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山田医院だより

第20巻第7号(第234号)

血液浄化療法について

日本では末期腎不全に対しての維持透析療法が導入されてから50年が経過しており今では透析患者さんが33万人を超えています。米国、中国では50万人を超えてインドでも15万人を超えていますが日本においては他国に比べると予後が圧倒的に良いことが分かっています。

これは計画的に透析を導入していること、シャントの技術が非常に優れていること、患者さんの自己負担額が月に最大1万円という医療保険制度の充実があること、その他環境衛生の良さ、教育の充実などが要因とされています。透析初期には延命を目指していた治療であった維持透析が今では患者さんのQOL(生活の質)が問われる治療法に進歩しており、透析の技術は世界に冠たるレベルに達しておりほぼ完成の域になっているようです。この透析の役目は腎臓の代替として尿毒素などの物質を蓄積しないように体外に出すことと身体の恒常性や電解質などの濃度を保つ事です。

一方腎臓の機能としてのホルモン産生機能(エリスロポエチンあるいはビタミンD活性化)に対しては薬が使われるようになっています。なお、腎代替療法としては体外循環を利用したいわゆる血液透析以外にも腹膜を利用する腹膜透析があります。これは生体膜である腹膜を利用する血液浄化法ですが1990年代に腹膜癒着の問題が起こりその影響もあり現在でも透析患者さんの2.7%程度しか行われておらず世界的にも非常に少ない国の1つとなっています。

腹膜癒着の原因となった酸性の強い透析液が中性化し、また高濃度であったブドウ糖も低濃度になり現在ではこの合併症は当初の1/3程度までになっていることから今後増える可能性もあります。腹膜透析は患者さんが自分自身で自宅でおこなる治療で心血管系への負担も少なくまた残存腎機能の維持に優れており、さらには食事制限が緩やかで通院回数が少ないことがメリットになっています。(通常の血液透析では一般には週に3回の通院で1回あたり約4時間の治療が必要です。)最近では地域包括ケアとして在宅で腹膜透析を行いながら地域で生活をするケアも考えられています。なお、腎代替療法としては血液透析、腹膜透析以外に腎移植があります。

この3つの治療法の組み合わせが大切となりますが日本においては腎臓移植は年間に1600-1700件程度でそのうち90%以上が生体腎移植となっています。現在、脳死移植においては本人だけではなく家族の意思でも臓器提供ができるようになりましたが、現実としては本人の意思がないと臓器提供が進まないようで、免許証あるいは保険証などで意思表示ができるような体制が出来てかなり良くなっていますが、このような意思決定はクリティカルな局面になってからでは難しいので平素から特に健診などを受ける健康な状況で確認ができる体制が必要かと考えられています。

この考え方については終末期の治療法を含めた生き方についてのアドバンスドケアプランニング(人生会議)と同様でまだまだ広がっていませんが今後は広げていく必要がある分野です。腎移植については優れた免疫抑制剤の開発で移植成績は飛躍的に伸びて5年生存率、生着率は90%以上となっています。その一方では免疫抑制剤の長期的な負荷により悪性腫瘍あるいは感染症になる事が有りまたもともと持っている動脈硬化の悪化による心血管系の疾患の発症もありフォローが大切となっています。

なお、移植については血液型が異なる場合でも腎移植は可能で現在腎移植の30%程度を占めるようですが予後、生着率には変化がないようです。また糖尿病などの疾患がある方についても移植手術は可能です。現在では成人においての献腎移植の待機期間は平均13年となっているようです。(子どもでは優先ポイントのために2~3年で移植できることもあるようですが)なお、豚などの動物からの腎移植(異種移植)については現実的な道が少し見えてきているようですがヒトのiPs細胞からつくる再生医療はまた道が見えていないのが現状です。なお、透析患者さんの終末期において透析を見合わせるかどうかについて検討する状態として日本透析学会から提言が公表されていますが、透析治療は透析を見合わせた段階から数日で死に至ることから基本的には医師だけではなく医療チームで対応する必要がありまた透析の見合わせの決定後にでも再開するかどうかを繰り返し確認することが大切です。

