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山田医院だより

第18巻第3号(第206号)

ピロリ菌感染のない時代の消化器疾患について

ピロリ菌はヒトの胃粘膜のみに感染して胃外では長期生存はできません。

ピロリ菌感染率は男女差はないものの高齢者になるにつれて感染率が上昇、地域差もあります。感染時期はほぼ5歳以下で感染経路としては少なくとも80%が家庭内感染(特に母子間が主流)と推測されています。成人になりピロリ菌の暴露を受けると急性胃炎を起こすことはあってもそのまま生涯にわたり持続感染することは少ないと言われています。(再感染率は1%未満)

ピロリ菌の感染率は年々低下しており2050年には80歳以上でも30%未満となる見込みです。

なお、現在の中学、高校生の感染率は3-5%と報告されています。ピロリ菌は消化性潰瘍、胃過形成ポリープ、胃がん、特発性血小板減少性紫斑病、胃MALTリンパ腫など様々な疾患との関連が明らかになっています。慢性胃炎は感染者のほぼ100%に発症して感染者では慢性胃炎があると年間に0.3%程度の胃発がんリスクを有することになります。ピロリ菌がいない人は自己免疫性胃炎を除けば原則慢性胃炎にはなりません。

4年前の2013年に慢性胃炎に対してのピロリ菌の除菌治療が保険適応になり年間に150万人が除菌治療を受けていることになります。除菌を行うと炎症細胞浸潤は改善、長期経過ですが前癌病変とされる萎縮や腸上皮化生も改善されるために発がんの抑制にもつながることが示唆されます。ただし、未感染者と比較すると除菌者では胃癌の発癌リスクはまだ高くフォローは必要です。特に除菌時高齢、男性、胃潰瘍、高度萎縮などがある人は要注意です。なお除菌後に一時的に胃食道逆流症が出現したり、肥満、コレステロールが上昇したりする人もあります。ピロリ菌に関係しない胃癌は全胃癌中の1%程度でありピロリ未感染者(1度もピロリ菌に感染していない人)は胃がんの極めて低リスク群となっています。

ピロリ菌と関係しない胃癌としては未分化型腺癌(印環細胞癌)、胃底腺型胃癌があります。ピロリ菌陰性の胃において胃癌発生は極めて稀ですができる場合の胃癌には特徴があることを知っておく必要があります。なお、消化性潰瘍の2大要因としてはピロリ菌感染とアスピリンを含む非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)に代表される薬剤性潰瘍です。現在では後者が増えつつあります。一般にNSAIDsの服用で10-15%に胃潰瘍、3%で十二指腸潰瘍、1%で消化管出血をきたすと言われています。特に以前に胃十二指腸潰瘍の既往が最も重要となります。

その他経口ステロイド薬、SSRI、抗アルドステロン薬も注意が必要になります。なお、原因となる明らかな器質的疾患(潰瘍、癌など)がないのに心窩部の痛み、胸焼け、膨満感などの症状がある疾患は機能性ディスペプシアといわれておりストレスとの関係が強くピロリ菌の感染との関連が少ない疾患も今後増えてくる可能性があります。胃食道逆流症(GERD)は先ほど示したようにピロリ菌除菌で一時期増えるように(除菌早期において約10%に発症)ピロリ菌との関連が一部を除いてはない疾患です。これは高脂肪食、肥満、睡眠不足、一部の薬剤(亜硝酸薬、Caブロッカーなど)との関連も強くなっています。

欧米に多く高齢、男性、肥満、喫煙、ピロリ菌非感染がリスクになる食道バレット腺癌は日本においては食道癌の5%程度ですがピロリ菌陰性の時代には増えてきています。その他、ピロリ菌の未感染と関連した疾患としては好酸球性消化器疾患があります。頻度としては1%未満ですが、食物に対するアレルギー反応が主因となり消化管壁局所に好酸球が異常に集積することで障害が起こる疾患です。他のアレルギー疾患との合併が多く通常の治療では治らないことも多く注意が必要な疾患です。少し前までは胃十二指腸潰瘍の原因は胃酸分泌の抑制を中心に治療が行われ、ピロリ菌が見つかると除菌で胃潰瘍、胃癌がなくなると思われ、その後はピロリ菌がいない時代の病気が増えてきていると病気は時代により変わることがよくわかります。今回は日本内科学会雑誌平成29年1月号から抜粋しました。

