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山田医院だより

第19巻第1号(第216号)

インフルエンザ合併症について

前回のインフルエンザの話題に続いて今回はインフルエンザの合併症について日本医事新報2017年12月号から抜粋しています。

インフルエンザは一般には高熱が4-5日持続、その間に咳嗽、鼻汁、頭部痛等が出現して次第に改善して治癒するのが一般的な経過ですがまれに合併症として肺炎、脳症、心筋炎等を起こすことがあります。インフルエンザ肺炎はインフルエンザに引き続き肺炎を発症する場合でインフルエンザそのものによる原発性インフルエンザ肺炎、インフルエンザと細菌の混合の肺炎である混合性肺炎、インフルエンザが改善した後に肺炎を併発する二次性細菌肺炎に分けることができます。

インフルエンザ肺炎はインフルエンザ罹患者の1-4%で認められ市中肺炎においては肺炎球菌、マイコプラズマについて3番目に多いとも言われています。AH1では原発性肺炎が、AH3,B型では混合肺炎の割合が高くなっています。診断としては一般の迅速診断キットを使用します陽性率は高くなく血液検査も必要となります。

インフルエンザ肺炎の治療はインフルエンザそのものに対する抗インフルエンザ薬、細菌に対する抗菌剤、原発性インフルエンザ肺炎に対するステロイド治療の3つになります。一般には発症後48時間を超えた場合には抗インフルエンザ薬の効果はないと考えられていますが肺炎に関しては重症例においては発症後48時間を超えても抗インフルエンザ薬を使用します。抗菌剤についてはインフルエンザ肺炎に対してはβラクタム剤とマクロライド系の組み合わせの優位性があると言われています。

冬季における肺炎ではインフルエンザ肺炎を考慮して対応することが必要となります。インフルエンザ脳症は1990年代後半のAH3流行時に小児死亡例が100例以上と報告され研究班ができ研究が進みました。インフルエンザ罹患後1-2日以内に主として5歳以下特に1-2歳の乳幼児において意識障害、けいれん、異常行動などの神経症状を発症して致命率は30%、後遺症は25%と予後きわめて不良、AH3がAH1,B型よりも起こしやすいとの報告がありましたが現在においてはこの傾向は弱くなっています。現在インフルエンザ脳症は6つほど分類されています。症状としては意識障害が中心ですが前駆症状として異常行動などがみられます。

具体例としては両親が分からない/自分の手を食べ物と間違えて噛む/アニメのキャラクターなどが見える/意味不明な言葉を発する/おびえる/歌いだすなどがありこれらが1時間以上続く場合にはインフルエンザ脳症の疑いが強くなります。

インフルエンザ脳症は全身においての急激かつ過剰な炎症性サイトカインによる病態とけいれん重責に伴う病態の2種類になりますが前者についてはγグロブリン大量療法、ステロイドパルス療法、抗インフルエンザ薬の3本柱に加えて脳低温療法などにより予後が大幅に改善しています。

一方後者においてはまだ治療効果は高くないのが現状のようです。なお、脳症は成人のおいても年間に50-100例ほどあり予後も小児に比べると悪くなっています。インフルエンザ心筋炎はインフルエンザ罹患後4-9日後に増悪する呼吸困難で発症して胸痛、動悸などをきたすことも多くなっています。心電図、超音波検査で診断されます。急性心筋炎の場合には急性期を乗り切れば正常な心機能への回復が見込まれるために専門的な医療が大切です。なおインフルエンザにより冠血管疾患(狭心症、心筋梗塞など)は増加すると言われています。冠動脈疾患のハイリスク群には特にインフルエンザ予防接種は大切です。

その他、頻度は少ないもののインフルエンザ筋炎があります。これはインフルエンザが治ってくる時期に立ち上がろうとしたり歩こうとしたりした際に強い下肢の痛みや倦怠感で発症、通常は数日で治癒するものの歩行障害を起こすこともあります。インフルエンザの予防は予防接種が第1です。放置しても一般には1週間ほどで治癒しますが時に今回述べたような合併症を含め重症になる例もあります。たかがインフルエンザですが、されどインフルエンザという気持ちでの対応が必要になります。

