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山田医院だより

第17巻第8号(第199号)

遺伝性腫瘍について

国民の2人に1人は何らかのがんを経験する時代でありがんに罹患した家族が家系内に複数存 在することは珍しくありません。しかし家系内に遺伝が関与するがんが厳然と存在してその 形態が順次伝えられていくことが明らかになり遺伝性腫瘍と診断されました。

遺伝性腫瘍は

①家系内にある特定の臓器の腫瘍患者が多く認められる。

②若者発症例がある。

③多発性(両 側性、多重性を含む)患者がいるなどの特徴があります。

遺伝性腫瘍は全がん患者の5-10%程 度であると考えられており原因遺伝子としては100種類以上が単離されています。

遺伝性腫瘍 はその個体の出発点である受精卵の段階で存在した原因遺伝子の異常が全身の細胞に行き 渡っているためにいずれの臓器も腫瘍が形成しやすい状態であると考えられていますが疾患 ごとに発生しやすい臓器が存在します。

遺伝性腫瘍の診断のスタートは問診から始まりま す。通常は3世代にわたり父方、母方ともに十分に聴取することが大切です。腫瘍(がん)は 基本的にはDNAの疾患であり、がん遺伝子、がん抑制遺伝子などの異常が第1義的な原因とな り生じます。ただし、DNAの異常は遺伝的なものだけではなく環境因子によって生じること もあり、また老化はDNA複製異常の大きな原因となります。

がんはがん遺伝子などがあると すぐにがんになるわけではありません。正常細胞からがん細胞に至るまでは6回程度のイベン ト(ヒット)が必要になります。もし最初から遺伝子異常があれば6回のイベントではなく5回の イベントで発がんすることになり腫瘍が早期に生じ、多発し、さらにはある家系に集積する 傾向を示します。もちろん、遺伝子異常があってもその後のイベントが5回未満の場合には発 がんせずに一生を終えます。

この遺伝性腫瘍が有名になったのはハリウッドの人気女優アン ジェリーナ・ジョリーさんが予防的乳房切除術ならびに乳房再建術を受けたことによりま す。彼女の母親が乳癌に罹患しており乳癌に関連する遺伝子を調べたところBRCA1に変異が あり、ジョリーさん自身は乳癌には罹患していなかったものの母親と同じ変異があることが 分かりました。BRCA1陽性者では乳癌あるいは卵巣癌を発症する確率が極めた高くなるこ とからジョリーさんは手術を受けました。この遺伝性乳がん卵巣がんは常染色体優性遺伝疾 患で乳がん、卵巣がん発症のリスクは高率です。そのためにリスク低減手術として卵管卵巣 摘出術を1次予防として行う事は現時点では最も有効である治療法です。

その他大腸癌に加え て胃、子宮、すい臓、腎などに腫瘍が発生するリンチ症候群、大腸に100個以上のポリープが 生じ、将来的に発癌する家族性大腸腺腫症などは比較的頻度が多い遺伝性腫瘍です。その他 多発性内分泌腺腫症など稀な疾患など含めて多くの疾患があります。まれな腫瘍を認めた場 合に家族性腫瘍の診断がつくことがあります。(たとえば副腎皮質がん、脈絡叢腫瘍からLiFraumeni症候群など)家族性腫瘍が強く疑われた場合には遺伝子検査が行われることになりま す。

遺伝子は

①生涯変化しない

②血縁者間で一部共有している

③発症する前にがんの発症が ほぼ確実に予測される

④不適切に扱われた場合には被験者および血縁者に社会的不利益がも たらされる可能性があるなどがあります。

これらの特性より遺伝子検査を行う場合にはきち んとしたカウンセリングを受けることが必要となります。遺伝子検査を受けた上で遺伝性腫 瘍の遺伝子が確認された場合、日本においては多くの遺伝子検査ならびにジョリーさんのよ うに手術を受ける場合にはあくまでも予防的な手術なので保険適応ではなくすべて自費診療 となります。

