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山田医院だより

第18巻第4号(第207号)

男性不妊について

一般的に健康な夫婦が避妊なしの性交渉を行った場合の妊娠確率は1排卵周期あたり10-15%程度であり、1年間で妊娠できない場合を不妊と定義しています。実際には15%程度のカップルがこれに該当し、その約半数は男性に原因があるとされています。しかし日本においての不妊治療は婦人科主導であり男性側に原因があった場合でも専門的に診察できる施設は非常に少ない状況です。なお、不妊の原因の約半数が男性にあるという情報以上の理解はまだ患者さん、婦人科医師を含めた一般医師においても深まっているとは言い難い状況です。男性不妊の主な原因は

①造精機能障害(精巣での精子形成能が低下)、

②精路通過障害(精子形成能は保たれているものの精子の輸送路においての通過障害)、
③性機能障害(勃起不全や射精障害など)があります。現在不妊治療としての流れは妻の状態(年齢や卵巣予備能など)により大きく左右されますが、タイミング法などの自然妊娠がむつかしい場合には人工授精(夫の精液を採取してカテーテルで妻の排卵期に合わせて注入する方法)へのステップアップとなりますが、ここからは保険適応外となります。

人工授精の妊娠率は1回当たり約10%で費用は1回1.5-3万円程度になります。なお、体外受精(IVF)と卵細胞質内精子注入法(ICSI)を総称して生殖補助医療技術(ART)と呼びますが、このARTによる妊娠率は1回当たり約30%程度ですが費用は1回40-60万と高額で経済的要因により治療を断念するカップルも非常に多くなっていますが、この問題を受けて国と地方自治体は2004年から特定不妊治療費助成事業を開始しています。

1回について15万円を上限に助成金を支給自治体が多いのですが所得あるいは年齢で女性対象外となるなどの制約は厳しくなっています。なお、男性不妊に対する治療についてもARTを前提とした治療に対しての助成も保険で行われる精液検査、精索静脈瘤の手術などの女性に加えて行われるようになっています。ICSIなどのARTにおいての産児の奇形リスクは優位には高まらないとされていますが、ICSIで生まれた児が結婚したあとに生まれた児の健康への影響を含めて今後も長期的な検討は必要であるとされています。

なお、最近の話題としては男性不妊患者はその背景に慢性疾患を抱えていることも多く精液検査所見と死亡リスクの関連を示す報告もあります。以前から男性不妊患者では精巣腫瘍が発生しやすいことは知られていましたが、精巣腫瘍以外にも慢性疾患を併発しやすく、精液検査で異常が多い男性は死亡リスクが2倍以上になることも指摘されています。このために男性不妊診療においては不妊治療の提供だけではなく患者さんに潜在するかもしれない全身慢性疾患をも念頭に置いて診察をすることが必要になります。なお男性不妊と関連する疾患としては糖尿病が有名です。

糖尿病では勃起障害、射精障害だけではなく精子運動能の低下も指摘されています。クローン病あるいは潰瘍性大腸園などの炎症性腸疾患においては薬物療法として使用されるサラゾスルファピリジンは可逆性の造精機能障害を起こすことから挙児希望の男性には休薬が必要です。また外科治療として潰瘍性大腸炎では大腸全摘+回腸囊肛門吻合術を行いますが直腸での手術操作において勃起障害や射精障害を起こすこともあり術前に精子凍結保存を考慮する必要もあります。

なお、がんに対する化学療法や放射線療法などでは性機能障害を起こして男性不妊の原因となることはよく知られており、昨今では癌生殖医療という分野も出現し、挙児希望の男性ガン患者ではがん治療の前に精子凍結保存を行うことが強く推奨されています。だたし、担癌状態にある男性では治療前からすでに精液所見が悪い可能性も示唆されています。これは発熱、炎症、低栄養状態、免疫異常などのがんによる全身作用によるものと予測されています。精液検査所見が男性の妊娠させる能力の目安であることは言うまでもないことですが、メンズヘルスの目安として捉えることもでき、精液所見不良の男性はがんや心血管障害、メタボリック症候群などの発症リスクが増加して生存期間が短縮することは注目すべきことで、まだ未病状態の患者さんについても予防医学の観点からアプローチすることが大切です。今回は日本医事新報平成29年3月25日号から抜粋しました。

