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山田医院だより

第23巻第10号(第273号)

悪液質と食関連苦悩について

悪液質(cachexia)という言葉を聞いたことがあるでしょうか。よくイメージされるのはがりがりに痩せて寝たきりになっている状態ではないでしょうか、、。悪液質とは体重減少、食欲不振を伴う衰弱状態です。この悪液質は癌のみならず心不全、腎疾患、慢性感染症など様々な慢性消耗性疾患を背景に生じますが今回はがん悪液質について話を進めていきます。悪液質は筋肉量の減少を特徴とする複合的代謝異常の症候群です。症状としては成人では体重減少、小児では成長障害があり食欲不振、炎症などを認めます。がん悪液質の診断は6か月間に5%以上の体重減少、BMI(体重÷身長÷身長)<20かつ2%以上の体重減少、サルコペニアを認めることです。がん悪液質は画像検査や病理検査等で病因を直接確認できません。がん悪液質の原因の中心はがんによる慢性炎症、体組織の分解亢進と合成阻害(いわゆるやせの状態)、エネルギー過剰な消費などの代謝異常があり、また消耗を助長する因子としては摂食を障害する症状である癌そのものによる食欲低下、消化管の通過障害、がん治療による副作用、その他抑欝、便秘などと身体活動を阻害する症状である癌そのものによる疲労、痛み、外見の変化による外出活動の阻害などがあります。これらにより低栄養と身体機能障害を生じ日常生活機能に悪影響を及ぼします。一般に悪液質の早い段階では経口摂取量の減少が栄養状態悪化の主要因となりがんの進行に伴い代謝異常が進むと治療抵抗性の低栄養になります。最近ではこのがん悪液質は時間軸で分類したステージ分類が提唱されています。悪液質に至る前段階である前悪液質は軽度の体重減少、慢性の炎症反応と食欲不振がある状態です。悪液質になる前のこの段階での栄養サポートをはじめとした治療が有効であると考えられています。不可逆的悪液質は悪液質が高度に進行した状態でもはや体重減少を回復させることは困難な状態です。この時期は栄養療法の時期ではなく食の苦悩に対する対応が重要になります。がん悪液質については確立した治療はなく運動療法ならびに栄養療法に加えて昨年1月に唯一の治療薬としてアナモレリンが世界に先駆けて日本において製造販売されました。このアナモレリンは経口薬ですがグレリン受容体作用薬で中枢神経を介して食欲を増進して成長ホルモンの分泌促進によって骨格筋合成を促進します。がん悪液質の除脂肪体重増加や食欲は改善していますが身体機能の改善はなく、またがん関連疲労や生活の質、生存期間に対する有効性は証明されていません。このアナモレリン治療においてはがん病勢が比較的穏やかな症例で全身状態が不良となる前に開始することが効果と安全性の両面で重要です。以前からがん悪液質に使用されていたステロイドについては食欲改善の効果が1か月未満でしたがアナモレリンでは3-6か月と長くまた感染症、血栓症、高血糖などの有害事象も少なく比較的安全に長期使用が可能な点が特徴的です。がん悪液質では身体症状と共に精神症状が混在しますがこの症状は患者さん本人だけではなく介護する家族の心理社会的苦痛も惹起します。十分な栄養、水分の摂取、適度な運動、夜間の安眠が大切ですが「食」については「食べる事」は「生命維持のために必要な栄養の摂取」だけではなく味を楽しんだり満腹感を感じる「精神的な満足感」、食を通して時間や場所を共有することで他者とのコミュニケーションの機会となる「社会的満足感」にもつながります。そのために食べる事が苦痛となると本来楽しみである食事の時間が苦痛の時間となってしまいます。」「食べないとこのまま進んでしまい亡くなってしまうのではないか」「食べる、食べないで家族と言い合いになる」と食に関する苦悩が出てきます。人間は食べないから死ぬのではなく死ぬから食べないのであって身体に負担をかけない食事量がちょうどよいと理解することが大切です。離乳食を少量ずつ始める食事が食事のフェードインとしたら終末期に少量で終えることはフェードアウトと考えるとよいでしょう。好きな食材、調理法、味付けで嗜好に合わせて食べやすいものを時間にこだわらず食べられるだけを食べる事が大切です。視覚的な刺激も食欲に影響するために少量ずつ提供、使い慣れた食器を使用する、暖かいものは温めて、冷たいものは冷やしてまた食事の場の環境も整えます。できればベッドから離れて食卓としての空間で食事をすることも大切です。悪液質ではサルコペニアがあると述べましたがこれは筋肉量の減少+筋力低下であり嚥下機能、起居動作能力や歩行能力の低下が中心となります。特に下肢筋力の低下は立ち上がり能力の低下→歩行能力の低下→身体活動の減少となるためにがん悪液質の患者さんが早期から介護が必要になる原因となっています。全身状態に応じてリハビリを行うことで身体機能の維持は可能と言われています。最近では病院緩和ケアにおいては悪液質に対してのチーム医療が進んできていますが在宅においても医師、訪問看護、理学療養士、場合によっては栄養士が連携を取っての対応を行うようになっています。今回は「緩和ケア」令和4年9月号から抜粋をしました。