一般にはがん末期状態で死が迫っている状態であったり脳血管障害などの重篤な疾患で血圧の維持を含めた生命維持が困難な状態においては一時的に見合わせることもありますが、認知症の進行あるいは終末期ではないときには見合わせの対応が困難となっています。今回は日本医師会雑誌令和1年6月号から抜粋しました。

山田医院医師

食中毒を引き起こす細菌、ウイルスについて

腹痛や下痢、嘔吐が急に起きた時、その原因の一つに食中毒が考えられます。今回は、食中毒を引き起こす細菌、ウイルスの種類、また予防法について調べました。

・腸管出血性大腸(O-157など)→牛肉に付着。潜伏期間3~5日。発熱、腹痛、下痢血便。重症化することが多い。
・カンピロバクター→主に鶏肉、卵、レバ刺しなどに付着。潜伏期間2~5日。下痢、腹痛、発熱、嘔吐、頭痛、倦怠感。
・サルモネラ菌→主に鶏肉、卵、ホルモンに付着。潜伏期間8~48時間。悪心、嘔吐、腹痛、下痢。
・黄色ブドウ球菌→手のひらなどに常在菌として付着。おにぎり、おすしなどに移行。潜伏期間8~24時間。悪心、嘔吐、腹痛、下痢。
・腸管ビブリオ→魚介類に付着。潜伏期間12時間前後。激しい腹痛、下痢、血便、嘔吐。
・ノロウイスル→二枚貝。潜伏期間12~48時間。激しい嘔吐、悪心、軽度の発熱、下痢。
・ウエルシュ菌→土壌野菜(にんじん、ジャガイモなど)に付着していることがあり、この菌は100℃でも死滅せず40~50℃で増殖する。よくある場面ではカレーを繰り返し加熱、室内放置を繰り返した時に発生。この菌は空気を嫌うので、加熱するときによくかき混ぜると増殖しにくい。潜伏期間は8~24時間。症状は腹痛、下痢。

私たちが普段食べるお肉(牛、豚、鶏)は腸内に食中毒の原因となる菌が存在し、畜場でお肉にする過程で付着してしまう事があります。細菌は10℃以上、また多湿で繁殖しやすいので梅雨時に多く発生します。ノロウイルスなどのウイスルは、低温、乾燥でも長く生存するので冬場に多く発生します。これらの細菌、ウイルスに感染した食べ物を生で食べてしまうと、食中毒を引き起こします。また細菌ウイルスが原因で食中毒を起こした人の排泄物、嘔吐物から感染する事もあります。

食中毒予防の3原則
付けない:料理の前後、肉魚卵を扱う前後に手洗いする。まな板は生の肉魚と野菜を分ける。焼肉はトングで扱い、焼けたお肉は箸で取るようにする。
増やさない:細菌の多くは10℃以下で増殖がゆっくりとなり-15℃で停止するので買い物から帰宅したら早めに冷蔵、冷凍庫に入れる。また、冷蔵庫を過信せず早めに食べることも大切。
食べ切れなった時は冷蔵庫に保管し、冷蔵庫内では生肉や魚の汁が付かないようにする。
やっつける(加熱処理):ほとんどの細菌ウイルスは加熱により死滅する。中心部まで十分に加熱(75℃で1分以上を目安)する。
食中毒の症状は原因となった病原体によって異なります。感染しても健康な成人であれは軽くすむ事もありますが、重症化すると命にかかわることもあります。小児、高齢者、妊婦は重症化する可能性があるので注意が必要です。

山田医院 看護師 盛田里穂

日焼けについて

夏といえば、海にプールにBBQなど楽しいレジャーが盛りだくさん。日にあたる機会も増えるかと思います。
紫外線は浴びることで骨を形成するビタミンDを生成したり、布団や洗濯物の殺菌効果、カビの予防効果などがある反面、皮膚がんや白内障、シミやシワ、皮膚の老化など、人体に様々な影響を及ぼすことが指摘されています。

外出時の紫外線対策5ヶ条
1.しっかりした布地の着る服は、織り目、編み目がしっかりしている生地を選んでください。木綿やポリエステル、その混紡が適しています。七部袖や襟付きのシャツなど、体を覆う部分が多いほど良く、淡い色より濃い目の色のほうが、より紫外線をシャットアウトする効果があります。

