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山田医院だより

第15巻第8号(第175号)

高齢者肺炎について

超高齢社会に突入した日本においての死因の第3位は肺炎となっています。

これは肺炎自体が難治性になっていて死亡率が高くなっているのではなく死亡率の高い超高齢者の肺炎患者さんの全体に占める割合が高くなっている結果です。

今回は感染症としての肺炎治療のみでは治癒しない高齢者の肺炎について日本医事新報4710号から抜粋しました。

高齢者肺炎を誤嚥に関連するものとしないものに分けると大部分が誤嚥に関連する誤嚥性肺炎です。

誤嚥は食物をむせて誤嚥する場合(顕性誤嚥)と食事との関係はなく唾液などを誤嚥する場合(不顕性誤嚥)があります。

肺炎発症には夜間睡眠中の不顕性誤嚥が大きく関与すると言われています。したがって絶食にしても胃瘻を留置しても肺炎(誤嚥性肺炎)は起こりうるのです。

ただし、不顕性誤嚥は70歳以上においては80%以上と高率に起こっているようですが、通常誤嚥性肺炎を発症するには至りません。少量の誤嚥であれば細菌を含まない場合には誤嚥を繰り返しても肺炎は生じないと言われています。誤嚥性肺炎の発症には不顕性誤嚥に加えて長期臥床状態、体動制限、ストレス状態、栄養不良などが重なると発症すると考えられています。メンデルソン症候群といって嘔吐や食物の多量誤嚥などにより起こす肺炎は誤嚥直後から胃酸による肺、気管支の障害が起こりますが通常の誤嚥性肺炎では一般に比較的ゆっくりと進行するために呼吸器症状がはっきりしないことも多く初発症状としては食思不振や全身倦怠感などの非特異的症状がみられることも多く、また発熱は軽微あるいは全く認めないこともあります。精神症状が前面に出ることが多く何となく元気がない、普段より反応が鈍いなど周囲からわかりにくいことも多くなっています。

話題になっている状態としてはインフルエンザ後誤嚥性肺炎があります。インフルエンザ罹患による肺炎にはインフルエンザそのものによる肺炎とインフルエンザの感染後に続発する細菌性肺炎があります。高齢者の場合にはこれに加えて高熱、倦怠感に伴い潜在的な嚥下障害を有する人では嚥下障害を悪化する可能性も強くこれに伴う誤嚥性肺炎を考慮する必要があります。

高齢者肺炎(誤嚥性肺炎)の予防とケアですが肺炎自体は抗菌剤等にて改善しますが嚥下障害自体は改善しないために誤嚥性肺炎は反復します。予防としてはまず胃食道逆流の物理的予防としては寝たきり状態である場合には食後約2時間は座位保持が推奨されています。なお、胃内容物が200mL以上になると誤嚥のリスクが高くなるのでこの量は超えないようにすることも大切です。

次に口腔内分泌物の病原性の低下ですがこれは口腔内ケアを積極的に行っていると誤嚥に伴う肺炎が減少します。

次に咳反射、嚥下機能の改善についてですが一度低下した嚥下機能については完全に回復させることは通常不可能といわれています。血栓を予防するシロスタゾールにおいて予防効果があると言われています。

なお胡椒などに含まれるカプサイシンとACE阻害薬である降圧剤においては咳反射を起こすサブスタンスPがあり誤嚥性肺炎を減少させる効果があります。免疫能改善についてはインフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチンが誤嚥性肺炎についても低下させる作用があることがわかっています。寝たきり状態で摂食が困難となった時点で胃瘻を増設すると一般には6か月の延命になると言われています。経管栄養(胃瘻)からの栄養、絶飲食は不顕性誤嚥を減少させないので誤嚥性肺炎の予防にはなりません。寝たきり状態で誤嚥性肺炎を繰り返し起こす場合には抗菌剤による治療の対応だけではなく終末期医療を含めた全人的なケアが必要になります。

山田医院 医師 山田良宏

暑気あたりによる夏場の体調不良

毎日暑い日が続き、なんとなく体がだるい・・・
熟睡できない・・
食欲がない・・・という方も多いのではないでしょうか??
風邪でもないし、熱があるわけでもない・・・
ただ、どことなく疲れが抜けない・・・

「暑気あたり」とは、暑さのために体が弱り、下痢や、食欲不振に陥ることだそうです。

日本の夏は、湿度も高く、じとーっと暑い日が多いこともあり、遥か昔の、私たちご先祖様の時代にも「暑気あたり」夏バテに苦しんでいたことが古事記などから読み取れるようです。高齢の方では、クーラーにあたると風邪をひくとの理由などから、気温が高い室内でもクーラーをあまり使用しないことも多いようで、それが元で熱中症にて救急搬送される方も多く、適切なクーラー使用はこの暑い夏場では必要なことといえます。

また一歩外に出ると、アスファルトからの照り返し、強い日差しによる暑さ、スーパーや電車、商業施設に入ると震えるほどクーラーが効いていて、なかなか体の温度調節も難しいのも現状です。

