第１７巻第１１号（第２０２号）
片頭痛について
目の前にキラキラと光る稲妻のような光が見えるといわれる閃輝暗点があり、その後 に片側性の拍動性の頭痛を時々起こすというのが以前の教科書にある片頭痛の記述で す。
この特徴が今でも重要なポイントですが、現在では両側が痛む片頭痛が約50%あ り、また閃輝暗点などの前兆がない片頭痛、非拍動性の片頭痛もあります。
片頭痛と は「生活に支障をきたす頭痛に悪心、嘔吐などの自律神経症状と脳の感作現象の結果 としての音過敏、光過敏などを伴う発作が反復性に出現する疾患」といえます。発生 機序としてはまだ不明点も多く解明はされていませんが中枢神経の大脳皮質拡延性抑 制に伴う血流の低下が前兆に関与して三叉神経の活性化が痛みに関連すると考えられ ています。
前兆のない片頭痛はもっともありふれた片頭痛のサブタイプで片側性頭 痛、拍動性のほかに中等度から重度の頭痛で動作により悪化して生活に支障が起き、 随伴症状として悪心、嘔吐、光過敏、音過敏が特徴的です。先ほど述べたように拍動 性でなくても、また片側でなくても問題はありません。前兆のある片頭痛は先ほどの 閃輝暗点などの症状が5-60分出現、頭痛の症状としては前兆のない片頭痛と同じに なっています。前兆としては閃輝暗点のような視覚症状のほかに感覚症状（チクチク 感、感覚鈍麻）、言語障害が生じることもあります。
その他として片麻痺、回転性め まい、耳なり、複視、運動失調、意識レベルの低下など脳幹症状を前兆として伴うこ ともあります。なお、食欲の低下、気分の変調、あくび、集中困難などの漠然とした 症状が出ることもありますが、これは前兆ではなく予兆といわれており、あらゆるタ イプの片頭痛で出現します。片頭痛診療において重要なことはくも膜下出血、髄膜 炎、緑内障などに伴う2次性頭痛を否定することが大切です。
なお、仕事、家事がで きないなどの中等度以上の頭痛で悪心を伴う頭痛が反復する場合には片頭痛の可能性 が高く、また頭痛時に人の話声、周囲の雑音が気になり、日光や照明を不快に感じて 部屋を暗くする場合などはさらに疑わしくなります。片頭痛は通常は4-72時間ほど持 続する頭痛で60歳ころまでは繰り返し出現するので注意が必要です。治療には急性期 治療と予防療法が必要になります。急性期の治療としてはいわゆる一般の痛み止めと 片頭痛の特効薬であるトリプタン製剤があります。トリプタン製剤は5品目あり、経 口以外にも点鼻、注射薬もあります。トリプタン製剤は頭痛の発症30分以内の早期服 薬が大切です、遅くなると効果は期待できず、逆には頭痛がある前に服用しても効果 はありません。
小児あるいは妊婦においても状態に応じては使用することがありま す。副作用としてめまいと眠気が多くなっています。なお、脳血管障害、心臓血管障 害などの人には使用できません。片頭痛の予防内服は頭痛の発作が多い、痛みが重症 である、急性期治療薬の効果が乏しい、急性期治療薬が飲めないなどの場合には勧め られます。現在は4種類の薬があり身体状況や他の共存症も検討して投与するように しますが効果発現までは2-3か月を要します。なお、片頭痛には誘因があり精神的因 子としてのストレス、睡眠不足、睡眠過多、環境因子としての天候の変化、炎天、人 ごみ、食事因子としてのアルコール、亜硝酸化合物(ベーコン、ソーセージ)、チラミ ン（チョコレート、チーズ、ココア）カフェインなどにも注意が必要です。発作回数 の増加は片頭痛の慢性化とも関連しています。周期的に起こる我慢しがたい頭痛があ る方は市販薬等で対応し続けるのではなく一度かかりつけ医師に相談してみましょ う。先ほど述べましたトリプタン製剤はきっちりと服用すれば効果は高く生活の質が 高くなることが期待できます。
山田医院 医師 山田良宏
腸の働きは意外にすごい！！
腸の役割…
腸は食物を消化して、栄養分を吸収する場所。しかし、食物を摂取するときは、栄養分だけ でなく身体に有害な菌も一緒に入ってきます。小腸と大腸には、体に侵入した異物を退治する免疫機能の 約7割が集中していること知ってましたか？特に小腸の粘膜下には、たくさんのリンパ球が存在し、外敵か らの侵入に備えています。この有害な侵入者をブロックする腸のバリア機能をリンパ球と一緒に支え、免 疫機能を高めるなどの働きをするのが、腸の中の細菌です。 腸内細菌とはどのようなものか…
