第21巻第11号(第250号)|大阪市阿倍野区で内科・外科・小児外科なら山田医院にお任せください。

  • お問合せはこちらから

    0666223166

  • 診療時間

    ※括弧内は受付時間 休診日 木曜午後、土曜午後、日曜、祝日

お問い合わせはこちらから

0666223166
診療時間

※括弧内は受付時間 休診日 木曜午後、土曜午後、日曜、祝日

山田医院だより

第21巻第11号(第250号)

咳嗽の臨牀について

診療所を受診する患者さんの受診動悸として最も頻度の高い症状の1つが咳嗽です。
多くは発症後1週間以内の受診で、その原因の80%以上は感染症とされています。多くの方は自然治癒あるいは喫煙などの原因の回避で軽快しますが一方では3週間以上咳嗽が持続する場合も10%近くあると言われています。咳嗽については持続期間により3週間以内の急性咳嗽、3-8週間の遷延性咳嗽、8週間以上の慢性咳嗽に分類されています。3週間未満の急性咳嗽の場合には感染症による咳嗽が多く、逆に8週間以上の慢性咳嗽においては咳喘息、胃食道逆流症、副鼻腔気管支症候群、アトピー咳嗽など感染症以外の咳嗽が多くなっています。以前も咳嗽についてはトピックとして挙げたことがありますがこの度は日本内科学会雑誌令和2年10月号に特集がありましたので抜粋して紹介をします。
いわゆる感冒「風邪症候群」は成人では年に2回程度は罹患すると言われていますが原因の多くは(80-90%)はウイルス感染です。主にライノウイルス、コロナウイルス(今話題のCOVID-19の原因のSARS-COV2と同じ種類で一般の風邪症状の原因となる4種類のコロナウイルス)、RSウイルス、インフルエンザウイルスなどが主たる原因ウイルスです。最近としてはマイコプラズマ、百日咳、クラミジア、肺炎球菌などがあります。一般臨床においての鑑別は難しいことが多いのですが大まかにいえば1か所の局所症状が強い場合には細菌感染、鼻、咽頭、喉頭など3か所以上に及ぶ急性症状がある場合にはウイルス感染を考えます。急性咳嗽の原因である風邪症状に伴う咳嗽ならびに感染後咳嗽については基礎疾患として肺気腫などの肺病変などがないか鑑別する必要はありますが、治療については抗生物質が必要というわけではなくヒスタミンH1受容体拮抗薬、麦門冬湯、非麻薬性中枢性鎮咳剤の併用などが勧められており状態に応じては吸入抗コリン薬を検討します。慢性咳嗽については呼吸器疾患の他に循環器疾患(心不全、肺血栓塞栓症、心室性期外収縮などの不整脈など)、消化器疾患(胃食道逆流症など)、耳鼻咽喉科疾患(副鼻腔炎、喉頭アレルギーなど)などの多種多様な原因がありますが日本においては咳喘息、アトピー咳嗽、副鼻腔気管支症候群あるいはい食道逆流症が多くなっています。一般診療においては痰が絡む湿性咳嗽か絡まない乾性咳嗽かが大切であり痰が絡む場合には副鼻腔気管支症候群を中心に考えますがその他の咳嗽においても感染が重なると痰が絡んだり、また鼻症状があると痰が絡む場合もあります。なお咳嗽が起こる時間帯も大切であり夜中、朝方が中心であれば咳喘息、アトピー咳嗽を中心に、起床後、就寝後に特に多ければ後鼻漏を伴う咳嗽(気管支副鼻腔気管支症候群など)を考えます。胃食道逆流症ではいろんな機序があるために胃酸が逆流しやすい夜間だけではなく日中にもおこります。
慢性咳嗽の原因として最も多い咳喘息は通常の気管支喘息とは異なり喘鳴がなくまた聴診においても雑音が聞かれません。(逆に聴診で雑音がある場合には咳優先型喘息と言われます。)成人では女性に多く、風邪、運動、冷気あるいは受動喫煙などで咳嗽が生じます。慢性気導延焼に加えて気道過敏性が原因であるから治療としては気管支拡張剤を対症療法として根本的な治療としてはステロイドの吸入を行います。咳嗽等の症状が改善した後も2年ほど継続してステロイド吸入を行いますが吸入療法ですぐに改善した場合においていつまで継続して吸入をする必要があるのかについてはまだエビデンスはありません。ただし、治療不十分であれば成人では30-40%において喘鳴が出現する(気管支喘息に移行する)ので注意が必要です。咳喘息によく似たアトピー咳嗽はアレルギー素因を有する中年女性に多く咽喉頭部の掻痒感(イガイガした感じ)を伴い就寝時、早朝にかけて乾性咳嗽があります。治療としてはヒスタミンH1受容体拮抗薬を1-2週間ほど服用すると改善しますが必要に応じてステロイド吸入を行います。アトピー咳嗽は咳喘息とは異なり気管支喘息に移行することはありません。最後に少し主題とは離れますが誤嚥性肺炎と咳嗽反射について説明します。要介護状態となり入所すると約80%の高齢者に摂食障害・嚥下障害がおこりその後に発熱、肺炎が起こり亡くなると言われています。誤嚥性肺炎は最近では嚥下反射と咳反射の2つの気道防御反射の両方が障害されると発症します。通常はまず嚥下反射が障害されてその後咳反射が障害される順番で進行します。
したがってフレイルの進行→嚥下反射障害→咳反射障害→誤嚥性肺炎となります。咳反射低下に対する対処法としてはACE阻害剤という降圧剤の投与(この薬の副作用は空咳であり、この副作用を利用)、口腔ブラッシングによる口腔ケアであり、これにより高次脳機能の刺激で咳反射を改善すると言われています。持続する咳嗽で受診される方は多く、また最近ではCOVID-19感染に伴い咳嗽をすると周りから白い目で見られるとのことで咳嗽の治療を希望される方も多くなっています。
持続する咳嗽を含めて咳嗽で困るときには薬局で咳止めの薬を購入するのではなくかかりつけ医師に相談をしましょう。