 

山田医院 医師 山田良宏

網膜剥離について

目の網膜は、光を感じ取り、その情報を視神経から脳に伝達する大切な器官です。これが眼球の中ではがれる病気を,網膜剥離と呼びます。
若い年代でも意外と多く発症します。糖尿病や眼の中のブドウ膜炎が原因で起こったりもしますが、最も多い原因は、網膜に穴が開き、そこから少しづつはがれていく裂孔原性網膜剥離です。発症には年代で2つのピークがあり、ひとつは20代で近視が強い方。近視が強くなると眼球が大きくなり、網膜が薄くなることで穴が空きはがれます。もう一つの年代は50~60代で、眼球の内部組織である硝子体が加齢により縮み、その時網膜が引っ張られてはがれます。また他に、外傷によって起こることもありボクサーがなりやすい病気としても知られています。同じく、アトピー性皮膚炎の方も目を掻いたり擦ったりすることで、眼球に圧迫が加わり発症することもあります。
網膜剥離は早期発見が大事です。発症し時間が経過すると、治療しても視力が回復しないこともあるため、日頃から見え方に異常があったら早めの受診をお勧めします。
わかりやすい自覚症状としては、飛蚊症や光視症があり、進行すると視野が欠けていき最終的には失明することもあります。存在しないゴミや黒い点が見えるのが飛蚊症、光が当たっていないのにチカチカ、キラキラ見えるのが光視症です。どちらも硝子体の老化で起こるので問題ないことも多いのですが、中には網膜剥離が原因のこともあります。これらの症状が急激に悪化したら要注意です。網膜剥離の時はほとんどが片目に発症するので片目づつチェックすると分かりやすいです。
網膜剥離の治療は、網膜の穴だけならレーザー治療で10~20分で終わります。すでに網膜がはがれていたら手術となり1~2週間の入院が必要になります。
なお眼科受診時に眼底検査をするときには、瞳孔を広げる点眼薬を使用する必要があるため、受診後一時的に見え方が悪くなります。車や自転車を運転して帰宅することはできないため、通院手段も考慮しなくてはなりません。