山田医院山田良宏

私はコーヒーが大好きです。毎日、何杯も飲んでしまいます。そんな時、横から子どもがちょっと飲ませて~。子どもにカフェインがたくさん含まれるコーヒーっていいの?そんな疑問が湧いてきたので、カフェインと子どもについて調べてみました。

カフェインは体に多くの影響を与えます。一概に悪い影響ばかりでなく、利尿作用や頭痛の緩和に役だったりもします。薬の成分としても使われていて、風邪薬なんかで無水カフェインという文字を目にしたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。ただ摂取のし過ぎは子どもにとっては良くない影響の方が大きいと考えたほうがいいかもしれません。挙げられる良くない影響として・・・

・夜眠れなくなる(特に午後からのカフェイン摂取)
カフェインの摂取は交感神経を刺激して一種の興奮状態を作り出します。大人にとっては頭をシャッキっとさせるくらいの作用でも子どもにはこの興奮作用が効きすぎてしまい、結果、夜の睡眠の妨げになることが考えられ

ます。夜の睡眠がしっかりとれないと、成長ホルモンの分泌が阻害される・翌日の生活に支障が出るなどの影響が考えられます。

・ミネラルを排出してしまう(特に食後のカフェイン摂取)カフェインには鉄分や亜鉛、カルシウムなどのミネラルを体から排出してしまう作用があります。そのため、特に食後にカフェインを摂取すると食事で摂ったミネラル分がなくなってしまうことに。特に成長期の子どもにとって栄養の排出は大きな損失です。

また、カフェインの摂取に慣れていない子どもはめまい・動悸・イライラ・不安・震えなどの不調がより強く出ることもあるようです。カフェインを含むものとしてコーヒーが代表されますが、紅茶や緑茶、エナジードリンクやコーラ、子どもが好みそうなココア・チョコレートなどにも含まれています。

そう考えてみるとココアやチョコなんて子どもが日ろから普通に口にしているなぁ~と、ちょっとドキッとしました。カフェインは何歳から摂取可能なのかを調べてみましたが、その基準ははっきりとしないようです。(海外では10歳以上の子どもにという基準がある国も。一方で年齢というよりも、身長や体重が大人並みになるまでは気を付けたほうがいいという説も。)いまさら、娘に今日からチョコは食べさせません!なんて、絶対聞かないだろうから、摂取のタイミングや、例えばココアとチョコを同じ日にたくさん摂らないなど過剰摂取に気を付けな
がら、カフェインと付き合っていければと思います。

ちなみに大人でもカフェインの過剰摂取は命を落とすくら
い大変な事態になることも。私も日々のコーヒーを一杯でも減らせるように努力してみま~す。

山田医院医療事務東川敏美

大腸がん

高齢化が進む今日、2人に1人が生涯において一度はがんにかかるであろうと推計されています。がんは誰でも遭遇する可能性のある病気です。その中で今回は女性の死亡一位である大腸がんについて調べてみました。

大腸は小腸から続く最後の消化管で、長さはおよそ1.5メートル、直径は5~8センチメートルの太い管です。大腸の始まりは右下腹部で、そこから時計回りにアルファベットのMのような形でお腹を1周し、肛門へとつながり、大きく盲腸、結腸、直腸の3つの部分に分けられます。大腸がんは、早期発見すれば他のがんに比べ治癒率が高いがんです。しかし、初期段階では自覚症状がなく、症状が出てからでは遅いことが多いこともあるので、そのため検査を受けることが重要になります。

