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山田医院だより

第13巻第3号(第146号)

震災医療について

東日本大震災発生から1年が経過しました。このたびは日経メディカル2012年3月号から震災医療の成果と反省の特集から抜粋をしました。まず、1年の経過で災害関連疾患の実態が明らかになりました。災害時にはさまざまな疾患が増える事が知られています。災害による直接の身体被害のほかに精神的ストレスによるもの、運動不足、食事の偏りなどが関連するものがあります。呼吸器疾患としては津波に巻き込まれた人にみられた津波肺があります。過去に殆ど臨床報告がないもので津波に含まれる重油や土、病原菌などによって生じる肺炎で通常の細菌性肺炎とは臨床像が大きく異なっていました。特徴的であったことは糸状菌の一種であるスケドスポリウムが検出された事です。この真菌は感染後に中枢神経を侵すことが知られており脳膿瘍を起こすケースも認めております。多くの症例で難治性であったといわれています。その他、震災後10-20日後にピークであったのは誤嚥性肺炎ならびに粉塵が原因の肺炎でした。循環器疾患としては震災後4週間には心不全、急性冠症候群(心筋梗塞+不安定狭心症)、脳卒中が増加していました。これは震災のストレスによって交感神経の緊張が起こったことが大きく関与しているといわれていますがその他、避難所での食生活や服用していた薬物が流されて薬物治療を中断したことも要因といわれています。その他震災後2ヶ月の経過ではたこつぼ型心筋症、急性大動脈解離、心不全、肺血栓塞栓症が増加していたようです。これらもストレスならびに避難所での生活環境の影響があるようです。なお、震災直後から血圧が上昇しており6ヵ月後も低下が認められない人も目立つようです。血栓塞栓症は2004年の中越地震がきっかけで広く知りわたるようになりましたが今回も多く認められたようです。3月の南三陸町や石巻市などの沿岸部での血栓塞栓症の発症は中越地震での車中泊をした人の割合とほぼ同様であったようです。血栓塞栓症の要因は動かない事、水分摂取量の減少、ストレスによる
凝固系の亢進などです。避難所生活ではこれらが重なった事から血栓塞栓症が多くなったようです。なお、廃用症候群も大きな問題です。避難所等で動かない生活を続けていた事で震災後歩行困難が出現して回復しない人も多く認めています。なお、放射線被ばくについては放射線による皮膚炎や胸部、腹部、下腿挫創、内部被ばくの疑いなど23人が搬送されたようですがその多くは原発作業員でした。一般住民への放射性物質による低線量被ばくの影響については6月から調査が始りました。放射線業務従事者を除く99.3%の人は事故後4ヶ月間の推定被ばく線量は10mSV未満でした。被ばくは事故後1-2週間がピークになりその後は徐々に低くなるので今回の事故による年間追加被ばく線量は積算しても多くの人は20mSVを超えないだろうと考えられています。なお、チェルノブイリ原発事故後に放射性ヨウ素の内部被ばくにより小児の甲状腺癌が報告された事から10月から甲状腺エコー検査が開始されました。今回の事故ではまだ放射線による健康障害で死亡した人は1人もいません。多くの人が命を落としたチェルノブイリとは異なるようですが低線量被ばくへの対応を科学的見地に基づき対応を行うことが大切であるといわれています。被災地では仮説の診療所や病院での診療が再開しており復旧が本格化してきました。現在は主に被災した病院についての再建後の機能や病床数の検討が進められていますが人口減少に加えて産業復興のめども立たない中で立ち往生しているのが現状のようです。

山田医院 医師 山田良宏

“予防&改善の栄養学” 貧血

“予防&改善の栄養学” 貧血

【症状】
貧血とは、赤血球に含まれるヘモグロビン量が減少している状態です。ヘモグロビンは細胞や臓器に酸素を運ぶ役割を果たしています。そのヘモグロビンが欠乏すると、全身の細胞が酸欠状態となります。そのため、貧血になるとめまい、寒気、息切れ、動悸、疲れやすい、顔色が悪い、食欲不振など全身に症状があらわれます。 貧血の代表的なものとして、悪性貧血(巨大赤芽球性貧血)と鉄欠乏性貧血があります。悪性貧血は赤血球のヘモグロビン合成にかかわるビタミンB12と葉酸の不足から、赤血球そのものが欠乏します。ほとんどの貧血は鉄欠乏性貧血で、体内の鉄分が不足することから起こります。鉄はヘモグロビンをつくる材料になります。鉄は成人の体内に3~4g存在し、そのうち約70%はヘモグロビンの中にあります。

