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山田医院だより

第17巻第2号(第193号)

高尿酸血症と生活習慣病について

高尿酸血症は健診項目でもあり一般によく遭遇する病態です。

尿酸塩結晶の関節内蓄積が 痛風関節炎になることはよく知られていることで、高尿酸血症は痛風発症のリスクになる ことは一目瞭然です。

最近では高尿酸血症と生活習慣病の関連についてもよく指摘されて おり、今回は日本医事新報2016年1月号を参照に高尿酸血症についてアプローチをしまし た。

高尿酸血症は痛風を発症しない限りは自覚症状はありません。痛風腎といわれる腎障 害は蛋白尿を呈する頻度も少なく知らないうちに腎機能低下が進行していきます。これの 早期発見のためには健診項目の血清クレアチニン測定では不十分であり血清シスタチンC やeGFRの測定が必要になります。

以前から高尿酸血症の病態は2大別されてきました。す なわち産生過剰型と排泄低下型です。最近になり第3のタイプの存在が報告されるようになりました。

尿酸産生は増加していないものの腸管での排泄が低下しているために腎から の排泄が増加して一見産生過剰に見えるもので腎過剰負荷型といわれています。腎臓での 尿酸排泄は全体の3割を占めており、少なくないものの今まで注目されていなかったこと で今後は消化管での排泄についての研究ならびに創薬が期待されています。尿酸の産生は 約700mgで体内で産生されるものと食事のプリン体に由来するものからなります。通常は体内での産生量は一定と考えられています。

食事のプリン体は食生活と密接な関係が あります。プリン体を豊富に含む食品としては肉類、あん肝、レバー、魚介類の卵、イワ シ、ひもの、ビール、ラーメンなどです。魚卵としては1粒のサイズが小さい白子、うに などに多く、サイズの大きい数の子、すじこ、いくらには少ない。またサイズの大きい鶏 卵にも多くはないようですが、「だし」に使用されるうま味成分もプリン体でありラーメ ンの汁(特に鶏がらスープ、豚骨スープ)には多くのプリン体が含まれています。

アルコール の制限も大切です。ビールは1日に缶ビール500mlまでなら問題はないとされていま す。その他に飲水励行が重要で具体的には1.5から2L以上の水分を取りまた尿pHを7前 後のアルカリ性に傾けるために野菜や海草類の摂取を増加させます。運動は過度になりす ぎると尿酸高値になるために注意が必要です。

薬物としては尿酸産生過剰型では尿酸産生 抑制剤のアロプリノールが使用されます。なお、尿酸排泄低下例においては尿酸排泄促進 剤のベンズブロマロンが使用されます。なお、痛風発作時には尿酸値を下げるような治療 は治療を行うと痛風の遷延化あるいは再発を起こすためにコルヒチンあるいはNSAID Sを使用した消炎鎮痛を主体とした治療になります。腎機能が低下している場合にはNS AIDSでさらに腎機能が悪化するためにステロイドを使用することもあります。

なお、 高尿酸血症は痛風のみならず動脈硬化性疾患、高血圧、糖尿病、メタボリック症候群など の生活習慣病との関連が示唆されていますがこれは疫学研究からでヒトを対象とした研究 からは直接作用としての関連性については証明されていません。ただし、尿酸値が高いこ とと生活習慣病との関連はあると考えられており特に女性において関連性が高いことが分 かっています。

症状のない高尿酸血症(無症候性高尿酸血症)についての治療の必要性は特に 腎機能障害あるいはメタボリック症候群においては有益性があることから治療を行う事が 有用であると考えられています。高脂血症あるいは降圧剤等においても尿酸値が低下する 作用を有する薬剤もありこれらの活用も含めた加療が望まれます。

なお、メタボリック症 候群では内臓脂肪の蓄積がベースにあるために適正なカロリー制限に加えて最近いわれて きた果物、砂糖、清涼飲料水、甘味料などのフルクトースを制限することが大切といわれ ています。なお、尿酸は抗酸化作用があり必ずしも悪いものではありません。あまりにも 低いと激しい運動後に腎障害が起こったり結石が生じたりすることもあります。