山田医院 医師 山田良宏

頚肩腕症候群

長時間パソコンの作業を続けて首や肩がこった経験は、誰もが持っているではないでしょうか。

IT機器による不調は蓄積されやすいことが知られており、十分な休息をとらずに仕事を続けていると簡単には治すことができない病気を引きおこします。今、毎日のパソコンの作業で疲労がたまり、なかなか回復しない「重い肩や首のこりと痛み、腕のしびれ、目の疲れ」などを訴える人が急速に増えています。

IT時代に突入し、仕事による長時間のパソコン操作を避けて通れなくなった今、誰もがこの病気になる可能性があります。このような不調のほとんどは「頚肩腕症候群」によるものです。これは「パソコン病」といえるもので、パソコン作業があたりまえとなった現代ではこうした不調に悩む人も珍しくありません。

今回は「頚肩腕症候群」について調べました。

頚肩腕症候群とは、パソコンのキーボードをたたくような作業、つまり手、腕をデスクの前に浮かした状態で正確、敏速に、反復して長時間動かしつづけることにより、上半身の筋肉の疲労、脳の疲労が生じ、その結果、簡単には、回復しない異常な肩や首のこり、痛みなどがおこる病気です。放っておくと、冷え、食欲減退、不眠等を引きおこします。

予防方法として一番有効なのは、休養することです。ウィークデイに長い睡眠時間がとれない分は、週末に補うなどプライベートな生活の部分を必要最低限にとどめるなど休養を確保すること。入浴などの温熱刺激など体を温めることによって、筋肉の緊張を和らげる。それによりこりや痛みなどの症状が緩和され気分をリラックスすることができおすすめです。

また、簡単にできるストレッチ体操など体を少し動かすことにより、精神をリラックスすることができます。

他には、「連続して作業しない」「合間に簡単な体操をする」などパソコンで行う仕事の仕方そのものを見直すことにより疲れの原因を少しでも減らすなどです。

最後に、真面目で几帳面な人ほど疲労感を感じていたとしても一生懸命に働いてより重症化してしまい悪循環に陥りがちです。思いあたることがあれば肩こりで病院に行くのは面倒でしょうが重症になる前に専門家に相談し適切な治療をうけましょう。

山田医院 医療事務 阿知波真弓

深呼吸がもつ効果

私は、当院での血圧測定の時に、「深呼吸してから、もう一度測りますね」とよく声をかけます。深呼吸には、いったいどんな効果があるのでしょうか?調べてみました。

普段、私達は無意識に呼吸をしています。現在人は、知らず知らずのうちに呼吸が浅くなる傾向にあると言われています。浅い呼吸が続くと、気持ちが落ち着かなかったり、身体が疲れやすかったりと、私達の心と身体に負担をかけてしまうことが多いようです。

反対に、ゆっくりとした深い呼吸には、脳の緊張をほぐして心を落ち着かせる働きがあり、私達の身体によい影響を与える力が備わっています。緊張した時、人は浅い呼吸になりやすくなります。緊張しているということは、血管が収縮してしまうことにより高血圧症状が出ている状態でもあります。なので、ゆっくりと深い呼吸をすることで副交感神経が働き、リラックス効果が生まれ、交感神経の興奮を抑えられ、血管も拡張し血圧も下がり穏やかになっていくのです。

