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山田医院だより

第18巻第12号(第215号)

今冬のインフルエンザについて

ワクチン不足の中でついにインフルエンザ流行期に突入しました。A型についてはAH1pdm09とA(H3)が毎年交互に流行するために今シーズンはAH1pdm09が流行すると予測されていましたが半年前に冬が来るオーストラリアではA(H3)が流行しており、またインフルエンザ流行に相関がある中国においては今シーズンはA(H3)が流行していることから今年の冬はA(H3)の流行が疑われます。

ただし、12月初旬までにおいて感染研の分析状況ではAH1pdm09が流行の中心となっています。A型インフルエンザのAH1pdm09かA(H3)にこだわる理由はワクチンにあります。周知のワクチン不足は使用する株の急きょ変更のために生じました。6-7年ほど前からA(H3)においては工程で抗原変異が生じる問題がありました。近年、この抗原変異を生じない埼玉株が発見されており、有効性も確認されたことから今年のワクチン株に埼玉株を選定していましたがこの埼玉株の製造効率が非常に悪くワクチン供給量が7割程度の落ち込みと予測され急きょ昨年と同じ香港株に選定しなおした経緯があります。

A(H3)の抗原変異の問題は発育鶏卵で培養する方法を細胞で培養する方法にすれば解決すると考えられていますが細胞培養では製造効率が落ちる問題がありまだ実用化には時間がかかるようです。なお、今回の問題はワクチン供給の遅れだけではなく実はこの香港株の効果が低いことが問題となっています。

昨シーズンのA(H3)に対するワクチンの有効率は30%程度でありもし今シーズンにA(H3)が流行すると重症化が危惧されています。一般にA(H3)の感染で重症化するのは高齢者が多く、AH1pdm09では小児、若年者が多くなります。肺炎については高齢であればあるほど起こしやすく、肺炎予防としてはインフルエンザ発症2日以内の抗インフルエンザ薬の投与に加えて肺炎球菌対策(肺炎球菌ワクチンの接種)が大切です。なお、集団発生予防の意味で老人施設においては同室内でのインフルエンザ発症に際しては抗インフルエンザ薬の予防内服も勧められています。

予防内服は基礎疾患を有する高リスク者に必要であり健康な低リスク者には不要であると考えられています。もう1つの重症化の状態として脳症がありますが、老人においても報告があります。特にA(H3)においてはリスクが高く、小児期において熱性けいれんを起こした人はリスクになります。現在抗インフルエンザ薬は内服薬、吸入薬、注射剤があり、すべて薬の作用機序は同じであり年齢、状況により使い分けが行われていますが、来年夏ころには別の機序の薬が発売予定でまたタミフルは国内特許が切れることからジェネリックの市販の可能性もあり来シーズンのインフルエンザ治療は大きく変わる可能性もあります。

気になる話題として鳥インフルエンザA(H7N9)のヒト感染例の増加があります。昨シーズンの感染者は前季に比べると約7倍となっており致死率も40%程度となっています。これはウイルス自体の性状変化があり感染者が増加したのではなく、ウイルスの不顕性感染が家禽類に多く広がり、濃厚接触した人に感染したと考えられています。

ヒト-ヒト間で容易に感染する能力はまだないものの限定的にはヒト-ヒト感染の危険性があることから中国などへ渡航する際には生鳥市場への訪問や病気の鳥との接触は控えるなどの注意勧告が出ています。インフルエンザはくしゃみで80cm、咳で40cm程度飛びます。その後も空気の流れに乗って漂うウイルスは徐々に失活するもののある程度の量を吸い込むと伝播します。落下したウイルスは短時間で失活するために家庭内でインフルエンザが発生した場合には気流の流れの下流に感染者を配置することも大切です。