しかし女性の大腸がんの検査の受診者は少ないように思います。その理由として国民健康保険や社会保険の被扶養者だったりするので定期的のがん検診をする機会が少ないことや人間ドックのような大腸内視鏡検査は自費のため費用がかかる、肛門からのカメラ検査は恥ずかしいなどです。(ただ症状があり、大腸ポリープなどがうたがわれる場合保険診療が適用されます。)気になる症状としてがんができると表面に潰瘍をつくりじわじわと出血し、便が出るときにがんの表面がこすられて、便に血が混じります。一度に大量に出血することはまれなので、出血に気づきにくく、貧血になってから見つかることもあります。さらにがんが大きくなると大腸の通り道が狭くなり、便の通りが悪く便秘になったり、便が細くなったり、便秘と下痢を繰り返したりします。

さらに大きくなると大腸の通り道をふさぎ便やおならが出ず、大腸の中でたまってしまいます。この状態を腸閉塞(イレウス)といいます。大腸がんによる腸閉塞は緊急の処置が必要で行き場のない腸の中身は逆流して嘔吐したり、腸が張って穴が開いたりすることもあります。ひどくはないが症状が長く続いてるようなときは、消化器内科や胃腸科を受診するのをおすすめしますが一度かかりつけ医師に相談してみてください。

山田医院 医療事務 阿知波真弓

ヒートショック対策でも・・ 脱衣所にストーブ危険

先日、とても怖く、ビックリする事故を新聞でみた。長崎県でおきた火災で、脱衣所に置いた電気ストーブが原因で入浴中だった8歳と5歳の兄弟が死亡するという痛ましい事故である。冬場は特に、入浴時の寒暖差で血圧が急激に変動し心筋梗塞や意識障害を起こす「ヒートショック」対策として、脱衣所にストーブをおく家庭が多い。男児2人が死亡した長崎県の住宅では、浴室の隣の脱衣所に電気ストーブが置かれ、日ごろから暖をとるために家族が使っていたそうである。

以前、北九州でも、風呂場から出火して2階建て民家を全焼した火災があり、住人の70代男性は、ヒートショック予防のために風呂場に電熱ストーブをおいていたそうである。実は、我が家も、脱衣所が寒いためストーブをおいていたのである。もうビックリして、即刻、使用中止としたのである。

ヒートショック対策として、浴室や脱衣所を暖め寒暖差をなくすことが推奨されているが、脱衣所の暖房はリフォームも必要となり、費用がかかるのが実情。浴室はシャワーで湯張りして湯気を立てて暖める方法もひとつある。脱衣所は衣類やタオルなど燃えやすいものが多く、ストーブは極力持ち込まないようにするか、衣類はストーブから遠ざけるようにするなど細心の注意を払うことが必要である。入浴時に、寒い脱衣所・浴室の洗い場などで急激に血圧が上昇し、浴槽の熱いお湯で心臓にも負担がかかりさらに血圧が上昇する。しかし、浴槽につかっていると、温熱効果で血行がよくなるため急激に血圧が低下する。最後に温まった身体で寒い脱衣所へ出ることで、再び血圧が上昇する。このような急激な血圧の変化が重大な病気を起こす要因となる。最悪の場合命を落とす場合もあり、高齢者が自宅で亡くなる大きな原因となっている。冬場の冷え込んだトイレ・洗面・浴室など、極端な温度差がある場所は注意が必要である。

山田医院看護師橘智子

嚥下障害(えんげしょうがい)と誤嚥(ごえん)…

「飲み込みにくい」「むせやすい」「喉につかえる」ということはありませんか?

食べ物を口に入れかみ砕いてゴクンと飲み込み、食道を通って胃の中に行くまでの過程を『嚥下』といいます。
嚥下は「口腔期」「咽頭期」「食道期」という3つのプロセスに分かれ、その過程のどこかに障害があると嚥下障害が起こります。どういうことかというと次の通りです。
口腔期(随意運動:ずいいうんどう):舌がうまく動かないと食物を咽頭に送ることができず口腔内に残ってしまいます。

咽頭期(嚥下反射):軟口蓋(なんこうがい)や喉頭蓋(こうとうがい)の動きが悪いと、食物が鼻に逆流したり、食物が食道ではなく、気管に入ってしまいます。また咽頭の筋肉の動きが悪いと誤嚥が起こったりします。