またパー キンソン病あるいはアルツハイマー病等において尿酸低値を示す方もあり何事も同様に中 庸がいいようです。次回健診等を受けたら尿酸値も注意してみておくようにしてはどうで しょうか。

山田医院 医師 山田良宏

スギ花粉症の治療法

昨年の夏は暑かった為、今年の花粉の量は多いと予報され、花粉症は症状が強く出るかもしれないそうです。 日本で花粉症疾患が多いのは、戦後荒廃した山野に成長の早いスギを植林した為だそうです。アレルギー反応は 80歳を過ぎると少なくなるとの報告もありますし、屋久島の樹齢200年を超すヤクスギは花粉を飛ばさないそう で、植林した若いスギも花粉を飛ばさなくなる時期は必ず来ますが、何年も待ってはいられません。近年では花 粉症に対する新しい治療法も登場してきているので紹介したいと思います。

花粉症の患者さんは花粉が体内に入ると特定の細胞が活性化し、症状の原因となる化学伝達物質を出します。 その物質のひとつヒスタミンは、くしゃみや鼻水を出します。ロイコトリエンは粘膜の腫れを起こし、鼻づまり や目が腫れる症状が出ます。ですから、くしゃみ鼻水には抗ヒスタミン薬が効果があります。鼻づまり、目の腫 れには抗ロイコトリエン薬や、鼻の通りを良くする点鼻薬やステロイドの点眼薬も効果があります。

抗ヒスタミン薬は第一世代と第二世代があり、最初にできた第一世代は眠気が出たり、緑内障や前立腺肥大を 悪化させてしまう為、その副作用を軽くするために第二世代が作られました。抗生物質や胃腸薬、抗てんかん薬 など飲み合わせの悪いものもあるので、必ず医師に自分が今飲んでいる薬を伝えて、沢山ある第二世代から選ん でもらうようにしてください。抗ロイコトリエン薬は即効性がなく、何日か飲み続けなくてはならないことが注 意点です。鼻づまりをすぐに治したいときに使えるのが血管収縮作用のある点鼻薬ですが、使い過ぎると薬剤性 鼻炎を起こしてしまう事もあり、どうしても必要な時だけの使用が良さそうです。

他にもレーザーで鼻の粘膜を瘢痕化させアレルギー反応を弱くさせる治療もあります。効果はおよそ1から3 年で永久ではありません。また、粘膜が腫れてからは治療できないので、シーズンが始まる前に治療しなくては なりません。 最近では舌下免疫療法が保険診療で受けられるようになりました。以前は減感作療法と言われていたものでス ギ花粉のエキスを体内に少量づつ入れて、長期間かけて免疫反応を抑えていきます。花粉シーズンではない6月 から12月頃始めます。3、4年間毎日舌下する非常に根気のいる治療です。また他の治療と大きく異なることは 「スギ花粉」にしか効果がないことです。新しい治療法は耳鼻咽喉科など、行っている施設が限られていると思 います。「鳥居薬品のアレルゲン免疫療法専門サイト」で相談できる施設が検索できます。

これまで花粉症には症状に対する治療しかありませんでしたが、今ではアレルギー自体への治療法も登場して きているということです。症状と、仕事や学業への影響を考慮して、患者さんそれぞれご自身に合う治療法を選 択しましょう。

山田医院 看護師 盛田里穂

しもやけと手荒れについて

この時期、しもやけや手荒れに悩まされる方も多いのではないでしょうか?