山田医院山田良宏

高級生食パンを見て思い立った今回のテーマ

昨夜主人が某有名な高級生食パンを1本買って帰宅。

近くに住む孫に半分持っていってくれ、、と。でも、「チェッ折角買ってきたのに。」とぶつぶつ。ん?私の反応が悪かった?(笑)と思って「どないしたん?」って聞くと、食パンの袋の中に説明書が入っており「ハチミツが入ってるから1歳までの子供に食べさせたらあかんらしい」と、、、。大丈夫ですよ~~うちの孫1歳超えてますから~~(笑)ってことで、今回はなぜ1歳までの乳児にハチミツがだめなのか・・・。
だってはちみつって、くまのぷーさんが持ってて、どこから見てもお子様の食べ物ですよね??ところが、今年生後6ヶ月の赤ちゃんがハチミツを離乳食に混ぜて食べさせたことが原因で痛ましいことに亡くなりました。親御さんも可愛い可愛いわが子に栄養を、と思い食べさせた蜂蜜でこんな事になるとは・・。考えただけでも胸が痛みます。自分が子育て中も、ハチミツは1歳までダメ、と知ってましたが、知らずにいた友人もいました。

なぜハチミツにはボツリヌス菌が??ボツリヌスと言えば、筋肉を麻痺させて表情筋を殺して眉間のしわをなくす美容整形でおなじみですよね??

私もしたいな~~と常々思っていました(私、2歳頃の写真でも眉間にしわ寄せてにらみつけてますトホホホホ)話は戻り、、

ボツリヌス菌とは熱に強い「芽胞の状態」で、土壌や海、川の泥など自然界に存在しています。1歳未満の子供が発生する乳児ボツリヌス症は菌が乳児の腸内で増殖して引き起こすもので主にハチミツが原因です。発症すると便秘が続いたり、筋力が低下して泣き声が小さくなったりと言った症状が出て重症の場合は呼吸困難などに陥ります。120度で4分以上加熱したら死滅するそうですが家庭で煮沸する程度では難しいので1歳未満のハチミツ禁止を呼びかけてます。母子手帳への記載や指導はされているようですが、一番はハチミツに小さな文字で「1歳未満の乳児に食べさせないように」と書くのではなく、そんな表示見ない人も沢山いると思うので「混ぜるなキケン!!!」のように「食べさせるな1歳未満!!!」と赤文字で大きく表示するべきだと思います。

皆様ご存知でしょうがくれぐれも1歳未満のお子さんには注意してくださいね。さてさて、今年は山田医院でのインフルエンザの患者様の出だしは遅いようです。

ワクチンが足りなかったので、ゆっくり阿倍野には上陸してくれるのかな?
では皆様、良いお年を、、&、、ハッピーニューイヤー!!!

山田医院看護師冨嶋友子

セルフメディケーション税制について

従来の医療費控除では、年間の医療費の自己負担額が10万円を超えた場合、超えた額が所得から控除されて税金が還付減額されるため、比較的健康で病院で診てもらう機会が少なく、この制度を利用できるほど医療費を払っていないという方も多いかと思います。そのような場合でも、ちょっとした身体の不調などでOTC医薬品をよく利用する方であれば、一定の条件を満たせば医療できる控除制度、「セルフメディケーション税制」について紹介したいと思います。

このセルフメディケーション税制を利用するには3つの条件があります。

まず「①所得税、住民税を納めてること」。

そして「②1年間(1~12月)に健康の維持増進および疾病の予防への取り組みとして一定の取り組みを行っていること」。

この所得控除を受けるための「一定の取り組み」の証明方法は以下ものがあります。

・インフルエンザの予防接種を受けた→領収書原本等を提出
・高齢者の肺炎球菌感染症の定期接種を受けた→領収書原本等を提出
・市町村のがん検診を受診した→領収書、または結果通知表を提出
・会社の健康診断を受診した→結果通知書を提出(「定期健康診断」の記載必要)
・特健診査を受診した→領収書、または結果通知表を提出(「特定健康診査」の記載必要)

