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山田医院だより

第17巻第4号(第195号)

思春期女性の健康教育について

現在日本では合計特殊出生率(1人の女性が一生に生む子供の平均数。
自然増と自然減の境目は2.07)が1.4前後を推移している少子化社会となっています。

「女性にとって最も大切なのは子どもを2人以上産む事。仕事でキャリアを積む異常に価値がある。子育てをした後に大学で学べば良い。、、、、、」と大阪市の中学校の校長先生が2月に全校集会で行った発言の一部をマスコミが取り上げて問題となりました。

発言内容の賛否は別として少子化の問題が改めてクローズアップされましたが、日本においての性教育はどうでしょうか。我が国の女性は生殖教育を受ける機会がほとんどないようで、高校の教科書には家族計画・バースコントロールの記載はあるものの不妊症あるいは流産についての記載はほとんどありません。未婚女性への調査で「あなた自身はいくつまで自然に妊娠出来ると思いますか」の質問に対して37%が45-60歳と答えたとの結果があります。生殖知識がないままに不妊症や不育症に直面しているのが現状です。

学校教育において女性が人生設計を立てる基盤となる生殖知識を伝えることは少子化に対してだけではなく女性の活躍の前提になると思われます。妊娠可能年齢は10~50代で上限はほぼ45歳です。不妊症、流産の頻度は現在はどちらも15%程度であり女性の加齢と共に上昇して40歳では不妊症65%、流産40%と言われています。現在日本において生まれる新生児の26人に1人は体外受精児ですが、この体外受精の出生率は20代で約20%、40代では10%未満で高齢不妊女性に対する成績はよくありません。その他加齢に伴い胎児染色体数的異常、早産、子宮内胎児発育遅延、分娩時出血、血栓症などの妊娠異常も増加、妊産婦死亡率も加齢と共に高くなります。20代のうちに妊娠を勧める風潮がありますがそれならば以下に述べるような不妊予防が勧められています。

①月経が順調よりも排卵があるかどうかが大切。思春期の月経不順は拒食症や体重減少性無月経を除いては成長期の一時的なアンバランスと考えて将来の希望を持って良い。

②BMI<18の過度のダイエットはダメ。 ③子宮内膜症はピルによって将来の妊孕性を保持するべき。 ④子宮頚癌予防には検診とワクチンが大切。 ⑤性感染症特にクラミジアは不妊症の原因にもなるので注意。 ⑥仕事、子育て、パートナーなどを考慮して自分の産み時を決める。 ⑦性反応の4段階を知る。 ⑧心と体の冷えを改善する。 ⑨かかりつけさん婦人科医を持つ。 日本では妊娠は病気ではないという理由で出産、避妊、不妊治療の大部分、人工妊娠中絶など女性の健康に深くかかわる部分は自費診療となっています。 妊娠、出産、人工妊娠中絶などの女性の一生を左右するイベントは第3者が決めることではなく寄り添う事が求められています。妊娠先行型結婚(できちゃった結婚)が増加したのは1980年代からであり今では10代の80%、20代前半の60%が妊娠先行型結婚で全体でも4組に1組となっています。この妊娠先行型結婚は母子にとっては悲劇であり、女性は自分自身の心身の健康を損ねる可能性があるだけではなく自身のキャリアプランまで変更を余儀なくされる可能性があります。 基本的に妊娠する時期を決めるのは女性自身であるべきでそれがパートナーと一致していればなお良いことです。思春期女性が伸び伸びと自分の性を謳歌してその延長線上に生殖への夢を持つ事ができるような援助こそが実は生殖にとらわれない健康教育であり選び取る力を付ける近道になると思います。 合計特殊出生率低下に対して継続的就労などを含めた社会保障体制の整備だけではなく、医学的ないろいろな問題点を思春期までに知識として持てるように教育もきっちりと行うことが今後は大切になると思われます。 今回は日本医師会雑誌平成28年4月号から抜粋をしました。 山田医院 医師 山田良宏

機能性ディスペプシア

胃もたれやみぞおちの痛み、お腹が張るなどの症状はありませんか?