男女関係なく、また子供でも、しもやけの症状に冬場は辛い思いをする方もいらっしゃいます。 水仕事をされる方、主婦の方では今の時期手荒れもひどくなるという方も多いかと思います。 しもやけは、「凍瘡」といい、冬場冷気にさらされる手足や耳たぶなどに多く起こり、また毎年繰りかえす方が 多いようです。寒さにより血液の流れが悪くなり、十分な栄養が手足など末梢に行き届かなくなること、また遺 伝なども関係している事がわかっています。

赤みや腫れ、痛みやかゆみを伴うこともあり、症状は人により様々 です。まずは、しもやけにならないように、症状を悪化させない予防が第一です。外出の際は手袋や耳当てで冷 気から守ることや、栄養のある食事を摂り、入浴や部分浴で身体を温める事が効果的です。症状が改善しない場 合は病院を受診し、適切な治療を受け症状の悪化を食い止める事も大切です。昔はみんなしもやけになっていた から大丈夫、と軽く考えず、特に小さなお子さんでは治療に時間がかかることもあるので早めに対処するのが良いようです。

また今の時期、皮膚の乾燥から手のひびやあかぎれ、湿疹といった辛い症状に悩む方も多くいます。 手洗いや入浴後は保湿をする、家事を行う際は手袋を使用する、外出の際にはマスクやマフラー・手袋で冷気か ら身を守る、アルコールなどの刺激物の摂取を控えることなどでその予防が出来ます。 また、ただの手荒れを思っていたが、ハンドクリームで保湿しても治らず、どんどん症状が悪化する場合など は、手白癬(手の水虫)、疥癬、掌蹠膿疱症など他の疾患が原因の場合もありますので、医師の診察、治療を受 けるようにしましょう。 少しずつ暖かくなるこの時期ですが、インフルエンザの流行もあります。手洗い、うがい、保湿にこまめな水分 補給を行い予防しましょう。

山田医院 看護師 岩崎恵美子

8020(ハチマルニイマル)運動

この「8020運動」とは、1989年(平成元年)より厚生省(当時)と日本歯科医師会が推進してい る「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」という運動です。

「8020」のうち「80」は男 女を合わせた平均寿命のことを意味し、「20」は自分の歯で食べるために必要な歯の数を意味します。 永久歯は親知らずを除き28本(親知らずを含め32本)そのうち20本以上の歯があれば、ほとんどの食 べ物をかみ砕くことができ食生活にほぼ満足できると言われています。

歯は食事の時に食べ物を細かく噛 み砕いて消化しやすくする役割はもちろん、その他にも「発音を助ける」「表情を作る」「体の姿勢やバ ランスを保つ」「ものを噛むことで脳に刺激を与える」など毎日の暮らしに不可欠な役割も担っていま す。ところが多くの人が、歯がそれほど重要な役割を果たしている事に気付かず、歯が抜けても「年だか らしょうがない」などと思ってしまうのです。

老化と共に歯が抜けるというのは、大きな誤解です。1本 歯が抜けても気にしない人もいますが、第一大臼歯(奥歯)という永久歯の中で一番大きく、噛む力も一 番強い、噛み合わせの基本になる大切な歯は1本失っただけで、通常の40%の咀嚼力を失います。ま た、歯は1本1本が別々の機能を有し全部で1つの仕事をしているため、1つの歯車が脱落すると他の歯 がそれを補い過剰労働となり傷んでしまいます。

年齢別にみると65歳から70歳の間に平均で10本以 上の歯が抜けてしまいます。原因はほとんどが歯周病で、その進行速度は、適切な治療・喫煙の有無、過 労やストレスの状況など人により異なります。特に免疫機能が低下する過労やストレスが与える影響は非 常に大きいです。また、糖尿病などの生活習慣病の人は、進行が早く、治りにくくなります。歯周病は止 める事はできても本当の意味での回復はできず、現状維持は歯周病が改善したことを意味し、いつでも再 発の危険を持ち合わせています。

生まれてから亡くなるまでの全てのライフステージで健康な歯を保つことが大切です。歯磨きなど毎日の 手入れはもちろん、口の中の衛生指導などを行っている歯科医院に定期的に通う習慣をつけてみてはいか がでしょうか。

この「8020運動」の達成率は運動開始当初は7%程度(平均残存歯数4~5本)でしたが、現在では 40%に迫り80歳での平均残数も5.9本から13.9本まで増えています。楽しく充実した食生活を送 り続けるため、ぜひ「8020」を目指してください。