なお、最近は治療薬の開発も急速に進んでいて遺伝性腫瘍に特異的な抗がん剤 などの開発も進んでいます。現在の医学においては遺伝子診断ならびに遺伝子に対する治療 を含めて進歩することは確実であり今後、医学のみならず倫理面での発展も大変重要になり ます。がん遺伝子等の詳しいことは遺伝子学として独立した分野でもあり理解も難しい分野 ですが遺伝性腫瘍については日常的にも頻度が高く開業医においても必要な知識となってき ました。

山田医院 医師 山田良宏

心を整える マインドフルネス瞑想

今年は40℃に迫るほどの酷暑となりましたが、皆様はいかがお過ごしでしょうか?

暑い季節は体力も奪われやすく、何をするのも面倒に感じたり、何気ない出来事でもイライラしてしまいがちで す。そんな夏の暑さからくるイライラを防ぎ、心穏やかな状態にたもつ方法、今回は「マインドフルネス瞑想」 について調べてみました。

「心頭滅却すれば火も亦た涼し」。

織田信長勢による甲州征伐の際、武田側について いた甲斐の恵林寺の禅僧である快川紹喜が焼き討ちにあったときの辞世といわれていますが、日本では古来より 仏教の教えに根差した、心の中を曇らせる様々な雑念を捨てる「瞑想」が、悟りを開くために重要なものと考えられていました。近頃、その瞑想の手法をベースにした「マインドフルネス」というストレス低減法が注目され ています。

「マインドフルネス」とは、単純に言えば、今自分が経験していることや考えていることなどに対して、意図 的に意識を集中させるということ。マインドフルネスにはいろいろな実践方法がありますが、なかでもビジネス パーソンが手軽に実践しやすいと注目されるのが、呼吸瞑想である「マインドフルネス瞑想」。自分の呼吸に意 識的に注意を集中する手法で、集中力が高まる、不安・ストレスの緩和、新しいアイディアの創造、免疫力の向 上、ダイエット効果があるといわれています。

【瞑想の方法】

①背筋を伸ばして、両肩を結ぶ線がまっすぐになるように坐骨を立てて座り、目を閉じる。椅子に座っていても 構いません。肩の力がぬけた楽な姿勢を見つけてください。

②身体の呼吸をあるがままに感じる。呼吸をコントロールしないで、呼吸に伴ってお腹や胸がふくらんだり縮ん だりする感覚に注意を向け、その感覚の変化を追いかけていきます。 瞑想中は、わいてくる雑念や感情にとらわれないよう呼吸に注意を向けましょう。もし雑念がわいても心の性質 なので気にせず、淡々と呼吸に意識を戻してください。

③体全体で呼吸するようにする。最初は全体で呼吸をするように、吸った息が手足の先まで流れ込んでいくよう に、吐く息が体の隅々から流れ出ていく様を意識していきます。

④瞑想を終了する。まぶたの裏に注意を向け、そっと目を開けていきます。手足を軽く動かしたり、伸びをした り、身体をさすったりして、普段の自分に戻ります。

この①~④までを、最初は1分からでもいいので、例えば起床時、通勤移動中、昼休憩時、寝る前などの少しの 時間でチャレンジしてみてください。はじめは1分でも意外なほど長く感じます。慣れてくれば是非5~10分程を 目安にゆっくり行ってみてください。マインドフルネスは脳の筋トレともいわれており、すぐに結果が出るわけ ではありませんが、毎日少しずづでも続けることで効果が感じられます。

山田医院 医療事務 中町麻里

経口補水液とスポーツドリンク

暑い日が続き、毎日、熱中症が話題にあがっています。

そこで、今回は熱中症対策として経口補水液とスポーツドリンクについて考えてみました。

実は、似ている様で性質の全く違った飲み物です。 経口補水液は水に塩分と糖分を一定の割合で配合した飲料です。 特徴は体液とほぼ同じ浸透圧である為、吸収率・吸収速度が非常に良く『飲む点滴』とも呼ばれています。

