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山田医院だより

第25巻第8号(第295号)

睡眠障害について

睡眠障害で悩む方は多く、一昔前までは「寝れなくても死ぬことはない」などと言われていましたが、現在では6時間未満の睡眠時間では死亡率に加えて糖尿病、高血圧、心疾患、肥満などの発症リスクとなります。

逆に9-10時間という寝すぎの状態も悪く、死亡率に加えて糖尿病、心疾患、脳卒中、肥満などの発症リスクになります。

年齢別にみると中年成人は睡眠不足が死亡リスクを高めるのに対して、高齢者では睡眠時間の長短ではなく臥床時間(寝転がっている時間)が8時間以上と長いことが死亡のリスクを高めることが分かっています。

一般には小学生では9-12時間、中高生では8-10時間、成人では6時間以上が目安となっています。

睡眠覚醒リズムには「疲れたら眠るリズム」と「夜(朝)になったら眠る(起きる)リズム」の2つのリズムがあり、この2つのリズムが整うことで規則正しい睡眠がとれます。

身体活動をすれば眠れるというものではないものの、中強度の身体活動は睡眠促進に有効に働きます。

なお夜になったら眠り、朝になったら起きるリズムは概日リズムによって調整されていますが、光との関係が強く特に起きてすぐの光との関係が強くなっています。ここでのポイントは朝日を浴びるのではなく、目から取り込むという事でメラトニンという睡眠を調節するホルモンをコントロールして夜になると自然に眠くなるようになります。

逆に夜に強い光を取り込むと睡眠相が後退して寝付きが悪くなります。蛍光灯などの白色灯は避ける必要があります。

なお、眠気を引き起こすもう1つの要因が深部体温の変動です。

深部体温が下がると眠けが強くなります。熟眠感は深部体温の急激な低下により得やすくなるために就床2-3時間前に軽い運動をして入浴を行い深部体温を高めておくと寝る時間帯に急激に下がりぐっすりと眠れる可能性があります。

なお食事については朝食の欠食ならびに就寝直前の摂食はリズムを後退させるのでよくありません。

カフェインは入眠を妨げ中途覚醒を増加させるために、夕方以降の摂取は控えるべきです。アルコールの摂取は入眠は促すものの、中途覚醒が多くなり、また再入眠困難となり睡眠の質も悪くなります。

睡眠に対する生活療法としては上記のものがありますが睡眠スケジュール法というものがあります。

これは臥床時間(寝転がっている時間)を規則的かつ制限することで概日リズムとホメオスタシスを調整して睡眠の質を高めることを目的とした治療法です。

睡眠日誌等を記録して1週間の平均睡眠時間をもとめてこれに30分を足したものが臥床時間とします。

これを基に就床時間と起床時間を決めます。例えば平均睡眠時間が6時間であれば臥床時間は6時間30分となります。

自身で起床時間をまず決めてその後は計算をして就床時間を決めます。例えば起床時間を7時00分とすれば就寝時間は0時30分という具合に。

実際の睡眠時間/臥床時間(寝転がっている時間)を85%以上となるように就床時間を15分単位で調整していきます。

目が覚めていながら寝床にいる時間を極力減らすことが大切なので、布団に入ってから15分経ても眠れない場合には一旦寝床からでて覚せいには結びつかない活動をすることが大切です。どうしても寝床から出ることができない場合には、上半身だけでも起こすことが大切です。

なお、不眠症の対する薬物療法、すなわち睡眠剤ですが、以前はいわゆるベンゾジアゼピン系という薬剤が汎用されていました。

このベンゾジアゼピン系は依存を含めて様々な有害事象のリスクを増加させてきたことから最近では睡眠剤の選択方法が変わってきました。

新規睡眠薬であるメラトニン受容体作動薬(ロゼレム)、オレキシン受容体拮抗薬(ベルソムラ、デエビゴ)はベンゾジアゼピン系睡眠薬で問題となる依存、転倒のリスク、認知機能の低下など副作用が生じにくいと考えられており、現在では第1選択となっています。

メラトニン受容体作動薬のロゼレムは安全性が最も高い睡眠薬ですが、入眠作用のみであり睡眠維持効果はないと言われています。

オレキシン受容体拮抗薬であるベルソムラ、デエビゴは安全性が比較的高い薬剤でありまた入眠効果加えて睡眠維持効果あります。

なお、眠気の持ち越し悪夢の副作用が時々あります。現在においてはオレキシン受容体拮抗薬が有効性と安全性のバランスが最もよい薬剤であると考えられています。

今回は日本医師会雑誌令和6年8月号から一部を抜粋しました。当院においても老若男女を問わず睡眠障害訴える方は一定数います。

実臨床ではベンゾジアゼピン系睡眠薬を使用することが多く、今後の対応についていつも検討しています。

また不眠等の悩みがあるようでしたら、かかりつけ医師に相談をしましょう。

山田医院 医師 山田良宏

子宮頸がんワクチン 3月でキャッチアップ接種が終了します!