上着を一枚持っておくなど、冷気により体が冷えすぎないように工夫することも大事なことです。そして、こまめな水分補給はとても大切です。喉が渇くときには、体は脱水状態に陥っているといわれています。

喉が渇いたという自覚がなくても、こまめに水分補給することは脱水予防に効果的です。
高齢の方では、喉が渇くという感覚そのものが低下していることもあり、周囲が気にかけることも大切とえます。

また、良質なたんぱく質を含む食事をとることは、食欲低下や、下痢などの症状を防ぎ、体力を維持しこの夏場を乗り切るには効果的です。

それでも、不調が続く際は点滴治療や、内服治療が必要となってきます。なかでも漢方薬による治療は有効なことが多いようです。

「清暑益気湯(せいしょえっきとう)」、「六君子湯(りっくんしとう)」など、症状により一番効果的なものが医師により選択されます。

当院院長は漢方治療にも精通されていますので日々の診察処方の中にも漢方薬を取り入れることもありますので一度相談されてみるのも良いかもしれません。こうした暑気に対して、食べ物、漢方などで体にたまった熱を取り除き、不調を防ぎ健康に夏を乗り越えることを目的にしたことを「暑気払い」といい、昔から生活の知恵として実践されていました。決して冷たいもの(かき氷、ジュース、そうめんなど)ばかりを摂ることではなく、体の熱を冷やす効果のあるものを摂ることなどを指しています。

現代では、ビアガーデンなどで「暑気払い」を名目にみなさんで集まることも多いようですが、それも人間関係を円滑に、またストレス発散するという意味では、体調改善を図るにはひとつの良い方法になるのかもしれません。

最後に暑気払いによいとされる食べ物を紹介したいと思います。スイカ、きゅうり、冬瓜などのウリは利尿作用が高く体の熱をさげます。豆腐は、豆乳を固める際のにがりが体内の熱をさげます。また、冷たいものを摂りすぎて胃腸の具合が悪い時はほうじ茶や、しょうがを使った料理なども効果があるようです。

自然と人間の体はよくできているので、旬の食材を摂ると自然にその時の環境に応じた体力づくりが出来るようになっているので日々の献立にぜひ旬の食材を取り入れて、暑い夏を乗り切ってください。

山田医院 看護師 岩崎恵美子

水を飲もう!

みなさんこんにちは!今年もまたあつーい夏の季節がやってきましたね!
夏場はとくに気温が上昇する為、体温を調節しようと汗をかき体内の水分が蒸発していきます。なので夏は体の水分が普段以上に失われています。

そこでぜひ『目覚めの一杯』『寝る前の一杯』と〝あと二杯〟の水を飲む習慣を心がけてもらいたいと思います。

体の水分量が少なくなると、熱中症や脳梗塞、心筋梗塞などの大きな病気を引き起こす可能性があります。

就寝中には、約300mℓの水分が失われ、血液はどろどろの状態になっています。この様な時、就寝前と起床後にコップ1杯の水を飲む習慣をつける事で、血液中の状態が正常に保たれるのです。コップ1杯の水を飲む事で、どろどろになっていた血液がサラサラになり、糖尿病も含め、脳梗塞、心筋梗塞といった生活習慣病を発症するリスクが、大幅に軽減されます。脳梗塞を発症し易いのは、寒い冬場だけではありません。夏場は、寝ている間にも沢山の汗をかいています。知らず知らずに身体から水分が失われており、脱水の危険も大きいのです。寝る前にコップ1杯の水は脳梗塞を防ぐといわれています。 また、起床時のコップ1杯の水は、消化管を刺激し排便を促し便秘解消にも繋がるそうなので、是非試して見てください!!

水分を上手にとらないと、かえって夏バテをおこしてしまいます。喉が渇いたと感じるのは、体の水分が不足しているというサインなので、その前のこま
めな水分補給を心がけましょう。今年は冷夏と言われてましたが、、なかなか暑い夏になりそうですね!
この夏を楽しく元気に過ごすためにも、ぜひみなさん『目覚めの一杯』『寝る前の一杯』と〝あと二杯〟の水を飲む習慣実践してみてくだいねー!!

山田医院 医療事務 平賀怜奈

電子版お薬手帳

みなさんは「電子版お薬手帳」をご存じでしょうか。もうすでに使っている方も多いかと思いますが、便利なものなので軽く紹介したいと思います。
そもそもお薬手帳とは、医療機関が処方する薬の名前や服薬する回数などを記録する手帳のことで、調剤薬局などで手に入ります。薬局で受け取る調剤明細書を張り付けるなどして保存することで、服薬履歴として利用できます。また診察の際に患者が医師や薬剤師に手帳を見せることで、同じ薬が重なっていないか、飲み合わせ等の確認を行ってもらえます。

ただお薬手帳は紙製なので、普段持ち歩かなかったり、紛失したりして、肝心なときに持参してなくて役に立たないことも多いかと思います。なのでこれを補強する意味で開発されたのが「電子版お薬手帳」です。