2.帽子をかぶる麦わら帽子のような、幅の広いつばのある帽子ほど効果があります。

3.日傘を使う日差しが強いとき、日陰のない場所では積極的に利用してください。白より黒っぽい色のほうが、より紫外線を防いでくれます。

4.日焼け止めクリームを使うSPF(紫外線防御指数)やPA(UVA防御指数)をしっかり確かめて、日常用やアウトドア用など、戸外活動時間に合わせて使い分けましょう。

5.日陰を利用するできるだけ直射日光を浴びないように。うつむいて歩くだけでも、顔への紫外線の影響は違ってきます。紫外線は今後、強くなっていくことが懸念されています。オゾンホールのあるオーストラリアでは、子供にも日焼け止めクリームやサングラス、帽子の着用を徹底しています。お子様には外で遊ばせることも大切ですが、直射日光をしっかり避けることも重要です。ぜひ、夏にはお子様にも日焼け止めクリームを塗ってあげる習慣をつけてください。

山田医院 医療事務 高橋日和

夏の日差しにスキンケアと日焼け対策をしよう!

梅雨は蒸し暑い日が続き、不快感に悩まさる日々が多い季節です。そんな日々もあっという間に終わりを迎え夏本番になります。夏に気になるのは、強い日差しとヒリヒリと痛い日焼けですね。外に出ればすぐに日焼けをしてしまい、肌の弱い人は赤くなって痛みが出てしまうと肌は軽い火傷の状態となってしまいます。また肌が焼けますと、表面の水分が蒸発して乾燥してしまいます。

潤いのない肌になり、様々な肌トラブルが起こるため、すぐにスキンケアと日焼け対策を行わなければなりません。

☆日焼け後のスキンケアは優しさが大事
日焼けで敏感になった肌を強くゴシゴシと擦ってしまうとダメージを与えます。皮膚を傷つけるばかりか、色素沈着やくすみ、またシワの原因にもなります。赤くなるほどの日焼けをしてしまった後は、スクラブのような刺激の強い洗顔料は避け、洗顔料をしっかりと泡立て、泡洗顔を行いましょう。

☆日焼け後のスキンケアのポイント
重度の日焼けをした場合は、冷やすことが肝心です。肌が赤くなる程であれば火傷の近い状態のため、肌の温度を早急に下げなければなりません。冷水のシャワーやタオルを巻いた保冷剤等で火照った肌を冷やします。肌が十分に冷えた後は、化粧水等たっぷり使用し、水分を補充しましょう。

日焼け後のケアを怠ると、肌のバリアが破壊され、紫外線が肌のより深くに届いてしまいます。日焼けを繰り返すとシミ、そばかすができてしまい、肌の老化を早めてしまいます。
健康で綺麗な美白肌を保つためにも、日ごろからのスキンケアを怠らず、夏の季節にはしっかりと、日焼け対策を行いましょう。

山田医院 医療事務 杉山恭子

夏の元気は血のめぐりから!

今年は暑いようで朝晩は涼しい日もあり、不安定な気候が続いています。夏は食欲が落ちやすく、疲れも出やすい季節です。これからまだまだ続く暑い季節を元気に乗りきるために、全身をめぐる血液の大切さを考えてみました。夏は汗をかいて体内の水分が減る。暑くて動けない。冷房による冷えなどで血液の粘調度が高くなり、血管を刺激する筋肉の働きが弱まる事で血液の流れが悪くなります。

血液のめぐりがスムーズになると食べ物の栄養素は血液に乗って全身に運ばれて、栄養素をしっかり吸収されます。そうなることで、身体の各組織・細胞は、血液から受け取った栄養素で活動することで効率よく代謝・燃焼が行われ不要なものを排出しやすくなります。
全身をめぐる血液の役割には必要なものを届ける、
栄養素は小腸で吸収された後、血液に乗って全身をめぐり、必要としている組織に届ける。酸素は代謝に欠かせない酸素を赤血球が全身へ運ぶ。ホルモン代謝を調節している様々なホルモンを必要な組織まで運びます。

