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山田医院だより

第17巻第12号(第203号)

増加する加齢黄斑変性症の治療について

加齢に伴い網膜の中心部である黄斑に障害が生じて見えにくくなる病気が加齢黄斑変性症 です。

多くの先進国においては成人の中途失明原因の1位です。

日本においては失明原因 の第4位(1位は緑内障、2位は糖尿病性網膜症、3位は網膜色素変性症)となっています。

50 歳以上の人の約1%に認められておりここ10年で約2倍となっています。遺伝因子と環境因 子が原因と考えられています。加齢が最も大きな要因ですが喫煙、脂質の多い食事、抗酸 化物質(ビタミンA,C,Eなど)の不足、紫外線、運動不足も原因と考えられています。この加 齢黄斑変性症は萎縮型と滲出型の2種類に分類されますが両者とも黄斑部の視細胞の代謝 を支えている網膜色素上皮細胞の加齢変化から始まります。網膜色素細胞下が徐々に萎縮 して網膜が障害されて視力が徐々に低下していくのが萎縮型です。異常な血管が侵入して 網膜が障害されるのが滲出型です。視機能の低下は滲出型で急速でまた深刻です。

欧米諸 国では萎縮型が多いのに対して日本においては滲出型が約9割を占めています。症状とし ては変視症といい周辺部は正常ですが中心部が歪んで見える状態でさらに進行すると真ん 中が見えなくなり(中心暗点)、視力が低下しまた色覚が分からなくなります。視力は徐々 に低下して治療をしなければ多くの方の視力は0.1以下になります。診断は眼底検査、蛍 光眼底造影検査、光緩衝断層計を組み合わせて行われます。現在、萎縮型に対しての治療 はありませんが、滲出型に対してはライフスタイル並びに食生活の改善(禁煙、ビタミン A,C,E、亜鉛などのサプリメント服用、緑黄色野菜の摂取)、抗VEGF薬のガラス体内投 与、光線力学療法などが行われています。抗VEGF薬が現在の主流となっています。この 薬は現在3種類が市販されておりいずれも眼球内投与となっています。投与法は導入期と 維持期に分けられておりこの治療法は根本的な治療ではなく対症療法であるために半永久 的に延々と行われる必要があります。

なおこの薬の副作用としては局所の副作用としては 注射に伴う眼内炎、眼底出血、網膜裂孔などがありまた脳血管障害のリスクの上昇も指摘 されています。光線力学療法は光感受性物質を点滴してから弱い出力のレーザーを病変に 照射する方法です。この方法は日本人の加齢黄斑変性症滲出型の約半分を占めるポリープ 状脈絡膜血管症に対して特に有効となっています。視力回復効果については光線力学療法 は抗VEGF薬に劣ることから単独で使用することもありますが両者を併用することも勧め られています。

これらの治療はあくまでも対症療法であり限界があります。本疾患発症の 背景にある網膜色素上皮の劣化を治療することができれば加齢黄斑変性症の根治的な治療 となることから過去においても網膜色素上皮の移植治療が試みられてきましたが、倫理 的、免疫学的問題、過大な手術侵襲などの問題から標準治療とはなりませんでした。そこ へ登場したのがヒト人工多能性幹細胞(i-PS細胞)です。2年前の平成26年9月に自家i-PS 細胞由来の網膜色素上皮の移植手術が行われました。重篤な合併症なくまた視機能については変化ないもののQOLの評価ではスコアの改善を認めました。

自家移植についてはその 都度患者さんの体細胞からi-PS細胞を樹立されることは10か月に日月と多額の費用が必要 であることから現在では免疫学的拒絶を回避できるHLA6座をマッチさせるようにしたiPS細胞バンクが整備され短期間にかつ費用を抑えることが可能となっています。

また今回 行ったような切開を伴うような手術ではなく細い針で網膜下に細胞を中に注入するだけで 移植が完了する方法なども準備中となっています。今回の症例においてはすでに黄斑部の 視細胞が変性してしまったために網膜色素細胞をi-PS細胞で置き換えても大幅な視機能の 回復は望めませんでしたが半永久的に持続する抗VEGFの注射からは解放されても視機能 は維持できていることから患者さんのメリットは大きなものとなりました。

将来的には視 機能が低下する前に網膜色素上皮を移植すれば視力の改善も期待できると考えられていま す。まだまだ先であると思われていたi-PS細胞の応用はすぐそこまで来ています。

山田医院 医師 山田良宏

舌苔で体調がわかる?

