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山田医院だより

第24巻第6号(第281号)

過敏性肺炎について

カビと肺炎といえばカビによる感染症を考えるのが普通かもしれません。全身状態が悪い人はカンジダあるいはクリプトコッカスなどカビによる肺炎を起こすことがあります。通常であれば肺炎などおこることがないカビによる感染性肺炎は死に直結する感染症ですが、今回の話題である過敏性肺炎はカビなどによるアレルギー反応で起こる肺炎(間質性肺炎)です。アレルギーによるものだからと言って軽症ではなく重症化することもあるために注意が必要な疾患です。過敏性肺炎はアレルギー性の間質性肺炎で家のカビ、加湿器、羽毛布団などが原因で発症します。急性の過敏性肺炎は炎症が主体の間質性肺炎ですが、この原因を吸い続けると慢性線維性の間質性肺炎となります。この線維性過敏性肺炎は予後が不良となります。原因となる抗原は粒子径が3-5μで吸入により気道の末梢である肺胞手前に沈着してここでアレルギー反応を起こします。疾患名は発症環境を示す名称で名づけられます。(夏場や梅雨時期のカビが増殖→夏型過敏性肺炎、加湿器を使用して発症→加湿器肺炎、羽毛布団と使って発症→羽毛ふとん肺炎など)過敏性肺炎の症状は様々ですが吸入数時間後に発熱、全身倦怠感、咳嗽、息切れなどで出現して数週から数か月続く急性のパターンと数か月から数年の経過で徐々に進行する倦怠感、咳嗽、呼吸困難などで発症する慢性のパターンがあります。急性のパターンについては普通は感染症と間違えることも多くあります。なお診断としては問診、診察からの臨床像の把握、画像診断、血液検査での抗体検査、吸入誘発試験などがありますが診断が困難な場合には気管支鏡の検査が行われることもあります。個別の過敏性肺炎について見ることにします。加湿器肺の特徴としては急性に起こる過敏性肺炎で原因としては加湿器の水槽に繁殖する細菌や真菌、エンドトキシンなどの関与が指摘されています。特に5年ほど前から冬季にウイルス感染を予防する目的でよく使われるようになった卓上式超音波式加湿器が原因の報告が増えています。超音波式以外のスチーム式、気化式、ハイブリッド(加熱気化)式でも水槽を中性洗剤でよく洗い乾燥させてから使用しないと発症の危険性があります。夏型過敏性肺炎は急性過敏性肺炎の中で最も頻度が高く、東アジア(日本が中心)のみで原因となる真菌はトリコスポロンが中心となっています。梅雨時に家屋内で真菌が発症して起こる疾患です。この夏型過敏性肺炎は1970年代に日本で認識された初めての過敏性肺炎です。女性の発症が男性の2倍で多くの患者さんが専業主婦です。羽毛で起こる過敏性肺炎としては慢性過敏性肺炎で発症しますが慢性型で最も多いパターンです。原因は鳥ふんや羽毛でこの暴露は無自覚のうちに起こることも多く鳥飼育あるいは鳥糞肥料や羽毛製品の使用で発症します。鳥の飼育はもちろん、羽毛ふとん、ダウンベスト、羽毛のソファ、羽毛のはたき、鳥の剥製のほか、自宅周辺に鳥が多い環境でも発生の危険があります。これらの過敏性肺炎の治療としては原因となるものへの暴露を避けることが大切です。夏型過敏性肺炎では改築を含めた環境改善が必要で特にトリコスポロンが繁殖する風呂場や台所など、繁殖しやすい腐木、寝具、畳、カーペットなどについてはリフォー
ムあるいは処分が必要です。改善しない場合には転居も考慮する必要があります。鳥関連過敏性肺炎では鳥飼育の中止、羽毛ふとんなど羽毛製品を破棄、鳥の多い環境ではN95マスクの着用、加湿器肺ではフィルターの交換と機器の洗浄、乾燥を十分に行う事になります。治療としては基本的には原因となる物質の回避を基本としてステロイドの治療とあるいは必要に応じて免疫抑制剤の使用を行います。夏型過敏性肺炎は私自身が学生の時からあった疾患ですが当時は夏場に一過性に起こり秋以降になると自然に改善、予後はよい疾患として習った記憶があります。近年では上記のように様々な物質が原因でアレルギー反応がおこりそれに伴い肺炎がおこることが分かってきました。一過性であればよいのですが慢性進行で線維性間質性肺炎となり酸素吸入が必要となったりまた呼吸不全となり命を落とす可能性もある疾患で軽視はできなくなりました。今回は日本醫亊新報令和5年4月号から抜粋をしています。

山田医院 医師 山田良宏

感染性胃腸炎?急性胃腸炎?どう違う?

