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山田医院だより

第24巻第12号(第287号)

認知症患者さんの疼痛管理について

大腿骨骨折手術後すぐに歩き出すなど認知症の方の術後のトラブルはたびたび聞く話ですが漠然と認知症患者さんは疼痛を感じにくいためにすぐに歩くことができると考えていました。この度は日本醫亊新報令和5年10月2週号に認知症患者さんの疼痛についてのレビューがありましたので抜粋しました。今まではアルツハイマー型認知症患者さんは痛みの感受性が低下し(痛みに鈍感)血管性認知症患者さんでは逆に増加(痛みに鋭敏)すると認識されていました。認知症の方は疼痛の感受性が変化している可能性があり、また認知症が重度になるほど疼痛を疼痛として認識することが困難になる場合もあります。さらに痛みを言語化する事が難しいことから周囲の人が痛みの存在に気づき対応をすることが大切になります。アルツハイマー型認知症患者さんの疼痛の感受性については最近の研究からは疼痛に対してはより敏感であるものの刺激を痛みとして認識できない可能性があることが分かってきました。特に認知機能障害が重度の人はその傾向が強くなります。一方脳血管性認知症患者さんにおいては疼痛域値について健常者と比較して変動はないものの疼痛による不快感は脳血管認知症患者さんでは高いことが分かってきました。そもそも痛みは自覚症状であるために通常は本人が痛みの部位、性質、程度を自己申告しますが認知症患者さん特に進行している場合には自己申告が不可能となります。そのために痛みの治療をされていない可能性も指摘されています。認知症の初期では従来の疼痛の自己申告による評価が可能ですが認知機能障害が中等度以上になると痛みの申告自体ができなくなるために痛みの存在に気がつかないことも多くなっています。痛みの客観的評価としては以下の行動を観察することが有用であるとされています。①顔の表情(しかめっ面、苦しそうな表情など)②発声(うめく、叫ぶなど)③体の動き(さする、かばう、落ち着きなく徘徊するなど)④対人行動の変化(コミュニケーションがとれない、触られることを嫌がるなど)⑤日常生活の変化(睡眠パターンの変化、日常生活行動の減少など)⑥精神状態の変化(せん妄など)これらの指標を用いた疼痛の客観的スケールとして日本版アビー痛みスケール、DOLOPLUS-2などがあります。なお認知症患者さんへの治療としてはまず高齢者でもあるために有害事象のリスクに注意を払うためにまず非薬物療法を行い次に薬物療法を行う順番になります。非薬物療法としては患者さんの不安を解消させるような心理的介入が必要です。音楽療法、手足のマッサージなどをおこなうリフレクソロジーなどがあります。ネット等でいろいろなことが記載されていますがまだ実際には方法が確立しているわけではありません。患者さんがリラックスできる対応を行うことになります。なお薬物療法としてはまずアセトアミノフェンが最も使用される薬剤で非ステロイド性抗炎症薬、オピオイドがこれに続きます。アセトアミノフェンは炎症を抑える作用はないものの胃腸障害や腎機能障害が少ないために比較的使いやすくなっています。ただし炎症を抑える作用がないために効果がやや低くなります。一般には持続性の痛み、特に筋骨格系の痛みの初期治療並びに継続治療の第1選択となります。非ステロイド性抗炎症薬は胃腸障害、腎機能障害の副作用があるために対象者を絞り投与しますが投与時には消化性潰瘍予防のために胃薬の併用が必要になります。痛みが中等度から高度の場合で痛みのために機能障害がある場合にはオピオイド製剤(麻薬系)が必要になります。基本的には経口投与が理想ですが嚥下困難な場合には直腸、経皮からの投与になります。また投与のタ
イミングとしては一般的な患者さんでは痛いときに服用するいわゆる屯服としての服薬がありますが認知症患者さんでは計画的に投与が必要で薬剤としても長時間作用型製剤あるいは徐放性製剤が望ましいと考えられます。認知症患者さんでは疼痛の感受性、認識、認知並びにそれを伝える機能が障害されているために疼痛への適切な対処がされていない場合も多くなっています。認知症患者さんの診療においては見逃してはいけない治療と考えられます。訴えがない患者さんにおいても表情等から痛みについて推測して対応をすることが大切です。