正しいケアの方法 インフルエンザの流行期に入りましたが、みなさん体調はいかがでしょうか?

うがい、手洗いとこまめな水分補給を 行い予防に努めましょう。今回は、「舌苔」についてのお話をしたいと思います。

毎朝、歯磨きと同時に舌ブラシを使って舌苔のケアを行っている方も多いと思いますが、正しいケアの方法が分から ないという方も多くいらっしゃいます。

まず、舌苔とは何か?ですが、

これは、舌の表面に食べ物のカスや剥がれ落 ちた粘膜細胞の塊に細菌が繁殖し、うっすら白く付着し見えているものです。全く舌苔が無いというのも、これは異 常な状態で、健康な人では、うっすら白く舌苔が付着しているものです。

では、異常な状態とは?どういう状態でしょうか。

先に説明した全く舌苔が無い状態・・・呼吸器疾患、栄養状態が悪いことが考えられます。

白く分厚くなった舌苔・・・疲労や風邪、高熱や代謝が落ちている、自律神経の乱れがあるときに多くみられます。 舌の縁から裏側まで白い場合は白板症も考えられます。

黒っぽい舌苔・・・抗生剤の長期服用 黄色っぽい舌苔・・・喫煙、慢性胃炎、便秘や消化不良、アレルギーや婦人科疾患が考えられます。

舌苔が所々剥がれている・・・地図状舌と呼ばれる状態で、ビタミンやたんぱく不足、アトピー性皮膚炎の方にもよ く見られます

赤いぽつぽつが目立つ・・・木苺のように見えることから、木苺舌とも呼びます。精神的な疲労、自律神経失調症、 更年期の方に見られることが多いです。

ケアは、舌ブラシや、指にガーゼを巻き付けて、優しく撫でるように苔を取るようにします。歯ブラシでゴシゴシ舌 を磨くようなケアは絶対にしてはいけません。舌を傷つけるだけでなく、味覚障害の原因となることもあります。 ご自身でケア出来る場合は、なるべく起床後、朝起きてから10時くらいまでに済ませると良いと言われています。

ご自身でのケアが難しい寝たきり状態の方には、介護者の方がケアをするようにしましょう。清潔なガーゼを指に巻 き付け、撫でるようにしてケアをします。寝たきりの方は、栄養状態や、歯磨きが困難なため舌苔が頑固になり中々 取ることは難しいです。この場合、パイナップルジュース(果汁100%)や、はちみつを少量ガーゼにつけて行う と除去しやすい状態になります。

入院中の患者様には、医師の指示のもとこのようなケアを毎日行っていました。 お口のケアは、身体全体の健康にも繋がります。ぜひ、丁寧なケアを取り入れてみてくださいね。

山田医院 看護師 岩崎恵美子

私のコレ…ほくろ?メラノーマ(癌)?

私は小さい頃から顔の中心に大きなほくろがありコンプレックスを感じていました。

癌ではないかと心配したことも あり幾度となく病院で切除してもらおうと考えましたがその度に祖母が「そのほくろは良い運気のほくろだからね」 と言っていた言葉が思い出され結局は切除せず今に至っています。(根拠があって言った言葉かは定かではないので すが…)

そこで今回は皮膚にできる色素班について調べてみました。

人の皮膚には様々な色素班ができます。若い頃 にはほくろなどの色素班ができやすく年をとるとしみにまじって悪性の色素班もできやすくなります。 ほくろの正式名称は「色素細胞母斑」といい色素細胞というメラニン色素を作る細胞の塊です。生まれつきあるもの を先天性母斑といい、生後にできたものを後天性母斑と言います。大人になってからほくろが発生することもまれで はありませんが一般的に年齢とともに色は濃くなってドーム状に大きくなっていきます。

体表からは黒く見えるのが 一般的ですが皮膚の深いところにできるほくろは青く見えるので青色母斑と言います。通常ほくろが癌化することは ありません。しみの正式名称は日光色素班と言い加齢により皮膚がわずかに厚くなって色が濃くなったものです。さ らにしみが盛り上がってざらつく状態のものを脂漏性角化症と言います。

