第25巻 第12号(第299号)
成人を対象としたワクチンについて
予防接種と言えば子どもを対象としたものというイメージがありましたが、COVID-19流行で新型コロナワクチンやインフルエンザワクチンが有名になりました。今回は日本内科学会雑誌令和6年11月号から、成人を対象としたワクチンについて水痘/帯状疱疹、RSウイルスについての論文を抜粋しました。
帯状疱疹は50歳以上、特に70歳以上では罹患が増えます。帯状疱疹予防には50歳以上の方に子どもにも使用している生ワクチン、新しくできた不活化ワクチンがあります。水痘帯状疱疹ウイルスの初感染は水痘となります。その後脊髄に終生潜伏感染して、後に加齢や免疫低下などで再活性化すると帯状疱疹を発症します。
この水痘帯状疱疹ウイルスは感染力が強く空気感染をします。水痘では発疹出現の1-2日前から感染力があり、水痘から家族内の感染は60-100%、帯状疱疹から家族内の感染は20%と言われています。
水痘は潜伏期間がほぼ14日で皮疹だけではなく肺炎、肝炎、脳炎などの様々な合併症があります。また成人の水痘は入院を要することも多くなっています。妊婦水痘は母体の重症化リスクと同時に妊娠早期では胎児死亡や児が先天水痘症候群を発症して致命率が高くなっています。
帯状疱疹は片側性、帯状に水疱を形成します。水痘になった人の3人に1人が80歳までに帯状疱疹を発症する言われて加齢ととともに罹患率並びに重症率が高まります。
また帯状疱疹の再発は1-6%程度です。帯状疱疹後神経痛は代表的な合併症で痛みが数か月から数年にわたり持続することもあります。帯状疱疹になると5-30%でこの帯状疱疹後神経痛を生じます。
この帯状疱疹に対してのワクチンとしては前述した2種類があります。生ワクチンは水痘の予防としての接種が行われてきましたが2016年から帯状疱疹の予防としても認可されています。皮下に1回の接種を行います。効果としてはおおよそ5年間で発症予防は50%程度です。(接種後10年では発症予防20%程度)なお不活化ワクチンは数年前から広がってきたワクチンです。筋肉内に2か月の間隔で2回の接種となります。効果としては10年ほどで予防は70%程度となっています。
現在は両方のワクチンとも自費ですが公費助成の検討が自治体で行われています。
次にRSウイルスについてですが、RSウイルスは通常は2歳までに初感染します。乳幼児は下気道感染を起こして重症化しやすくなっています。特に6か月未満はリスクが高いと言われています。またこのウイルスは再感染も多く基礎疾患があると重症化しやすくなっていることが分かってきました。
RSウイルス感染症はインフルエンザ感染症とは異なり症状が緩徐の出現、悪化することが多くインフルエンザに比べると喘鳴などの呼吸器症状を呈する頻度が高く、発熱などの全身症状を呈する割合が少なくなっています。なお、成人では抗原量が少ないために、子どもでよく使う迅速検査では偽陰性になることが多くなっています。
RSウイルス感染症は実はインフルエンザと比較すると入院、死亡率については同等であると言われています。特に慢性心疾患(慢性心不全など)、呼吸器疾患(肺気腫、喘息など)、慢性腎不全などを有する場合には重症化のリスクが高くなっています。
ワクチンとしては現在2種類の不活化ワクチンが認可されています。現時点では2シーズンの有効性が証明されており、現在3シーズン目の検討がされています。このうちの1つは母子免疫ワクチンとして妊婦に接種すると生まれてくる胎児に免疫効果が生じるものです。
このRSワクチンは一般には60歳以上の成人に接種となりますが、米国では75歳以上(基礎疾患がある60-74歳)が接種となっています。成人へのワクチンとしてはその他肺炎球菌ワクチンなど
もあります。新しいワクチンは高額ですが今まで隠れてきた感染症に対しての予防効果も高く、有効性は期待できるものです。
それぞれの考え方に基づいてワクチン接種を検討してもいいかもしれません。またかかりつけ医に相談をしてみましょう。
山田医院 医師 山田良宏
ジェネリック医薬品について
厚生労働省より患者の皆様へ
令和6年10月からの医薬品の自己負担の新たな仕組みのお知らせが発表されております。
・後発医薬品(ジェネリック医薬品)があるお薬で、先発医薬品の処方を希望される場合は、特別の料金をお支払いいただきます。
・この機会に、後発医薬品の積極的な利用をお願いいたします。
・ジェネリック医薬品は、新薬の特許期間などが過ぎた後に他のメーカーから同じ有効成分でつくられるお薬です。効き目、品質、安全性が新薬と同等であることを条件に、国から承認されています。開発期間が短縮でき、開発コストも抑えることができるので、新薬よりも低価格になります。
