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山田医院だより

第24巻第11号(第286号)

体表ヘルニアについて

ヘルニアとはラテン語で「破裂」を意味します。臓器や組織が周辺の壁の欠陥を通して異常に突出する状態で体の様々な部位に発生します。腹部では鼠径が最も多くなっています。鼠径ヘルニアはいわゆる脱腸と言われてきた疾患です。鼠径部の腫脹を認める状態ですが、乳幼児期と高齢期に多く認める疾患です。ヘルニアの膨隆は通常は体腔内の脱出物で大網などがほとんどで症状がないことが多く出たり戻ったりと環納可能であることが多いのですが、戻らなくなる場合には非還納性ヘルニアと言われます。痛み等を伴う脱出物の血流障害を伴う非環納性ヘルニア場合は特に嵌頓ヘルニアと言い緊急対応が必要となります。成人の鼠径ヘルニアについては両親のヘルニア、男性、高齢、前立腺摘出術後、やせ型が特にリスクファクターとなります。自然に治癒することがないために根治的な治療は手術となります。他人から見られることへの不安に対して等の見た目の改善のために、違和感、痛みからの解放など自覚症状の改善ために、忙しいときに悪化することなど不安への解消のために手術となります。ただし、嵌頓率が高い女性の鼠径ヘルニア、閉鎖孔ヘルニアなどは経過観察ではなく手術が望まれます。手術方法としては鼠径部切開法と腹腔鏡視下鼠径ヘルニア修復術の2つに加えて最近ではロボット支援鼠径部ヘルニア修復術があります。1990年ころまで主流であったのは鼠径部切開法の組織縫合法です。文字通り通常は下半身麻酔で鼠径部を切開して鼠径部の筋肉、腹膜を縫合する方法で術後1週間から2週間程度入院安静を必要とした手術です。1990年ころから現在主流となっているメッシュ法と言い局所麻酔あるいは硬膜外麻酔下でヘルニア部位にメッシュを置いて補強する手術が流行となりました。メッシュ法は手術時間が短く、再発率が少なく、臓器や神経血管損傷も少なくなっています。現在は30歳以上の有症状の鼠径ヘルニア修復術にはメッシュを用いることが多くなっています。なお、1991年からは腹腔鏡手術が導入されるようになりました。ただし、腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術は腹腔鏡下手術の中でも特殊な鉗子操作や難解な縫合結紮手技が要求され手術難易度が高く、手術時間が長いことから腹腔鏡下胆嚢摘出術のような爆発的な普及にはなりませんでした。ただし、2000年以降になると手術時間は長いものの術後疼痛が軽い、神経損傷、慢性疼痛が少ない、入院期間が短い、回復が早いなどに加えて鼠径部解剖の理解と教育も次第に進み腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術は広く普及してきて現在は鼠径ヘルニア修復術の半数以上は腹腔鏡下手術となっています。ただし、この手術はどの施設でもよいのではなく熟練した術者あるいは施設で行われる必要があるとされています。鼠経ヘルニア手術の合併症としてはヘルニアの再発、遅発性メッシュ感染などに加えて鼠経ヘルニア術後慢性疼痛があります。術後3か月以上経ても続く中等度以上の日常生活に支障を来す疼痛あるいは違和感で発生頻度は10%程度と言われています。手術の際の神経損傷等が原因であることもあり再度手術を行うこともあります。なお最近は学会等でも知見が広まり手術の際の注意点等が広がってきています。ヘルニアの手術は外科医としてはスタートとなる手術でもあり手術件数も外科手術では最も多いものですが医学教育ではあまり詳細には教えてこなかった分野の1つですが、2003年に日本ヘルニア学会が結成されてからは外科の1分野としてスタートしています。その他の腹部のヘルニアとしては腹部手術の創部に生じる腹壁瘢痕ヘルニアがあります。手術創部瘢痕が哆開して腹腔内容物が脱出する状態です。糖尿病、腎機能障害、低栄養、肥満などがあ
る人において術後創部感染などがあればリスクが高まります。腹壁が弱くなっておりの再発のリスクも高くまた手術にメッシュを挿入することが多いので再手術は困難となるので手術前に癌などがないかを含めて慎重な対応が必要になります。外科医としては避けたい手術の1つです。その他頻度の多いヘルニアとしては臍ヘルニアがあります。新生児の20%に見受ける臍の突出ですがおおよそ2歳程度で治癒しますが最近は圧迫法などが見直されてきました。成人の臍ヘルニアは腹圧の上昇に伴う2次的に発生する場合が多く肥満、多産、大量の腹水を伴う肝硬変などで発生します。成人の場合には症状があれば早期に手術をするほうがよいと言われています。今回は腹部のヘルニアについて鼠径ヘルニアを中心に日本医師会雑誌令和5年11月号から抜粋をしました。