山田医院 看護師 盛田里穂

下肢静脈瘤の原因について

最近、膝の裏の青く筋張った血管が気になり、調べると下肢静脈瘤と診断されました。同じように気になっている方も多いのではないでしょうか?下肢静脈瘤は命にかかわるような病気ではありません。必要以上に心配することはありませんが、気になるその原因にはどんなものがあるのでしょう。原因が解れば改善方法を考える事ができ、悪化させないための予防法で対策をとる事ができます。では、下肢静脈瘤の原因とその種類についてお話ししていきましょう。下肢静脈瘤は足の血管の病気です。静脈は、心臓から送られた血管が全身に栄養を運び終えた後、その役目が終わった血液を心臓に戻す役割があります。足の静脈は重力に逆らって足から再び心臓へと血液を送らなければなりません。静脈の中には弁かあり、血液が足の方に戻ってしまわないように防いでいます。正常な場合は弁の働きで血液が上に流れて心臓へ戻る力がありますが、静脈弁が壊れてしまうと血液の逆流により静脈が拡張し静脈瘤が発生します。具体的な原因としては、加齢によるもの、立ち仕事やエコノミークラス症候群、妊娠出産のほか肥満や遺伝、激しいスポーツを行っていることや背が高いことなどがあります。加齢による下肢静脈瘤の原因としては、老化により血管のしなやかさが失われ、弱くなることから静脈の弁が壊れることにあります。また弁の働きに問題がある遺伝によってなる人もいると言われています。ほかには、肥満も原因のひとつとなります。身体が重いということは足に負担がかかります。そして、意外なことに背が高くて足が長いと静脈が長く、血液を戻す際の負担が大きくなるようです。このように、加齢や高身長など、自分では防ぎようのないことが原因で起こってしまうケースもあります。職業でみていくと美容師や教員、看護師、料理人など長時間の立ち仕事をしていたり、座りっぱなしの人や運動不足の人もふくらはぎの筋肉の働きが悪いために起こりやすくなります。その他、足に負担がかかる激しいスポーツをしている人も発症しやすいようです。性別でいうと、男性より女性が多い病気です。女性は男性に比べ筋力が弱く、血液を心臓へ戻す力も弱いと考えられます。妊娠時に黄体ホルモンが増加すると静脈が柔らかくなり、弁が壊れやすくなって起こることもあります。また、妊娠してお腹が大きくなると腹部の静脈が圧迫されるため足の静脈にも負担がかかります。そのため妊娠出産経験者にも多く発症すると言われており、出産経験の多い人の方がより発症しやすいようです。女性の場合、美容の観点から気にする人も多いので、男性に比べて受診する割合も高いかもしれませんね。下肢静脈瘤は良性の病気ですが、放っておいて自然に治癒することはありません。このような原因に心当たりのある方は、悪化を防ぐためにマッサージをおこなったり、むくみ改善をするなどの方法を試してみるのもいいのではないでしょうか。また、筋肉を鍛えることも有効です。適度に運動することで血液の循環を良くすることができます。症状に不安がある方や、気になる方は、一度病院で相談してみるのも、いいかもしれませんね。


山田医院 看護師 川上 啓

長引く咳は単なる風邪?

長引く咳には様々な原因があります。2週間以上咳が続く場合は喘息や、肺炎などの感染症の可能性もあるので調べる必要があります。中でも喘息は国内最多の原因疾患で、気管支喘息に移行する恐れもあるようです。ただの風邪?咳が長引いているな。と感じた時要注意ですね。咳が長引いて市販の薬を服用してみたりしても咳が止まらないことはありませんか?咳喘息は風邪やアレルギーを起こす物質を吸うことなどがきっかけとなり、長期にわたって軌道粘膜が障害を受け、咳が止まりにくくなる病気です。特徴としては、咳がひどくても気管支喘息と違い「ヒュヒュー」「ゼーゼー」と聞こえないことです。これはアレルギー体質の人に起こりやすいようで、一般の咳止め薬では治らず吸入や気管支拡張薬などが必要です。近年では黄砂にともなったPM2.5を吸い込むことで発症することもあるようです

