
エアコンの設定温度だけでなく、室温計で実際の室温を確認しましょう。 環境省では、室温28℃を目安に調整することを推奨しています(湿度や体調によって調整は必要です)。

② 扇風機を併用しましょう
冷たい空気は部屋の下にたまりやすいため、扇風機やサーキュレーターで空気を循環させると、部屋全体が効率よく涼しくなります。 また、エアコンの負担も軽減できます。

③ 湿度にも気を配りましょう
湿度が高いと汗が蒸発しにくく、体に熱がこもりやすくなります。 エアコンの除湿機能を活用し、快適な室内環境を保ちましょう。

④ 水分補給を忘れずに
エアコンの効いた室内でも体から水分は失われています。 のどが渇く前から、少量ずつこまめに水分を摂ることが大切です。

冷房で体が冷えすぎると感じる場合は、設定温度を極端に上げるのではなく ・カーディガンやストールを羽織る ・ひざ掛けを使う ・冷風が直接体に当たらない様に風向きを調整する などで体温を調節しましょう。

熱中症は昼間だけではなく夜間も室温が高いと、睡眠中に脱水や体温上昇が起こることがあります。
寝る前にコップ1杯程度の水分を補給し、必要に応じてエアコンを使用して快適な室温を保ちましょう。

こんな症状があれば熱中症のサイン

  • めまい・立ちくらみ
  •  筋肉のけいれん(こむら返り)
  • 大量の汗、または汗が出なくなる
  • 頭痛・吐き気・強いだるさ
  • 意識がぼんやりする

これらの症状がある場合は、涼しい場所へ移動し、水分・塩分を補給してください。 意識がはっきりしない、水分が飲めない場合は、すぐに医療機関を受診するか救急車を要請しましょう。

冷房は我慢するものではなく、熱中症を防ぐために上手に使うものです。 室温・湿度の管理とこまめな水分補給を心がけ、暑い夏を安全に過ごしましょう。

山田医院 医療事務 増田教恵

アトピー性皮膚炎について

毎日暑い日が続きますね。 私は汗かきで、運動した後にすぐに着替えないと、汗疹ができてしまいます。 アトピー性皮膚炎も夏場に悪化することがあります。 主な原因は、汗の放置により刺激、強い紫外線、皮脂分泌の増加による細菌やカビ(マラセチアなど)の増殖です。 少しでも悪化しないようにケアしていくことが大切です。

夏を乗り切るスキンケアと対策

1.こまめな汗対策:
汗をかいて放置すると肌への刺激になりかゆみを引き起こしたり、高温多湿により皮脂が増え、カビや黄色ブドウ球菌などの細菌が繁殖しやすくなり、湿疹の悪化につながります。
汗をかいたらすぐにシャワーで洗い流したり(石鹸などでしっかり泡立ててしっかり流す)、濡れたタオルで優しく押さえるように拭き取ります。

2.入浴後の保湿:
汗をかいた後や入浴後は、肌が乾燥しやすくなります。低刺激の保湿剤(ローションや乳液)で水分と油分を補いましょう。

3.適切な冷却:
炎症や熱感がある場合は、保冷剤をタオルにくるんでかゆい部分を冷やすと、かゆみや赤みが和らぎます。

紫外線対策: 強い紫外線を浴びると肌のバリア機能が低下し、炎症が悪化しやすくなります。外出時は日焼け止めを使用し、肌への負担を軽減します。アトピー肌でも使いやすい低刺激なものを選ぶと安心です。

日常生活で気をつけること

1.睡眠中に皮膚をかかない工夫:爪を短くしておく、手袋をはめる、パジャマは長袖・長ズボンのものを着用するようにしましょう。

2.アレルゲン対策はしっかりと:ダニ、ホコリがたまらないなるべく毎日掃除しましょう。特に布団のダニ対策はしっかり行います。

3.皮膚に刺激を与えない衣類を選ぼう:チクチク、ごわごわした素材や毛糸素材の衣類は避けて、新品の服は一度洗濯してから着るようにします。洗剤のすすぎ残しがないように、すすぎを十分に行いましょう。