山田医院 医師 山田良宏

聞きなれない低ホスタファーゼ症(指定難病172)

看護学校をでて(40年以上前ですが)国家試験も受かったはずなのに知らないことがとても多いと気付く今日この頃。恥ずかしながら患者さんに教えて頂く事もたくさんあります。テレビで毎日のように医学的なことをしているからでしょうか(>_<)私が好きなのは恋愛もの、青春物のドラマか、お笑い、ポツンと一軒家。。情けない(笑)
先日SNSで低ホスタファーゼ症という言葉が出てきて、あれ?どこかで聞いた事があるけど分からない、、。
それはあるパパが「こんな歯初めてみた」とお子さんの抜けた歯の写真をアップされてて、その歯は、歯根が異様に長いものでした。それを見た一般の方々が口々に「それは低ホスタファーゼ症では??」ってコメントしてて焦って調べました。低ホスタファーゼ症とはアルカリホスタファーゼと言う酵素の異常により骨の石灰化が障害され、骨が弱くなる病気です。痙攣を起こす患者さんや乳歯が早く抜けてしまう事もあり、血液検査でアルカリホスタファーゼ(ALP)の値が低いことが特徴です。原因としては甲状腺機能低下症や栄養不良、亜鉛欠乏症やマグネシウム欠乏症、ステロイド投与によって血清ALPの低下を伴う場合があります。症状としては骨の石灰化が不十分な為、骨のレントゲンで写りが薄く、曲がった骨、毛羽だった骨の端などが見られます。痙攣、筋力低下、体重増加不良、4歳未満での乳歯脱落などが見られることもあるそうです。治療法としてはALP酵素補充療法が開発されつつあるそうです。重症型による痙攣はビタミンB6依存性である可能性が高いので、ますB6の投与が試みられ、乳児型ではしばしば高カルシウム血症が見られ、これに対しカルシウムミルクを使用するそうです。予後としては病型により異なり周産期ないし乳児期に発症して50%以下の生存率の重症型から成人においては骨折リスクが高まる、生命予後が軽症な病型まで幅があります。

特徴と症状の例
頭部の変形、けいれん発作、乳歯の早期脱落、肺の発育不全伴う胸部変形。喘息などの呼吸困難、カルシウムの蓄積
筋肉、関節の痛み。何ども骨折する、手足の湾曲
受診の目安
1,4歳以下で乳歯が抜けた
2, 足が曲がった状態が気になる。
3, 歩き方が上手でない。
4, よく転ぶ

私がみたSNSの方のお子さんの歯は歯根が極端に長かったので、歯の根っこと顎の骨の間が弱い為根ごと歯が抜けて落ちる低ホスファターゼの症状と見られたのでしょうがお子さんは9際だったのできっと当てはまらないと思います。私はSNSの「ちいりおちゃんねる」が大好きで病気に真っ向から立ち向かい明るく努力する姿を見て心から応援しています。今は末期がんの方や小さなお子さんでもブログなどのSNSで発信されています。そこで初めての病気の事を知ったり、病状を知ったり、これもきっと小林麻央さんの影響でしょうか。同じ病気で闘病している方の為でしょうか。尊敬しています。ちょっと分かりにくいとっつきの悪い病気でしたが、お付き合いありがとうございました。
急に寒くなり、朝起きると毎日喉の調子が悪くドキドキします。インフルエンザが猛威そんな日常にも皆さん慣れだしてしまいましたが、引き続き手洗い、うがい、そして加湿をしてこの冬を乗り越えてください。