人の腸には約数千種類、100兆個もの腸内細菌がいるといわれています。 この腸内細菌を構成してるのが、善玉菌・悪玉菌・日和見菌です。善玉菌の代表は、主に小腸で働く乳酸 菌と大腸で働くビフィズス菌です。乳酸菌やビフィズス菌は、酸を生み出し、その酸には様々な効果があ り、ビフィズス菌が生み出す酢酸は食中毒の原因となるO157を退治する働きもあります。一方、悪玉菌の 代表はウェルシュ菌で、腸内に腐敗物をため込み、便秘や下痢など有害な作用をもたらします。腸内環境 を整えるうえで、決定権を握っているのは日和見菌。善玉菌が有利な環境では、善玉菌に加勢して炎症を 抑えるなどのよい働きをし、逆にアルカリ性になれば悪玉菌の味方をして悪さをします。「日和見」とい う名前の通り腸内の㏗によって善悪どちらにも加担する菌。だから、健康のためには常に弱酸性を維持す る必要があるのです。
弱酸性は肌に優しいと言われますが、腸にとっても同様、健康でいられるか、病気 になるかは、腸内環境に左右されているといえるでしょう。 腸内細菌のバランスが崩れる原因は、過食、絶食、高脂肪食などの食生活を続けたり、生活の中でスト レスを受け続けたりすること。更に、抗生物質は病原菌だけでなく腸内の善玉菌も死滅させるため、抗生 物質を使用し過ぎると悪玉菌が優勢になり、下痢などを引き起こすことがあります。また、誰でも高齢に なるにしたがって、善玉菌が減少し悪玉菌が増加するのも事実です。だからこそ、外から補う事が必須！ 乳製品や、漬物などの発酵食品は乳酸菌の宝庫！！意識的に摂取していくようにしましょう。 腸の働きって、ほんとすごいですよね！腸を元気にして免疫力を維持しておけば、病気を防ぐことがで き、腸を整えることが、癌の予防やインフルエンザの感染対策にも効果があることも明らかになりつつあ るそうです。
山田医院 看護師 川上 啓
お酒を飲むと顔が赤くなる人、要注意！
11月を半ば過ぎ、気付けばあと一ヶ月ほどで今年も終わり、、時が経つのは早いものですね。そして年末 といえば忘年会です！
あちこちで飲み会に参加してお酒を飲む機会も増えるかと思いますが、お酒を飲む と必ず顔が赤くなる人、逆に全くならない人いますよね。なんとなく赤くなる人のほうが血行が良くなっ ているし健康的だろうと思いがちですが、実はその逆で注意する必要があります。そもそもなぜ、顔が赤 くなるのか？その原因はアセトアルデヒドの毒性にあります。
アルコールを分解する過程で発生する物質 (←発がん性)で、それが充分に分解されずに体内に残ることで頭痛がしたり、動機が激しくなったり更に は二日酔いの原因にもなります。アセトアルデヒドを分解する酵素がアルデヒド脱水素酵素(ALDH)で、こ のうちの2型の働き具合によって顔が赤くなる、ならないが変わります。
ALDH2は生まれつきの強弱があり3 タイプに分類されます。
①活性型NN型(酒豪で全く顔が赤くならない)、
②不活性型ND型(飲めなくはないが 基本的にお酒は弱い、飲み慣れてないと赤くなりやすい)
③失活型DD型(お酒が全く飲めない、少量で真っ 赤になる)一番要注意なタイプはほどほどに飲める不活性型です。
鍛えてお酒に強くなったタイプは飲み続 けることで、肝機能等の働きがアップしアルコールを分解する能力が高くなります。
しかしもともとアル コール耐性が弱いためアセトアルデヒドを分解しきれず、体内に毒性をさらしてしまうリスクがあり、最 悪、咽頭がんや食道がんを発生させる恐れもあります。なのでお酒が好きな人、自分はお酒が強い、代謝 が優れているから大丈夫！と過信するのではなく、まずはパッチテストで自分がどのタイプに属するか調 べてみて、お酒との付き合いかたを改めて考えてみるのはいかがでしょうか。酒に飲まれるのではなく、 健康的に楽しくお酒と付き合っていけたらいいですね。
山田医院 医療事務 川村 理恵
寒くなると血圧が高くなる！！
最近、寒い日が多くなってまいりましたが、寒さが増すにつれて血圧が高くなることをご存じでしょうか？
■どうして血圧が上がるの？ 寒くなると、体温を逃がさないように、血管が収縮するため血圧が上がりやすくなります。
その他、運動不足や忘年会、新年会など飲酒の機会が増えることも、血圧を上げる要因になります。
高血圧は自覚症状があまりないため、別名「サイレント・キラー」とも呼ばれています。 心筋梗塞や脳卒中を引き起こすことのある怖い病気です。
■日常生活の注意点 ・急激な温度変化を避ける 血圧は温度と大きく関係しています。高血圧の人はもちろん、そうでない 人も、急な温度変化には注意が必要です。
・夜中のトイレにおきる時は、靴下や上着を着用するなどの防寒対策をする。
・早朝はゆっくり布団から出る。
