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山田医院だより

第15巻第7号(第174号)

食物アレルギーについて

1980年頃から増加の一途をたどっている食物アレルギーですが理由は食生活の欧米化に伴って魚以外の動物性タンパク質たとえば卵や牛乳の摂取が増えてきたこと、コムギ含有石鹸による問題など社会環境要因によってアレルギーを起こしやすい状況になったことがあります。乳幼児に多く5-10%、学童期以降は3%足らずと言われています。

ただし、この割合はクラスに1名程度は食物アレルギー児がいることになります。食物アレルギーの発症は感作が成立するステップと症状を誘発するステップに区分されます。感作の段階では必ずしも経口摂取された食物だけではなく皮膚からあるいは気道から抗原が暴露されたりまた、食物以外の花粉あるいはラテックスなどが感染源になることもあります。年齢によって原因が異なり幼小児では鶏卵、牛乳、小麦の順に多く、20歳以上では甲殻類、果物類、小麦が多くなっています。一般に幼小児期における鶏卵、牛乳、小麦については小学校入学までに80-90%は寛解することが分かっていますがそば、ピーナツ、甲殻類などは寛解しにくく、一般に複数の食物にアレルギーがある場合、ほかのアレルギーを合併する場合、アナフィラキシーの既往がある場合、特異的IgE抗体が高値の場合には耐性獲得をしにくいと言われています。

食物アレルギーの症状は特定の食物を摂取後2時間以内に皮膚、呼吸器、消化器、神経、循環器など複数の臓器に及びますが最も頻度が高いのは皮膚症状で約90%において認めます。蕁麻疹、紅斑、浮腫などが主な所見で掻痒感は必発です。食物アレルギーの症状で特に強い状態がアナフィラキシーでこれは通常摂取数分以内に起こります。非常に軽い場合には経過観察でいいのですが、血圧低下などの循環器症状、声がれ、喘鳴、嚥下困難、下痢、等が出現する重症では早急な対応が必要になります。

3年前から保険適応になったアドレナリン注射(エピペン)の接種が必要になります。このエピペンの使用は学校内においては教職員が行うことが容認されており、またアレルギー用学校生活管理指導表の作成等充実してきています。小児期における食物アレルギーの発症時期は大半が乳児期でその6-7割にアトピー性皮膚炎を合併しています。とくに生後2-3ヶ月までに発症して顔面から始まる掻痒の強い湿疹を伴う乳児においては食物アレルギーを疑う必要がありますが、一般にはまず適切なスキンケアと十分な軟膏治療によるアトピー性皮膚炎の治療を行いそれでも改善しない場合には血液検査あるいはプリックテストを参考に食物アレルギーの診断を行います。乳幼児早期においてはIgE産生能が低く特異的IgE抗体が陰性になる可能性もありますが逆に陽性であればその食品に対する食物アレルギーである可能性は高くなります。なお、母親の妊娠期、授乳期を含めて母親の除去食が食物アレルギーを予防するエビデンスはなく不適切な除去は禁忌です。なお離乳食開始を遅らせても食物アレルギー発症の予防にはならないので生後5-6ヶ月から月齢に応じて新鮮な食材を十分に加熱して少量から与えるように指導します。なお血液検査で陽性となっただけで必要以上の食品の除去は栄養障害の面から問題であり現在では外来において保険で食物経口負荷試験が付近の病院で行うことも可能であり血液検査の経過並びに症状等から判断をしています。

食物経口負荷試験は除去が必要な食物の同定だけではなく安全に食品の除去の解除を進めていくための道しるべにもなり最近では食物アレルギーにおいては最も重要な検査項目となっています。現在、卵、牛乳、小麦、そば、落花生、えび、かにの7品目については特定原材料と定められておりすべての流通段階での表示が義務つけられており、また特定原材料に準じる20品目(あわび、キウイフルーツ、バナナ、りんご、カシューナッツなど)については可能な限り表示をするように努められています。なお、薬剤についても鶏卵アレルギー患者さんでは塩化リゾチームが、牛乳アレルギー患者さんではタンニン酸アルブミンならびに耐性乳酸菌に対して注意が必要となっています。食物アレルギーの分野は検査、診断等の進歩が大きな分野です。また不安に思う方は主治医に相談して必要に応じて専門医療機関の紹介を受けるのがいいと思います。

山田医院 医師 山田良宏

自然治癒力ってなぁーに?

