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山田医院だより

第17巻第5号(第196号)

高齢者の栄養状態について

栄養摂取に伴う身体状況を栄養状態と言いますが、この栄養状態は「正常」、「過栄養」、「低栄養」の3つに分けることができます。過栄養、低栄養についてそれぞれの問題点を記載してその後に栄養管理について解説をしたいと思います。

一般には加齢と共に体組成の変化が起こり腹囲やメタボリック症候群の割合は増加することが知られています。一般に高齢者の肥満は前期高齢者までは心血管疾患発症のリスクになりますが後期高齢者では明らかではありません。ただし転倒などの身体機能リスクについては特にBMIが30を越すようになると転倒などのリスクが高くなります。

なお、サルコペニア(筋肉量が減り筋力が低下あるいは身体動作が低下した状態)と肥満が重なるサルコペニア肥満では単なる肥満よりも身体機能低下が有り死亡率も高くなっています。なお、中年期の肥満は認知症発症のリスクですが高齢者の肥満についてはむしろ認知症のリスクが減少するとも言われています。なお、高齢者でも中心性肥満は認知症のリスクであり、メタボリック症候群では認知機能低下や認知症発症との関連があります。

ただし、これについても後期高齢者ではメタボリック症候群があると認知症発症のリスクは軽減すると言われています。低栄養については大きく分けて2つあります。エネルギー不足を主体とするマラスムス型栄養障害とタンパク質の不足を主体とするクワシオルコル型栄養障害です。

高齢者においては栄養摂取量の低下で脂肪や筋肉の分解が起こり体重減少が見られ、同時に肝臓の蛋白質合成能力も低下しているためにマラスムス・クワシオルコル混合型栄養障害が多くなっています。
社会的活動性の低下した高齢者は低栄養の危険が高く、特に男性の独居高齢者や認知機能低下を伴った高齢者では栄養の偏りに注意が必要です。なお高齢者では一旦体重が減少すると元に戻りにくくなっています。

2015年に日本老年医学会が「加齢による生理的な予備能力の低下によりストレスに対して脆弱となり様々な健康被害や生活機能障害あるいは死亡などに至る可能性が高い状態」をフレイルとして定義付けていますがこれは低栄養あるいは先ほど示したサルコペニアが中核に位置づけられています。

基本的には体重減少あるいはBMI<18.5、身体機能低下などがある場合にはタンパク質の摂取ならびに筋肉の運動が必要になります。健康寿命を考える際には要介護状態になる原因が大切になります。 60歳未満あるいは前期高齢者においては脳血管疾患の比率が多くなっていますが高齢になるにつれていわゆる「老齢症候群」と言われる骨折、転倒、認知症、衰弱などが目立ちます。極端に言うと成人期においては過栄養が、高齢期においては低栄養が健康寿命の延伸を妨げる要因となっていると考えられます。 現在、40-74歳においては特定健診(メタボ健診)によりメタボリック症候群ならびに過栄養対策が進んでいます。一方介護予防事業では今後要介護あるいは要支援状態に至る恐れがある65歳以上の高齢者を対象に体重減少あるいはBMI低値に対して低栄養予防の啓発を行う事業が行われています。 この2つの健診のあいだに入る65歳から74歳までの前期高齢者の人は過栄養対策か低栄養対策か混乱が生じました。この間は個々の状態に応じて個別対応が必要となります。 なお、高齢者自身も今までは過栄養について意識した食事を行っていた場合においても75歳以降あるいはそれ以前においても筋力の低下があるあるいは意図しない体重減少などはっきりしたことがあれば食事についての考えをギアチェンジすることが大切です。 毎月できれば毎週にでも体重測定は行い体の状態を自分自身で見ながら不安があるようでしたら主治医と相談をすることも大切です。今回は日本医事新報平成28年4月号から抜粋をしました。 山田医院 医師 山田良宏

ストレートネックの解消法

移動中や休憩中などのちょっとした隙間の時間潰しにと、何かを調べたり、音楽を聴いたり、ゲームをするのにいま や必需品となりつつあるスマートフォン。

便利な一方で、画面に釘付けになり、不自然な姿勢をとりづつけることによ り、「スマホ症候群」と呼ばれる症状を引き起こしてしまうことがあります。前回はその症状の1つであるスマホ老眼 について紹介されていましたが、今回は首に及ぼされる影響、「ストレートネック」について調べてみました。

ストレートネックは、長時間スマホを操作することで首が前傾し、通常ならば頭の重さを支えるためにゆるやかな カーブを描いているはずの頸椎がまっすぐになってしまう症状。

