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山田医院だより

第18巻第5号(第208号)

NAFLD/NASHについて

脂肪肝はその原因から過剰飲酒によるアルコール性脂肪肝とそれ以外の非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)に分類されます。なお、NAFLDの進行する病態が非アルコール性脂肪肝炎(NASH)です。NASHは進行性で肝硬変や肝臓癌の発生母地にもなっています。健診においてはNAFLDの有病率は男性で約40%、女性で約20%であり、NASHの発生頻度は成人の2-3%で男女差はありません。

ただし、女性では閉経前のNASHの頻度は少ないものの閉経後に増加してその進行も速いことが知られています。なお、男女ともNASHは70歳代で減少していきます。NASH/NAFLDはメタボリック症候群の肝臓における表現型と考えられています。現時点においてのNASH/NAFLDについては肥満や2型糖尿病がある人で合併率が高く、2型糖尿病の半数においてNAFLDを指摘されています。なお、日本においては肝硬変の約4%、肝細胞癌の約5%がNAFLD/NASHによるものとされています。

また、NAFLD/NASHでは肝臓の線維化が徐々に進行して肝硬変に至るまで多くの症例においては自覚症状はありません。肝細胞の20-30%以上に脂肪変性を認めると各種画像において診断は可能となります。腹部超音波検査は簡便ですがまだ感度は低く、腹部CTでは客観的な脂肪測定は可能ですが被ばくなどの問題があります。診断に際してはアルコール量については男性では純エタノール量として30g/日、女性では20g/日未満(ビール500mlが20g)であり、またウイルス性肝炎(HBV,HCV)、自己免疫性肝疾患、薬剤性肝障害、代謝性肝障害などの否定が大切です。

NAFLD/NASHの経過については肝線維化への進行から肝硬変への移行は30-40%、不変は30-40%、改善は20-30%とされています。なお、NAFLD症例については有意に生存率が低く、死因としては心血管系イベントと肝関連疾患が多くなっています。肝臓癌についてみると発生率はウイルス性肝硬変に比べると低くなっていますが肥満、2型糖尿病合併例においては発生率は高くなっています。現時点においてはNAFLDに対する治療で高いエビデンスがある薬物治療はまだ示されていません。実臨床においては生活習慣の改善の上で同時に糖尿病、高血圧、脂質異常症に対する治療が必要です。

肝脂肪化については3-5%程度の体重減少で改善しますが7%以上の体重減少においては組織的にも改善の報告がされています。具体的には低カロリー食で炭水化物が50-60%程度、脂質は30-40%程度が推奨されています。特に脂質制限食が推奨されていますが食事の内容ではなく低カロリーであることが最も大切なことです。

運動については体重減少が伴わなくても肝脂肪化が改善することが指摘されており有酸素運動だけではなくレジスタンス運動(筋トレ)も必要です。

NAFLD/NASHにおいては脂肪組織から分泌されるアディポサイトカイン、肝臓から分泌されるへパトカインなどの生理活性物質も関連しており個々の症例において治療法は異なりますがインスリン抵抗性改善薬、脂質異常症治療薬、降圧剤、腸内細菌をターゲットとした治療法などいろいろとあります。繰り返しになりますが現時点においては明らかなエビデンスを持つ治療法はありませんがNAFLD/NASHの改善のためには生活習慣の改善への指導を行いつつ合併する糖尿病、高血圧、脂質異常症に対する治療を行う事が大切であり肝硬変への移行、肝細胞がんの発生など肝疾患に対する加療のみならず、心血管系疾患に対するフォローも大切になります。

肥満傾向があり、健康診断等で肝機能障害を指摘された方は単に脂肪肝と放置せずに将来的にNASHにはならないようにかかりつけ医師に相談をすることをお勧めします。

今回は日本医事新報平成29年4月号から抜粋しました。

山田医院医師山田良宏

小さく産んで大きく育てる?

“小さくなる赤ちゃん”という記事が、㋂28日の朝日新聞にありました。

私は病院の産科で助産師を25年間していまして、母の介護のために、15年前に病院を辞めました。当時新生児室には常時30人ほどの新生児がいました。
毎日の沐浴や、おむつ交換で赤ちゃんを抱き上げて体重を推測していました。多くの新生児の体重はそのころは、3000g以上でした。3500g以上といってもそんなに大きく、重くかんじませんでした。10年くらい前に、久し振りにお手伝いで新生児室に入ることがありました。少子化の影響で新生児室には赤ちゃんの数はへり、以前のような大きな新生児はいませんでした。3200gでも大きいと感じました。

この新聞記事では、出生時の平均体重は戦後の経済成長とともに増加し、1980年をピークに減少し、2010年には男女ともに3000gをきるまで減少し、その一方“低出生体重児”と呼ばれる2500g未満の新生児は1975年以降、75年の5.1%から2013年は9.6%に増加したと伝えています。30歳代の女性の平均身長、体重は1947年148.7㎝49.11㎏で、2013年は158.3㎝53.7㎏と体格はよくなりました。