山田医院 看護師 冨嶋友子

子宮頸がん予防ワクチン

子宮頸がんは子宮の入り口にできるがんのことで主にヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染が原因です。初期にはほとんど症状がないため自覚症状が現れることなく進行していくという特徴があります。HPVは子供の水イボなどをはじめとしていろいろな「イボ」の原因となるウイルスで、100種類以上あるうちの13種類程度ががんの原因となることがわかっています。HPVは感染してもほとんどの人は自然にウイルスを体から追い出しますが、そもそもHPVに感染しなければほとんど子宮頚がんになることはありません。子宮頸がんの原因であるHPVは主に性行為によって感染しますが症状はなくがんになるまで10年以上かかるので性病ではありません。HPVは男女ともに存在し皮膚や粘膜にある細胞に感染するためコンドームでは予防しきれません。またHPVは子宮頸がんの他にも女性では外陰がんや膣がんなどを引き起こすこともあります。男女問わず肛門がんや尖圭コンジロームという性器や肛門の周りにできるイボの病気をまねく原因にもなります。HPVは男女関係なく感染する可能性があるウイルスなのです。
日本では1年に約1万人の女性が子宮頸がんと診断されていますが性行為開始の年齢が早くなるのに合わせて患者の年齢も若くなってきました。がん年齢といわれるのは50代60代以降ですが子宮頸がんは30代40代の発生が多いのが特徴です。子宮頸がん検診で見つけられる前がん病変(異形成)はそれよりもさらに若い人に多く見つかります。子宮頸がんは大まかに4つのステージに分類されⅠ期であれば5年生存率は90%以上で治せるがんですが病変の進行に伴って治癒が難しくなります。若い人の場合、治療によって妊娠できなくなることがありその後の人生に大きな影響を与えることになります。前がん病変(上皮内がん)が見つかった場合は子宮を残す治療ができますがその後妊娠した時には早産が増えてしまうという副作用があります。そのようなことを避けるためにはがんにならないことが一番で子宮頸がんについては予防ワクチンが有効と考えられます。
HPVに対するワクチン接種は2006年から始まり日本では2013年に定期接種が始まりました。しかし重篤な副作用への心配から接種を呼びかけられず、接種率がほぼ0%の状態が10年続きました。その間副反応についてさまざまな調査が行われ、重篤な副作用はワクチンとの因果関係がないというデータが蓄積されました。また日本以外の国はこの10年間ずっと接種が続けられてきましたが副作用は問題にはなっておらず、子宮頸がんの発生も減少しています。
このようなことから今年から再び積極的なワクチン接種を進める広報活動が始まっています。定期接種(自己負担なし)の対象は中学1年生~高校1年生で予防効果が80~90%とより高い9価ワクチンシルガード9が受けられるようになりました。そのほか日本国内で使用できるワクチンは2価ワクチン(サーバリックス)4価ワクチン(ガータシル)があります。サーバリックス、ガータシルは子宮頸がんの原因の50~70%を防ぐ効果があるといわれています。
さらに子宮頸がん予防ワクチンの接種を逃した方へキャッチアップ接種という制度が設けられました。対象者は平成9年生まれ~平成18年生まれの女性でかつ過去にHPVワクチンの合計3回の接種を完了していない方です。これに該当する方は2025年3月31日まで公費(自己負担なし)で接種することが出来ます。キャッチアップ接種の方は3回の接種が必要ですので来年の10月までに接種を始める必要があります。3回の接種を自費で受けると10万円程度必要ですのでこの機会に検討してみてはいかがでしょうか?キャッチアップ接種については厚生労働省のホームページに詳しく記載されていますので参照してみてください。
また20歳を過ぎたら前がん病変やがんの早期発見のため2年に1回の子宮頸がん検診も受けましょう。大阪市では20歳以上の女性市民は2年に1回、取扱医療機関で検診費用400円で受けられます。(実際の費用は諸費用などが含まれることもあるため受診される医療機関で確認してください)詳しくは大阪市ホームページで検索して下さい。
子宮頸がん予防ワクチンについては山田医院でも行っておりますのでご相談ください。

山田医院看護師 中島早苗

 