食道期(蠕動運動:ぜんどううんどう):蠕動運動を司る食道括約筋(しょくどうかつやくきん)の働きが低下することによって通過障害が起こったり、胃に入った食物が逆流することがあります。また、食道の狭窄(きょうさく)がある場合にも通過障害が起きます。なんだか難しい言葉がたくさん出てきました。普段の食事ではそれほど意識していませんが、いろいろな働きが上手くいくことでスムーズに食事ができているのですね。

病気ではなく、加齢による咽頭筋や食道括約筋の筋力低下によっても嚥下障害が起こります。高齢者による嚥下障害が多いのはこのためです。加齢といっても40代から必要な筋力は落ちてくるそうです。

ちょうど先日、情報番組で誤嚥を防ぐために口や喉の周りの筋肉を鍛える方法と注意点を放送していたので紹介しようと思います。

◎「パ・タ・カ・ラ」運動。ゆっくり5回ずつ、3セット。
パ・パ・パ・パ・パ、タ・タ・タ・タ・タ、・・・・・とはっきり言う。

◎舌をべーっと出して勢いよく喉の奥に引っ込める。舌を鼻の上に付けるように伸ばしたり、あごに付けるように下に伸ばす。口の端から端に動かす。

◎食事をする前に首・肩のストレッチをする。

◎テーブルで食事をする時は、椅子に座りを足を床に付けてしっかり座る。

◎口の中に食べ物が入っているときは話さない。

◎熱すぎるお茶は飲まない。(熱いお茶はすすると空気と一緒に水分を吸い込むのでむせやすい)

上記のことはすぐにでもできることだなと思いました。誤嚥を防ぎ、おいしく食事をするためにも試してみてはいかがでしょうか?

山田医院看護師三栖佳子

外国人の子どもたちについて

日本で暮らす外国人の数はリーマンショックあるいは東北大震災の時を除いて1989年の入管法の改正後に急速に増えており日本総人口の1.8%になっています。なお、新生児の約31人に1人は外国人の親となっています。

以前は大半を占めていた在日コリアンが少なくなり現在では中国、ブラジル、韓国、フィリピン籍などまんべんなく広がっています。

2065年には外国にルーツを持つ子どもは20%に達すると見込まれておりこれらの国際児の大半は日本人の父とフィリピン、中国などのアジア人女性の母と予測されています。外国人政策としては外国人の出入国管理の政策(出入国管理政策)と入国した外国人を社会の構成員として受け入れる政策(社会統合政策)があり前者は国が、後者は国と地方自治体が連携して行っています。

後者の政策は多文化共生政策と呼ばれており今までは外国人住民が支援の受け手でしたが今後は支援の担い手あるいは地域社会に貢献する存在となる方向に進んでいくようになると思われます。なお、だれ一人とり残されないことが大切であると考えられています。

医療面についてみると文化の違い、母子保健制度の認知度の違いから妊娠届の遅れが多い傾向にあります。なお、外国と日本では予防接種の方法、内容が異なります。基本的には日本の予防接種の制度に従いますが母国の制度ならびに帰国後の対応も必要になります。具体的には中国、ブラジルなどでは髄膜炎菌ワクチンの定期接種があり、また韓国、中国ではA型肝炎の定期接種があります。またワクチン製品の互換性の問題もあります。

また、最近では母語喪失に伴うアイデンティティーの喪失があります。バイリンガルに育つには両言語に接する量と質が十分である必要がありますが、社会に接する時間がおおくなり日本語はできるようになるものの母国語は家庭内でのみ簡単な会話だけで生活をしていると母国語ができないようになり家庭内での会話の成立が困難となり、自分とは何者か?といったアイデンティティーの喪失が起こる問題も指摘されています。国際化社会になり外国で暮らす人が多くなるとそれに伴う問題も多くなり対応が必要になります。

山田医院 医師 山田良宏