山田医院 医師 山田良宏

あなたの血管年齢はいくつ??

人は血管から老いるといわれます。血管が老いれば見た目も老けていく、、加齢と共に変化するのは仕方ないこととはいえ、普段の生活習慣等により実年齢以上に血管の老化を進めてしまっているかもしれません。血管の老化は見た目は勿論のこと、健康面にも大きく影響するので、老化を防ぐことは大切です。血管が老化するとはどういうことか?私達の体には動脈、静脈、毛細血管が張り巡らされ、絶えず全身に栄養や酸素を届けています。老化すると血管の壁は厚く、硬くなって弾力さを失います。血液の通り道が狭まる現象を「動脈硬化」といい、それがさらに進むと心筋梗塞や脳梗塞など命を脅かす病気を突如発症させるリスクがあります。動脈硬化は高齢の人のみならず、早い人は20代、30代からこの現象が現れるそうなので、若いうちから関心をもって日常生活を送りたいものですね。血管の老化を進めてしまう習慣として以下のことが挙げられます。
満腹になるまで食べてしまう、運動はほとんどしない、睡眠不足、ストレスが多い、喫煙等など。。当てはまる項目があれば改善できるよう工夫しましょう。血管を若返らせるのに年齢は関係ありません。若返りに大切なことは食生活の改善といわれています。血液さらさらを目指す食事の合い言葉に「オサカナスキヤネ」があります。オ=お茶、サ=魚、カ=海藻、ナ=納豆、ス=酢、キ=きのこ類、ヤ=野菜、ネ=ねぎ類(医師の栗原毅さん提唱)これらの品目を意識的にとるよう心がけましょう。そして同時に、適度な運動も大切です。動脈硬化を防ぐだけでなく高血圧などの生活習慣病を予防することにも繋がります。食事と運動で若々しい血管を目指しましょう!ちなみに血管年齢の測定は循環器内科の病院や薬局などでも出来る所があるので、気になる方は一度検査してみてはいかがでしょうか。