いずれも中高年以降、顔面などの日によく 当たったところにできやすく浮き出るように出現します。メラノーマは悪性黒色腫とも言い色素細胞のがんです。は じめは淡いしみのように見えますが、徐々に濃く拡大してしこりとなり転移すると命にかかわる癌です。痛みなどの 自覚症状がないため受診までの経過が長くなってしまいがちですができるだけ早期に見つけて切除することが重要で す。

主な特徴は、全体の形非対称。縁どりが凹凸で不整。黒色、茶褐色、青色などが入り混じり色の濃さが不均一。 大 濃 さ が7㎜ 以 上。隆 起 し て い る 箇 所 が あ る。大 き さ や 形 が 変 化 し て き て い る。出 血 が あ る で す。 基底細胞がんは毛を作る細胞(毛母細胞)と関係した皮膚の悪性腫瘍です。特に高齢者の顔面に出現しやすく、青み がかった色調と出血しやすいのが特徴です。放置すると周辺の組織を破壊しながら徐々に拡大し大きな皮膚潰瘍、皮 膚欠損を生じることもあります。基底細胞がんは通常転移しません。これらの色素班は肉眼的には見分けにくいもの も多いですがダーモスコピー画像(皮膚を拡大する装置)で色、形の特徴が明瞭になりなります。(けいびょう ニュース2016.10 VOL.29参照)以上のことからとりあえず私のほくろは癌ではないのかな…と一安心です。祖母の言 葉を信じてこのまま持っておくことにします。

山田医院看護師 中島早苗

「の」の字マッサージについて

年始年末は忘年会やクリスマス、お正月など楽しいイベントが盛りだくさん。ついつい食べ過ぎたり、飲みすぎてし まい、腸の動きが鈍くなっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回はそんな時にもおススメな、ひ とりで簡単に続けることが出来る「の」の字マッサージを紹介したいと思います。

腸管は正面から見た時に平仮名の「の」の形で肛門へと繋がっています。そこで腸の形にそっておへその周囲を みぞおちから時計回りに順番にゆっくりと指圧し、外部から刺激を与えることで、腸の動きを活性化することが できます。

①まず上向きに横になり、膝を軽く曲げます(膝を曲げて寝ることによって、腹部の緊張がゆるみ指 圧の効果が深くまで浸透します)。はじめに息を吐きながら鳩尾を3~5回押します。それからおへその方へ ゆっくり手を移動させていきます。恥骨の上まできたら、右方向に向きを変えて押していきます。

②右下角の部分が盲腸があるあたりで、小腸から大腸に移行する部分でもあります。大腸の上行結腸と言われる 部分がここから始まります。「の」の字の登りの部分になり、右上角の部分まで押していきます。右上角の部分 から鳩尾にかけて、肝臓があります。

③そして、大腸は横向きに延びていきますが、この部分が横行結腸と言われています。「の」の字の上の部分を 指圧していき、左上角についたら、今度は下り方向に指圧していきます。左上方部分には胃袋があり、大腸の下 りの部分は下行結腸と言われております。

④最後に重要な部分が、左下角の部分の大腸の終点部分にあるS状結腸になります。S字型に曲がって肛門に向 かっていきます。硬くなった便が滞りやすいところですので、ここを刺激してやることで便意を促すことができ ます。慣れるまでは、力の入れすぎには注意してください。ムリな力で押しすぎると炎症を起すことがありま す。慣れてくると、おなかが固いところや詰っているところなど指先で感じられるので、その部分をゆっくりと やさしく指圧をして柔らかくしていきましょう。

山田医院 医療事務 中町麻里

生活不活発病とは?

生活不活発病とは、まさにその文字が示すように、『生活』が『不活発』になることで全身の働きが低下する状 態の事を言います。

例えば、身体を動かさずに寝ていることで、身体が動かなくなったり、気分も重くなってし まうことがあるでしょう。あまり身体を動かさずにいることで、

例えば以下のような症状がでます。

●心肺機能が低下して、すぐに息きれする

●急に身体を起こした時に低血圧になり立ちくらみ等を起こす

●消化 機能が落ち、食欲がなくなる、便秘になる

●関節がこわばる、手足の曲げ伸ばしがしづらくなる

●床ずれができ る

●うつ状態になる

●筋力がおち、運動機能が低下し、動きにくくなる

●認知症が悪化してしまう

この生活不活発病が、東日本大震災の被災地の仮設住宅で暮らす高齢者に増加傾向にあり、65歳以上の2割が 生活不活発病になったというデータがあります。仮設住宅への入居などで外出や運動の機会が減る傾向にあり、 動くのがおっくうで「動かない」状態が続くと筋力が低下し、「動けない」状態に陥り、生活不活発病が進行。 身体的な疾患のほか、うつ病などの精神的な病を発症する場合もあるそうです。

