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山田医院だより

第21巻第2号(第241号)

冬の中毒について

中毒の原因としては薬、化学物質、食べ物などいろいろとありますが季節性が出やすいものとしては食中毒があります。

ブドウ球菌、サルモネラ菌、大腸菌などの細菌性食中毒は夏場に多く発生、逆にウイルス性食中毒の代表であるノロウイルス感染症は冬場に圧倒的に多く発生しています。ノロウイルスによる食中毒は食中毒発生数としてはアニサキス、キャンピロバクターに次いで3番目ですが患者さんの数としては全体の約半数を占めます。つまりノロウイルスは集団発生しやすくそのために社会問題にもなりやすくなっています。

ノロウイルスによる食中毒は1年を通して発生しますが低温、乾燥になる冬から春にかけて増加します。生牡蠣は外せないという方も多いと思いますが貝の中でも生で食べる機会が多いのは牡蠣であり、生牡蠣が原因の食中毒はほとんどがノロウイルスによるものです。生でなくても不十分な加熱であったりあるいは調理した手を十分に洗わず調理した際に他の食材に触れて感染が広がることもあります。

ノロウイルスは牡蠣以外にも2枚貝であるアサリ、シジミ、ハマグリからも検出され、感染率は極めて強く数個の感染でも発症します。ただし10年間において死亡例はないようです。通常は1-2日の潜伏期間のあとで激しい嘔吐、次いで下痢で始まりインフルエンザのように強い倦怠感がありまた高熱を認めることもありますが通常は2-3日で軽快します。検査キットはありますが保険適応は3歳未満あるいは65歳以上の方のみでその他の方については自費での検査となります。特殊な治療はなくいわゆる対症療法(脱水に対する補正)での対応となります。下痢止めは禁忌です。なお、予防が大切であり加熱は85-90℃で90秒以上行い手洗い等は十分にする必要があります。なお消毒はエタノールではなく次亜塩素酸が必要です。

冬の食中毒と言えば頻度は少ないもののフグ中毒が有名です。致死率は60%とも言われており緊急性の高い疾患になります。原因物質はテトドロトキシンで通常の過熱では分解されず神経伝達を障害することで神経麻痺を起します。一般には産卵期の早春に最も毒力が増し、臓器では卵巣、肝臓が最も毒性が高くなります。臨床経過は非常に早く食後2時間程度で口唇、手指末梢のしびれが始まり次第に全身に広がります。呼吸筋麻痺にまで至ると呼吸停止に陥り死亡となります。治療としては特殊な解毒剤等はなく、ひたすら呼吸管理が大切で多くの場合には24時間以内に症状は消失するので人工呼吸をはじめ呼吸管理を行えば問題なく治ります。

少し食べ物からは離れますが一酸化炭素中毒(CO)中毒も冬場に多い中毒です。炭化物の不完全燃焼で起こり、COは無色、無味、無臭なので気が付きにくいのも特徴です。発生状況としては石油暖房器具の不完全燃焼、室内での炭火焼、雪に埋もれ排気口が埋まったままでエンジンをかけているなどがあります。CO濃度とCO暴露時間が重症度に関連しています。肺から吸収されたCOは血中のHbと結合します。このHbは通常酸素と結合をしますが一度COと結合すると酸素の250倍の結合力のために離れず、酸素の運搬ができずにいわゆる酸素欠乏状態となります。

症状としてはまず、頭部痛とめまいですがその他にも倦怠感、嘔気、嘔吐、見当識障害などが出現されに進行すると呼吸不全、けいれん、意識障害などが起こります。その他、心毒性として心筋梗塞などが生じる可能性があります。このCO中毒は一般の酸素飽和度モニターでは検知できず血中のCO-Hbの測定など一般にはやや困難です。治療としては純酸素をできるだけ早期に投与してCOを洗い出すことで、必要に応じては人工呼吸を併用します。以前は降圧酸素療法などの治療法も推奨されていましたが最近では有効性については賛否両論あります。なお、CO中毒においては意識が回復した後に再度CO中毒が出現する間欠型CO中毒というものがあり初回より3-240日後に発症するものがあり注意が必要です。