日本国内での普及率は、現在約80%と広く使われています。
・ジェネリック医薬品は必ず、元となる新薬と同じ有効成分でつくられており、効能・効果や用法・用量は基本的には変わりません。有効成分以外の部分については、従来の薬を改良することができます。最新技術でもっと飲みやすくしたり、扱いやすさを考えて、薬の形や色、味やパッケージを変えたりなど、さまざまな工夫を施したものもあります。主成分の血中濃度の挙動が新薬と同等であることが確認されて国に承認されますので、効き目に差はありません。
・日本で医療用医薬品を承認しているのは、厚生労働省です。ジェネリック医薬品も、その管理・指導のもとに開発されています。薬機法により基準が定められており、生物学的同等性試験、安定性試験などをクリアしたものだけが製品化を承認されます。
・高齢化と医療の高度化に伴い、日本の医療費は増え続けています。保険料や税金などを支える労働人口も減少し、制度設計の前提が崩れてしまっています。このままでは医療保険制度そのものが維持できません。国民皆保険制度を維持するためにも、低価格なジェネリック医薬品の普及が求められています。
「ジェネリック医薬品を選ぶ」ことは、身近なところでできる社会貢献のひとつなのです。(東和薬品ジェネリック事業部発表より抜粋)
当院でもジェネリックへ移行する薬品も増えております。ご理解ご協力をどうぞよろしくお願いいたします。
山田医院 医療事務 藤森あゆみ
恐ろしい突然死(冬に特に気を付けましょう)
ミポリンこと中山美穂さんの突然の死のニュースがユニバで遊んでいた私達のスマホに飛び込んできて、ミポリンより少し?年上の私たちは一斉に「え!!」と叫び言葉を失いました。
冬は死亡者が増える傾向にあります。原因はさまざまですが、いずれもこの季節の厳しい気象条件が関係しているようです。1年を通して主な原因を見ると癌は月ごとの変動がほとんどないのに対して「心疾患」は冬と夏の差が大きいそうです。
暖かい部屋から寒い部屋や屋外に移動する際の血圧の急激な変動が一因で「ヒートショック」をおこしやすくなるからだと推測されます。また、寒さで心臓の血管(冠動脈)が収縮して血液の流れが悪くなることもその一因としてかんがえられています。突然死を引き起こす急性心筋梗塞は男性は60代、女性は70代でピークが見られ、また女性より男性が多く発生しているそうです。飲酒や喫煙歴、食習慣など生活習慣の違いがその原因として考えられています。
私たちの身体を正常に機能させるには血液を全身に隈なく届ける必要があります。その役割を一手に賄っているのが心臓。一日にバスタブ36杯分もの血液を循環させているポンプのような役割を果たしています。その心臓を動かすために心臓の筋肉(心筋)に血液を送り届けているのが「冠動脈」という血管です。
「心筋梗塞」はこの冠動脈が閉塞して血液が届かなくなることで心臓が壊死してしまう病気です。
発症後そのままの状態でいると心臓の機能は停止して突然死になることもすくなくありません。本来血管は柔軟にできていますが高血圧や加齢、脂質や糖質の摂り過ぎによる生活習慣の乱れなど、様々な要因で血管は硬くなり「動脈硬化」を引き起こします。
この症状が進行すると血管の壁が次第に厚みを増し、血液の通る道が狭くなって流れは悪化、血の塊(血栓)が出来て冠動脈がふさがれてしまうと心筋梗塞が起こります。
ミポリンの亡くなった原因は分かりませんが、お風呂場で亡くなったとの事で、お酒を飲んでお風呂で寝てしまったのか?それともヒートショックによるものなのか?なにか病気を持っていたのか?
温かいリビングから寒い脱衣所、そして裸になり熱いお湯に入る。寒い場所では血管が縮むため血圧は急上昇。浴槽に入ると体が温まり今度は血管が広がって血圧が急降下、この急激な血圧の変化によって意識障害が起きたり心臓に負担がかかって心筋梗塞になったりと突然死につながります。
私もお風呂に浸かるのが大好きで、なんならお風呂にテレビを持ち込むこともあります。お風呂に入ったらまず身体を洗うので急激な温度差は避けられてると思いますが、テレビを見ながら爆睡することが多々あります。我が家は老夫婦だけの暮らし。私が溺死していても気づくのは翌朝、下手したら昼とか、友人や姉に風呂で寝たらあかん!と止められていますが、湯船に入り、テレビをつけ、日本人最高!!とつぶやきながら寝てしまってます。ある意味幸せかもです(笑)
そんなことにならないためにも
冬のお風呂でやるべきこと
- 脱衣所や浴室を温める
- 適温のお湯にゆっくり入る
- お風呂から出る時は慌てない
- 食後すぐと飲酒時の入浴を控える
- 家族に知らせて入る
- 番外編として 湯船で寝ない!