主に下痢、嘔吐、発熱等による脱水症状の治療に用いられます。 成分は糖分が少なく、塩分(電解質)が多くなっています。 スポーツドリンクは運動や重労働など、たくさん汗をかいた時を想定して作られた飲料です。

特徴は水分・ミネラル・糖分・電解質をバランス良く配合している為、浸透圧を下げ、胃腸への負担を軽減しな がら吸収速度を上げています。 主に脱水症状の回復や、炎天下のスポーツにおける熱中症防止などの目的で飲まれます。成分は塩分(電解質) が少なく糖分が多くなっています。

スポーツの後の水分補給と電解質補給であれば、スポーツドリンクで十分ですが、熱中症時は経口補水液が適し ています。 それぞれの特徴を活かした飲み方をしてください。

山田医院 看護師 橘 智子

夏の水分補給

毎日、毎日、暑い日が続いて熱中症や脱水が心配ですよね。

先月の山田医院だよりでも脱水について記事が出ていま した。私たちも、患者さまに「こまめに水分を摂ってくださいね」と言いますが、ではどんなものをどのくらい飲め ばいいのでしょう?

今、経口補水液やスポーツドリンクもいろいろな商品が出ています。夏は汗をかくのでそう いうものを飲んだほうがいいのでしょうか?

実は普段の生活では水(ミネラルウォーター)で十分補給できます。1 回150ml、2時間ごとに、1日で1.2ℓぐらい。塩分は普通の食事をしていれば必要量は摂取できます。コーヒーやお茶 は利尿作用があるので飲む量を調節しましょう。ビールのおいしい季節ですが、アルコールは飲んだ分だけアルコー ルの分解に水を必要とします。1ℓ飲んだら1ℓの水が失われるので注意しましょう。

スポーツドリンクは普段の生活の熱中症予防には糖分が高すぎます。糖分・ナトリウム・カリウム・ビタミン・マグ ネシウム等が入っているのでスポーツなどで大量に発汗した場合は効率よく補給されるので有効ですが、それほど運 動もしていないのに常時、スポーツドリンク等を飲んでいると、大人では糖尿病の可能性、子どもでは虫歯や肥満に つながります。また人工甘味料は少量で強い甘みを感じさせまた飲みたい、と思わせる中毒性があるので注意が必要 です。

ちなみに「ゼロカロリー」といっても100ml中5kcalは「0」と表示していいので、500mlのドリンクに角砂糖 2個分の砂糖が入っていても「ゼロカロリー」と表示されます。

熱中症(発熱・めまい・頭痛・吐き気・気分が悪い・異常な発汗または汗が出なくなる)と思われる時は経口補水液 が有効です。

市販品だと、OS-1、アクアライトORS、アクアソリタなど。また、自宅でも簡単に作ることができま す。 水1ℓ+砂糖(できればブドウ糖)20~40g+塩3g 私もスポーツをして大汗をかいているので(^^ゞ、

その時はスポーツドリンクを2倍に薄めて飲んでいます。

皆さんも、ご自身の体調・生活・運動量に合わせて適切に水分補給していきましょう。

山田医院 看護師 三栖佳子

日焼けについて

夏真っ盛りの暑い日が続き、夏の猛烈な日差しにうんざりしています。

年配の方はご存知かもしれませんが、ひと昔前は浜寺に海水浴場があり、そこに今で言う スイミングスクールがありました。

小学生の私は夏休みのおよそひと月間、その海水浴場で水泳を習い、夏休み明け は本当に真っ黒になって新学期をむかえていました。そのせいかいまだにジグロです。

今回は日焼けについて書いてみました。少し前までは健康的と思われていた小麦色の肌ですが、最近ではあまりお 勧めではないようです。 「日焼け」は、メラニン色素が作られて褐色化することで紫外線の侵入を防ごうとする反応だそうです。日光を浴び てジリジリ熱く感じるのは紫外線ではなく、赤外線などの熱による影響ものです。