他にも深呼吸は、多くの効果をもたらしてくれます。上記でも説明したように、副交感神経の働きを強くすることでのリラックス効果や、横隔膜が内臓を刺激するため、内臓が活発に動き、これにより血行が促進され冷え性や便秘改善などにもつながります。では、最後に、深呼吸の方法のひとつを説明します。通常言われている「吸って、吐いて~」の深呼吸は、ますます緊張を高める可能性があります。なぜならば、緊張状態というのは、身体は過呼吸の状態になっています。そこにまた吸うと、さらに呼吸が苦しくなります。なので、緊張をとくための深呼吸は、「吸って、吐く」ではなくて、「吐いて、吸う」です。

まずは、

①吸うことを考えず吐くのです。「もう息を吐けない」と思うまで吐き続け、

②お腹を膨らませながら、口を押えて鼻から大きく息を吸い込みます。

③お腹をへこませつつ、自然に息をスーッと口から吐きましょう。

特に注意していなければならないことは、しっかり最後まで吐くということです。

この深呼吸により、新しい空気をたっぷりと肺に入れ込むことができ緊張が解ける事でしょう。

一度、行ってみてください。

山田医院看護師橘智子

子どもの『成長痛』

6年生になる娘は幼稚園に入る前~4年生くらいまでの間、夜中に「足が痛い!」と泣くことがよくありました。痛いという部分を擦っているとそのうちに寝てしまって、翌朝には覚えていないくらい。

当時かかりつけの小児科医は「成長痛」だと考えられるので特に心配はないとのこと。でもあんなに泣き叫ぶほどなのに、ほおっておいても大丈夫だなんて成長痛っていったい何?ということで今更ながら調べてみました。

『成長痛とは主に3才~10才の幼児や子どもにみられる、片足もしくは両足のひざやかかと、足首やふくらはぎなどの痛みの症状のことをいう。夕方から夜にかけて、数十分間にわたって歩けないほどの痛みを訴えるが、該当の部位が腫
れているわけでも熱を持っているわけでもなく、思い当たるような原因もないような痛みが成長痛の特徴だ。

痛みは一定時間続いた後に止まり、日中になると自由に歩けるため「放っておけば治る」と考えられることが多い。』実は成長痛は医学的にはっきりとした痛みがなぜ起こるのかというメカニズム、予防をするためにはどうすればいいの
かなども確定していないよう。一方で成長痛の理由として精神的な不安やストレスが痛みを生んでいるのではないかという考えもあるようです。

「痛みには湿布を貼ってあげたり、親がやさしく擦るだけでも子供の不安感を取り除くには十分効果がある。成長痛は不定期に何度も発症するため、親の側からしたらまたかと思う時もあるだろうが子供を安心させて精神的に満たしてあげることが一番の近道」だそうです。(他の病気の可能性もあるので、成長痛だろうと親が判断せずまずは医師に診てもらってくださいね)

山田医院 医療事務東川敏美

介護保険について

3月に阿倍野区民センターで開催された「支援の輪づくり講演会@あべの」の講演会に行ってきました。当院院長も第2部の「活動報告」で発表されていました。その中でも阿倍野区のいろいろな地域の取り組み(訪問看護ステーション、
居宅介護支援事業所など)を紹介していましたが、私自身、わかっていないことが多いので、まず、介護保険について調べてみました。

介護サービス・地域のサービスを受けるにはどうしたらいいでしょうか?それには介護保険の申請をして「要介護」の認定をしてもらいます。要介護は「要支援1・2」「要介護1~5」の段階に分けられていて、地域包括支援セン
ター、在宅介護支援センター、区役所などで申請ができます。認定が決定したらどの程度の介護が必要で、どんなサービスを受けられるか、介護支援専門員(ケアマネージャー)に依頼して作成してもらいます。ご自身や家族がプランを
立てることもできますが、複雑なこともあるようなので、専門員の方と一緒に考える方がよさそうですね。