胃腸炎といえば、冬場に流行するものと思っていましたが、最近では、年中耳にするような気がします。胃腸炎と診断され、急性胃腸炎ですか?感染性胃腸炎ですか?との問い合わせが時々あるので、調べてみました。

【急性胃腸炎】とは、ウイルスや細菌感染によって胃腸の粘膜に炎症が起きる疾患で、嘔吐・下痢・腹痛などの症状があらわれます。急性胃腸炎の原因は、大きく分けて、ウイルスや細菌、寄生虫などに感染することによって生じる【感染性胃腸炎】と、それ以外の原因によって生じる【非感染性胃腸炎】があります。
急性胃腸炎の原因の多くが感染性胃腸炎です。感染性胃腸炎のうち、ノロウイルスやロタウイルスなどウイルスによるものを【ウイルス性胃腸炎】と呼び、冬から春先にかけて患者が増える傾向が多いと言われています。一方、病原性大腸菌やサルモネラ菌、カンピロバクター菌など細菌によるものを【細菌性胃腸炎】と呼び、一般的には夏場にかかる人が多いといわれています。

【原因】 感染の原因としては、飲食による「経口感染」と手指などを介した「接触感染」のパターンがあります。経口感染は、細菌やウイルスが付着した食品を摂取してしまうことで感染します。特にカキなどの二枚貝にはノロウイルス、サルモネラ菌は牛肉・豚肉・鶏肉などに含まれ、カンピロバクター菌は鶏肉や豚肉などに含まれていることが知られています。これらの食品を、なま、あるいは加熱不十分な状態で食べた場合などに感染することが一般的です。また、接触感染は、家庭内に感染している人の調理を食べたり、手指に付着した病原体が口に触れたりすることで感染します。感染リスクを下げるため、こまめに手洗いうがいや、調理器具の消毒などを行いましょう。

【症状】 下痢・腹痛・嘔吐や発熱という症状が出ることが多いです。特に、下痢はほとんどの患者でみられます。血便は、細菌性胃腸炎の場合が多いようです。ロタウイルスでは、便が米のとぎ汁のような白色の水様便がみられたりします。。また、細菌性胃腸の方が、ウイルス性胃腸炎に比べると症状が重く出る傾向にあるといわれています。 嘔吐や下痢が続くと、身体が食事を受け付けてくれず、栄養が十分にとれないことがあります。脱水症状に陥ることもあり、特に幼児や高齢者では、注意が必要です。食欲が湧かないときは経口補水液などを活用し、補いましょう。治りかけで、食欲が湧いてきた場合も、負担を減らすため食事は少しずつ摂るようにしましょう。香辛料や油っこいもの、冷たいもの、柑橘系や甘すぎるものは胃腸に負担をかけ、下痢などの症状が再発する可能性があります。完全に落ち着くまで避けたほうがよいでしょう。
また、一般的なアルコール消毒では死滅しないウイルスもおりますので、次亜塩素酸ナトリウムが入った家庭用洗剤(キッチンハイター)などで消毒すると効果的といわれています。(次亜塩素酸ナトリウムは取り扱いに注意が必要ですので、薄めることはもちろん、特にお子様の口に入らないように管理を行ってください。)

山田医院 看護師 橘 智子

紫外線による健康影響

最近は暑さが増し、いよいよ夏の到来を実感しますね。エアコンなど上手に使用して熱中症には十分お気をつけてください。夏は熱中症対策も重要ですが、日焼け対策も欠かせません。私も昔は真っ黒になって遊んでいましたが、最近は紫外線の害を知り、日焼け対策をしっかりするようになりました。
日焼けの原因となる紫外線は「四害線」とも呼ばれ、シミ、しわ・光波発がん・光色素沈着・光アレルギーなどを引き起こす原因にもなります。日焼けには皮膚が赤くなるサンバーンと、黒くなるサンタンがあり、通常は日光に当たった直後に皮膚が赤くなり(サンバーン)、赤みが消失した後、皮膚が黒くなります(サンタン)。
サンバーンの応急手当は、
冷水を含んだタオル越しに氷や保冷剤で冷やす
日焼け部位は火傷と一緒ですので刺激しない
日焼け後の皮膚の部分は水分が奪われやすい状態にあるため、水分摂取を心がける
細胞の修復をスムーズにするためしっかりと体を休める
水ぶくれができるなどひどい場合は医師の診察を受けるようにしましょう。
地上に届く紫外線は波長の長い順にA 波、B波の2種類に分けられ、波長が短いほど毒性が強くなります。A波はB波より皮膚の奥まで到達し、シワやたるみなど老化に影響を及ぼし、B波は日焼け、しみ、皮膚ガンなどを引き起こすと考えられています。近年はオゾン層の減少によって地上に達する紫外線量全体が増加しているので注意が必要です。浴びたB波の量が限界を超えると、傷ついた皮膚の細胞の遺伝子が回復せず、傷付いた状態で細胞分列を繰り返します。そして遺伝情報が誤った形で書き換えられ突然変異を起こし、皮膚がんが発症します。日焼けの影響で発症するガンの発生しやすい部位は紫外線が当たりやすい顔面やうなじ、手の甲とされています。長年紫外線を浴びると発症しやすく、高齢者にみられることが多いです。
日焼け予防としての日焼け止めクリームですが、正しく使ってこそ効果が現れます。汗をかいたり擦れたりしてとれてしまうので度々塗り直す必要があります。日焼け止めクリームやローションには紫外線防止効果を示すSPF,PAという指標がついています。SPFはB波の防止効果を表し、数字が大きいほど強力、PAはA波の防止効果を表し、(+)が多いほど強力です。
外出先や時間によって使い分けるのが良いとされています。紫外線量が最も多い時間帯は午前10時から午後4時までとされており、外出する際は帽子や日傘、サングラス、長袖などを着用し、できるだけ強烈な日光を避けることが好ましいです。
かつて、紫外線は体内でビタミンDの活性化に必要とされることから、日光浴が勧められていましたが、ビタミンDは食物からも摂取できるため、日焼けをするほどの日光浴は必要ありません。両手の甲くらいの面積が15分間日光に当たる程度、または日陰で30分過ごす程度で、食物から摂取されるビタミンDと合わせて十分なビタミンDが供給できると考えられています。母子健康手帳でも「日光浴」ではなく「外気浴」を推奨する記述に変更されています。
子どもの頃の日焼けも、その影響は何十年も経ってから現れてくるそうです。子ども用の日焼け止めも販売されています。どの年代においても紫外線対策を心がけ、日々の紫外線対策をしっかり行っていきましょう。

