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山田医院だより

第17巻第1号(第192号)

肺炎球菌ワクチンについて

肺炎球菌は主に乳幼児の鼻咽頭に高頻度に保菌されています。これは市中において菌の水 平伝播に重要な役割を果たします。

成人の肺炎球菌感染症は欧米諸国並びに日本において も小児への肺炎球菌ワクチンが定期接種された後に肺炎球菌感染症が小児だけではなく成 人特に高齢者においても減少したことから乳幼児から成人に感染していたことが分かりま した。

肺炎球菌は小児、成人に中耳炎、副鼻腔炎などの非侵襲性感染症や髄膜炎、菌血症 を伴う肺炎などの重篤な侵襲性肺炎球菌感染症をおこします。

ペニシリンGが実用化され た1941年以前の肺炎原因菌としては肺炎球菌が90%以上をしめておりましたが抗菌剤が進 歩した現在でも肺炎球菌は市中肺炎原因菌の最多であり、インフルエンザ流行時期あるい は災害後などにはさらに増加します。

1910年のスペインかぜ、1950年代のアジアかぜ、 1960年代の香港かぜにおいての死亡例の剖検例からの調査によると96%は細菌性肺炎、70% が菌血症を合併していましたがその原因菌でもっとも頻度が高かったのが肺炎球菌でし た。現在でもインフルエンザ関連肺炎の原因菌としては肺炎球菌が最も多くなっていま す。日本においては高齢者肺炎の死亡が増加しているためにこの肺炎球菌感染症への予防 と治療が大切となっています。

ワクチンは現在においては肺炎球菌の菌体周囲を覆う莢膜 多糖体に対する抗体をB細胞を介して作成する莢膜多糖体ワクチンと莢膜多糖体にキャリ ア蛋白を結合してT細胞も介して抗体を作成する結合型ワクチンの2種類があります。前者 の莢膜多糖体ワクチンはT細胞を介さないために免疫機能が未熟な乳幼児においては十分 な免疫誘導ができずこの点を改善するために莢膜多糖体抗原にキャリア蛋白を結合させた 結合型ワクチンが開発されました。この結合型ワクチンはT細胞依存性のワクチンで乳幼 児においても免疫原性があり乳幼児においてはこの結合型ワクチンが使用されます。肺炎 球菌は莢膜型により94種類に分類され、このうち30種類に病原性があるとされています。

現在成人に使用されている莢膜多糖体ワクチンには23種類が含まれており、結合型ワクチ ンには13種類の肺炎球菌が含まれています。

日本においては2010年11月から小児の肺炎球 菌ワクチン(7価の結合型ワクチン)が公費補助となり、2013年6月から7価のワクチンが13 価のワクチンへと変わりました。

成人については1988年に莢膜多糖体ワクチンが認可さ れ、2014年10月から65歳以上の高齢者を対象に公費補助になりました。なお結合型ワクチ ンも2014年から成人に対しての接種が可能となりましたが公費補助となっているワクチン は莢膜多糖体ワクチンのみとなっています。ワクチンの広がりによりワクチンに含まれて いる肺炎球菌による侵襲性肺炎球菌感染症は減少していますが逆にワクチンに含まれてい ない型の肺炎球菌が相対的に増加している問題(血清型置換)もあります。

なお、現在65歳以 上の高齢者に接種されている莢膜多糖体型の肺炎球菌ワクチンについてはHIV感染症等 の免疫機能低下例においては効果が乏しいことが分かっており免疫機能低下例においては 結合型肺炎球菌ワクチンの接種が望ましいと考えられています。

現在65歳以上の高齢者に おいては莢膜多糖体型肺炎球菌ワクチンのみが公費補助ですが、米国では65歳以上の成人 についてはまず、はじめに結合型肺炎球菌ワクチンを接種して半年から1年ほどしてから莢 膜多糖体型肺炎球菌ワクチンを接種することを推奨されています。