肩こりや首痛はもちろん、頭痛やめまい、腕のしび れ、三十肩まで引き起こしてしまう可能性があります。特に筋力の弱い女性はなりやすい傾向があるので要注意です。

ストレートネックの解消法としては、血流をよくするストレッチが有効です。

・椅子に座った姿勢のまま、左腕を天井に向けて伸ばす。

・ゆっくりと左ひじを曲げていき、右手を左肘に添え、頭の後ろまで優しく引き寄せる。

・目線をゆっくり上に引き上げ、頭と腕で押し合うようにしながら、じわじわとおなか、胸を伸ばす。

そのまま10呼 吸ほど繰り返したら、反対側も同様に行う。 いますぐにできる簡単なものですが、それも面倒だと思う場合にオススメなのが枕バスタオル療法。バスタオルをく るっと丸めて円筒状にしたら、首の下に入れて寝るだけ!1回3分を1日2~3回行うだけでよく、そのまま寝てしまって も問題ありません。肩こりや寝違いにも効果的です。 どちらも気軽にできるので、首や肩が辛いときに是非実践してみてください。

山田医院 医療事務 中町麻里

代謝力を上げて元気に過ごしましょう

「代謝が良い、悪い」「代謝が上がる、落ちる」などとよく聞きます。

代謝とは、食事で取り込んだ栄養素を体内でいろいろな 形に変化し、利用し不要なものを排泄するシステムを総称して「代謝」という。身体の主な代謝活動を大別すると4つに分けら れます。

食べ物から得た栄養素を

①エネルギーに変える。

②細胞や組織に変える。

③免疫物質に変える。

この様な代謝活動の中で生まれた余分なものや身体に有害なものを④便や尿、汗などに変えて排泄する。

代謝が良い人は疲れにくい、髪・肌がイキイ キしている。心身ともに活動的で太りにくく、若く見えるとも言われます。

健康であり続けることはもちろん美容面にも大きく 関係する代謝力、加齢とともに代謝の能力は落ちてきます。落とさないだけでなく、できれば上げていきたい代謝力です。

普段よく耳にする代謝の意味:エルネギー代謝とは、食物からエネルギーを産生して身体や臓器を動かす。 基礎代謝とは、心臓の鼓動や体温維持、呼吸など意識しなくても生命維持のために使われるエルネギーの量を指す。 筋肉量の多い人は基礎代謝が高く太りにくいとされています。

基礎代謝量は寒い冬は身体が体温を上げようとするため基礎代謝量は高くなり、反対に暑い夏は自然と体温が上がる ため基礎代謝量は低くなるとされています。また春と秋はこれからやってくる厳しい季節に備え細胞が衣替え時期、身 体に不安なものを排泄するための代謝が高まると言われています。

新陳代謝とは、身体の細胞が生まれ変わることで、全身の細胞で行われています。目に見えて分かる物に、髪の毛 が抜けてまた生えてくる。肌の古い細胞が垢によって落ちて新しい肌になります。 代謝を上げる方法 身体を温めると脂肪もエルネギーに変換されて太りにくくなります。

また血管が拡張して血流もスムーズになり、代 謝された栄養素が全身に運ばれて、老廃物などの余分なものもきちんと回収されるのです。

身体を温める簡単で効果的 な方法は運動と入浴があります。 運動によって最も熱を生み出す器官は筋肉で太ももやお腹の筋肉が効果的です。 入浴は体温を直接上げるのに有効的です。ぬるめのお湯にはゆっくり浸かればリラックス効果も得られます。

食べることは身体を温める (食事誘発性熱産生)とともに、食材そのものが身体を温めるもの、代謝に深く関わる栄 養素もありますので食生活も重要なポイントです。 身体を温める食物には、色の濃いもの 寒い地方で採れたもの、水分の少ないもの、香辛料(コショウ、唐辛子) 発 酵食品(味噌、漬物)、熱を加えたものなどがあります。

夏は身体を温める意識がつい低くなりがちです。夏に身体が冷える原因には、暑くて動かなくなり運動不足、冷房、 薄着、シャワーだけの入浴、食欲低下による食事量や栄養素の不足、冷たいもののとりすぎなどが考えられます。

いつまでも元気で若々しくいるために、代謝力をあげる生活を心がけましょう。 これから迎える夏場に向けて代謝力を下げることなく、元気で猛暑を乗り切りましょう。

山田医院 看護師 畑中幸子

よく噛んで食べていますか?

健康のため食事の栄養バランスや量など「何を」「どれくらい」食べるか気をつけている方は多いと思います。しかし「どのように」食べるかを意識する方は少ないのではないでしょうか。

時代と共に食生活は変化し、現代では軟らかい食べ物が多くなり、噛むという行為自体が減っています。弥生・平安・鎌倉・江戸・戦前・現代の食事を再現して、噛む回数と食事の時間を測定した結果、戦前は1420回22分、現代では620回11分となり、戦前と現代を比較しただけでも約2分の1に激減しています。

ちなみに、弥生時代の一回の食事で噛む回数はなんと約4000回。食事の時間は約50分にもなるそうです。弥生時代と比較すると、噛む回数は約6分の1以下、食事の時間は約5分の1に減っています。

噛むということは口を動かしますが、口だけが勝手に動いているのではありません。口は、脳からの命令で動き、噛んでいるという情報も脳に伝達され、美味しいや不味いなどを含め、いろいろな食感の情報を照合し、食べている物が何であるかを確認しています。つまり、食べ物を通して脳と対話し、脳が寝ていられない、脳を活性化させるということに直結しているのです。