【予防しよう!】
女性は月経時に出血するため、男性より貧血になりやすい傾向にあります。思春期から成長期の女性では、5~10%の人が鉄欠乏性貧血とされています。男性の場合、潰瘍やクローン病、痔などの病気で鉄欠乏性貧血になることがあります。 貧血の改善・予防には、鉄分摂取が第一。食品に含まれる鉄分には動物性食品に含まれるヘム鉄と、植物性食品に含まれる非ヘム鉄とがあります。ヘム鉄は腸でよく吸収されますが、非ヘム鉄は吸収率が低いので、吸
収を高める栄養素と合わせてとるとよいでしょう。 鉄分の吸収を高める栄養素は、ビタミンCとタンパク質です。また、鉄以外の造血作用のある栄養素とし
て、ビタミンB12、銅、葉酸などがあります。1日で吸収される鉄分の量は決まっています。とりだめをすることはできないので、貧血ぎみの人は毎日鉄分をとれるよう食事のメニューを工夫しましょう。

***血液をゆたかにする造血栄養成分***
☆鉄:赤血球中のヘモグロビンの主成分になります。 動物性食品(ヘム鉄)→ 吸収率 約25% 豚レバー、鶏レバー、牛もも肉、マグロ、カツオ、アサリなど
植物性食品(非ヘム鉄)→ 吸収率 約5% ひじき、ほうれん草、小松菜、菜の花、大豆など ☆銅:鉄と協力して赤血球をつくるときに関与します。 大豆、アーモンド、カシューナッツなど ☆ビタミンB12:葉酸と協力して赤血球をつくるときに関与します。 サンマ、アサリ、牡蠣など ☆葉酸:ビタミンB12と協力して赤血球をつくるときに関与します。 葉の花、ブロッコリー、モロヘイヤ、小松菜、アボカド、 枝豆、いちごなど

管理栄養士 越後和恵

長居公園の植物園

早春三寒四温を感じる季節になりましたね。少し、散歩でもと、長居公園の植物園に行ってきました。あちらこちらに、立派な一眼レフのカメラを構える高齢者がとても多かっです。梅が満開で、子鴨が7~8匹ほど、親鴨の後ろをついて行く姿は微笑ましかったですよ。今、菜の花が満開でした。すぐそばにあるハーブ園には、水菜、ほうれん草、キャベツが実っていました。今回、初めて芽キャベツがなっているのを見ました。茎に小さいなキャベツがいくつもついているのです。また、山茱萸(さんしゅゆ)の黄色花が咲いていました。 一緒にいた友達が、山茱萸の歌を歌い出していました。そんな歌があったんですね。山茱
萸の真っ赤な実は、補腎、強壮薬、めまい、耳なり、頻尿などに用い、漢方の八味地黄丸(はちみじおうがん)に処方されていて、今日まで、1800年間も使用されています。また、山茱萸酒(さんしゅゆしゅ)は、病後の滋養強壮や疲労回復、冷え性、低血圧、不眠症に用いています。梅の香りに誘われる時期に、葉の出る前に、黄色の小さな花をたくさんつける早春を代表する花木です。 別名”春黄金花(はるこがねばな)”木、全体が早春の光を浴びて黄金色に輝く”と言われているとおり、ひきつけられます。 これからは、桜の季節、植物園を覗いてみてくださいね。

山田医院 事務 中西美鶴

ばね指について

ひと月ほど前に娘が左手の薬指が痛くて動きにくいというので整形外科で診てもらったところ「ばね指」と診断されました。患者さんにもちょっと前に「ばね指で手術したんや!」と聞いたところだったのでこの機会に勉強しなおしてみようと思い調べてみたので報告します。指には指の関節を曲げたり伸ばしたりする腱というものがあります。そのうち指を曲げる腱を屈筋腱といい、親指に1本、人差し指から小指にそれぞれ2本の計9本あります。この屈筋腱は指を曲げるときに腱の浮き上がりを抑える腱鞘(靭帯性腱鞘)というトンネルの中を通っています。その構造はベルトとベルト通しの関係に似ています。この屈筋腱と靭帯性腱鞘との間に炎症(腱鞘炎)が起こり、さらに進行すると腱が厚く硬くなったり、腱鞘が厚くなって腱の動きが悪くなり引っ掛かりが生じばね現象が起こります。無理に動かすとカクンとかパキンと音がします。これを「ばね指」と呼んでいます。ばね指はどの指にも発生しますが右手親指に最も多く発生します。

1. 原因)手の使い過ぎやスポーツや指を良く使う仕事の人にも多く発生しますが、主に妊娠時、産後や更年期の女性に起こることが多い疾患です。また糖尿病、関節リウマチ、透析患者にもよく発生します。小児に発生する場合もあります

2. 症状)指の付け根に痛み、腫れ、熱感、発赤が生じます。朝方に症状が強く日中は使っていると症状が軽減することも少なくありません。進行するとばね現象が生じてさらに悪化すると指が動かない状態になります。