山田医院 医師 山田良宏

ロコモ

ロコモとは、運動器(骨や関節、筋肉、神経など体を動かすために関わる組織や器官)の障害が原因で、要介護や寝たきり状態、あるいはその危険性が高い状態を表すロコモティブシンドロームの略で、和文では運動器症候群と言います。

ロコモティブは「運動の」という意味で、機関車という意味もあります。能動的な意味合いをもち運動器は広く人の健康の根幹であるという考えを背景とし、年齢に否定的なイメージを持たないことが必要と考えられました。

ロコモの三大原因になっている運動器の病気は、膝が痛く立ったり座ったりがスムーズにできない「変形性膝関節症」、歩くと脚がしびれる「腰部脊柱管狭窄症」、背中が曲がり骨折しやすい「骨粗鬆症」です。これらの病気を1つでも持っている人はすでに全国で約4700万人もいます。

加齢により身体機能は衰えます。筋力低下、反応時間延長、バランス能力低下などがあげられ、体を動かさなくなることで進行します。

1つの運動器の痛みやダメージで、ほかの運動器にも悪影響を及ぼし、関節や骨、筋肉などに痛みや変形が起こり知らない間に全体の運動機能が衰えることもあります。運動や日常動作がさらに減り、ますますロコモを進行させ、ロコモが進行することでより運動不足になります。まさにロコモの悪循環です。そして、歩行なども含め、自立した日常生活を送ることが困難となり、やがて要介護、寝たきりになる可能性が高くなります。

あなたは大丈夫?7つのロコチェック!

①家の中でつまずいたり滑ったりする
②階段を上るのに手すりが必要
③15分くらい続けて歩けない
④横断歩道を青信号で渡りきれない
⑤片脚立ちで靴下がはけない
⑥二キロ程度(1リットルの牛乳2個程度)の買い物をして持ち帰るのが困難
⑦家のやや重い仕事(布団の上げ下ろし、掃除機など)が困難

1つでも当てはまれば、ロコモである心配があります。色々なところで紹介されている、ロコモーショントレーニングやロコモ体操を始めましょう!ロコモの進行とともに高まる、寝たきりや要介護のリスク。いまからロコモ予防をはじめましょう!!

山田医院 医療事務 平賀怜奈

物忘れと認知症の違いは?

最近物忘れが多くどこに物を直したか思い出せないことがよくあり忘れたころにでてきて「あーそうだったのか」と苦笑することが多々あります。
そこで今回は「物忘れと認知症の違い」について調べてみました。

記憶力は20代をピークに加齢とともに減退しますが、記憶力以外の能力は様々な体験や経験から学ぶことで20代以降も成長し知能全体では50歳ごろまで伸び続けるといわれています。

しかしながら多くの人は60歳ごろになると記憶力に加えて判断力、適応力などに衰えがみられるようになり知能の老化が始まります。記憶力の老化が進行し物忘れが次第に多くなるのもこの時期ですが、この物忘れは加齢に伴う自然なもので認知症の症状ではありません。