喘息のチェックポイント
痰を伴わない咳が2週間以上続く
風邪の後に咳が長引く
冷たい空気、温度差、煙、ホコリ、などで咳き込みやすい
④1日の中でも出やすい時間帯がある
花粉飛散の時期、季節の変わり目など1年間の中でも出やすい時期がある
1つでも当てはまるものがあれば要注意です。
喘息をそのまま放置すると、34割の人が典型的な気管支喘息に移行すると言われています。「単なる咳」と放置せ
ず、受診することが大切です。
予防するためには外出時はアレルギーを引き起こす原因であるハウスダスト、カビ、花粉などを避けるためなるべく
マスクをして人混みを避け、外出から帰ってきたら手洗い、うがいをし、風邪をひかないように心掛けましょう。煙
草の煙は気管支を刺激し咳喘息の誘因となります。禁煙することや周囲からの副流煙を吸わないことが望ましいで
す。ストレスも誘因となるため、過労を避け、睡眠や栄養を十分にとって抵抗力をつけることなどが大切です。

山田医院 医療事務 永野葵

秋の食材について

とても過ごしやすい季節になってきました。コロナにも気をつけつつ少しずつ活動したいと感じるこの頃ですね。また秋は「実りの秋」「収穫の秋」「食欲の秋」といわれるようにおいしい食材が豊富な季節です。旬の食材は大地のエネルギーをたっぷり含み栄養が豊富でその時期に合わせて体調を整える働きがあります。
春の食材はビタミン・ミネラル・食物繊維が豊富で疲労回復に効果的。春先に多い皮膚や粘膜のトラブルの解消、便秘予防にも役立ちます。夏の食材に含まれる水分やカリウムは汗で不足しがちな水分を補給し熱のこもった体をクールダウンしてくれます。秋の食材は夏の暑さで弱った胃腸を回復し体を温めてくれる効果があります。
冬の食材はβカロテンやビタミンC Eが多く含まれ、血行を良くして体を温め免疫力アップや冷え性改善などにとても有効です。今回は夏の疲れをリセットする秋の食材についていくつかご紹介したいと思います。
・サツマイモ 食物繊維、ビタミンC・Eが豊富。じっくり加熱することで甘みが増す
・里芋 芋類の中では低カロリー。粘りは「ガラクタン」という成分によるもので血中のコレステロールの付着を防ぎ血圧を下げる効果があるとされている・じゃがいも 秋のじゃがいもはデンプンの量が多くほくほくとした食感。「畑のりんご」と呼ばれるほどビタミンCを多く含む。余分な塩分を排出する作用があるカリウムや腸の働きを活発にする食物繊維も豊富
・しめじ 「香りまつたけ味しめじ」といわれるように旨みが強い。キノコの中でも野菜や果物からの摂取が難しいビタミンD、疲労回復に効果的なビタミンB群が豊富
・まいたけ
免疫機能がアップするβグルカンが多く、がんや高脂血症の予防効果でも注目されている脂質をエネルギーに変えるビタミンB2はきのこの中でも特に多く含まれている・かぼちゃ カリウム、カロテン、ビタミンCを豊富に含む
・柿 1個で一日分のビタミンCが摂れるといわれているほど多い。飲酒の前に食べると二日酔いの予防に効果があこといわれている
・梨 アスパラギン酸、クエン酸、リンゴ酸など疲労回復作用のある酸が豊富
・ぶどう 糖類の中で最も吸収の良いブドウ糖が主成分のため疲労回復に最適な果物
・栗 渋皮にはポリフェノールのタンニンが含まれがんや動脈硬化予防に効果が期待されている
・銀杏 抗酸化作用があるβカロテンやビタミンCEのほかカリウム、マグネシウムなどのミネラルをバランスよく含む。カリウムは血圧を正常にする働きがあると言われている。食べ過ぎには注意!
・鮭 消化吸収のよい良質のタンパク質やビタミン類を含む
・鯖 910月ごろに取れるものを「秋鯖」と呼び脂がのった秋鯖はDHAEPAをより多く含んでいる
・秋刀魚 脂にはDHAEPAが多く含まれ蛋白質、ビタミンB12、カルシウム、鉄分など栄養バランスも優れている
以上秋の旬の食材としていくつかご紹介しましたが免疫力を高めるものが多いため、うまく取り入れ美味しくいただ
きながら健康に元気に過ごしたいですね

山田医院 医療事務 浅野 加津子