中毒の診察においては医療者として注意すべき点は疑わなければ始まらないということで症状が漠然としており原因が分からないことも多く逆に症状が漠然としているときには疑うことも必要となります。今回は冬の中毒ということでノロウイルス、フグ毒、一酸化炭素(CO)中毒について日本医事新報令和2年2月1日号から抜粋しました。

山田医院 医師 山田良宏

冬季の入浴

突然寒くなったと思ったら、今度は暖かくなったり気温の変化が激しく、体調管理が大変になってきました。寒い日はゆっくり湯船に浸かって温まりたいですよね。ですが、寒い季節の入浴には「ヒートショック(血圧の急変動)」や「浴室内熱中症」といった死を招く思わぬ危険がたくさん潜んでいることを皆さんご存知ですか?

毎日入るおふろをより安全・快適にするために、そして大切な家族や自分自身を守るためにどのようなことが原因で入浴関連事故が起きてしまうのかをまず知っておくことが大切です。入浴関連事故で多いのは「ヒートショック」です。「ヒートショック」とは、暖かい部屋から寒い部屋への移動などによる急激な温度変化によって、血圧が上下に大きく変動することをきっかけにして、体に負担がかかる現象のことをいいます。

そして、もう一つ特に注意していただきたいのは「浴室内熱中症」。
これは、長湯や高温での入浴により体があたたまることで血管が広がり、血圧が低下して起きる体調不良です。原因としては、実はのぼせなどが関係しています。ですが実際、気づかないうちに倒れてしまい、倒れているのが発見された時には溺死となっていることが多く、あまり世間では知られていません。これらを防ぐために、まず入浴前には十分な水分補給、脱衣所や浴室との温度差をなくす、入浴前に家族に声をかけておく。できれば気温が下がる前の夕方、また血圧は食事によって影響を受けるため、食事前の入浴がオススメです。入浴時は、入る前にかけ湯をし、湯船の温度は41度くらい。汗ばむ程度になればお風呂からあがりましょう。

入浴後もしっかりと水分補給をしてください。入浴中にかいた汗などで失われたミネラル分を補給するため、水やスポーツドリンクを飲むことをオススメします。
毎日のおふろは体を清潔に保つだけでなく、健康維持やリラックス効果も期待できます。入浴方法を少し気にかけていただくだけで入浴関連事故を防ぐことができます。寒い冬だからこそ心も体もホカホカになるお風呂に入って、楽しく快適にお過ごしください。

山田医院 医療事務 高橋日和

離乳食について

私の娘はいつの間にか21歳。一人っ子の娘の子育ては長かったような…短かったような…。(もちろん、今でもいろいろありますが・・・。)

昔の子育てと今の子育てはいろいろ変わってきていますね。例えば離乳食。今はお白湯を飲ませる必要はなく、断乳といわず、卒乳というそうですよ。娘はよく食べて断乳もあっさりできてちょっと寂しかったなあ、でもおしゃぶりをやめるときは大変だったなあとなどと懐かしく思い出しながら書いています。

数年前、離乳食はゆっくり進める方がいいという時もありましたが、今は5~6ヶ月頃からどんどん進めていく方向になっています。赤ちゃんはお母さんのおなかにいる間に、体に必要な鉄を十分蓄えてから誕生します。しかし、母乳育児の場合、この蓄えは次第に減っていき、生後6か月の時点でヘモグロビン濃度が低く、鉄欠乏を生じやすいとの報告があります。またビタミンD欠乏の指摘もあることから母乳育児の場合は適切な時期に離乳を開始し、鉄やビタミンDの供給源となる食品を積極的に取り入れることが重要といわれています。