・お風呂は４０度以下のぬるめのお湯につかる。
■食生活の見直し 食塩を多く摂取している人ほど、血圧が高いということが指摘されています。 一日の塩分摂取の目標値は、男性１０ｇ未満、女性８グラム未満。
■アルコールは適量に 多くの研究で、日々の飲酒量が多いほど、血圧の平均値が高く、高血圧になる リスクも高まることがはっきりしています。 １日に摂取できる純アルコール量を２０グラム～４０グラム程度としています。 （ビールの場合、中びん１～２本になります。）
山田医院 医療事務 杉山恭子
便秘は血圧にも悪影響
私の周りにもたくさんいます、便秘症の友達。そういう私も若い頃は市販のピンクの小粒、よく服用して いました。２錠から、３錠、段々増えて６錠飲まなくてはならない時も、、、。旅行中はお持ち帰りが当た り前（すみません）
でも、最近は時折のテニスとサプリメントとスムージー効果か毎日快調（＾＾）
血圧の高い人がトイレで「心筋梗塞」や「脳卒中」を起こすことが良くあります。排便の為に強くいきむ のは避けましょう。いきむと腹圧が上がり胸腔内圧も高くなってきて血圧が上がってしまい、いきみ終わる と血圧が下がり、短時間に血圧が変動する事で心臓や脳の血管に負担がかかり「心筋梗塞」や「脳卒中」な どが起こりやすいのです。 強くいきまない為に便秘を予防する必要があります。
野菜をたくさん食べ、水分をしっかり摂り、適度な運動をしても便通がない場合は下剤を処方してもらい ましょう。また冬場は、トイレの室内が寒いことや便座が冷たいことも問題です。たとえ部屋が暖かくても トイレが冷え切っていると、便座に座った途端血圧が上がってしまいます。
冬の間はトイレの中や便座を暖 め、廊下が寒い家ではガウンやカーディガンを羽織ってからトイレに行きましょう。 また、冬に暖房が効きすぎた部屋で暖かい料理を食べビールを飲んでいると知らず知らずのうちにゆっくり と全身の血管が広がって血圧が下がってきます。
男性の場合その状態でトイレに行きたったまま排尿をすると血圧が下がっていることに加え排尿による副交 感神経の働きで一層血圧が下がります。結果失神して倒れてしまうことがあります。 予防の為食事中暑くなったら上着を脱ぐ、寒いトイレに行くときは上着を着る、排尿を我慢しすぎない、な どに注意してください。 これから「鍋」がとても美味しい季節、我が家も週末は鍋が多いです。 そんなところにこういう落とし穴もあったのですね。旦那も血圧が低い方ではないので、教えてあげよか なーー笑
山田医院 看護師 冨嶋友子
新型ノロウイルスへの対策
昨シーズン話題となった新型ノロウイルスはこれまで検出されてきたGⅡ.4の遺伝子型と異なりGⅡ.17の遺伝子 型のノロウイルスのことです。これまで広がっていたGⅡ.4と異なる抗原性のためにほとんどの人が免疫を持っ ていなくて多くの人に感染する危険があると警告されています。ただし、遺伝子型が異なっても症状の程度は ほとんど同じと言われており対処法も全く変わりません。ノロウイルスの迅速検査キットは糞便を検体として 用いて3歳未満あるいは65歳以上を対象に保険適応となっています。発症直後は糞便中のウイルス量が多いため に検出されやすいものの経過とともにウイルス量が少なくなるために検出されにくくなります。検査の必要性 については治療法等がないために必要でないという意見も多くありますが、集団発生が起こる場合には1-3日ほ ど前に発端者となるノロウイルス患者さんがいることが分かっているので感染拡大の要因となる人を見抜くた めにも検査は役に立つと考えられています。年内に小児急性胃腸炎ガイドラインが公開される予定ですがガイ ドラインにおいて中等症までの脱水のある急性胃腸炎では経口補水療法が推奨されています。脱水の治療はい かに早く開始するかが治療の鍵で発症直後からの経口補水療法が大切です。嘔吐がる場合には5分おきに５ｍL ずつ(ペットボトルのふた１杯)飲ませることを推奨しています。起き上がれない子供に対しては４５度になる ように体を起こして飲ませることも大切です。なお、推奨される経口補水液はナトリウム濃度が４０Eq/L以上 でOS-1あるいは明治アクアサポートなどがこれに当てはまります。どうしても飲めない場合には凍らせて シャーベット状にするあるいはひと肌程度に温める方法もあります。炭酸飲料水、コーヒー、甘いお茶、果物 ジュースはよくありません。なお重症例に対しては点滴が必要となります。今年もまだ新型ノロウイルスが流 行する兆しはありませんが注意が必要です。
山田医院 医師 山田良宏