胃もたれやみぞおち(おへそより上)の痛みなどのさまざまな症状が慢性的に続いているにもかかわらず、内視鏡検査などを行っても、胃潰瘍・十二指腸潰瘍や胃がんなどのような異常がみつからない病気を『機能性ディスペプシア』といいます。こうした症状は、昔は胃下垂、神経性胃炎、慢性胃炎などと診断されてきました。

しかし、胃の粘膜に何の症状もないのに、胃の粘膜の炎症があるという意味の「胃炎」を使うのは正確ではないということから、近年『機能性ディスペプシア』と呼ばれるようになってきたのです。日本人の10~20%にみられるという報告があり、決して珍しい病気ではありません。しかし、病気であることに気付かないまま放置されていることも少なくありません。

主な症状としては、

①つらいと感じる食後のもたれ感

②食事開始後すぐに食べ物で胃がいっぱいになるように感じて、それ以上食べられなくなる感じ(早期飽満感)

③みぞおちに起こる非常につらい不快な痛み(心窩部痛)

④みぞおちに起こる熱をもったような不快な症状(心窩部灼熱感)

症状が起こる原因としては、

①胃の動きが悪くなっている

②生活習慣(脂肪分の多い食品、コーヒー、アルコール、タバコなどの嗜好品、不規則な生活)

③ストレス(ストレスにより胃の運動が低下したり、胃が過敏になり症状があらわれる)

④知覚過敏(胃が刺激に対して痛みを感じやすくなっている)

⑤胃酸(胃酸が必要以上にでると、胃もたれや痛みなどがおこる)などが考えられます。

症状の原因が胃がんや胃潰瘍などの器質的疾患でないことを確認する検査としては、上部消化管内視鏡検査、上部消化管X線検査(バリウム検査)、腹部超音波検査(腹部エコー)があります。

治療方法としては、

①生活指導⇒規則正しい生活を守り、ストレスから解放されることが大切です。規則正しく食事や睡眠をとる、十分に休養する、適度な運動を心がけるようにするなどライフスタイルの改善を心がけましょう。

②食事療法⇒食生活の見直しと改善をおこないます。毎日3度の食事を規則正しく食べましょう。よく噛み、ゆっくり食べましょう。一度に食べ過ぎないようにしましょう。食事の内容や調理方法に気を配りましょう(胃に負担のかかる食べ物はなるべく避け、脂肪分が少ない、煮る・蒸す・ゆでるといった調理方法がより好ましいと考えられます)

③薬物療法⇒それぞれの症状に合わせて、胃の動きを改善させる薬、過剰な胃酸の分泌を抑える薬、胃の粘膜を保護する薬、胃の不調や食欲不振を改善させる薬、抗うつ薬・抗不安薬などが使われます。

生命に影響を与える病気ではありませんが、日常生活にはかなりの影響が出てくることがあります。市販の薬剤で対応している患者さんも少なくありませんが、医療機関での適切な検査と対応があれば、症状はずっと楽になります。症状を改善して、食事を楽しんだり味わいながら快適な日常生活を送りましょう。

山田医院 看護師 橘 智子

姿勢を良くして健康になりましょう!

仕事で長時間のデスクワークや電車で座って読書をしたり、日常の中で「座る」という姿勢と無縁になることは難しいですね。そして「座る」姿勢で肩こりや腰痛を経験した方も多いのではないでしょうか?

■姿勢をよくするメリット
★免疫力がアップする
姿勢を改善すると胃腸などの臓器が正しい位置に収まり、機能が活発化になります。腸には免疫システムが約7割集まっているので自然に免疫力が高くなります。