今後、日本においても 接種方法等については変更となる可能性もあります。なお、小児においての肺炎球菌の予 防接種は2歳未満では数回接種が必要ですが成人においても莢膜多糖体型肺炎球菌ワクチン を接種後5年以上の経過にて再度接種ができることになっています。文献上は再接種におい ても副反応についてはほぼ変化なしとなっていますが実際には再接種においては接種後2-3 日目をピークに注射部位の腫脹、発赤、熱感を伴うことが多くなっています。

現在、現行 の肺炎球菌ワクチンの弱点を補うべく次世代肺炎球菌ワクチンの開発が進められていま す。

今月は日本内科学会雑誌2015年11月を参考に記載しました。また肺炎球菌ワクチンの 接種について悩まれている方は主治医に相談ください。

山田医院 医師 山田良宏

現代社会でおきている栄養障害とは

新年に入り半月が過ぎました。そろそろ正月気分もとれ普段の生活に戻りつつある頃です。

一年のうち、師走から新年にかけては忘年会、新年会、友人との食事会などと普段以上にお食事、御馳走を食べる機会 が多い時期です。そのたびに「また食べ過ぎた、飲みすぎた」と反省や後悔する方も多いのではないでしょうかこのよ うな飽食の時代の食生活、栄養バランスについて問題はないのか? 考えてみました。戦後の栄養状態が悪かった時代 には栄養不足が問題となっていました。生命を維持、健康的な生活を送るために、最低限度必要な栄養素を確保するこ とが困難だったからです。

本来、日本人の食事は米を主食にして、野菜、海草類、魚介類、大豆、大豆製品などを組み合わせたもので、動物性 脂質は少なく、ビタミン、ミネラル、食物繊維を十分にとれる内容でした。

「飽食の時代」とも呼ばれる現代では好きなものを好きなだけ食べられるようになりました。それがエネルギーの過 剰摂取や栄養バランスの偏りを生み、肥満者や生活習慣病の問題が出てきました。

1.増え続ける脂質の摂取量

最近、問題になっているのがPFCバランスの変化です。PFCバランスとは、総摂取エネルギーに占めるタンパク質(P) 脂質(F) 炭水化物(C)の割合で栄養バランスのよし悪しを判定するのにつかわれています。肥満を気にする人が増えた せいか、一日の摂取エネルギー量は減少しつつあるにも関わらず、穀物からのエネルギー摂取が減り動物性蛋白質摂取 量が増えています。これは、摂取エネルギーは抑えられても栄養面のバランスに問題があります。

2.ビタミンとミネラル、食物繊維の不足

共働き家庭が増え核家族化が進んだ現代では、外食産業が盛んになり、いつでもできあいのおかずが手に入り、気軽 に外で食事ができるようになってきました。忙しい時には、こうしたサービスを利用するのも良いでしょう。しかし、 それが毎日続いては野菜や海草類、果物の摂取量が不足しがちになります。また、ファーストフーズやお菓子類ばかり を食べていると栄養バランスが乱れることになります。野菜や海草類、果物が取れていないとビタミン、ミネラル、食 物繊維が不足します。これが不足すると体調を崩し体調不良、生活習慣病や些細なことでもイライラするなど心の不安 定にもつながります。食事が健康と大きくかかわっていることが注目され始め、外食メニューや弁当,総菜なども健康 志向のものが増えてきました。外食をするときは好きなものを食べるのではなくて、日常の食生活をチェックして、栄 養バランスを考えて不足分を補うよう選択しましょう。また、農業技術や食品の保存技術が進み、ほとんどの食材が一 年を通して手に入るようになりました。農作物や海産物にはそれぞれの旬の季節があり、旬の食材にはビタミン、ミネ ラルが豊富に含まれていますので旬の食材の良さを利用しましょう。現代の食生活の問題点と対処について一部を取り 上げました。食習慣に問題あるとお考えの方参考になればと思います。

山田医院 看護師 畑中幸子

体の内側から冷える内臓型冷え症

冷え症と言えば、手足など末端が冷たくなるというイメージがありますが、最近は生活習慣の変化もあり内臓 が冷えているという人が急増しているようです。今回はあまり聞きなれない「内臓型冷え症」について調べてみ ました。本来人間の体は寒くなると、手足の表面の血管を細め、血流の流れを減らし温かい血液をできるだけ内 臓へと集めようとしますが、体質的な問題、ストレス、不規則な生活で体温コントロールが上手くできなくなる と、寒くても血管が開いて、そこから熱が逃げて行ってしまいます。すると、筋肉で作られた熱を内臓に運ぶこ とができなくなるので、内臓が冷えてしまうのです。