最後に「③1月から12月までの1年間に、対象となるOTC医薬品を購入した合計額が12,000円を超えている」こと。

「OTC薬品」とは、医師の処方箋なしに店頭で買える医薬品のうち、医療用医薬品から転用された成分を含むOTC医薬品のことで、1500品目以上が対象となっています。対象には「セルフメディケーション税控除対象」のマークがついており、もしついていないものでもお店のPOPに書かれていたり、レシートに対象である旨が記載されています。

例えば、「ロキソニンS」「ロキソニンSテープ」、「新ルルゴールドDX」「ガスター10」「アレジオン10」なども対象になります。

医療費控除と同じく、家族一人ひとりの購入費用が別々に対象となるのではなく、申告する人と扶養している家族、それぞれの購入費用を足すことが出来ます。今年の確定申告には間に合わなかったという方も、年始からは風邪薬や塗り薬、湿布などを買ったら家族分のレシートをしっかり保存して、節税対策に利用してみてはいかがでしょうか。

山田医院医療事務中町麻里

乳幼児突然死症候群(SIDS)とは

乳幼児突然死症候群(SIDS:SuddenInfantDeathSyndrome)とは、それまでは元気でミルクもよく飲みすくすく育っていた赤ちゃんが事故や窒息ではなく眠っている間に突然死亡してしまう病気です。

日本での発症頻度は4000人に1人と推定され生後2か月から6か月に多いとされています。(1歳を超えた子供には稀です)日本では乳児死亡の原因の第3位で欧米では第1位です。SIDSの原因を突き止め予防法を確立するために多くの研究者が努力していますがはっきりとした原因はまだつかめていません。

今のところ呼吸をつかさどる脳の機能の異常と関係があるという説が有力です。また育児環境の中にSIDSの発生率を高める因子があることもも明らかになってきました。そのためそれらについてキャンペーンを行った日本や欧米諸国ではSIDSの発症が減少してきています。

SIDSを減らすためのキャンペーンのポイントは次の4項目です。
仰向け寝で育てよう。うつぶせ寝はミルクを吐きにくいなどの利点はありますが、研究者の調査により仰向け寝よりSIDSの発生率が高いということがわかっています。うつぶせ寝だと睡眠中の覚醒反応(目覚める反応)が遅れることが最近の研究で示されています。医学上の理由でうつぶせ寝を勧められている場合以外は仰向けに寝かせましょう。

もしうつぶせ寝にするならばより慎重に赤ちゃんの様子を見てあげるようにして下さい。寝返りが打てるくらいに成長すればむしろSIDSは起こりにくくなると考えられています。
妊娠中や赤ちゃんの周囲での喫煙を避ける。タバコはSIDSの大きな危険因子です。妊娠中の喫煙はおなかの赤ちゃんの体重が増えにくくなりますし呼吸中枢にも明らかに良くない影響を及ぼします。妊婦自身の喫煙はもちろんのこと妊婦のそばでの喫煙はやめましょう。

できるだけ母乳で育てよう。母乳育児が赤ちゃんにとって最適であることはよく知られています。人工乳がSIDS
を起こすわけではありませんができるだけ母乳育児にトライしましょう。なるべく赤ちゃんを一人にしないで下さい。よく眠っているからと言って長時間赤ちゃんを一人にしないように
しましょう。

赤ちゃんを一人にして外出するのはやめましょう。なるべく赤ちゃんと同じ部屋で寝るようにしましょう。

この4項目以外に孫の産まれたクリニックでは寝かせるときには暖めすぎないようにということもアドバスされていました。こうした項目を守ったからと言って100%SIDSを防げるわけではありませんが可愛いわが子や孫がすくすく育つように参考にしてもらえればと思います。

山田医院看護師中島早苗

暖房器具を正しく使いましょう!

寒くなったこの時期、ストーブやこたつ、ホットカーペット、カイロ、湯たんぽなどさまざまな暖房器具やグッズが大活躍ですね!!