★血流がよくなる
姿勢を正すことにより全身の血流が流れやすくなります。血流が良くなると身体に栄養が行き渡りやすくなり、冷え予防に効果的です。

★肩こり、腰痛の改善
肩こりや腰痛の主な原因は身体の歪みです。姿勢が悪いと必要以上に筋肉が伸ばされコリや痛みが出てきます。

■立った時の良い姿勢
立った時の正しい姿勢とは、横から見たときに、耳、肩、胸の中央・股関節・膝・くるぶしが一直線上にあり、背骨が自然なS字カーブを描いている状態のことです。壁を使って簡単にできる姿勢をご紹介いたします。両足をかかとにつけて壁の前に立ち、つま先を30度に開きます。壁に後頭部・肩・お尻・ふくらはぎ・かかとをつけます。お尻を引き締め膝をのばし、足の親指付け根あたりに重心を置きます。

■座ったときの良い姿勢
座った時も、立ったときと同様、1本の線を意識し背骨が自然なS字カーブを描くようにします。正しい座り姿勢を保つためには、椅子の高さも重要なポイントです。姿勢は習慣です。少し姿勢を治したからといって、直ちに結果が出るものではありませんが、長期的に見れば必ず良い結果を導きます。日常的に姿勢を意識して生活してみましょう。

山田医院 医療事務 杉山恭子

低血圧について

血圧とは、血液が血管壁を押す力のことで、心臓から送り出される血液の量(心拍出量)と、血管の硬さ(血管抵抗)によって決まります。

血圧は上の血圧つまり収縮期血圧(最高血圧)と下の血圧と言われる拡張期血圧(最低血圧)であらわされます。心臓は収縮と拡張を繰り返すポンプのような働きをすることで血液を全身に送り出しています。心臓が収縮した時には血液が大動脈に送り出され血管に高い圧がかかります。これが収縮期血圧(最高血圧)です。反対に、血液を送り出した後に心臓が拡張して肺などから血液を吸い込みます。このとき血圧は最も低くなりこれを拡張期血圧(最低血圧)と言います。

血圧の基準値は診察室で測定した血圧が140/90mmHg以上、家庭で測定した血圧が135/85mmHg以上が高血圧のガイドライン(日本高血圧学会)です。ただし年齢や糖尿病、慢性腎疾患、冠動脈疾患などの合併症によりやや異なります。低血圧とは100/60mmHg 以下(WHOの分類)を言います。

今回は低血圧について調べてみました低血圧は大きく分けて3つあります。

①低血圧の原因がはっきりしているもので病気や薬の副作用でひきおこされる「症候性低血圧症」

②病気や薬の副作用がないにも関わらず朝が弱かったり冷え性だったりする「本態性低血圧症」

③立ち上がった時にクラッとする「起立性低血圧症」いわゆる脳貧血と言われるものです。

低血圧の原因は自律神経の乱れ、運動不足、遺伝、体質の問題、病気によるものなどさまざまです。自律神経の乱れは生活習慣やストレスから起こります。まずは規則正しい生活、バランスのとれた食事(かんきつ類やチーズなどはチラミンという成分が含まれ血圧を上昇させる働きがあるようです)、十分な睡眠を心がけましょう。

寝る前のスマホやテレビは交感神経を高めるため眠りに悪い影響を与えてしまいます。入浴はぬるめのお湯でカラスの行水が望ましく長湯、熱い湯は禁物です。低血圧症は多くの場合体質的な問題によるもので、日常生活の改善で症状を軽くすることができます。しかし何かの病気が原因で起こっている場合や、頭痛、肩こり、めまい、立ちくらみ、動悸、息切れ、不眠、朝起きられない、食欲不振、吐き気、胸やけ、胃もたれ、倦怠感、集中力の低下、手足の冷えなどの症状がきつくつらい場合は一度医師にご相談下さい。

新年度になり新入生、新社会人、転勤など生活環境の変わられた方も多くいらっしゃると思います。環境の変化が生活環境の乱れへとつながり体調を崩される方も少なくありません。健康管理には十分に気を付けて新生活を楽しんで下さい。