「内臓型冷え症」は、腸の機能が落ちて便秘や下痢の原因になったり、血行不良から目の下にクマができやす くなったり、膀胱が冷えてしまうと細菌が繁殖しやすく膀胱炎になる原因になります。また、内臓が冷えるとい うことは体全体の抵抗力の低下につながるため、風邪もひきやすく、治りにくいといった不調の原因にもなりま す。

なかなか自分では自覚しにくいため、隠れ冷え症ともいわれていますが、手足の先は暖かいのに冷えを感じ る、平熱が低い、二の腕やももが冷える、下腹部がワキよりも冷たい、厚着をしても体が冷えると感じる場合は 要注意です。

内蔵型冷え性を改善するには、冷たい食べ物を避け、体を動かし、体の芯を温めることが大切だと言われてい ます。とはいうものの、忙しいとなかなかできないこともあるかと思います。そんな時にてっとり早く冷えを改 善できるのがカイロで直接温めるということ。

貼る場所は下腹部(おへそから指4本分ほど下の丹田と言うツボ)や仙骨(お尻の割れ目の上あたりにある出っ 張った骨のあたり。脂肪が少ないのでより効果的に内臓全体を温めることができます)の腰回りの2ヵ所が効果 的です。ただし、カイロは直接肌に貼ったり、就寝時にはつかわない等、低温やけどには注意しましょう。

山田医院 医療事務 中町麻里

グローバルヘルスに貢献

昨年12月の新聞日曜版に、世界保健機関(WHO)、世界銀行のトップが東京に集まり、グローバルな保健・医療 の課題を話し合ったという記事がありました。途上国を苦しめる病は、ほとんどは感染症で、移動手段の発達した現 代では国境をやすやすと越え先進国の生活も脅かす。その話し合いにマイクロソフトの創業者、ビル・ゲイツ氏も参 加していたそうです。彼は今、経営から身を引き、財団をつくり、「健康改善」を目的としてWHOの予算の1割近く を拠出しています。貧困国へのワクチン導入や、ポリオやマラリアの撲滅対策はこの資金なしには回らないといわれ ています。今やポリオというとワクチン接種しか思い当たりませんが、1960年(昭和35年)には日本ではポリオ患者 は5606人、死者319人でした。1961年に生ワクチンの導入が始まり、患者は激減し、1980(昭和55年)の例を最後に 日本では新たな患者はでていません。ポリオワクチン接種の仕方は変わりましたが、ワクチン接種は今も必要です。 パキスタン、アフガニスタン、ナイジェリアは「ポリオ常在国」として残っているからです。

ポリオに感染していても症状が出ない場合が多いので、海外で感染したことに気が付かないまま日本に入国し感染 のもとになる可能性があります。仮にポリオウィルスが国内に持ち込まれても現在ではほとんどの人が免疫を持って いるので、大流行にはなりません。しかし予防接種を受けない人が増え、免疫を持たない人が増えるとポリオの流行 が起こる可能性が高まります。1980年に「天然痘」根絶宣言したように、ビル&メリンダ・ゲイツ財団は、ポリオ根 絶のためグローバルヘルスに多大な貢献をしています。

ポリオの予防接種に来る赤ちゃんも小さいながらも、注射の痛みに耐えてポリオ根絶目指し、グローバルヘルスに 貢献しているのかもしれませんね。赤ちゃんガンバレ!!