介護保険で受けられるサービスは大きく3つ分けられています。

1.居宅サービス
1)訪問
○訪問介護:入浴・食事・排せつ・掃除・洗濯・調理・通院の補助など
○訪問入浴介助:入浴車で自宅を訪問・入浴の介助
○訪問看護:主治医の指示に基づいて、看護師などが訪問し療養上の世話や診察の補助
○訪問リハビリテーション:スタッフが自宅に訪問し、必要なリハビリテーションを行う
○在宅療養管理指導:医師・歯科医師・薬剤師・歯科衛生士・管理栄養士が訪問し、療養上の管理指導を行う

2)通所:通所介護(デイサービス)通所リハビリテーション(デイケア)

3)短期入所:ショートステイ

4)その他

○特定施設入所者生活介護 ○福祉用具貸与 ○特定福祉用具貸与 ○住宅改修

2.支援サービス
利用者の依頼を受けて専門員がケアプランを立てたり、連絡調整をする

3.施設サービス

○特別養護老人ホーム○介護老人保険施設○指定介護療養型医療施設

介護保険制度では介護サービスを受けた場合、その費用の1割または2割の負担で利用できます。阿倍野区にも身近に相談できる窓口がありますので相談してみてはどうでしょうか?

阿倍野区北部地域包括支援センター:天王寺町北3-18-16☏6719-0065
阿倍野区中部地域包括支援センター:阪南町1-57-2オルセ阿倍野1階☏6629-8686
阿倍野区地域包括支援センター(社会福祉協議会内):帝塚山1-3-8☏6628-1400
阿倍野地域総合相談窓口:文の里3-6-10☏6624-6522
昭和地域総合相談窓口:長池町18-20☏4399-0120

山田医院 看護師三栖佳子

色覚障害の対応について

平成14年まで色覚検査は学校健診の必須項目の1つでしたが一斎検査の方法でプライバシーの配慮にかけており、異常のレッテルを貼られてその後の進学や就職などに悪影響を与えるという指摘で事実上廃止となっていました。

10年以上経過して色覚異常のある生徒が就職の際に初めて色覚に関する就業規則に直面する自体となり平成28年から希望者に対しては色覚検査を再開するようになりました。

この色覚検査は遺伝することが分かっており実質的には遺伝学的な検査に相当することから適切な配慮と指導が必要になります。網膜には光刺激を受容する3種類の錐体があります。この錐体は可視光線の波長に応じて反応して色覚を感じるようになります。正常のC型色覚に対してP型色覚、D型色覚があり学校健診ではこのP型、D型色覚を特定します。C型色覚に比べるとP型、D型はよく似た特徴を示す色覚のために昔からまとめて赤緑色覚と言われていました。

P型、D型色覚の人は日本人男性の20人に1人、女性の500人に1人で1クラスに1名程度いることになります。特徴としては視野や視力などの他の視覚機能には影響しませんが色の見え方が異なるだけです。赤と緑、紫と青、黄と黄緑、水色とピンク、青緑と灰色、赤と茶などの区別に困難を感じることがあります。またP型では一部の赤い色が見えなかったり暗く感じます。

一方通常の人よりも青味の濃淡には敏感です。学校環境を整える「配慮」と社会でたくましく生きていけるような必要なスキルを「指導」する必要があります。配慮としてはカラーユニバーサルデザインといい見分けやすい配色を選ぶ、色が見分けにくい人にも情報が伝わるようにする色の名前を用いたコミュニケーションを可能にすることです。

スキルとしては色の見え方の違いで混乱があるときには色以外の違いを指標にして対象物を区別する、対象物の色名は言葉として覚える。(理科の授業なので出てくる薬品の色など)色弱の生徒、保護者は不安を抱き続けることがありますが、人間の色覚には多様性があり、色弱は少数派であるが能力が劣るのではなく見分けることが得意な色がその他の人と違うことを個性として捉えることが必要です。

無料のスマホアプリで「色のシミュレータ」というものがありP型、D型色覚ではどのように見えるかリアルタイムで確認できるものがありますのでこのようなものも参考にして行くことも大切です。

山田医院医師山田良宏