普段よく使うスマートフォン(スマホ)で管理する手帳なので、忘れることも少ないし、持ち運びに便利ですね。

従来の内容だけでなく、薬を飲む時間になったらアラームで通知してくれたり、薬の服用状況を自分で記録して、達成率や残薬量などを画面で確認できたりと、電子版ならではの便利な機能を満載したアプリが続々登場しています。利用できる薬局が少ないのが弱点でしたが、この春、薬局などの情報端末が更新され、全国で薬のデータを取り込める体制づくりがはじまったそうなので、ますます電子版お薬手帳は広がりをみせるのではないかと思われます。

まだ利用されてない方、一度お試しになってみてはどうでしょうか。

山田医院 医療事務員 川村 理恵

高山病

今年の夏も暑いですね。

私は、この夏、富士登山に、挑戦しました。大雨、大風の台風11号が去った次の日に、富士登山ツアーに参加しました。登り始めは、曇っていましたが、六合目から七合目に向かう時には、1メートル先の人が見えないほどの霧、強風、大雨、ヒョウまで降り、うちつけられました。七合目にして中止。ほっと、しました。防寒着を着ていても、下着まで湿気てしまい、鼻はずるずる、寒気で、身体はぶるぶる。七合目の山小屋に次の日まで、待機です。マンガに出てきそうな風のピューピューという音が小屋をつつみました。しかし、夜には天気も回復して、満月、そして、翌日は、御来光も見ることができました。すばらしい景色に、感動しました。

富士登山で、天気より心配していたのは、高山病でした。富士のように3000mをこえると、酸素は、三分の二近くになるそうで、標高が高くなるにつれて気圧が下がり、酸欠の状態になり、血中酸素濃度が低下することで身体にいろいろな変調をきたします。

初期段階では、頭痛、吐き気、めまい、食欲不振、手足のむくみ、心悸亢進(脈拍が速くなる)など風邪のような症状が現れます。

あるいは二日酔いの症状にも似ているので専門家は「山酔い」と呼んでいたそうです。

症状が出た場合は無理をしないでしばらく休憩し、それでも状況が改善されない場合は下山。高山病にならないようにするためには、酸素をできるだけ取り込み(深呼吸)、なるべく消費しないようにすること(ゆっくりしたペース)を意識するのが大切だということです。

高山病になりやすいかどうかは酸素摂取能力が影響しているそうです。酸素摂取能力が高ければ、薄い空気の中でも酸素を効率よく取り込めますから酸欠になりにくいわけです。酸素摂取能力の個人差は心肺機能の他に、血中ヘモグロビン量が要因の一つとなっています。睡眠をしっかりとり、身体を冷やさないこと、水分をしっかりとることもたいせつなようです。

来年も、挑戦しようかなぁー。頂上まで行けなくても、日本一の富士山に、一番近づけた夏、楽しかったです。

山田医院 事務 中西美鶴

小児の急性中耳炎について

従来は小児の急性中耳炎は3、4歳から上の年齢で発症するように思われていたようですが、実際には1歳での発症が最も多く難治例は0歳に最も多くなっています。小学1年生までに半数が中耳炎の治療を受け、治療を受けた3分の1は単発で繰り返すことはないものの3分の1は難治になります。

ただ難治例も含めて小学1年までには95%以上が治癒しています。

従来、中耳炎の治療は抗菌薬の投与と鼓膜切開が基本と考えられていましたが1990年代から抗菌薬に反応しない難治例、反復例が多くなりました。

主として薬剤耐性肺炎球菌が増加したことにより、また耐性インフルエンザ菌も出現してきたことから日本耳科学会が中心となり小児急性中耳炎診療ガイドラインが作成されました。これは症状や鼓膜の所見によりスコアリングして中耳炎の重症度を軽症、中等度、重症と3分類して治療の方針を決め画一的な治療で耐性菌を増やすのを防ぐことになりました。

中耳炎の原因菌としては肺炎球菌、インフルエンザ菌、モラクセラ・カタラーリスの3つが中心です。

耐性菌問題がありますが基本的にはアモキシシリン(サワシリン、ワイドシリンなど)が第1選択薬で効果によりその他の薬剤の使用を行うようになります。薬の効果判定は通常は服薬後3日目で判定をします。中耳炎が難治化となる因子として2歳未満、薬剤耐性菌による中耳炎、中耳炎反復の既往、集団保育をしている、1ヶ月以内に抗菌剤を服用している、副鼻腔炎がある、両側中耳炎があるなどでこれらがある場合には難治化が予測され注意が必要です。

なお一般的な注意としては肺炎球菌ワクチンを接種する、受動喫煙を避けるために両親は禁煙を行う、授乳に際しては人工乳では横臥位を避ける、母乳では添い乳を避けるなどが大切です。多くの中耳炎は年齢とともに改善しますが難治化あるいは反復例も多く診療においては苦慮する面も多くあります。

山田医院 医師 山田良宏