患者様から、スリ傷を負って自宅で処置を行っていたが治らない「このままでも治りますか?」と聞かれることがよくあります。「時間はかかりますが治ります」とお答えしてます。

診療中にも先生から十分な睡眠、休息、栄養価のある物の摂取などについて説明や指導されています。これには自然治癒力を最大限生かせることを期待するものです。

けがをしても風邪を引いても時間がたてば自然に治ることもあります。これは人間・動物などが生まれながらにして持っている自然治癒力、生きる力です。自然治癒力には傷口をふさいだり、骨折した骨をつなぐ「自己再生機能」と病原体やガン細胞をやっつける「自己防衛機能」があります。この自己防衛機能を発揮しているのが免疫系です。

この二つの機能は連携して機能することがある。例えば、スリ傷を負った時、侵入している細菌と戦いつつ皮膚を再生しているので「自己防衛機能」と「自己再生機能」が同時に働いています。自然治癒力を発揮する時に大きな役割を果たしているのが血液です。患者自身に自然治癒力がなければ手術はできません、切除した臓器は切除されたままで正常に回復することができなくなります。そう考えると、身体が病気から回復するのに必要な力を例えば10とした時、自然治癒力は9or8で医療・薬は1or2に値する。この様に自然治癒力は主役で医療・薬は脇役と言えます。この自然治癒力に影響を与えるものには、治癒力を低下させるものと、高めるものがあります。自然治癒力を低下させるのも免疫力と自然治癒力を低下させる要因はストレスです。ストレッサーが体にやってくると私たちの心身に「ひずみ」が生じる。これを放置すればストレッサーの重みで心身が押しつぶされる。希望を持つ人は脳が活性化し、交感神経、副交感神経のバランスがとれる。落胆や失望は強いストレスとなり脳を直撃し、交感神経と副交感神経のバランスが壊れて免疫系が弱体します。脳・免疫系・内分泌系の三角形は疲労、過労などのストレスによってそのバランスが壊れやすい。ストレスが病気の根源になってしまうものです。

自然治癒力を高めるもの自然治癒力を低下させる疲労や過労を解決するためには睡眠、休息をとることが重要です。

また、十分な栄養素や運動も自然治癒力を高めるのに役立ちます。心のあり方は病気の治癒に多大な影響を与える。心と体は脳・免疫系・内分泌系の三角形を通して結びついている。笑うことで気持ちが明るくなり、病気の痛みから解放されたりする。ユーモア、笑いの効能は逆境にくじけない精神力がえられる。また、ユーモアや笑いの効果は筋肉の緊張を和らげて、リラクゼーション効果もあります。人生を明るく楽観的に生きるにはユーモア・笑いが有効だから積極的に取り入れた生活を送りたいものです。

山田医院 看護師 畑中幸子

中年太りの原因と解消法

食生活もライフスタイルも全く変えていないのに、30代から40代にかけて、なぜか太りはじめてきた、こんなお話はよく耳にします。

一般的に「中年太り」と呼ばれる現象はどうしておこるのでしょうか?

中年太りの原因のひとつはは「基礎代謝量の低下」である。

私たちは、寝ている時でも呼吸をしたり、体温を調節したりと内臓は活発に動いています。このように、生きていくために使われる最低限のエネルギーのことを、「基礎代謝」といいますが、その力は10代をピークに減り続けます。基礎代謝が低下する原因は、筋肉量の低下です。筋肉量が減ると、脂肪が燃焼しにくくなり、基礎代謝を低下させる原因となります。日常的に運動習慣を持たずに40代に突入すると、筋肉量は減る一方です。このように、加齢による基礎代謝の低下と、筋肉量の低下が重なるため、中年太りが起こります。
また、女性の中年太りは「女性ホルモン」の量が関係しているといわれています。

40代というと、ちょうど閉経に向けてホルモン量が徐々に低下してくる頃です。女性ホルモンは、脂肪合成を盛んにする働きをもっていて、若いころは出産に備えて太ももやヒップを中心に脂肪がつくようになっていますが、女性ホルモンが低下すると、腹部を中心に脂肪がつくように変わります。このように、中年太りは若い頃の太り方と単なる食べ過ぎ、運動不足が招いたものではないのです。

中年太り解消のためには、筋肉量をUPしましょう。ウォーキングやジョギングなど、無理の無い運動から初めて筋肉量を増やすことが必要です。何もしないと年1%程度のペースで衰えてしまいます。また、太らない食生活を送りましょう。中年太りの場合、身体に溜まる脂肪は皮下脂肪ではなく、内臓脂肪です。食事量は多くないといっても、脂肪や砂糖だらけのお菓子やパンなどの高カロリー食品を食事代わりにしていませんか?若い頃より少ないエネルギー量で生活ができるよう、身体は年々変化します。その変化に合わせて食事と運動に注意していくことが、中年太り解消には一番効果的です。