4.ストレスを発散させる: 自分流の方法をみつけましょう。規則正しい生活を心がけ、刺激の強い食べ物やアルコール、タバコは控えるようにしましょう。

そして、アトピー性皮膚炎では、皮膚のバリア機能が弱まっているため、外からの異物(刺激物質・アレルゲンなど)が皮膚の中まで入り込みやすくなっていて、かゆみや炎症などの原因となる体内の物質が増加し、かゆみなどの症状を引き起こします。
かゆみのために皮膚をひっかくと、かゆみが抑制されるのではなく、逆にかゆみが増強されます。 ひっかくことによりその部位の皮膚は傷つき、さらにバリア機能が弱くなり、炎症やかゆみをまねくという悪循環に陥ります。 また、かゆみは睡眠不足や集中力の低下など、生活の質(QOL)に大きな影響を与え、また、かゆみに対する不安があると、通常よりもかゆみを感じやすくなることがわかっています。

最近、アトピー性皮膚炎のかゆみに対して新しい薬があることを知りました。 これまでのステロイド治療に併用して使えるお薬です。

◎ミチーガ:
皮下注射(6歳以上~使用可能) アトピー性皮膚炎の炎症やかゆみの原因となる物質のうち、かゆみを過敏状態にするIL-31(インターロイキン31)のはたらきをブロックすることによってアトピー性皮膚炎のかゆみをおさえる薬です

◎デュピクセント:
皮下注射(6か月の赤ちゃん~使用可能) アレルギー炎症の“元栓”を締めて、症状を根元から抑え込むので、ステロイドのように広く全身の免疫を抑える薬とは異なり、アレルギー反応の鍵となるIL-4・IL-13のシグナルだけをピンポイントでブロックする薬です。

どちらのお薬も、使用基準や副作用なども考慮する必要があるので誰にでも使えるわけではありませんが、強いかゆみで困っていたら、アレルギー科や皮膚科の先生に相談してみてください。

山田医院看護師 三栖佳子

アレルギー検査について

アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、気管支喘息、アレルギー性鼻炎などのアレルギー疾患診療においてアレルゲンの同定や病態理解のための検査は欠かせません。
一般的にアレルギー検査には血清特異的IgE検査(血液検査)、皮膚テスト(プリックテスト、皮内テスト)、好塩基球活性化試験がありますがいずれもIgE依存性アレルギー疾患の評価に用いられます。

血中特異的IgE検査は外来で広く利用されている検査で定量的な評価が可能ですが項目は限定的で稀な膠原は評価できません。 皮膚テストは特異的IgEの存在を直接皮膚で評価できますが抗ヒスタミン薬の内服、皮膚の状態で影響を受けやすく定量性には乏しくなっています。 好塩基球活性化試験は保険適応外ですが血清特異的IgE検査よりも症状との関連を反映しやすくなっています。

良く行われている血液検査の特異的IgE検査には複数の測定法が存在していますがそれぞれ単位などが異なるために経過観察においては検査法を変えないことが必要です。(別の医療機関で受けた検査結果を比較することはできません。)

食物アレルギーにおいては詳細な問診による症状と摂取状況の把握が大切ですので特異的IgE検査は原因食品の裏付けとして有用です。

一方で特異的IgE検査が陽性であること自体は食物アレルギーの診断確定を意味しません。 血清特異的IgE検査は症状が起こるかどうかを二分する指標ではなく症状誘発の可能性を示す指標となります。 検査値が高いほど症状が出現する割合は高くなるものの同じ値であっても個々の患者さんの反応は異なります。 診断や除去解除の判断には必要に応じて食物経口負荷試験を行い実際に食べてどうなるかを確認することが大切です。

今回はアレルギー検査についてチャイルドヘルス令和8年7月号から抜粋をしました。

山田医院 医師 山田良宏