山田医院 医師 山田良宏

唾液はなぜ大切なのか

風邪やインフルエンザをはじめとする呼吸器感染が蔓延しやすい季節になりました。診察時には口腔内の状態や唾液などの分泌物を採取する機会が多くあります。口は常に唾液で満たされています。その唾液にはいくつかの特徴と役割を担っています。口は外界に向かって開いており細菌やウイルスなどのいろいろな病原微生物が侵入しやすい構造となっています。そのために唾液はあらゆる病原微生物に対抗する最強の防衛システムを持っています。

唾液の特徴と働き
唾液は主に耳下腺、顎下腺、舌下腺という3つの大きな唾液腺から1日1000.~1500mI分泌されています。主な成分は水分でその他に消化酵素や抗菌物質、タンパク質、ナトリウムなども含んでいます。唾液は食べ物の消化を助け、味を感じやすくする働きがあります。また口の中の汚れを洗い流し、酸を中和して中性に保ち細菌の繁殖を抑えます。その他むし歯を防ぐなど口を清潔で健康に保つ働きがあります。また口の中の傷は他の体表の傷よりも治りが速いとされています。

唾液の種類
唾液にはサラサラした唾液とネバネバした唾液の2種類があり、役割や出るタイミングに違いがあります。サラサラ唾液は「漿液性唾液」と言い主に耳下腺から分泌されます。身体がリラックスしている時に働く副交感神経によってコントロールされています。リラックス状態の時、楽しい時に分泌されやすいのが特徴です。口の中を洗い流して清潔に保つ自浄作用や食べ物を湿らせて飲み込みやすくする役割があり、消化酵素が多く含まれているので消化吸収を助けます。一方のネバネバの唾液は「粘液性唾液」と言い舌下腺から多く分泌されます。緊張している時に働く交感神経によってコントロールされています。緊張している時やイライラしている時に分泌されやすくなります。緊張すると口が粘つくのはそのためです。ネバネバの唾液には良いイメージを持たれませんが、粘液が傷つくのを防ぎ、粘膜を保湿したり細菌を絡め取って体内への侵入を防いだりする大切な役割があります。どちらの唾液も一方に偏り過ぎると弊害や病気の原因となります。それぞれの唾液がバランスよく働くことが大切です。

唾液が減少する時
唾液の分泌は、夜寝ている時には少なくなります。そのため夜間は口の中で細菌が繁殖しやすく、朝起きると口の中がネバついたり口臭が気になったりしがちです。そのため就寝前にはより丁寧なケアを心がけることが大切です。
また唾液の分泌はストレスや疲れ、加齢、薬の副作用などでも減少することもあり口のトラブルも増えてきます。

唾液を増やすためのポイント
よく噛んで食べることが刺激になって唾液の分泌が促されます。ガムや歯ごたえのあるものを噛むことも良い刺激になります。舌を意識して動かすことも心がけましょう。
口呼吸は、口の乾燥につながりますので鼻呼吸に心がけましょう。また、こまめに水分補給することも必要です。
朝起きた時や食事の時、人と話しをする前などに唾液腺をマッサージすることで唾液の流れが良くなります。このマッサージは痛みを感じない程度に無理のない範囲で行いましょう。

唾液の分泌を促進させる食べ物
酸味のあるレモンや梅干しなどの酸っぱいものが代表です。その他、昆布に含まれるアルギン酸や納豆のポリグルタミン酸も唾液の分泌を促します。また、セロリ、ニンジン、アーモンドなども唾液の分泌を促進する効果があるそうです。口の中の状態によっては、酸味や辛味の強いものは痛みの増強や状態の悪化につながることもありますので注意しましょう

この様に唾液には、人体の最初の関門として食事や呼吸などによって、外から侵入するあらゆる病原微生物に即時に対応しながら口の中の炎症やダメージを修復していく仕組みがあります。
また、唾液は口腔内の環境を整えることで全身の健康を守り、体に悪い影響を及ぼす細菌を退治するためにも欠かせない存在です。口腔環境や感染予防のためにも正常な唾液の分泌を意識しましょう

山田医院 看護師 畑中幸子

新規職員の紹介(東 久子さん)

事務員として9月末より土曜日のみ勤務しております、東 久子(アズマ ヒサコ)と申します。
初めての職種のため未熟なことが多く、フレッシュさはございませんが皆様に心地よい対応ができますよ
う精一杯やっていきたいと思っております。
今楽しみなことは、娘と好きなアーティストのコンサートに行くことです。情緒のある路面電車沿いのお
店開拓や以前習っていました茶道もまた始めてみたいなと思っています。
まだまだ慣れない対応で申し訳ございませんが、どうぞ宜しくお願いいたします