私はお酒は飲めないので、そこは安心ですが、良い油に変えたり、青魚シッカリ摂ってなるべくお風呂では寝ないようにしましょう。
さてさて年末年始の紅白、今は裏番組かな?おみかん置いたこたつで…と言うあなた。
こたつでの注意事項!
こたつでの寝落ちに注意
気持ちいいですよね~こたつでは知らず知らずのうちに身体の水分量が減少し脱水症状を起こすことがあります。
鼻腔や口腔内が乾燥してウイルスや細菌への抵抗力が落ちて風邪を引きやすくなるばかりか腸内の水分量も落ちて便秘に繋がることも。最も恐ろしいのは血液中の水分が失われて血液がドロドロになることです。心筋梗塞などの引き金となります。
座りっぱなしは健康リスクに長時間座りっぱなしの生活をしていると代謝が減少して肥満や糖尿病を招くばかりか、血流の悪化により心臓をはじめとした臓器がダメージを受け「身体活動不足」となります。
寒くなりまたまたにっくきインフルエンザが確実にやってきています。皆様手洗いうがいを引き続きしっかり行って元気に年末年始お過ごしください。
私もいつまでも元気にテニス、謎解き、ピアノ(最近始めました)を楽しみたいと思います。来年も山田医院で元気に???お会いしましょう(^^)/
グリーンハウスのカラダ研究室より
山田医院 看護師 冨嶋友子
健康資産とは
先日、新聞で『健康資産』という見出しをみました。なんのことかと気になったので、しらべて見ることにしました。
多くのビジネスパーソンは、資産運用や時間管理には熱心に取り組む一方で、最も重要な『健康資産』の管理をおろそかにしがちです。しかし、心身の健康は、仕事のパフォーマンスを最大化する上で不可欠な要素です。
健康であるということは、長期的にみれば、お金を節約する効果があります。病気になってしまうと、治療費や休業補償、そして生産性の減少などにより、大きな経済的負担となります。
1年間にかかる国民1人当たりの医療費は、33万円台(*2019年度国民医療費の概況//厚生労働省)
もちろん、健康のためには適度な運動やバランスのとれた食生活が必要ですが、それらを継続しておこなう事で、将来の経済的負担を軽減することができます。
また、健康である事は、直接的に労働生産性に影響を与えます。腰痛、肩こり、睡眠不足といった一般的な健康問題が、経済に与える影響は非常におおきいです。日本では、腰痛だけで約3兆円、肩こりなどをあわせると約6兆円もの経済的損失が生じているとの報告があるそうです。
健康な状態を維持することで、仕事の効率が向上し、結果的には、個人や企業の生産性が上がります。
これは、企業が従業員の健康に投資する『健康経営』という取り組みが注目される理由でもあります。
このように、健康資産は、私たちの生活において計り知れない価値を持っています。健康は単なる身体的な状態ではなく、経済的な価値を生み出す重要な一部です。また、健康で長く働けることは、資産運用や収入獲得の期間を延ばすことにもつながります。
このように、健康を資産として捉え、計画的に投資・管理すると、持続可能な高パフォーマンスが実現できるというわけです。
『健康資産』と呼ぶ理由は、健康に経済的価値があるからなのです。
自分の健康にもっと投資をしてみませんか? 自分にあった小さな健康習慣から始めてみませんか?
*12 /7 日本経済新聞より抜粋
山田医院 看護師 橘 智子
乳歯が生える頃の歯について
今回はチャイルドヘルス令和6年12月号からの抜粋です。
生まれたときあるいは生後1か月頃前に歯が生えていくることがあり「先天性歯」と呼び0.1%程度の割合であります。ほとんどは下の前歯です。
多くは本来の乳歯が早く生えたもので生え変わり期までしっかりと残ることもありますが、構造が不完全なためにすり減りが早く治療が必要になることも多いようです。また抜けてしまうと窒息の危険があるので揺れていると抜歯をすることもあります。また生えて間もない乳歯はまだ位置が定まらず変な角度で生えていたりしますが、やがて口唇や舌の力で変化するのでこれは心配はいりません。
また1歳を過ぎても歯が生えないことがありますが髪の毛、爪などに異常がなければ待っていれば生えてくるために心配はありません。
2本の歯が合体したように1本になっていることがあり癒合歯といい、5%ほどに見られます。
癒合歯については注意が必要
①癒合部分は虫歯になりやすいので予防が大切です。
②生え変わりに注意です。5歳ころまでにレントゲン検査をして永久歯の数や位置を確認しておくことが大切です。
自然の生え変わりがうまくいかないこともあるのでタイミングを見て抜歯をすることもあります。
③将来の歯並びに気を付けることがあります。外傷において数週間後に不透明に黒ずんだ感じに変色する事があります。
しばらくすると元に戻ることもありますが、変色が進むこともあり根管治療が必要になることもあるために、外傷の時には当日に歯科の受診をしましょう。
山田医院 医師 山田良宏