子宮頸がんとは、女性の子宮の入り口部分(子宮頚部)にできるがんです。

20~39歳の若い女性がかかるがんの中では乳がんについで2番目に多く、女性の100人に1人が生涯のいずれかの時点で、子宮頸がんにかかるといわれています。

年間21,000人近くの人が子宮頸がんにかかり、年間2,900人程度の死亡が報告されています。
子宮頸がんはヒトパピローマウイルスというウィルスの感染が原因で起こるがんです。

このウイルスは子宮頸がん患者の90%以上で見つかることが知られており、長期にわたり感染することでがんになると考えられています。

ヒトパピローマウイルスには200種類以上のタイプがあり、そのうち、少なくても15種類が子宮頸がんの発生にかかわる「高リスク型」と呼ばれています。

主に性行為を介して感染することが知られています。海外では性活動を行う女性の50~80%以上が生涯に一度は感染するといわれますが、感染しても約90%の確率で2年以内には自然に排出されるといわれています。ワクチンにはヒトパピローマウイルスの成分が含まれており、接種することで免疫を作ることができ、感染を防ぐことができます。
接種後に生じうる多様な症状等について十分に情報提供ができない状況であったことから、平成25年から子宮頸がんワクチンの接種を個別に勧める取り組みが差し控えられていた間に定期接種対象であった方に、接種の機会を逃した方がいらっしゃいます。こうした方に公平な機会を確保する観点から、改めて公費での接種機会を提供するのがキャッチアップ接種です。

キャッチアップの対象は誕生日が1997年4月2日~2008年4月1日の、過去に子宮頸がんワクチンを合計3回受けていない方です。

このキャッチアップ接種が2025年3月で終了します。キャッチアップ対象の方であれば1回目を15歳以上で受けることになるので、合計3回のワクチン接種が必要ですが、3回終えるまでに6か月の期間が必要になります。ですので、この8月中に1回目の接種を終えると次の3月までに3回接種を終えることができます。

キャッチアップ期間が終了したあとは自費で接種は可能となりますが1回30,000円弱、3回で90,000円程度の費用がかかってきます。
私自身も今年19歳になる娘が子宮頚がんワクチンの対象年齢だったとき、まだこのワクチンが積極的に接種を勧奨しないとされる時期のまっ最中でしたので、とてもとても迷いました。

子供となんども話をして、結果、接種を決めて、特に副反応がでずに3回目の接種を終えたとき、とってもホッとしたことを覚えています。

もちろん、積極的な勧奨が差し控えられた時期が終了した今でも接種は強制ではなく本人の意思に基づくものですので、ワクチンの効果とリスクを理解したうえで接種の判断をすることをお勧めします。

接種を決めたら、山田医院では前もってのワクチン確保のご連絡をいただいております。

休みの日を挟まなければ現状であれば2~3日後にはワクチン接種をしていただけます。かならず、前もってのご連絡をお願いします。

また、接種後の体調変化が気になりますので接種後も院内で15分ほどお休みいただいた後、お帰り下さい。

フォローアップ対象の方で今からでは3月末までに期間的に3回接種を終えれないと気づいてしまった方も一度ご相談くださいね。

山田医院 医療事務 東川敏美

新規スタッフの紹介 <藤森 あゆみ>

この度ご縁あって7月より事務員として皆様と一緒に働かせて頂く事になりました、藤森あゆみ(ふじもりあゆみ)と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

趣味はパワースポット巡りで、自然の中で心身ともにリフレッシュする事が好きです。

日々忙しい仕事の合間にパワースポットを訪れて癒しを求める時間を大切にしています。お気に入りは富士山本宮浅間大社(せんげんたいしゃ)です。

境内の清々しい空気、赤い鳥居から綺麗な富士山が挑めます、湧玉池にコンコンと湧き出る伏流水の澄みきった流れに癒されます。居るだけで気分が良くなるんです。皆さんの素敵な場所教えて頂けたら嬉しいです。

内科での業務はまだまだ不慣れな面ばかりでご迷惑をおかけするかと思います。前職の整形外科の経験も活かしつつ、皆様の御指導やサポートを頂きながら、スキルアップ目指して学んでおります。

患者様にも安心して来院して頂けますよう精一杯頑張りたいと思います。よろしくお願いいたします。

認知症は女性に多い?