山田医院 医療事務 平賀怜奈

先天性股関節形成不全について

先天性股関節脱臼という言葉はよく聞かれたことがあると思います。

かつて日本は脱臼の多発国であり地 域により差はあるものの出生時の約1-3%と高率に発生していました。

1950年からの乳児股関節健診、 1970年からの予防運動の普及により0.1-0.3%と約10分の1まで減少しその多くが生後3~4ヶ月の早期に発 見されました。しかし最近では歩行開始後に発見される脱臼児が増加していることが問題となっていま す。

生後3.4ヶ月での発見では外来においての装具を使用することでほぼ全例が整復されますが1歳過ぎ てからの発見では入院での牽引治療あるいは手術が必要になり、また整復されても早期に変形性股関節症 になる可能性が高くなります。

表題の先天性股関節形成不全という言葉は最近になり先天性股関節脱臼に 変わり使用されるようになった言葉です。脱臼は必ずしも生まれる前から脱臼しているのではなく生まれ てから脱臼することが多いことが分かってきたからです。健診では性別(女性に多い)、家族歴(血縁に 形成不全があることが多い)、分娩時胎位(骨盤位に多い)、大腿のシワの非対称、開排制限(形成不全 があると股の開きが悪い)、診察時のクリック音などから以上があれば最近では超音波検査を行い形成不 全の確認を行うことになります。予防としては生後すぐからの育児法にあります。

以前の巻おむつや三角 おむつなどは大腿部が伸展位に保持されるために脱臼が起こりやすくなるためにまたを広げるいわゆるコ アラ抱っこが勧められています。これについては生後1日目から行うことが大切であると言われていま す。股関節形成不全について心配なことがあればまたお聞きください。

山田医院 医師 山田良宏

今年のインフルエンザについて

年明けからインフルエンザの患者算数が増加しており第4週(1/25-1/31)には注意報レベルを超えました。

2月の初旬 にピークを迎えた感じを受けます。例年はまずA型が流行してついでB型の流行になることが一般的となっています。

昨年度は流行すると予測されていたB型はほとんど流行しなかったことから今年はB型の流行が予測されていました が、予想通りに今年は流行の当初からB型も見受けられています。

2009年にパンデミックを起こしたA(H1)pdm09が最 も多くなっていますがA(H3)香港型、B(ビクトリア系統)、B(山形系統)も年初から多くなっています。現時点ではまだ 薬剤耐性のインフルエンザの検出はありません。

抗インフルエンザ薬は現在4種類が臨床の場で使用可能となってい ます。基本的にすべての薬剤においても発症48時間以内の投与開始が必要です。点滴薬のラピアクタは基本的には重 症例(入院例)に使用、経口剤のタミフルと吸入薬のリレンザ、イナビルを外来では使用することになります。薬剤 特性としては気管支喘息があるとリレンザの投与は発作を起こすことがあるので注意が必要。

イナビルは小児におい ては2峰性発熱が増える傾向があるために吸入がきっちりとできない場合は使用しにくくなっています。

なお、乳製 品アレルギーがあるとイナビルやリレンザの使用は慎重投与になります。タミフルは10歳代での使用は控えるように なっています。

もっともインフルエンザは基本的には自然に治る疾患なので重症、合併症のリスクが高い人(乳幼児 や学童、妊娠中及び産後2週間以内、気管支喘息、心疾患、糖尿病、腎臓、肝臓、神経疾患、免疫不全、アスピリン 服用中)への使用を考慮してその他の人については対症療法で対応を行うという意見もあります。一方、基礎疾患が ない場合でも重症化する場合があるので基礎疾患の有無よりも重症度を重視すべきとの見解を日本感染症学会では示 しています。日常においては発熱を半日でも早く抑える作用がある抗インフルエンザ薬を希望する人が多く実際には ほとんどの場合に投与している状態です。現在新しい作用の治療薬も開発されており2シーズン先には販売される可 能性もあります。

山田医院 医師 山田良宏