それなのに低体重児の割合は増えています。その背景には、第1に若い女性にある“痩せ願望”があり、第2に出産後にすぐ元の体形に戻りたいという気持ちから妊娠中のエネルギー摂取量も増えない、とこの記事の筆者の産婦人科医は述べています。小さく生まれると将来糖尿病や高血圧などになるリスクが高くなると想定され、生活習慣病胎児期発症起源説と呼ばれるものだそうです。ドーハッド説(DevelopmentalOriginsofHealthandDisease)に発展しました。これは受精時、胎児期、乳幼児期という人生の早期に低栄養やストレス、環境化学物質など劣悪な環境に暴露されると、生活習慣病になりやすい体質が形成される。そこに望ましくない生活習慣が加わると病気が発生する。病気は2段階を経て発症するという説です。小さく生まれるとみんなが病気になるわけではありません。

望ましくない子宮内環境では病気になりやすい体質がつくられます。そこに望ましくない生活習慣が加わることで、病気の発症リスクが高くなります。難しい学説は別にして、新生児の体重が減っていることは確かです。新生児の体重の増減がこんなにも大きく健康に影響を及ぼすとはおもってもみませんでした。次世代の健康の確保には妊娠前、妊娠中に必要な栄養をとることが大切です。社会全体で栄養の重要性を知って、“痩せ願望”を見直す必要がありそうです。“肥満”も“痩せ”もヒトの健康には良くないと改めて考えさせてくれた記事でした。

山田医院助産師清水ユタカ

フレイルを予防しよう

高齢になることで筋力や心身の活力が低下した状態(日本老年医学会より)のことを「フレイル」と呼びます。もともと海外の医療現場で使用されている英語で「frailty」には弱さ、虚弱等の意味があります。

多くの高齢者はフレイルの状態を経て要介護状態になると考えられているので、予防や早期の発見、対策が大切です。米国老年医学会の判断基準によると下記の項目のうち3つ以上当てはまればフレイルと診断されるとのこと。1.体重の減少(日本人の体型であれば1年間で2~3㎏減っていたら要注意) 2.疲れやすい 3.歩行速度の低下 4.握力の低下 5.身体活動レベルの低下当てはまる項目はあったでしょうか??

フレイル状態になると、例えば健康な人であればただの風邪で済むところ、こじらせて肺炎になってしまったり、転倒すれば骨折してしまったり、またストレスに弱いので少しのことでパニック状態になったりします。ただの老化現象と思って放置してしまうとやがて行き着く先は寝たきりになってしまうかも。

早めの対応でフレイルを予防しましょう。

具体的な予防として食事と運動が効果的です。運動はウォーキングが一番最適で、最低でも一日5000歩~6000歩を継続すると筋力の低下を防ぐことが出来るそうです。最初からそんなに歩くのは難しいと思うので、少しずつ歩数を増やすようにして毎日歩くことを習慣にしましょう。フレイル予防には、たんぱく質、ビタミン、ミネラルを含むバランスのよい食事を取ることも大事です。日本人の高齢者はたんぱく質が不足気味と言われています。肉、魚、大豆、卵に多く含まれているたんぱく質は筋肉のもとになるので、食べやすいものを積極的に摂取するよう心掛けたいものですね。平均寿命は男女ともに年々伸びています。ただ平均寿命と健康寿命の差も開いているのもまた事実。いつまでも若々しく健康でいられるように、運動、食事には特に気を配って生活していきたいですね。

山田医院 看護師 川村 理恵

笑うこと

子どもは1日300〜400回笑い、大人は10〜15回、70代になると1日に2回くらいしか笑わなくなると言われています。みなさんは普段笑うこと、どのくらいありますか?今回は、笑いがもたらす様々な効果を紹介します。

・ストレス解消、自律神経のバランスを整える。
自律神経には、体を緊張モードにする交感神経とリラックスモードにする副交感神経があり、両者のバランスが崩れると体調不良の原因となります。ストレスが高いと交感神経、笑っていると副交感神経が優位になります。笑うことで副交感神経へスイッチが切り替わり、安心感や安らぎを感じられストレスが解消されると言われています。交感神経と副交感神経が頻繁に切り替わることで自律神経のバランスも整います。

・糖尿病の予防、改善
笑いには食後血糖値の上昇を抑える効果があります。糖尿病患者は自己管理の厳しさから過度のストレスに悩まされ、血糖値が上がりやすいと言われていますが、積極的に笑うことで血糖値が下がったという事例があり、笑うことでストレスが軽減し血糖値の改善に役立つこともあるようです。

・免疫力が高まる
若くて健康な人の体にも1日3000〜5000個ものがん細胞が発生しています。これらのがん細胞や体内に侵入するウイルスなど体に悪影響を及ぼす物質を退治しているのが、リンパ球の一種であるナチュラルキラー(NK)細胞です。人間の体内にはNK細胞が50億個もあり、その働きが活発だとがんや感染症にかかりにくいと言われ、笑うことでNK細胞が活性化されたという研究結果があります。