認知症とは、様々な脳の病気により脳の神経細胞の働きが徐々に低下し、認知機能(記憶、判断力)が低下して日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態をいいます。

認知症は高齢になるに従って増加し、2025年には65歳以上の高齢者の約5人に1人が認知症を有している状況になると予測されています。

今では誰でもなりうることから、認知症の理解を深め、認知症になっても希望をもって日常生活を過ごせる共生の社会を創っていくことが重要となります。

私の母(81歳)も認知症ですが、実家が遠いためなかなか会うことはできません。普段は電話で話をする程度ですが、仕事が終わってから携帯電話の着信を見ると30件以上かかっていることも多々あります。電話をかけたことを忘れてまたかける、話したことも忘れて何度も同じ話をする、怒ったり、落ち込んだり…。でも「こんなお母さんでごめんね」と言ってみたり…。電話で話すだけでも気持ちがしんどくなる時があるので、同居していたら、わかっていても大変だろうと思います。デイサービスやショートステイなどのの利用がないと家族の負担は大きいですね。

認知症にはいくつか種類がありますが、最も多いのはアルツハイマー病で、全体の約67%も占めています。

アルツハイマー病は脳にアミロイドβとリン酸化タウと呼ばれる蛋白質が溜まり、脳の神経細胞が傷害され数が減少することで認知症をきたすと考えられています。

次に脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症などがあります。

認知症は、もの忘れ(記憶の障害)、これまでできたことができなくなる(遂行機能の障害)、言葉や認識力の低下といった認知機能の障害(“中核症状”とよばれます)に加えて、“認知症の行動・心理症状(BPSD)”と呼ばれる不安、幻覚、妄想、うつ症状、興奮、暴言・暴力、徘徊などの症状もみられます。

そして、ふと、なぜ認知症は女性の方が多いのだろうと思い、調べてみたら、興味深い記事を見つけました。

認知症の中でもアルツハイマー病は女性に多く、その理由として、女性の方が長生きのため男性より人口が多いという事。

2020年の平均年齢は女性が87.74歳。男性が81.64歳で過去最高になっているので、高齢者の人口の割合に対して女性の割合が多いため結果、アルツハイマー病の患者も女性が多く出ると考えられます。

また、女性ホルモンによる影響があること。女性ホルモンの中でもエストロゲンが関係しているといわれています。エストロゲンは記憶や学習に関連した神経伝達物質で血管拡張作用もあるアセチルコリンを保護する作用がありますが、閉経によりエストロゲンが低下することで、保護されていた神経伝達物質が減少し、アミロイドβが増加することにより、アルツハイマー病が引き起こされると考えられます。

女性のアルツハイマー病を予防するためには、夫婦がそれぞれ自立的な思考を持つことが大切だそうです。

夫のいうことを無条件に受け入れることで、思考を停止させ脳の働きを低下させないように、自分の考えや価値観をしっかり持って生活していくことが必要です。

また、夫もそのことを頭に入れ、自分の考えを妻に押し付けないようにしていくことが必要でしょう。自分のやりたいことをして楽しむことで脳へ刺激が伝わり、脳が活性化し、ある程度アルツハイマー病を予防できるといわれています。

実際、自分の人生を楽しんでいる高齢者は若々しく、年齢を重ねても元気な方が多いですね。

そしてどんな病気でも同じですが、よい生活習慣「バランスの良い食事や運動習慣」を身につけることがとても大切です。

アルツハイマー病やレビー小体型認知症は、残念ながら根本的な治療効果がある治療薬で承認されているものはありません。しかし、残っている神経細胞を励まして症状を改善させるような薬を使用することができます。ただ全体的に見ると薬物療法の効果は限定的な場合が多く、ケアやリハビリといった薬以外のアプローチも大切です。

もの忘れなど、認知症が疑わしい症状が出てきたときは、できるだけ早く“もの忘れ外来”などの専門外来を受診しましょう。

軽度認知障害(MCI)の段階で原因となっている病気を診断し、認知症への進行を予防することが大切です。

山田医院看護師 三栖佳子

場面緘黙(ばめんかんもく)について

家庭などでは声を出して普通に話せるのに幼稚園、学校などある特定の場面では声を出して離せなくなる状態です。

話さないのではなく話せない状態です。実際の様子は様々で、学校でも特定の友達とは話せるけど先生とは話せない、など。

家庭では普通に話しているので保護者は意外と気がついていないことも多く、園や学校では単におとなしい子と思われていることもあるようです。

5歳未満で発症することが多く、ほとんどは5-10年で改善しますが、10歳までに改善しない場合には慢性化して成人でも症状が続くこともあります。

原因ははっきりとしていませんが、不安になりやすい気質があり、心理的社会的要因が重なると症状が出ると言われています。話せないだけではなく感情表出も抑制されることがあります。また足が動かない、物が持てないなど行動の抑制がおこることもあります。

必要な支援としてはまずは場面緘黙であることの共通理解を周囲が持つことが大切です。またその子が安心して過ごせることが大切です。

お子さまが話しやすい場所や相手を知り、そのお子さまに合ったサポートを考えていきます。医者だけでなく、学校に理解者を増やし、周囲と協力して、お子さまが安心できる環境を
広げていくことが大切です。

答えなくてもよいような話しかけをしたり、話す代わりの意思表示(例えば筆談、ジェスチャー、カード、指差し、代読など)で対応してあげることも必要です。またごくご
く小さなスモールステップで話せる場面を増やしていく段階的な方法もあります。

まずは安心する場所で友達と会うことから始め、できるようになったら友達とゲームをしたり、ゲーム内容を変えたり、簡単な返事をするなど、条件を少しずつ変えていきます。

山田医院 医師 山田良宏