手や足を動かすと同様に、口もしっかりと動かしてあげることが、人間の五感や運動能力を活性化することになります。また、あまり噛まず早食いの人は、ゆっくりよく噛んで食べる人に比べ、肥満リスクが4.4倍に上昇することが確かめられており、日本肥満学会の肥満治療ガイドラインでも、咀嚼法が肥満治療における行動療法のひとつとして明記され、1口で20〜30回以上噛むことが推奨されています。

日本人では年齢が上がるとともに肥満が増える傾向があり、若いうちからよく噛んで食べる習慣を身に付けることが、将来の生活習慣病を予防するうえで重要です。「よく噛んで食べる」ことは食べ物の消化・吸収を助けるだけでなく脳の活性化、肥満予防などその他にもさまざまな重要な役割を果たしており本当に大切です。

日頃の食事のメニューも考え、一口30回を目標によく噛んで食べましょう。

山田医院医療事務平賀怜奈

エコノミークラス症候群を防ごう

4月14日の前震、16日の本震後エコノミークラス症候群で入院が必要になった人は5月15日現在51人にのぼるそうです。そのうち1人の方が亡くなられました。

エコノミークラス症候群は、飛行機や車の中などで長時間おなじ姿勢でいると、足の血液の流れが悪くなって、血の塊(静脈血栓)ができ、その静脈血栓は歩行などをきっかけに足の血管を離れ血液の流れにのって肺に到着し肺の動脈を閉塞してしまいます。最悪の場合、血管がつまって亡くなってしまうこともあります。

静脈血栓ができる原因は

1)静脈血管が傷ついた場合血液は異物と触れると固まる性質を持っています。血管が何らかの原因で傷つくと、血液が異物と接触し血栓ができます。

2)静脈の流れがよどんでいる場合足の筋肉は“第2のポンプ”と言われ、筋肉が収縮、弛緩を繰り返すことで、静脈の流れを促進します。歩行などの運動をすれば、血液の循環もよくなります。

3)血液が固まりやすい体質を持っている場合先天性血栓性素因、後天性血栓性素因があります。急性肺血栓塞栓症の症状はどの程度の大きさの静脈血栓が飛んできたかによります。

比較的小さな血栓の場合は、まつたく無症状のことも多いと言われています。しかしある程度以上の大きさの血栓が肺動脈を塞栓すると突然呼吸困難が生じます。患者さんの約80%の主な症状は突然の呼吸困難、半数の人は胸痛などを訴えます。全身倦怠感、不安感、冷汗などの症状が出現することもあります。

20年の助産師生活のなかで、分娩後に胸の痛みと軽い呼吸困難をうったえた産婦さんがおられたことを記憶しています。静脈血栓によるものでした。

妊娠により子宮が大きくなり血液の循環を悪くして静脈血栓をつくり、分娩後血栓が飛んで発症したようです。熊本地震で避難生活が長引くなかエコノミークラス症候群の患者が増えてきています。

そのため日本循環器学会では車の座席で長時間座った姿勢で眠らないことや、足首の運動、ふくらはぎのマッサージをおこなうこと、十分な水分補給を行うことを呼びかけています。水道の復旧がいちばん遅れているようで予防策の実践はなかなか大変なようです。1日も早く復旧できますように祈ります。

山田医院助産師清水ユタカ

大人の発達症(発達障害)について

以前は幼児期、児童期の診断を思われていた発達障害も現在においては成人期に診断される人がいることも当たり前のような状態となっています。

大人の自閉スペクトラム症(ASD)は子供と同様で「社会的コミュニケーションの障害」と「限局的・反復的な思考・行動様式(こだわりが強い、変化を好まない)+感覚の質的な偏り」を主症状とした発達症の11つです。一般人口の約2%と考えられています。周りからはちょっと変わった人に見られることが多く職場等においても人間関係がうまくいかずに仕事も長続きせずに社会的に孤立することも多くなります。

なお、興味が限局していることからマニアックな方向に行きやすくなり、引越しあるいは配置替えが苦手となります。なおルールへのこだわり、勝ち負けへのこだわりも強くトラブルの原因となることがあります。感覚の問題では空調や他人の咳の音などが気になり集中できない、香水などで気分が悪くなるなどがあります。

注意欠如・多動症(ADHD)は不注意と多動性・衝動性を主症状とする発達症の1つです。

不注意症状から探し物、落し物が多く整理整頓が苦手、遅刻欠勤が多く、スケジュール管理が困難などがあります。多動性・衝動性からは無計画な性的関係、無計画な転職、クレーマー、モンスターペアレント、裁判所の常連など常に対人関係の問題を抱えていることがあります。

大人の発達障害問題として就労がうまくいかない、辞職することが多い、結婚できない、結婚しても家庭生活がうまくいかない、離婚が多いなどがあります。また2次障害を起こすことがあります。社会生活、家庭生活で様々な問題が生じる可能性が有り、そのために色々と悩まされている人がいます。

一方ではその偏りの程度はかなり大きくても、何らかの形で成功を収める人もいます。多くの人がその特性を個性として応援をしていくことも大切だと思われます。

山田医院医師山田良宏