山田医院 医療事務 杉山恭子

お薬の服用の仕方について

今から13年前の2001年9月11日、アメリカで起きた同時多発テロの追悼番組などで、10歳の子供を無くしたお母さん《Mrs.ノーマ・コーネット・マレック》の詩が朗読されました。それから6年後、実のお姉さんを難病で実の母を交通事故で亡くされた佐川睦さんがその詩を翻訳して本が出版されました。何とも悲しくて切ないですが、優しくて希望が持てる詩だと思います。

あなたが眠りにつくのを見るのが 最後だとわかっていたなら,私は もっと ちゃんと カバーをかけて神様に その魂を守って下さるように 祈っただろう・・・・

あなたがドアを出て行くのを見るのが 最後だとわかっていたら,私は あなたを抱きしめて キスをしてそして また もう一度 呼び寄せて 抱きしめただろう・・・・

あなたが喜びに満ちた声をあげるのを聞くのが最後だとわかっていたら、私は その一部始終をビデオにとって毎日 繰り返し見ただろう・・・・

あなたは言わなくてもわかってくれていたかも知れないけれど、最後だとわかっていたなら 一言だけでもいい…

「あなたを愛してる」と 私は伝えただろう・・・

確かに いつも 明日は やってくる。でも もしそれが 私の勘違いで今日で全てが終わるのだとしたら、私は 今日どんなに あなたを 愛してるか 伝えたい・・・・

そして 私達は 忘れないようにしたい。若い人にも 年老いた人にも明日は 誰にも約束されてないのだという事を・・愛する人を 抱きしめられるのは今日が 最後に なるかも 知れない事を。明日が来るのを待っているなら今日でもいいはず・・・・

もし明日来ないとしたらあなたは今日を後悔するだろうから・・・・

微笑みや抱擁やキスをする為のほんのちょっとの時間をどうして惜しんだのかと・・・・

忙しさを理由にその人の最期の願いになってしまった事を、どうしてしてあげられなかったのかと・・・・

だから今日あなたの大切な人たちをしっかりと抱きしめよう・・・・そしてその人を愛している事を、いつまでもいつまでも大切な存在だという事をそっと伝えよう・・・・

「ごめんね」や「許してね」や「ありがとう」や「気にしないで」を伝える時を持とう・・・・

そうすればもし明日来ないにしても、あなたは今日を後悔しないだろうから・・・・

日本人はシャイな面を持っていて、なかなか素直に表現出来ない性格の人が、他の国の人に比べると多いかも知れません。でも、この詩は考えさせられます。災害にしても何にしても、悲しい死がないよう、人々の無意味な争いがなくなりますよう、平和な地球でありますよう、それが一番だと思います。

さて、本題です。お薬の服用の仕方には、ざっと7種類あります。一番オーソドックスなのが、食後の30分位後に飲む【食後】です。食後30分は、比較的胃に優しくお薬が吸収しやすい状態です。又飲み忘れ防止に効果的です。

次に、当院でも嘔吐の時出されるナウゼリンの吐き気止めは、食事の30分位前に飲む【食前】が効果的です。食前に飲むと、胃を荒らしやすいですが、お薬が早く吸収され嘔吐の効果に良いとされます。一部の糖尿病のお薬も食前投与があります。変わった所では、空腹時では吸収が悪いので、食事のすぐ後【食直後】に服用するエパデールがあります。

糖の吸収を抑える事により血糖値を下げる一部の糖尿薬は【食直前】食事のすぐ前に服用します。

又、睡眠薬や便秘等のお薬は【就寝前】に寝る30分位前に服用します。漢方のお薬は、食事の2時間位後【食間】か【食前】投与となっています。

空腹時が効果的だからですが、飲み忘れた時は【食後】でも構いません。

最後になりますが、食事の時間に関係なく症状に応じて(発熱時、嘔気時、痛い時等)一時的に飲む【頓服】があります。お薬は、お薬を溶かして胃や腸に運ばれるよう、コップ1杯(200ml)のお水かぬるま湯で飲むのが良いとされます。以上です。

お願い:7月は、後期高齢者医療証、高齢受給者や一部負担医療証などの保険証が送付されます。新しい保険証が届いたら受付で提示して下さいネ。

山田医院 医療事務員 堂東眞弓

夏の汗とミネラル補給

夏もそろそろ本番を迎える頃となりました。暑い日が続くと身体がだるくて頭がボーっとしたり、やる気が起きないなど、自分では気づかないうちに疲労が蓄積してしまいます。疲労が溜まった際の体力回復には基本のきちんとした食事と、良い睡眠をとることが大切ですが、そうはいっても夏バテで食欲がなくなってしまったり、夏の蒸し暑さできちんと眠れなかったり。一度、夏バテになってしまうと、なかなか抜け出すのは大変なものですよね。