グローバルついでにちょっと宣伝させてくだい。

オーストラリア(メルボルン市)のお医者さんたちのチャリティーコンサートがあります。 コンサートの収益は「TSURUMI(つるみ)こどもホスピス」に寄付されます。

♪コンサートの詳細は下記の通りです。

♬ 2月27日15時開場。NHK大阪ホール。入場料1000円。

♬「コーパス・メディコーラム」と「大阪府医師会フィルハーモニー」の有志の演奏。

♬ 曲目 ♫ ブラームス 交響曲第1番

♫ヴィエニャフスキ ヴァイオリン協奏曲第2番など。

問い合わせ先;大阪市経済戦略立地推進部国際担当TEL06-6615-3742

山田医院 助産師 清水ユタカ

ヒートショックにご用心!

冬は入浴中の死亡事故が増加傾向にあり、11月から2月にかけての入浴中の事故発生率は、年間の約6 割以上を占めると報告されており、温度差が大きくなりがちな12月~2月は、入浴中の突然死が最も増 えるので、特に注意が必要です。

入浴事故の原因である「ヒートショック」はご存知ですか?

それは急激 な温度変化が身体に及ぼす影響のことです。 温度変化により血圧が急激に上昇したり下降したりしてで失神や心筋梗塞、脳卒中を引き起こします。 ヒートショックの原因として、脱衣所の温度が低いほど浴室への出入りの際に血液変化が多いと明らかに なっております。 また入浴温度ですが、38℃と42℃のお湯につかった場合の血液変化を比べると、42℃の場合は、入 浴直後に最高血圧が一気に上昇するのに対して、38℃の場合は入浴直後の血圧は安定していることがわ かりました。

■ヒートショックの影響を受けやすい人

・65歳以上

・高血圧、糖尿病、動脈硬化、不整脈の方

・熱いお風呂が好きな方など

■ヒートショック対策

・浴室と脱衣所をあらかじめ温めておきましょう。浴槽の湯温との温度差をなくすことが重要です。

・お風呂のお湯は、ぬるめの41℃以下にしましょう。 ぬるめのお湯は、ゆっくり浸かれば血行が良くなり身体が温まり疲れも取れます。

・入浴時間はほんのり汗ばむ程度にしましょう。

・湯船から出る際は、急に立ち上がらずにゆっくり湯船から出ましょう。

・入浴の前後にはコップ1杯程度の水分を補給しましょう。

山田医院 医療事務 杉山恭子

ロタウイルスワクチンについて

ロタウイルス胃腸炎は日本においては5歳未満の小児の間で毎年流行があり5歳までに40-60人に1人程度の 乳幼児が入院するリスクがあると言われています。

好発年齢は生後6ヵ月から24か月で入院を伴う胃腸炎の 原因としては最も多くなっています。

2日ほどの潜伏期間後に通常は発熱(1/3に39度以上)、嘔吐から始 まり1-2日後に頻繁な水様便を認めるようになります。

胃腸炎による脱水症以外にも電解質異常に伴うけい れん、意識障害、腎不全などの症状がありロタウイルス自体が脳炎脳症の原因ともなります。日本等の高 所得国では通常は冬から春にかけて流行しますが低所得国では年間を通しての流行があります。

第1世代の ワクチンであるロタシールドが使用された1998年に腸重積発症を多く認め、発売中止となる経緯がありま したが現在使用されているRV1:ロタリックスとRV5:ロタテックにおいては問題となるような有意 な腸重積増加がないことが分かりました。ただし、特に初回接種後の1週間以内には自然に発症する腸重積 症と比較すると2-3倍増加、この結果として10万回のワクチン接種に当たり1-6人がワクチンに起因する腸 重積が発症することになります。

日本においては米国あるいはオーストラリアに比べると腸重積の自然発 症が3-5倍高いというバックグラウンドもあるので特に注意が必要です。ただし、このワクチンにより40- 60人に1人程度の乳幼児が入院するリスクについては90%程度は減少されることと天秤にかけて考える必要 があります。

現在ロタウイルスワクチンは世界77か国で定期接種となっており(無料接種)日本においても 現在定期接種について検討されています。諸外国と異なり医療費が安くまた医療が進歩している日本にお いてのワクチンによる経済効率はワクチン接種価格が1万8千円まで減額されると効果があるとの推計もさ れておりワクチン価格設定等も含めて課題となっています。

今月は日本医事新報2015/12から参考としまし た。

山田医院 医師 山田良宏