やけど

グッと寒くなり冬本番という感じになりましたね。鍋料理をする機会が増えたり、ストーブやカイロなども使うことが増えますね。そんな時気をつけたいのが「やけど(熱傷)」です。やけどとは熱による皮膚や粘膜の外傷のことをいいます。「高温やけど」は熱湯や火など高い温度の物質が皮膚に一定時間以上接することでできるやけどで、「低温やけど」は高温やけどよりも低い温度のやけどです。 具体的には44℃~50℃前後のものに皮膚が直接、数分~数時間にわたって触れ続けることで起こります。
では、やけどをしたらどう対応したらいいでしょう。
まず、流水で冷やすことです。
冷水でなくても構いません。15~30分程度冷やすことで、軽度のやけどは痛みや炎症をだいぶ抑えることができます。もし、服を着ている部分のやけどだったら、服は脱がずに、服の上から流水をかけましょう。(服を脱いでいる間、やけどが進行してしまうため)水で冷やしながら注意深く脱ぎ(脱がし)ましょう。 服が皮膚にくっついてしまっている場合は、 無理に脱ぐと皮膚も一緒に剥がれてしまうこともありますの注意が必要です。
次にやけどの程度です。

受診した方が良いのは、患部に水疱が生じている場合(II 度熱傷)や皮膚が白や黒に変色している場合(III 度熱傷)には、深度が深い可能性が懸念されるため、病院の受診が必要です。
水ぶくれはつぶさないように保護します。皮膚にできた水ぶくれ(水疱)を潰した跡から雑菌が入り込んでしまうと、症状が悪化する危険性があるためです。 もしも水ぶくれを潰してしまった際は、破れた皮はそのままにしてください。 また、傷口にワセリンを塗って保護すると雑菌の侵入を防ぐことができます。
また、以下の場合も受診しましょう。

顔や手をやけどした:顔や手は皮膚が薄いため、やけどが深くなりやすいです。手は機能的な問題が起こるリスクも。
範囲が広い:広範囲のやけどは、体液が流れ出て全身的な問題を起こす可能性があるので、救急車を呼ぶことも必要です。
子どもや高齢者がやけどした:子どもや高齢者は皮膚が薄いので、重症化する恐れがあります。
基礎疾患がある:糖尿病などの基礎疾患があるとやけどが治りにくいことも。

山田医院看護師 三栖佳子

世界から見た日本の新生児医療について

日本は世界的に見て新生児死亡率が最も低い国の1つです。多くの国では新生児の死亡の原因の第1位は未熟性ですが日本では早産児管理が優れているために未熟性による死亡が少なくなっています。特に極早産児(在胎32週未満)での生存率が高く特に在胎週数が少なくなるほど他国に比べると生存率が高くなっています。日本では他国と比べると重症脳室内出血、壊死性腸炎が少ない一方で未熟児網膜症、慢性肺疾患の発生は高くなっています。出生後の蘇生については他国と大きな変化はありませんが出生直後の臍帯の扱い方に違いがありました。世界的には臍帯結紮遅延といって赤ちゃんが娩出された後は1分以上臍帯を結紮せず待ち、臍帯をミルキングして胎盤からの血液を赤ちゃんに移動させますが日本では出生後すぐに児側の臍帯を長めに残して速やかに結紮後切断をします。胎盤と赤ちゃんが臍帯でつながった状態でミルキングを行うことで脳室内出血を増加させる報告があり最近ではこのミルキングは行わない方向に行っています。日本の極早産児管理の大きな特徴の1つに出生直後から新生児科医が頻回に心臓超音波検査あるいは脳の超音波検査を行うことでこの評価が新生児死亡率につながっていると考えられています。呼吸管理に関しては世界的には気管挿管を介した人工呼吸管理は避ける方向ですが日本においては以前同様に気管挿管を用いた呼吸管理を行うことが多い状態です。なおその他に日本の栄養管理の特徴の1つとしてグリセリン浣腸を用いた排便管理で出生早期から1日に2-3回程度浣腸をして排便を促しています。これが壊死性腸炎の予防になっている可能性もあります。現在の日本の新生児管理方法が特に優れいているというエビデンスはありませんが新生児死亡率の低下等から今後はこの管理法の重要性の検討が必要と言われています。今回はチャイルドヘルス令和5年12月号から抜粋をしました。

山田医院 医師 山田良宏