・幸福感、鎮痛作用
笑うと脳内ホルモンであるエンドルフィンが分泌され、この物質は幸福感をもたらし、ランナーズハイの要因ともいわれモルヒネの数倍の鎮痛作用で痛みを軽減すると言われています。
「笑う門には福来たる」ということわざの通り、笑うことには数多くの良い効果が秘められていますね。無理せず、自分にあった「笑えること」をみつけて元気で楽しい日々をすごしましょう。

山田医院医療事務平賀怜奈

アンチエイジング(抗加齢)に役立つ食事

加齢を止めることは誰にもできませんが見た目や肉体的年齢は、生活習慣で大きく違ってくると言われています。

日本では平均寿命が80歳を超え若々しく健やかな健康寿命を延ばすことを考えるようになりました。この様な抗加齢医学は1990年代にアメリカで始まり、日本では2003年に日本抗加齢医学会が設立されました。こうしてアンチエイジングのための予防医学として生活療法、サプリメント・薬物療法などが整いつつあります。

アンチエイジングとは、加齢による身体の機能的衰え(老化)を可能な限り小さくすること、言いかえると「いつまでも若々しく」ありたいとの願いを叶えることです。老化原因の一番大きな要因と言われているのが活性酵素説です。活性酵素とは、体内で発生する強力な酸素で細胞を攻撃して酸化させるものです。酸化とは「さび」のことで、鉄が酸化すればさびます。またリンゴが皮をむいて暫くすると茶色くなります。

私たちの身体の中でもこれと同じようなことが起こっているのです。活性酵素によって細胞が酸化し、その結果として全身の機能が低下して老化が進んでいくのです。特に中年期以降に認知症、骨粗鬆症、皮膚の老化、更年期障害、老眼,難聴などのリスクが高まります。

遺伝子の変異、細胞機能の低下、酸化ストレスの増加、免疫力の低下、ホルモンレベルの低下、炎症の慢性化などが共通要因として考えられています。このような体に対して発酵食品、食物繊維が豊富な食品などを摂取することが望ましいのです。

とりわけ単品で多くの栄養がとれる小エビ類、玄米、小魚類、豆類、ゴマは植物や動物の生命組織がすべてそろった形で食べられ、生きるために必要な栄養素が丸ごと含まれていので、細胞を元気づける働きも期待できるそうです。またDHAが多く含む食品としてはさんま、サバ、ぶり、マグロの青魚などがあります。活性酵素除去作用のある抗酸化成分を含む食品にはニンジン、ブロッコリー、ピーマンなどの色鮮やかな緑黄色野菜に含まれているそうです。

アンチエイジングに役立つ栄養素を意識して毎日の食生活に取り入れても、カロリー過剰や栄養バランスが偏っているとせっかくの努力もあまり効果は期待できません。

塩分や糖分、脂質のとり過ぎや過度のアルコール摂取など、身体に悪いとされる食習慣を改めることも重要です。なるべく体に良いことを毎日積み重ねて病気を寄せ付けない元気な体をできるだけ長く維持しましょう。

山田医院看護師畑中幸子

子どもの事故について

病院に搬送される子どもの事故による怪我の原因としては雲梯やジャングルジムからの転落など遊びに関連した事故が最も多く、サッカーや野球などのスポーツに関連した骨折も年齢が上がるにつれて増えています。なお交通事故による外傷も多く中でも自転車に関連する事故は断トツに多くなっています。事故は4-5歳頃から増えており、男児に多くなっています。

特に小学校に入学する7歳以降に男児の外傷事故が急増しています。保育園/幼稚園での検討によると年齢の小さな保育園では性差はないものの3歳以上が多い幼稚園では男児が多くなっています。保育園での発生時間は午前10時頃と午後4時頃にピークがあり園児同士あるいは園児自身の接触による事故が多く、何らかの遊具、機械、備品が関与しているケースが障害の40%を占めています。

骨折は年齢の大きい幼稚園児に多く、脱臼は小さな保育園児に多くなっています。なお、遊具による障害は骨折が多く、園児は受傷部位としては頭部が多くなっていました。一方小学生については擦り傷、切り傷、打撲が全体の90%
を占めます。行事が多い月に事故は多い傾向であり週の半ばである水、木曜日に多くなっています。

なお、知的障害がある子どもの場合には多動、衝動性、落ち着きのなさにより突発的な事故につながるリスクも高く、また予想外の事故も多くなっています。なお、乳幼児に多い異物誤飲についてはタバコ、医薬品が多くなっています。タバコについては服用後1時間で症状がなければ観察でよく、服用後4時間の観測で帰宅可能となります。なお医薬品の誤飲ではタバコとは違いできるだけ吐かせて医療機関の受診が必要になります。

障害について考えると

①事故が起こる前

②事故による障害が起こるとき

③障害が起こった後

④グリーフケアとなります。

障害対策として最も大切なものは予防でWHOでは障害予防のアプローチとして3つのE(法制化、環境、教育)をあげています。

現在では人工知能とビッグデータを活用して多くの事故を分析して効率よく事故の予防ができるように検討されています。

山田医院医 師山田良宏