山田医院 看護師 中島早苗

スマホ老眼について

この時期なると、三寒四温と言いますが、今年は温度差が激しいですネ。インフルエンザや花粉症、皆さんも気を付けて下さいネ。
さて、老眼とは、本来、40歳前後位から、目に起こる老化現象の一つで、近い所が見えにくくなる等の症状です。最近、この症状が、なんと20~30歳代の若者にも見られるそうです。それは、スマホ老眼と呼ばれ、スマートフォンやパソコンの長時間の利用の為、目を酷使にしている事にあるようです。スマホやパソコンなどの画面を長時間見る事で、目のピントの調整力が低下し(毛様体筋の筋肉の疲れ)、夕方頃になると老眼と同じような症状になります。目のかすみ、肩こり、頭痛等の症状も出ます。

スマホ老眼を遠ざける心構えとして、

①スマートフォンやパソコンを1時間見たら、10分程目を閉じて休む

②目の周りを温める等して、血流を良くする

③私も、良くしている事ですが、遠くの景色を見たり、近くを見たり、目を動かして毛様体筋の緊張を和らげる。

老眼とは目の老化で、スマホ老眼とは一時的なものですが、重症化する事もあるので、気なる事があったら、眼科や眼鏡屋さんの門を叩いてみるのも良いかも知れません。

山田医院 医療事務 堂東眞弓

<<訃報>>
当院職員として10年にわたり医療事務業務をしてきました 堂東真弓が4月9日に死去しました。2年ほどの闘病生活をされており、特にこの数ヶ月は倦怠感並びに呼吸困難感にも耐えつつ午前中のみ勤務をしておりました。なお、亡くなる1週間前まで勤務されていました。独特のキャラクターでしたが、山田医院ならびに患者さんのことを真剣に考える責任感がある職員でした。最後の最後まで元気になりたいと訴えており、秘かに頑張っていました。上記の原稿は遺稿となりました。ご冥福を祈るとともにこの場を借りて皆様にお知らせをいたします。

山田医院 院長 山田良宏

蚊を媒体とする海外由来感染症について

2014年に国内感染が確認されたデング熱、インド洋諸島、カリブ海、中南米で流行したチクングニア熱、2015年にブラジルで小頭症の新生児との関連で大きな問題となったジカ熱が蚊を媒体とする海外由来感染症としては大きな問題となっています。これらの病気は日本にいるヒトスジシマカが媒介することから流行については注意が必要な感染症です。

デング熱は東南アジア、中南米などで毎年のように世界的流行を起こしていますが、第2次世界大戦中には大阪、長崎を中心に日本においても流行がありました。発熱、関節痛、発疹、筋肉痛などが主症状ですが、感染者の20%程度しか発症しません。(ただし感染しない80%の人も感染源となります。)人から人への感染はなく蚊を媒介として感染します。

最近ある程度有効なワクチン(Dengvaxia)が開発されて重症化の予防効果が確認されています。チクングニア熱は発熱、関節痛、発疹、筋肉痛などはデング熱と類似していますが関節痛が強く解熱後も数か月以上持続して歩行困難をきたす場合もあるようです。日本においても毎年10名以上の発症者が確認されています。

近年ではチクングニア熱と脳炎をはじめとする中枢神経系疾患との関連を指摘されており日本脳炎よりも重症化率が高く重篤な感染症として再認識されています。ジカ熱は2種類の遺伝子型が知られています。症状はデング熱と類似していて発熱、発疹のみの軽い場合が多く感染後2-7日程度持続します。デング熱と同様で感染者の20%程度しか発症しません。

なお、末梢神経麻痺を伴うギランバレー症候群や自己免疫疾患との関連の指摘もあります。また感染した母親と胎児との間で経胎盤で感染が起こることが指摘されており小頭症との関連を指摘されています。

蚊は糖質を栄養源とするために普段は花の蜜などを吸い栄養源としていますが、産卵のためにメスは吸血をします。呼吸によって排泄される二酸化炭素、汗などを感知して人に近づきヒトスジシマカは昼から夕方にかけて吸血します。池、地下溝、水田、古タイヤ、空き缶などの水たまりに産卵するためにこれらの清掃等が大切になります。4-5月頃から蚊の発生時期となります。蚊の駆除にも心がけてまた外出時には虫よけ剤の使用も考慮してください。

今回はチャイルドヘルス平成28年5月号を参考にしました。

山田医院 医師 山田良宏