夏バテになってしまうその原因には、ミネラル不足ということが挙げられます。夏は昼夜を問わず予想以上に発汗します。最近ではエアコンの影響から発汗しにくい状況も多いですが、それでも汗と共に体外へ排泄されるミネラルは多く、その影響は体調にダイレクトに表れます。ミネラルが不足すると、だるさや疲労感、脱力感、食欲不振など夏バテの症状と重なります。それ以外にも、めまいや失神、精神不安やイライラ、動悸や不整脈など、心や身体のさまざまなところに影響を及ぼします。

発汗で特に失いやすいミネラルは、ナトリウム、カリウム、カルシウム、鉄、マグネシウムです。

おなじみの「カルシウム」は骨や歯を丈夫にすることに加えて筋肉の働きや神経機能の働きを助け、酵素を活性化させます。食品としてはミルクなどのデイリー製品をはじめキャベツ、穀物、魚に含まれています。

「マグネシウム」もカルシウムと同様の働きがあるものの血管の機能を正常な状態に保つのを助けてくれます。ヒジキ、大豆、魚類、葉物野菜などの野菜にも含まれています。そして「鉄」は血液中の酸素を運ぶ大切な働きがあります。また細胞内まで栄養素を届けるために細胞にくっついている電子に栄養素を運ぶ役割もあります。鉄分もヒジキなど海藻類にふくまれています。ミネラルをしっかり補給できるよう、食事のバランスを考えてましょう。

ただ、ミネラル同士、さらに他の炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミンといった栄養素ともチームプレーで働くものなので、どれかが突出して大切なのではなく、どれも体にとっては大切なものです。偏らずに、いろいろな食べ物からまんべんなく摂取することがとても大切だということを忘れないでくださいね。

山田医院 医療事務 中町麻里

熱中症について

熱射病、熱疲労、熱失神、熱痙攣、日射病と称されてきた「暑熱障害」は病態や病状からの診断名であり医療現場でも理解されにくい点が問題でした。

2000年以降は安岡らの分類を元に対処法別に3段階に分類した日本独特の診断名ができました。

熱中症を重症度別にⅠ度(軽症:現場で対応)、Ⅱ度(中等症:医療機関へ搬送)、Ⅲ度(重症:入院適応)に分類され、Ⅰ度は筋肉の症状と脱水に伴う症状に限定(筋肉痛、こむら返り、めまいなど)に限定され、Ⅱ度は高体温と虚血により生体の恒常性が崩れ始めた病態で頭痛、嘔気、嘔吐で自分で水分摂取が不可能、倦怠感、虚脱感が有り集中力や判断力の低下を認める状態でⅢ度は明らかな臓器障害が認められ入院加療が必要な状態です。
年齢別では60歳以上が大半を占め、高齢になるに従い発症割合が増加、重症も高齢層ほど割合が増えています。

10歳代ではスポーツをする男女、20-60歳代では肉体労働の男性で多く、高齢男女では日常生活中に特に筋肉運動なく熱中症に陥り高齢程重症で入院例も多くなっています。

入院は2日間が最も多く、また入院当日の死亡例が最も多い状態です。熱中症は治療に反応して早期に回復しやすい病態である一方ある重症まで進行すると集中治療を施しても短時間で死亡に至ることがわかります。

重症例ではたとえ生存しても高次機能、小脳症状など中枢神経への重大な後遺症が生じることがあるので熱中症はいかに早期に診断して治療をするかが重要となります。

熱中症の診断で注意をするべき項目は

①高体温を認めないからといって熱中症を除外してはいけない。

②悪寒を訴える高熱は熱中症とは考えにくいです。熱中症と似ているものとしては感染症(髄膜炎、感染性心内膜炎など)、甲状腺中毒症、てんかん発作、脳血管障害、覚せい剤中毒などがあり医療機関においては常に注意すべき点です。熱中症の治療の応急処置はFIRE(Fluid:水分と塩分補給、Ice:冷却、Rest:安静、Emergency:緊急事態)を認識することは大切で医療機関では急速輸液や急速冷却が治療の主体です。意識障害、肝機能障害、腎機能障害、凝固異常を認める場合には速やかに高度医療機関への搬送が必要となります。夏本番となってきました。みなさん気をつけてお過ごし下さい。

山田医院 医師 山田良宏