冨嶋亜依

ヘバーデン結節

ヘバーデン結節とは、手指の第一関節(指先に近い関節)に硬いこぶ(結節)ができて、腫れたり変形したり、ときには横に曲がってしまう変形性関節症の1つです。関節とは骨と骨のつなぎ目。双方の骨の表面はクッション役の軟骨でおおわれていえます。しかし、ヘバーデン結節の方は、軟骨が何らかの理由ですり減り、このぶつかる刺激で骨が変形したり、骨のとげ(骨棘)ができたりして、結節を形成。徐々に痛みを感じるようになるのです。痛みのほか、関節がこわばる、指を動かしにくい、まっすぐに伸ばせない、力が入らない、物が上手くつかめないなどの症状があります。ヘバーデン結節の症状や痛みの程度は、とても個人差が大きいものです。安静にしていてもビリビリして、夜もよく眠れない方や、家族や知人に指の変形を指摘され、初めて気が付く方もいます。
どんな人がなりやすいの?
・女性、女性の指の筋肉や腱、靭帯が男性より脆弱なこと、日々の家事で指にかかる負担が大きいなどです。
・手仕事の人、美容師、調理師、楽器演奏者、整体師、パソコン入力業務など手指を酷使する職業の人も多いです。
・更年期の人に多い。女性ホルモンの減少で丈夫な筋肉、腱・靭帯を作り、弾力性が減るから。
・血流が悪い人 血の巡りが悪いと、丈夫な腱や靭帯、健康な骨や軟骨を維持することができない。
病院では、問診、触診・レントゲンで治療方針を決めます。
治療として
・テーピテングで変形を防ぐ
・消炎鎮痛剤を塗布
・痛み止めの注射
・女性ホルモンをアップ
・血行をよくする、ビタミン剤や漢方薬
・ヘバーデン結節の手術などです。
よく動かす手が健康でないと日常生活に不自由を感じます。生活の質も低下します。
なにか手指の第1関節に、むずむずした違和感があったり、押すと鈍痛があるなどがあれば、ヘバーデン結節を疑っ
て見ては?

山田医院医療事務 阿知波真弓

子どもの熱中症

熱中症とは体内の温度が上昇して重要臓器の働きが悪くなるための症状の総称です。基本的には高温そのものによる臓器への悪影響(高体温)と血流が悪くなり臓器に酸素とエネルギーが運ばれなくなる(ショック)の2つが熱中症の病態となります。そのための予防と治療は①外環境を涼しくする②脱水にならないこと③十分な血液循環④筋肉運動を止めるの4つになります。日本の夏の平均温度は100年で1.5度程度上昇していますが特に最近は熱くなる時期が早くなりつつありまた梅雨明けにより蒸し暑くなる傾向があります。生活空間が地表面に近い子どもはより熱を受けやすい状態であり、子どもは体温調節能力が不十分であり体重あたりの体表面積が大人より大きく深部体温が上昇しやすい状態であり熱くなり始めるときから注意が必要になります。子どもの熱中症は蒸し暑い屋内で徐々に体調を崩して陥る非労作性熱中症ではなく暑い環境の中で筋肉運動を伴って短時間のうちに発症する労作性熱中症が中心です。スポーツ時に対する熱中症対策としては暑熱順化と高温になれる事を数日から1週間前までに行い,競技開始前には体温をできるだけ平熱にしておくためにウオーミングアップは制限して競技前にアイスベストやアイスラリーで体温を下げておくことも大切です。15分おきに水分を摂取100-250ml程度も推奨されます。一般的な1回の嚥下は20-30mlと言われているので9口飲む いわゆる「ごっくん」ルールを活用すると覚えやすいでしょう。熱中症においては意識障害がなければ軽症であり現場での対応(クーリング、水分補給)で対応が可能ですがボーとするなど意識障害があれば病院の受診が必要になります。もうすでに熱くなりましたが熱中症には気をつけましょう。今回はチャイルドヘルス令和5年6月号から抜粋をしました。

山田医院 医師 山田良宏