認知症でない普通の物忘れは例えでいうと誰かに今朝何を食べたか聞かれたときメニューが浮かんでこず考え込んでしまっても今朝朝食を食べたことは覚えています。

しかし認知症の物忘れではメニューではなく食べたという出来事(エピソード)自体を忘れてしまうのです。

「認知症の人と家族の会」という団体がまとめた“家族が作った”認知症・早期発見のめやすというものがあります。

・物忘れがひどい・切ったばかりの電話の相手の名前を忘れる。・同じことを何度も言う、問う、する・しまい忘れ、置忘れが増えいつも探し物をしている。

・財布、通帳、衣類などを盗まれたと人を疑う。判断、理解力が衰える・料理、片付け、計算、運転などのミスが多くなった。

・新しいことが覚えられない。・話のつじつまが合わない。・テレビ番組の内容が理解できなくなった。

・時間、場所がわからない・約束の日時や場所を間違えるようになった。・慣れた道でも迷うことがある。人柄が変わる・些細なことで怒りっぽくなった。

・周りへの気遣いがなくなり頑固になった。・自分の失敗を人のせいにする。・「このごろ様子がおかしい」と周囲から言われた。

・不安感が強い・ひとりになると怖がったり寂しがったりする。・外出時持ち物を何度も確かめる。・「頭が変になった」と本人が訴える。

・意欲がなくなる・下着を着替えず身だしなみを構わなくなった。・趣味やすきなテレビ番組に興味を示さなくなった・ふさぎ込んで何をするのも億劫がり嫌がる。

以上が認知症の始まりではないかと思われる言動をまとめたものです。個人差もありますが日常の暮らしの中でいくつか思い当たることがあればかかりつけ医に相談してみてはいかがでしょう。

山田医院看護師中島早苗

糖分の取りすぎによって起こる低血糖

朝は食欲がない、ついつい忙しくてお昼を抜いてしまった。

そんな時、特に体調が悪いわけでもないのに急に全身の血の気がひき、冷や汗やめまいに襲われた経験があるという方は結構いらっしゃるのではないでしょうか?

砂糖に含まれるブドウ糖は、脳の満腹中枢を満足させるため、仕事や勉強など脳をフル回転させるために必要不可欠な栄養素です。

一般的に欠食などの偏った食生活によってこの栄養供給源が不足すると、血糖値が正常範囲を超えて下がり、低血糖をおこします。(年齢・性別や体質妊娠の有無におって、基準値より血糖値が下がっても特に症状が出ない場合もあります。)

低血糖になると、攻撃ホルモンといわれるアドレナリンが大量に分泌し、お腹がすいてイライラする、めまい、ふらつき、冷や汗という症状のほか、ボーっとする、やる気が出ない、感情のコントロールができないといったうつ状態に似た症状が起こるなど人間の精神の健康にまで影響を及ぼします。

ところが最近は糖分の取りすぎなどによって、健康な方や子どもであっても低血糖を起こしやすくなっている人が多いと指摘されています。

糖分を多く含むお菓子やジュースをとることで急激に血糖値は上昇し、体は血糖値を下げるためにインスリンを分泌して血糖値を正常に戻そうとします。このサイクル自体は人体の正常な働きで問題はないように思われますが、頻繁にこの反応を繰り返すことで、すい臓の働きが乱れ、なんでもないときにインスリンを分泌したり、少量の糖分に過剰反応してインスリンを必要以上に分泌してしまうというのです。

低血糖が集中力の低下や落ち着きのなさ、キレやすさの原因となっているともいわれています。低血糖の対処法として、よく飴やクッキーといった効率よく糖分を摂取できるものがよいと言われていますが、手元にお菓子を置く習慣をつけると、つい手が伸びて食べ過ぎてしまう恐れがあります。

またブラック以外の缶コーヒーや、エナジードリンクなどは見落とされがちですが多量の砂糖を含んでおり、毎日習慣として飲むという方も多いかと思いますが、心身の健康のためには程々に控えた方がいいかもしれません。脳へのエネルギー補充、自分へのご褒美としての甘いものもときには大切ですが、くれぐれも食べ過ぎとり過ぎには注意してくださいね。