生活不活発病になる原因は様々です。

①することがない(自宅での役割がなくなった。地域での付き合いや行事がなくなった。老人クラブや趣味の会 が中止、解散。など)

②遠慮して(家族の「危ないから外に出ないで」「年だから動かないで」「迷惑になる から動かないで」。ボランティアなどの「自分達がやりますから」など)

③環境の変化(家の中や庭が散乱し たり、周囲の道が危なくて歩けない。行きたい場所がなくなった。外出しにくい。本人ができるのに周りがやっ てあげる。など) 生活不活発病は、その発端は小さいように見えても、放置しておけばどんどん進行していきます。「動きにくい から動かない」⇒「そのために生活不活発病が起こる」⇒「そのためますます動きにくくなる」という悪循環が 起こるからです。

生活不活発病は予防できるし、一旦起こっても回復させることができるものです。 予防と回復の上でのポイントは、生活が不活発になって起こるものなのですから、その逆に「1日の生活(全 体)を活発化する」ことです。高齢者の場合は、一度動かなくなってしまった身体を元に戻すのは時間がかかり ます。動きにくい方はどうすれば今より少し動けるかを考えたり、本人が動きたくなる声掛けやお誘いをしてみ ましょう。病気や怪我のために安静が必要な方であっても、とにかく安静にし続けるだけでなく、「どれくらい なら動いてもよいか」を医師と相談することも可能です。ただし、無理に動き過ぎてかえって疲れてしまい、動 くのが嫌になってしまうこともあります。運動量や本人の状態を確認しながら少しずつ生活を活発にしていきま しょう。

山田医院 看護師 橘智子

子どもの運動指導

日本においては子どもたちの身体活動量が減少しており特に女子中学生の運動量の低下が問題となってい ます。

小児の骨折も40年程前と比較すると現在では2-2.5倍となっています。日本人の平均寿命は男性で81 歳、女性で87歳と伸びておりこの期間持ちこたえる運動器が必要になります。

骨の質、量の低下による骨 粗鬆症、軟骨の変性、摩耗による変形性関節症、筋自体の問題あるいは神経系の機能低下に伴う筋量減少 (サルコペニア)が要介護状態の原因となっています。小児期の運動はこれらに対して一生に影響を与える 重要なきっかけとなります。身長が急速に増える発育のスパートは男児で12-13歳、女児で10-11歳です。

骨格についてはまず骨の長さが成長してから骨の量が増えるために骨の強さは長さよりやや遅れて増えま す。筋量の増加は身長の発育スパート後に活発となることから強いパワーを必要とする運動は発育スパー ト時期後から始めることが望ましくなります。軟骨については過大な衝撃により骨片がはがれる離断性骨 軟骨炎が生じる可能性もあり過大な衝撃は禁物です。

なお、軟骨組織は修復反応に乏しく損傷は永続的な 変化をもたらすために注意が必要です。神経系は1歳頃には成人の正常範囲に到達していると言われていま す。基本動作や素早い動きの習得は幼児期から学童初期にかけて働きかけることが推奨されておりマット 運動などは有用です。」

また身長増加が活発になるまでの時期にはしなやかさを要する運動(体操、新体 操、フィギュアスケートなど)が適しています。筋力やパワーを要する動きは筋量が増加する時期以降が望 ましく身長の発育スパート期以降となります。特に強いパワーを発揮する動きは成長軟骨を壊すこともあ るので成長骨軟骨層が閉じる時期以降に行う事が大切です。なお、持久性運動は強度が強くなければ小児 期あるいは幼児期に行って問題はありません。最近はアスリート養成等もあり幼小児期からの運動も活発 に行われていますが身体発達に応じた運動が望ましいことも心がける必要があります。

山田医院 医師 山田良宏