帯状疱疹ワクチンについて

「50歳過ぎたら帯状疱疹のワクチンを!」と数年前からテレビのCMでも流れるようになり、帯状疱疹という病気はかなり周知されるようになってきました。そのためかここ数年帯状疱疹に関してのお問い合わせが多くなってきました。まずは簡単に帯状疱疹について。
帯状疱疹は、水ぼうそうと同じウイルスで起こる皮膚の病気です。
体の左右どちらかの神経に沿って、痛みを伴う赤い発疹と水ぶくれが多数集まって帯状に生じます。
症状の多くは上半身に現れ、顔面、特に目の周りにも現れることがあります。通常、皮膚症状に先行して痛みが生じます。その後皮膚症状が現れると、ピリピリと刺すような痛みとなり、夜も眠ないほど激しい場合があります。
(人によってはかなり痛みが強い人もいるようで。私の父は帯状疱疹だと気付かず、肋骨が折れた!と思い込み、整形外科に受診したくらいの痛みだったと聞きました)
多くの場合、皮膚症状が治ると痛みも消えますが、神経の損傷によってその後も痛みが続くことがあり、これは「帯状疱疹後神経痛」と呼ばれ、最も頻度の高い合併症です。また、帯状疱疹が現れる部位によって、角膜炎、顔面神経麻痺、難聴などの合併症を引き起こすことがあります。経過や痛みの程度には個人差があります。加齢などによる免疫機能の低下が発症の原因となることがあります。50歳代から発症率が高くなり、80歳までに約3人に1人が帯状疱疹を発症するといわれています。
当院では帯状疱疹に対するワクチンを水痘ワクチン・シングリックスの2種を取り扱っております。が、どっちのワクチンがええの?とよく質問を受けます。2種ワクチンの違いをまとめたものがありましたので引用します。

                水痘ワクチン   シングリックス
ワクチンの種類は?        生ワクチン      不活化ワクチン
接種回数・間隔は?        1回のみ     2回
帯状疱疹の発生予防率?      51.3%       90%
帯状疱疹後神経痛予防率?     66.5%       90%
効果はどれくらい続く?      5〜10年    10~15年
費用               1回 5,700円    1回22,000円 (2回44,000円)

※表内の数字はいくつか資料を見比べましたが多少の違いはありましたのであくまでも参考までにしてください。シングリックスはまだ接種が始まって時間が経っていないので効果の継続期間などは現在も追って調べているとのことです。
どちらのワクチンにもそれぞれいいところがあります。詳しくは山田先生までご相談くださいね。

医療法人山田医院 医療事務 東川敏美

乳児血管腫について

乳幼児に最も頻度が高い皮膚の良性腫瘍である乳児血管腫は見た目が「いちご」に見えるために「いちご状血管腫」と呼ばれています。かつては自然に消えるためにwait and see policyと言われていましたが、一部の症例においては重篤な症状を起こしたり後遺症を残すことがあるために最近ではβ遮断薬のプロプラノロールを第1選択薬として積極的に治療することも推奨されています。乳児の1-2%と頻度は高く、女児、早期産、低出生体重児に多く認めます。外観上はいちごに似ているためにいちご状血管腫と呼ばれます。表在型、深在型などタイプがありますが生下時には存在しないものの生後2週間ほどで顕在化して4か月頃までに増大し1-2歳ころまで増殖して大凡4歳程度で退縮していきます。以前は治ると言われていましたが一部が瘢痕化して残ることが多いのが現状です。おでこにできる紅色のサーモンパッチ、後頚部のウンナ母斑は生下時に最も大きいのに対して乳児血管腫は生下時にはほとんどわからず2週間ほどしてから大きくなりだす点が鑑別になります。治療の適応としては顎鬚部分にあるものは気道閉塞の、眼周囲は視力障害の、口周囲は授乳の障害のためにまた露出部位では整容面で醜状を残すリスクがあるために治療を考慮します。表在型に対してはレーザー治療を行いますが深在型にはプロプラノロールの内服が第1選択になります。通常は5週以降出来たら6か月未満での治療開始をして生後15か月ほどまで服用を行います。この薬の副作用としては下痢がありますがその他に低血糖、徐脈などを認めることがあります。薬の効果は早く、数日後には表面がピンク色となり表面にしわができてきます。プロプラノロールは皮下の盛り上がりには効果がありますが表在には効果が少ないのでレーザー治療を組み合わせることもあります。いちご状血管腫は良性腫瘍で基本的には消えることがほとんどですが跡が残ることも多いために経過を見るだけではなく不安があればかかりつけ医に相談をしましょう。今回は日本醫亊新報令和5年11月号から抜粋をしました。 山田医院 医師 山田良宏