日焼けには2種類あります。

①サンバーン 皮膚が赤く炎症を起こす急性症状。日光皮膚炎と言います。 紫外線にあたった直後は発症せず、2~6時間後に赤くなり、 6~48時間後に痛みがひどくなる。 ②サンタン メラニン色素が皮膚表面に沈着すること。 24~72時間で色素沈着し、3~8日後に皮膚剥離する。 紫外線は 3種類あります。 ①長波紫外線(UVA, A波)地上に届く95%がこれ。1年を通じ表皮を通り抜ける。 真皮にある繊維芽細胞を破壊する。窓ガラスや カーテンを通りぬける。室内でも肌に蓄積しシミ、 シワ、タルミの原因になる。

②中波紫外線(UVB、B波)地上に届く5%。5月~8月がピーク。正午前後が ピーク。人体に与える影響はUVAより強い。

③短波紫外線(UVC、C波)オゾン層に吸収されていた。

紫外線は以前は小麦色の肌をつくり、健康の証とされていましたが、近年では紫外線は当たらない方がよいと言われ シミ、ソバカスを増やし、皮膚を老化させ、白内障を発症、または誘発するので治療以外の使用は進められていませ ん。小麦色に焼きたい時は皮膚にダメージを与えないように注意すること。

それには

①日焼け止めを塗り、サンバー ンをおこすUVBをカットしながら

②段階的に焼く。

③日数を経てある程度肌の色が褐色になったらサンオイルを塗 る。無防備に急激に直射日光にあたらないことのようです。日焼けした時の手当は、冷たいタオルで優しく冷やす、 火照りが取れたら保湿する、ビタミンA,Cを含む食材をとる。ひどい時は医師の診察を受けましょう。

上手に日焼けをして、残りの夏を楽しみましょう。

山田医院 助産師 清水 ユタカ

熱性けいれんの診療について

主として生後6か月から60か月までの乳幼児に起こる、通常は38度以上の発熱に伴う発作性疾患です。

発作はけいれ ん限らず脱力あるいは一点凝視のみのこともあります。髄膜炎などの中枢神経疾患などを除外して診断されます。

発 症年齢としては生後2か月からありうるが、生後6か月未満はまれでありこの時期の発作については注意が必要となり ます。通常は3歳までが多く6歳以降についてはまれとなっています。ただし年長児の有熱時発作児においても5歳以 降と比べて再発率は多くなく大多数においては自然消褪する良性の病態であるために対応は一般に準じて行う事が妥 当であると考えられています。

ただし、常染色体優性遺伝形式をとる熱性けいれんにてんかんを伴う病気もあること から濃厚な熱性けいれんの家族歴、無熱時発作の既往がある場合には注意が必要となります。一般に熱性けいれんの 再発率は約30%ですが、以下のいずれかの因子を持つ場合には再発率は60%以上、1つも持たない場合には15%といわ れています。

因子とは

①両親のいずれかが熱性けいれんの既往(特に母親) 両親、同胞にてんかんの既往

③複雑性熱 性けいれん

④短時間(1時間以内)の発熱-発作間隔となっています。

なお、熱性けいれん既往児は一般人口と比べてて んかん発症率が約10倍となっています。ただし、熱性けいれんからあるいは熱性けいれんを繰り返すことでてんかん に移行するのではないことが分かっています。

けいれん発作の治療についてはけいれん発作が5分以上持続している 場合には血管投薬による治療が勧められています。予防的な治療としてはジアゼパム坐薬の投与は有意な効果がある と認められています。

これは発熱時にジアゼパム坐薬(0.4-0.5㎎/kgを8時間おきに2回投与)を使用しますが、ふらつ き、鎮静作用による髄膜炎等の診断困難等からルーチンの予防については推奨されていません。一般には最終発作か ら1-2年、年齢としては4-5歳までが目安になっています。2015年に熱性けいれん診療ガイドラインが発刊されてお り、今回は日本医事新報平成28年7月号から抜粋をしました。

山田医院 医師 山田良宏