鉄は脳(学習能力・言葉の発達)にも筋肉(運動機能の発達)にも神経にも欠かせない大切なものといわれています。鉄を含む食材には吸収率の良いヘム鉄(レバーや肉・魚、特にカツオ・マグロ・イワシ)と吸収率の低い非ヘム鉄(小松菜・ほうれん草・豆類・豆腐・卵黄など)あります。非ヘム鉄の食材はビタミンC(果物・野菜)が含まれる食材を一緒に摂取すると吸収率が上がります。でも、食物アレルギーが心配でなかなか始められない、という方もいるかもしれません。しかし、離乳食の開始や特定の食物の摂取開始を遅らせても、食物アレルギーの予防効果があるという化学根拠はないので、同じように生後5~6ヶ月頃から始めるようにしましょう。

不安な時は、赤ちゃんの体調のいい時に、ごく少量から、病院に受診できる時間帯に、始めてください。もし、口の周りが赤くなった、ぶつぶつが出たなどアレルギーを疑うような症状が出た場合(その時の写真を撮っておくと受診時に役に立ちます)は、自己判断せずに必ず受診し医師の診断の基に進めてください。

そして、離乳食を始めたからといって、母乳をやめる必要はありません。赤ちゃんとの大切なスキンシップの時間、赤ちゃんを見て、話しかけてあげてくださいね。

山田医院 看護師 三栖佳子

男性と女性の脳の違い

私は9年前から絵を描いています。医院の待合室にも置かしてもらっています。絵を描く時の、遠近法や消失点にはいつも苦慮しております。中央公会堂のような複雑な建物を描くのは特に苦手です。男性の方々は、いとも簡単に描き上げています。男女間でどうしてこのような差があるのか不思議に思っていました。そんな中、図書館で見た本の中に「健康脳、男女の脳の違いついて」書かれた書物がありました。その一部を紹介します。

男性と女性の脳を比べてみると形や機能に違いがある事が分かりました。脳の前頭葉や側頭葉という領域にある言語野というところの体積が一般に女性の方が大きく、言語能力は男性より女性の方が高いことが分かっています。

おしゃべりやコミュニケーションは女性の能力が高いのはわかる気がします。

一方、男性は空間認知、論理的思考力をつかさどる頭頂葉の体積が大きく、この部分の能力が高いと言われています。女性より地図を読むのが得意で、すぐに解決策を述べたくなったりします。

ただ話を聞いてほしいと言う女性に対して「面倒くさい」と感じたりするものです。女性の脳は加齢にも強いとも言われています。それは女性が持っている女性ホルモンのエストロゲンは「女性の体を守るホルモン」で閉経までの長い期間分泌され続けています。そして女性としての体を作るとともに骨・血管を丈夫にし、コレステロールのバランスを取るなど多くの働きをしています。このエストロゲンが脳を守る事にも関係しているそうです。このことが女性の脳は男性より加齢に強いと考えられています。

男性の脳は20歳から一定のスピードで体積が減っていきます。女性は50歳を過ぎたころから男性と同じようなスピードで体積が減少し始めるそうです。つまり、女性はエストロゲンが脳に対して保護的な働きをしているようです。なぜ、このように脳に男女差ができてしまったのでしょうか?

それは、人類の長い歴史と深いかかわりがあると考えられています。何万年も前から男性は狩りに出かけていた時代が長かったのです。地形を考えながら獲物を追い込む、命がけの狩りによって空間認知力が発達したと考えられます。一方女性は、男性が狩りに出かけている間、子育てや家を守り隣人と助け合えるようにコミュニケーションを築くことが必要となり、社会性や言語能力が発達したと言われています。

男性であれば、心当たりのある方も多いとも思いますが、コミュニケーション能力や、相手の気持ちを理解する。「共感」の能力が女性に比べて低いのも脳の形や機能からみて、ある程度は仕方のない面もあるようです。お互いの違いを知ることで余裕をもって接することができるのではないでしょうか? 男女の脳の違いの一部について述べましたが、何かの参考になればと思います !・・・・・

山田医院 看護師 畑中幸子

新型コロナウィルス予防で大切なこと

中国・湖北省武漢市を中心に新型コロナウィルスによる肺炎が広がり世界に感染拡大が続いています。各所でマスクの売り切れが続いていますが、通常のマスクはコロナウィルス感染の危機からどれだけ防いでくれるのでしょうか?