ところが適切でない使い方をすると思わぬ健康トラブルを招くことがあります。毎日使うものだけに注意が必要です。湯たんぽやカイロ、こたつ、ホットカーペットなどは体温より少し高めの心地よい暖かさですが、その熱に長時間触れ続けることによってやけどを起こすことがあります。これを低温やけど言います。最初は皮膚が赤くなったり、少しヒリヒリした感じがするだけなので軽視しがちですが、極端に熱源の接触時間が長いために、深部組織に損傷を負っていることが多く皮下組織が壊死して重篤になることもあります。特に加齢により感覚が鈍くなっている高齢者や、病気の影響で神経が障害され知覚が鈍くなっている人は、低温やけどになりやすいので注意しましょう。

予防としては、就寝時におこる低温やけどでは湯たんぽによるものが圧倒的に多いので、就寝前に布団に入れ布団を温める目的で使用するようにし、就寝時は布団から出すように心がけましょう。体の同一箇所を暖房器具に長時間触れさせないようにしましょう。暖房器具を使用する人の状態によっては周囲の人の配慮が必要です。

この時期、一酸化炭素中毒の事故も多くなります。灯油やガスを使ったストーブやファンヒーター、湯沸かし器などを換気の悪い部屋で使うと一酸化炭素が発生することがあります。それを吸うことにより体内の酸素が不足し、酸素が全身に行きわたらなくなり最悪の場合は死に至ることもあります。ストーブやファンヒーターなどを使う時はこまめに換気しましょう。

暖房器具を使っていると空気も乾燥します。皮膚から水分がどんどん蒸発していき、痒みが生じたり、赤みのある湿疹ができたりします。また口腔の粘膜が乾燥するとウイルスを防御しにくくなり活発化します。部屋の湿度がどのくらいか、肌感覚で測るのは難しいので、できれば湿度計を用意し、チェックしましょう。湿度40%以下は空気が乾燥しています。加湿器を利用したり、濡れタオルや洗濯物を室内に干したりして、湿度が50%前後になるようにしましょう。

山田医院医療事務平賀怜奈

災害と子どもの心の問題について

災害発生時の衝撃は心身に強烈なストレス反応を引き起こしますがこの時の症状が数時間から2,3日で消失する場合には正常の反応と考えられます。

症状が激しく数日に及ぶ場合には急性ストレス障害と考えられ心的外傷後ストレス症候群(PTSD)と言われる精神障害の発症へ移行する可能性が高くなります。心の問題は災害からの時間経過により3つのステージに分けることができます。

災害発生から2か月程度の期間は急性期とされており、緊急避難時の極度のストレス状態による急性ストレス症状が出現します。緊張、不安、睡眠障害に加えて発汗、心悸亢進、脱毛などの症状があり、子どもの多くは赤ちゃん返りをします。なお「地震ごっこ」などの遊びを見受けますがこれは子どもが自分の心の動揺や驚きに対処しようとしての行動です。

その他、解離症状と言われボーとしたり、反応が失われる状態を示すこともあります。

2か月から1年くらいの時期は災害中期と言われますがこの時期は復興、再建あるいは学校の再開などもあり急性期と違った負担も加わり、心の健康を崩すことが多くなります。何らかの刺激でPTSDを引き起こしたりします。小さな子どもでは落着きにかけ、多動、ボーとした様子が目立ちます。災害後期になるとトラウマがより複雑な症状で出現します。発達が順調に進まない場合もあり、集中力の低下、衝撃の抑制低下など発達障害を疑わせる児童が増加します。この後期に期間には回避症状(活動低下、引きこもり、無気力など)や解離症状(ボーとする、反応が鈍い、ブツブツと独り言をいう)などの症状を出す子どもも見受けるようになります。

災害は大規模であるほど心に複雑な影響を与えます。被災地においてもいじめあるいはいじわるなどは見られていたようですがこれは災害に伴う心の障害に伴う現象の1つとしてとらえることもでき単に批判するのではなく対応をする必要があります。今回はチャイルドヘルス2017年12月号から抜粋しました。

山田医院医師山田良宏