不要なものを回収する
代謝によって各組織で発生した不要なものを回収し、無毒化したり排出したりする器官(肝臓、腎臓,肺など)へ送ります。

病気や怪我から守る。
免疫細胞が含まれており、細胞やウイルスと闘う。傷ついた血管を修復し、血液が流出しない様に働く。

体温を維持する
代謝で発生した熱で温められた血液を全身に循環し、ほぼ36℃の体温に保っています。

以上のような役割がうまく果たせないと全身の組織や細胞が劣化して、様々な悪影響が出てきます。

血液のめぐりをスムーズにする食生活
プルーンなどの果物類、野菜類、海草類は余分な塩分の排出を促し、血液や細胞の水分バランスを整える。
アボカド、ゴマ、ウナギ,サケ、大豆、たらこ、かつおなどの魚類は血管を拡張して血行を促す。ビタミンE抗酸化作用が高く、ナイアシンは栄養素の代謝にも欠かせない大豆製品、オリーブ油、大豆油、亜麻仁油などの不飽和脂肪酸は血中のコレステロールの正常化や中性脂肪の低下に働き、血液を流れやすい状態にします。

レバー、赤身の肉、魚、大豆などは赤血球のヘモグロビンの成分で、酸素を全身に運びます。
取り過ぎに注意するべきものには動物性脂肪、アルコール、冷たい飲み物や食べ物、糖分などがあります。
血液のめぐりを良くするには水分補給も必要です。血液の半分以上は血漿という液体で、そのほとんどが水分です。スムーズなめぐりの為には、しっかり水分補給を。

水分をきちんととっていれば、尿として余分なものは排出されます。夏は汗と一緒にミネラルも排出されてしまいますので、多量の汗をかいた時はナトリウムやカリウムなどの摂取も意識しましょう

山田医院 看護師 畑中幸子

アレルギーの免疫療法について

アレルギーの治療は現在は抗アレルギー剤の服用が一般的になっていますが根本的な治療としては免疫療法が見直されてきました。

アレルギーが関与している疾患としては気管支喘息、アレルギー性鼻炎、食物アレルギーなどがあります。

気管支喘息は診断が難しくて厳密には6歳になるまでは気管支喘息の確定診断はできなくガイドラインにおいても6歳以上を気管支喘息、5歳以下は乳幼児喘息という診断名が付きます。

子供の喘息ではダニ、ハウスダスト、猫の毛などが原因となることが多くなっています。アレルギー性鼻炎については子どもでは特有のしぐさ(顔をしかめる、鼻の下を伸ばす、鼻をこするために外鼻孔に皮膚炎が起こるなど)があります。

一度発症したアレルギー性鼻炎は寛解することはないと言われています。食物アレルギーは乳幼児期には5-10%あると言われています。鶏卵、牛乳、小麦、大豆などは自然寛解率が高く、その他では寛解率は低いと言われていますがピーナツでは2割くらいは寛解することも分かってきました。血液検査の特異的IgE抗体は検査が陰性であった場合にはアレルギーを否定することはできますが陽性であった場合でも食物アレルギーがあるかは確定できません。的確な診断には経口負荷試験が必要になります。

今話題の免疫療法としては注射を使用する皮下免疫療法、薬で行う舌下免疫療法、まだ病院レベルですが経口免疫療法、実験レベルの経皮免疫療法などがあります。

皮下免疫療法は以前から行われていましたが日本ではダニ、スギの2種類が有ります。アレルギー性鼻炎と気管支喘息に適応が有ります。薬を導入して維持量に達したら月に1回の割合で3年間継続加療が必要です。自宅では何もせずに1ヶ月に1回のみ受診すればよいので継続しやすい治療ではあります。

舌下免疫療法はスギ、ダニに対して通常は5歳以上で行います。舌の下に薬を数分間維持、激しい運動は2時以上避ける必要があり、継続期間は3年以上です。現在はスギ、ダニの2種類ですが今後は種類も増加すると思われます。現在はまだ当院においては扱っていませんがネット検索等で扱っている医療機関が分かります。興味がある方は検索をしてはどうでしょうか。今回はチャイルドヘルス令和1年7月号から抜粋しました。

山田医院 医師 山田良宏