3.治療)保存的療法としてはできるたけ患部の安静を保ち刺激を少なくし、症状によってはシーネ固定することもあります。また、患部への低周波治療、半導体レーザー治療などを行い、痛みや腫れを軽減させ合わせて消炎鎮痛剤やシップなどを使用する場合もあります。腱鞘内ステロイド注射も有効でおおむね3か月以上無症状なことが多いですが再発することも少なくないようです。温めたり、マッサージしたりするのはやめましょう。上記の方法で改善しないときや再発を繰り返す場合は手術療法が用いられます。この手術は、炎症によりスムーズに動かなくなってしまった腱と腱鞘の問題を、腱鞘の一部を切開(腱鞘切開)することで解決させます。これにより、腱の滑りが良くなり、正常な指の動きが戻ります。手術時間は30分程度、手術による傷は1㎝程度の小さなものですみます。

以上で今回私が勉強した内容のまとめは終わりです。今後も勉強することを忘れずに看護師として成長していきたいと思います。

山田医院 看護師 中島早苗

こどもすこやか医療証についてpart2

この時期になると、お天気予報のコーナーで花粉情報が毎日取り上げられます。鼻水ズルズル、目はカユカユ、急になる方もいらっしゃるので、油断大敵ですネ。そんな時は、やはり病院でお薬を処方して貰うのが一番ですが、アレルギーに効果のあるハーブティーも紹介させて頂きます。薄紫色の綺麗な花を咲かせるマロウ茶は、根や葉に粘液質を含むハーブで、体の粘膜を保護してさまざまな症状を緩和してくれます。気管支炎や咳が止まらなくなった時に飲むと呼吸が楽になります。浸出液でうがいすると、のどの炎症を鎮め、痛みが和らぎます。体の毒素を排出するため、花粉症や便秘、ニキビなども改善してくれます。マロウ茶は、くせのないフローラル系の味で、鮮やかな青色から紫色にゆっくり変化します。浸出時間は5~10分と少し長めです。 さて本題です。病院・診療所などで診療を受けた場合、保険診療が適用された医療費の自己負担の一部及び入院時の食事療養にかかる自己負担額(標準負担額)を助成する「こどもすこやか医療証」に、新たな取り組みが追加されます。今迄の小学校入学前の子供迄の対象が、今年の11月診療分から、追加として平成24年度新学期の小学1年生から中学3年生迄も対象となります。7~8月頃に学校を通じて「医療証」を申請する用紙が配布され、各家庭自己申請となるそうです。3歳までの子供と違って、所得制限があります。中学3年生の3月31日迄が有効期限です。追加のお知らせですが、ヒブワクチン・小児肺炎球菌ワクチン・子宮頸がん予防ワクチンの平成24年度の春からの対象者の公費接種も平成25年3月31日迄引き続き決まったそうです。私たち医療関係者もホットしています。ところで、あの宮城沖地震から1年経ちました。一人でも多くの方が普通の生活が早く送れますように☆

山田医院 医療事務員 堂東眞弓

■子供の病気のコーナー

エピジェネティクスについて
今回のテーマはチャイルドヘルス2012年3月号から抜粋をしました。 多くの病気は遺伝と環境の両方の影響を受けて起こります。遺伝病というと『生まれつきに持っていて治らない(治療法がない)、一生ついてまわる病気』というイメージがあります。ただし、全く同じ遺伝子を持つ一卵生双生児の双子でも性格や特技が違っていたり、また病気になる時期や症状が大きく異なる事があります。これは主に環境などの違いによると考えられています。最近、遺伝と環境の橋わたしをするものとしてエピジェネティクスが注目されるようになりました。これはDNAを取り巻く因子やこれによる遺伝子の調節の仕組みを行う領域の事です。このDNA周囲の遺伝子の調節がおかしくなると遺伝子の働きがおかしくなりその結果病気になることが分かりました。身近な話題としては「妊娠中の過度なダイエットは胎児を低栄養に呈し曝し、エピジェネティクス異常を惹起し、その結果糖尿病体質が形成される」ことや「生まれてすぐに新生児を劣悪な環境に曝すると脳の中のエピジェネティクスに異常が生じ、精神病体質が形成される」などがあります。三つ子の魂、百までもということわざがあります。幼い頃の環境やしつけが身体に刻み込まれてこれが一生ついてまわる事ですが最近ではこのような環境による身体の刻印がエピジェネティクスであることが分かりました。またこの変化は一代だけではなく次の世代にも伝えられる事も判明しました。今後はこのエピジェネティクスは医学の一分野として病気の新しい診断や診療の構築などの研究が進められると思われます。なお、エピジェネティクスは可逆性を持つ遺伝子のメカニズムです。エピジェネティクスの異常は適切な薬や良質の栄養で改善、回復可能であることも分かりつつあります。このエピジェティクスは難しい言葉ですが今後は発達してよく聞く言葉になると思います。

山田医院 医師 山田良宏