山田医院 医療事務 川村理恵

歯周病が引き起こす全身疾患

口の中にはおよそ300~500種類程度の細菌が存在し普段はおとなしい細菌たちですが歯磨きが不十分だったりすると食物残渣や糖分が細菌のエサになり歯垢(プラーク)となります。歯垢は粘着性が強く強いうがいでも落ちません。歯垢1㎎の中には10億個もの細菌が住んでいると言われておりこれが歯周病や虫歯の原因となるのです。歯周病は日本人に最も多い細菌による感染症と言われ45歳~54歳の中年層では88%もの人にその兆候が見られます。近年、歯周病菌と歯周病による歯肉の炎症で産生された物質(炎症性サイトカイン)が全身を回りさまざまな臓器に悪影響を及ぼしていることが明らかになってきました。現在関連性が指摘されている主な疾患について紹介します。
アルツハイマー型認知症:アルツハイマー型認知症患者の脳内から歯周病菌が見つかったことが報告されおり歯周病菌と炎症性サイトカインが病態を増悪させる可能性が指摘されています。一方歯周病による炎症反応で脳内に蓄積された「アミロイドβ」というアルツハイマー型認知症の発症や進行につながる物質が作られることも報告されています。
心血管疾患:歯周病菌が血管に入りこんで血管を傷つけたり炎症性サイトカインが血管に炎症を引き起こすことで心血管疾患の原因となる動脈硬化を誘発、悪化させると考えられています。非アルコール性脂肪性肝炎:血液に侵入した歯周病菌や炎症性サイトカインなどが肝臓に悪影響を及ぼし病態を悪化させると考えられています。
関節リュウマチ:関節リウマチ患者は歯周病の罹患率が高くより重症化しやすいという報告があります。歯周病と関節リウマチの病因、病態には共通点が多く炎症性サイトカインなどの物質が過剰に産生されることで進行するのではないかと考えられています。
誤嚥性肺炎:歯周病菌をはじめとする口腔内細菌が飲食物や唾液を介して誤って気管を通過し肺に入ると誤嚥性肺炎が発症することがあります。
糖尿病:糖尿病が歯周病を悪化させる一方で歯周病が糖尿病に悪影響を及ぼすという双方向の関連性があるこことがわかっています。
肥満、メタボリックシンドローム:肥満の人は歯周病になりやすく、歯周病は糖尿病を悪化させます。また肝臓には脂肪を蓄積させ高脂血症となりしメタボサイクルを作り出していきます。早産、低体重児出産:中等度以上の歯周病に罹患している妊婦はそうでない妊婦に比べて早産や低体重児出産のリスクが高いという報告がされています。
歯周病は歯垢をためない、増やさないことが大切です。そのためには正しい歯ブラシの方法で歯垢のない清潔な歯にしておくこと。歯科医で歯石を取り除き細菌を除去し傷んだ歯肉、骨を治療して健康な歯肉にすること。健康な歯の保持のために歯科衛生士による定期的なメンテナンスを受けることが大切です。

山田医院 看護師 中島早苗

コロナウィルスとこころの健康

新型コロナウイルスの感染拡大は、身体だけでなくこころの健康にも影響を与えています。自分も感染するのではないか、知らないうちに自分が人にうつしてしまうのではないか、学校が休校で勉強の遅れが心配、仕事が休みで経済的にやっていけない、やる気がでないなどの気持ちを抱いていませんか?
この状況は長期になることが予想されるため、こころの観察・モニタリングとそれに対するセルフケアが大切になります。まず自分の気持ちを観察・モニタリングしてみましょう。いつもより、不安、怒り、無力感、イライラを感じていませんか?次に行動の変化がないかを確認しましょう。今までより、集中力の低下、過度に頑張り過ぎている、作業効率の低下、酒、たばこの量が増える、危険を顧みなくなるという変化を起こしていませんか。最後に不眠、動悸(どうき)、発汗、立ちくらみ、息が苦しい、下痢や便秘、胃の辺りの痛みなどの消化器症状など体にも変化が起きていないでしょうか?意外かもしれませんが、気分の高ぶりや、いつもより過度に張り切ってしまうことへも注意が必要です。このような変化は、気が小さいから、臆病だから起きるのではなく、このような状況下では誰もが抱く自然なこころの反応です。
こころの健康を保つためには、セルフケアとして休みと栄養をしっかり取り、感染予防に配慮して気分転換する、いつも通りの生活リズムを保ち、お互いにいたわり、つながることが大切です。今、私たちは人間としてどう生きるか、行動するか試されていると思います。このような状況のなかで、夫が海外から戻り、子供も家にいて家族の団欒が増えてうれしい、子供の生活や学び方が変化した、働き方が変わったなど今まで考えられなかったことを実感する声も聞かれます。デメリット・メリットを確認し、今までとは違うことを試してみるチャンスでもあります。最大の注意を払いながら心身の健康を維持していけるよう乗り切っていきましょう。

山田医院 医療事務 杉山恭子

睡眠のメカニズム

私たちは、毎日睡眠をとっていますよね?でも、快適に眠れる時と、眠りに不満がある時とがありますよね?人は人生の1/3も寝ているという事をご存知でしょうか?ではまず、人はなぜ眠くなるのかというメカニズムについてお話します。