山田医院 医療事務 中町麻里

赤ちゃんのウンチ(^^♪

去年二人の孫が出来、立派な?おばあちゃんになった私ですが、息子は遠方に住んでいるのであまり相談も受けませんが、娘は近くに住んでいるので、良く相談をしてきます。

でも、私の答えでは納得せず、結局山田先生のお世話になってしまいます(~_~;)
そこで今回は赤ちゃんのうんちについて調べました。

赤ちゃんのうんちの色は通常黄色です。ここ5日ほど孫のうんちが緑色と心配するのですが、大丈夫やよー、の言葉もネット情報も信じれず「山田先生に聞いて~」と言います。

先生も心配ない、とおっしゃってくれてようやく一件落着(笑)新生児のときに血便が出たのでとても便には神経質になっています。新生児のときの血便は新生児メレナと言ってビタミンK不足を疑われ追加投与や点滴をされることがあります。早めに医院を受診してください。

では黒い便は??
鉄分が多く含まれたものを食べた場合、うんちが黒っぽくなることがありますが、数日で黄色か緑色になっていれば心配ありません、ただし赤黒いうんちの場合腸からの消化器官での出血の可能性があるので受診してください(――;)

そして、うんち全体がクリーム色や灰白色など白っぽいときもすぐ受診してください。

今はスマホのおかげですぐ写真を撮れて引き伸ばして見れるのでとても便利ですよね!病
院に行く時もその画像や動画を持っていけばより診断がつきやすいですね。
ただ、写真では検査は出来ないので、一応オムツも持っていくようにして下さいね(^.^)

娘は夜中でもスマホの懐中電灯の機能を使ってウンチを観察しています。
母性本能ってすごいですね~私は夜中孫が泣いてても全く気づきませんが、娘、ちゃんとおむつ換えたりおっぱい上げたりしています(笑)段々日中は春の気配が、、でも朝夕は寒く体調管理の難しい季節の変わり目。まだインフルエンザもちょくちょく出ていますので、風邪予防、そして、にっくき花粉予防の為にもマスクは忘れずに・・。元気に春を迎えましょう

山田医院 看護師 冨嶋友子

入園・入学に伴う子どもの登校拒否について

子供の入園、入学は大きな環境の変化を伴う成長の節目です。
このような節目は環境移行と呼ばれており喜びと同時に大きな不安や混乱をもたらします。小学校低学年までの子どもに見られる登校拒否の多くは環境移行による一時的な危機状態です。

生活経験の少ない子どもが新しい環境に戸惑い不適応を起こすことで表す状態の1つです。
一方で環境移行は新しい行動様式を獲得して成長する機会でもあります。幼稚園・保育園への入園は初めて社会集団に参加する大きな環境移行です。

入園当初2-3週間は
①身体反応(食欲不振、腹痛など)
②気になる行動の再開や強まり(夜尿、指しゃぶりなど)
③イライラの増大
④母親への依存度増大
⑤緊張(不安な表情、無口など)

不安な気持ちを様々な形で表出して周囲の人に受けて止めてもらいながら次第に新しい環境に適応し、成長成熟していく様子が伺われます。

小学校入学に際しては授業に集中できない子供たちの行動を「小1プロブレム」と呼ぶことがありますがこれも環境移行期に見せる行動の1つで多くの子どもは短期間で適応します。

小学校低学年の時期は幼児期の自己中心性を残し物事を客観的に捉える力が十分ではなく親や先生への依存心も強く大人が示す行動基準に従おうとします。このために登校拒否の初期には大人が適切な対応をとることで不安の解消や意欲の向上が期待できます。この時期の登校拒否の背景にはストレス場面への不適応があります。まず園や学校での状況確認が必要です。

多くに明確な要因がないことも多く環境に「順応する力」と変化を「乗り越える力」を育無事を目指しますがこの土台となるのが親との愛着関係です。

①子供の訴えを否定せずに受け止めて対応をする。
②コミュニケーションを工夫して安心感を育てる。
③多様な視点で捉える。

この3点の配慮が必要です。登校拒否の子どもや家庭を取り巻く人は決して家族を責めることなく困難な状況に対処する苦労をねぎらい家族が笑顔とパワーを取り戻せるように温かく関わることが大切です。今回はチャイルドヘルス平成29年2月号から抜粋しました。

山田医院医師山田良宏