薬局などでよく見かける通常のマスクはウィルス粒子を寄せ付けないように設計されているわけではありませんので、汚染物質が肺に入ることを防ぐことには適しているとは言えますが、相手がウィルスとなると話は別になるようです。

予防用にマスクを着用することは、混みあった場所、特に屋内や乗り物など換気が不十分な場所では感染予防策と考えられますが、屋外など混みあってない限りはマスクの着用による効果はあまり認められていません。洗っていない手で、目、鼻、口に触れないように心がける、そして頻繁にてを洗って消毒することが何よりも大切となります。

ウィルスによる感染症予防は、手洗い、うがい、食事(栄養)と睡眠が必須です。抵抗力をつけるには、十分なエネルギーが必要です。主食、主菜、副菜、汁物、果物、乳製品の基本の食事をしっかり摂取しましょう。栄養バランスが良いと、栄養素がウィルスをもわらない体にしてくれます。

あとうがい、手洗いには順番があることはご存じでしょうか?正しくは「手洗い」→「うがい」だそうです。手には目に見えない黴菌が沢山ついています。石鹸やハンドソープを手に取り、手首も含めてしっかり揉みこみましょう。洗い流す時間は15秒以上が目安です!ある研究では15秒手洗いを行うとウィルスの数が約99%減少したそうです。さっと洗い流すのではなく、丁寧に手洗いを行ってみましょう。

山田医院 医療事務 杉山恭子

医療的ケア児について

日本の赤ちゃんの死亡率は世界も最も低い値を示しています。この背景には診療技術の進歩と共に産科と新生児科から構成される周産期医療ネットワークシステムが全国展開されたことがあります。救命が難しかった超早産児なども救命できるようになった結果として退院後も人工呼吸器や胃ろうなどの高度な医療的ケアを自宅で必要とする子供が急増しています。

医療的ケアとは病院以外の場所で医療職の資格を持たない人が痰の吸引や経管栄養などの患者さんが生きていく上で必要な医療的援助をすることを指しています。医療的ケア児とは医療的ケアを日常的に必要とする子どものことで歩いて移動できる児から寝たきりの重症心身障害児まで含まれています。今まで救命できなかった新生児が救命されるようになりましたが、そのような児は新生児集中治療室(NICU)に入院をします。大部分は元気に退院をしますが、1年以上退院できないNICU長期入院児もふえてきたために行政と医療機関が一体となりこのような児を転出させる動きが加速して高度医療を続けながら在宅医療に移行する子どもが急増するようになりました。

介護保険が適応される高齢者の在宅医療ではケアマネージャーの存在が有りいろいろな施設がありますが、小児の在宅医療においてはケアマネージャーの活用ができずに保護者の負担が極めて高くなっています。在宅医療の対象となる子供は少人数で広域に分散、病態が成人とは全く異なる、高度医療的ケアを必要とする子どもが多い、NICUから直接自宅に退院することが多い、小児在宅医療においても病院医師が主治医のままであり地域の実情が見えにくい、在宅医療医師も敬遠する傾向があるなどの問題があります。

人工呼吸器管理をしたまま在宅医療に移行した児の介護者の半数以上が睡眠時間は5時間未満であるとの報告もあります。現在介護職員による医療的ケアの研修制度が有りヘルパーによる痰の吸引などの対応が可能になってきています。

また特別支援学校への看護師の配置などが急速に進められており看護師と教員が連携しながらの医療的ケアの実施が進んできています。福祉サービス改訂で要医療的ケア児への支援の拡充、新設などが進められていますがまだまだ十分な状態ではなく先ほど示したように介護者の負担はまだまだ大きなものがあり今後さらに改善されることが必要となっています。当院においても子どもの在宅医療を行っていますが、急変時にはどうしても自宅での対応が困難なことが多くすぐに病院への搬送という対応が多く安定時にいわゆる医療材料の提供を行う対応となってしまっていることが多く難しい事も問題点となっています。

山田医院 医師 山田良宏