1.朝の光を浴びた15時間後から眠くなる・・・私たちの日常生活は24時間周期で繰り返しており、体内にも24時間+α周期で刻む体内時計があり、体内時計の周期リズムに従って生活すれば、最適な時間に眠くなります。朝の光により体内時計が1日の始まりにリセットされます。また、朝食に含まれるたんぱく質と日中活動により睡眠物質(メラトニン)が分泌され溜まり15時間後に自然に眠くなり、その2時間後に寝ると良い眠りが得られます。
2.日中、活動的に過ごせば眠くなる・・・日中の活動が多いことで、脳をフルに動かし、疲れて睡眠物質(アデノシン)が溜まり脳に休息を促し眠くなります。夜、眠くなるためには日中に疲れを溜めておくことも大切です。中高年になって不眠が多くなるのは日中の活動不足も考えられます。お友達とのおしゃべりも睡眠にプラスに働きますよ。
ただ現状のコロナ化では、安易にこのような時間を作ることが難しくなっていますが・・・
3.深部体温が下がると眠くなる・・・快眠のポイントとして多く取り上げられるのが、「深部体温を下げる」です。深部体温とは、私たちの皮膚表面の体温に対し中心部内臓の体温の事です。深部体温は日中は高く、睡眠中に低くなります。深部体温が下がると、自律神経の副交感神経が優位になり次第に眠りのモードになり熟睡できます。睡眠のために深部体温を下げるには、1度体温を下げるのが効果的です。その為には夕方4時ころから7時ころの30分以上のゆっくりとした入浴がお勧めです。入浴は就寝1~2時間前に39℃~40℃くらいのぬるめのお湯に20~30分くらいが効果的です。入浴により身体の表面の血管が拡張し、入浴後に次第に深部体温が下がって、入浴のリラックス効果ともあいまって眠気が訪れてきます。睡眠の為にはシャワーではなく、温めの入浴がお勧め。冷えで眠れない人にも効果的です。
4.夜、ゆっくり過ごすと眠くなる・・・私たちは身体の機能を最適に保つため、無意識に「自律神経」が働いています。日中活発に行動していると「交感神経」、ゆっくりしている時「副交感神経」が優位になります。就寝2~3時間前からリラックスしていると副交感神経が優位になり、スムーズに眠りに入れます。運動や食事は就寝の3時間前までに。また、生活の必需品ともいえるスマホを寝る直前まで見ていると、その光が脳を覚醒し寝つきが悪く、深い眠りが得られなくなるので注意しましょう。
5.睡眠環境・・・ゆったりとした、リラックスできる空間を作りましょう。今回は、睡眠のメカニズムについてお話しました。少し先になりますが、次回は、この事をふまえ、睡眠の役割についてお話しできたらと思っています。

山田医院 看護師 川上 啓

インフルエンザの話題について

10月からインフルエンザの予防接種が始まりました。今年は大阪市では65歳以上の高齢者においては接種料金が無料ということもあり例年以上に接種希望者が増えています。そのために子どもを含めた若者の方への接種人数が少なくなっており迷惑をおかけして申し訳なく感じています。今回はチャイルドヘルス令和2年11月号にインフルエンザについての特集がありましたので抜粋をします。最近にインフルエンザの流行について見てみると2017/18シーズンは11月からA型の流行が始まり、通常は2月以降に出始めるB型が12月から出現、さらに別のタイプのA型も年明けから流行となり、週当たりの最高記録を作りました。2018/19は年明けに2種類のA型が流行、1月下旬にピークが集中して短い期間のみ流行という状態でした。短い期間のみでしたが入院患者さんが集中する状態となりました。2019/20は夏場に沖縄で大流行してその後年始になり流行が始まりましたが3月以降は急激に低下しています。2019/20においてはCOVID-19のパンデミックもありました。
日本にとって夏場である7月に冬を迎える南半球ではインフルエンザの流行の情報はほとんどありませんでした。COVID-19の対応のためにインフルエンザに対するルーチンの検査ができなかったことと、市民の衛生活動の高まりにより感染が防げたということ、また同時期には違う種類のウイルスが2種類以上流行することはないということが重なったためにインフルエンザの流行がなかった可能性もあります。日本においては今冬はインフルエンザの流行に備えて発熱患者さんの対応が医療機関において問題となっています。大阪府においては医療機関に対して発熱患者さんをすべて対応する医療機関、かかりつけ患者さんのみに対応する医療機関、電話対応だけする医療機関に分けて対応することにしています。
今年の冬にはインフルエンザの大流行はないと考えていますが子どもを中心に小さな流行はあり、その際の発熱の対応は隔離を含めて対応が必要となり医療機関としては負担が大きいもののきっちりとした対応が必要であると考えています。

山田医院 医師 山田良宏