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山田医院だより

第27巻第9号(第320号)

認知症診療現場の変化と課題について

今回は9月12日に行われた認知症サポート医フォローアップ研修の内容から抜粋をして紹介をしたいと思います。

現在の認知症の患者さんの推定人数は全国で500万人と言われていますがこれは以前に予測された600万人よりは少なくなっています。ただし認知症の手前である軽度認知障害(MCI)は550万人と予測された500万人よりは多くなっています。

MCIは少しのサポートがあれば地域で一人でもどうにか生活可能であると言われているためにこのMCIの方のサポートが大切になります。認知症は自身の物忘れには自覚がないと言われていますが実はMCIの初期には自身でどうもおかしい、、、と自覚して一人で受診することもありますが一般の検査では異常が出ずこのまま経過観察となることが多いようです。

現在の新しい治療法である抗体療法はこのような状態がターゲットになるために今後はこの状態での発見が重要になると考えられています。認知症発症の最大のリスクは加齢ですがそれ以外のリスクにおいては45%が修正可能と言われています。

例えば難聴のリスクは7%であり補聴器の重要性が理解できます。その他に糖尿病、高血圧、脂質異常症など生活習慣病などに加えて社会的孤立も重症なリスクファクターです。高齢独居あるいは夫婦世帯は現在の日本では64%となっています。なお大阪は独居老人の割合が最も多い地域です。

このような独居あるいは夫婦世帯においては外出の頻度も少なく認知症リスクである社会的孤立の原因となっています。
アルツハイマー型認知症の脳内には老人斑、神経原繊維変化がありますが、老人斑を形成するのがアミロイドβ蛋白と言われています。
これに対する治療薬が新しい治療である抗体療法です。
この抗体薬は現在一般に使用されているドネペジルどのような認知症薬が認知症と診断されてから使用するのに対して先ほど示した軽度認知機能障害(MCI)の段階で服用することで認知症への進行を止めることが目的となっている薬です。
この治療薬の導入により①自立した生活期間が延長(若年性認知症の就労支援独居高齢者の生活維持)、②治療に際して自己決定ができるようになるなどが言われています。
なおこの治療薬導入のために頭部MRI検査を施行することが多くなりました。

この頭部MRI検査において脳小血管病という概念ができました。この脳小血管病は脳小血管の動脈硬化に起因しており年齢及び血管危険因子によって増加することが分かっています。
この小血管病があると妄想、うつの割合が多くると言われておりこの脳小血管病を認めるときには動脈硬化の原因となる糖尿病、高血圧の治療が大切になります。
これにより軽度認知機能障害の進行を抑えることになります。なお、最近話題となっていることに軽度行動障害(MBI)があります。

これは50歳以上で
①意欲の低下(自発性低下、無関心)、②感情調節障害(不安、易怒性、気分変調)、③衝動制御障害(興奮、賭博、強迫観念)④妄想幻覚などの症状が6か月以上持続して対人関係、社会機能などで障害が起きるものです。
一般には日常生活は自立していますが数年で認知症への移行率が高くなっています。50歳過ぎて何らかの精神症状が長く続く場合には注意が必要です。

次に若年性認知症についてですが、若年性認知症は64歳までに発症した認知症の事です。
若年性認知症は認知症全体でみると1%未満です。
原因としてはアルツハイマー型認知症、血管性認知症、前頭側頭型認知症が3大疾患です。一般に認知症は物忘れで発症することが多く、受診の主訴は物忘れですが若年性認知症では言語障害、注意障害、視覚認知障害などでの発症が多く高齢者とは異なり記憶障害が目立たない事があります。
病変部位も高齢者では大脳辺縁系である海馬の萎縮が中心であるのに対して若年性認知症では大脳皮質の障害が目立ち進行も速いためにこのような違いが出ると言われています。

特に若年性アルツハイマー病では抑うつ状態が多く病初期にはうつ病と誤診されることも多くなっています。うつ病の治療をしてよくならないことから若年性アルツハイマー病と診断されることも多くなっています。なお、若年性認知症において家族が負担に感じることは高齢者とは異なり経済面、就労面が中心になります。若年性認知症においては出来るだけ長く仕事を継続することが目標であり職務の軽減などの職場環境の調整が重要ですが中小企業では実際問題として対応は困難です。

配置転換などの対応をされることも多いのですが新しい仕事は覚えられないことなどから早期の休職、退職を余儀なくされるようでおおよそ1年程度で退職となるケースが多いようです。
その後は失業保険、のちに障害年金を受ける手続きが必要です。
なお、退職後もまだ仕事はできるとの思いもあり、また高齢者向けのデイサービスでは満足できないなどの問題もあります。社会整備等の問題も含めてまだまだ解決できない問題もあるようです。

認知症診療は治療法など発展はありますがまだまだ未解決な部分も多く社会面でのバージョンアップも必要になっています。

山田医院 医師 山田良宏

子どもの事故予防と命を守る対策

私の息子が小学生の頃にお盆にのせた味噌汁をこぼしてやけどを負いました。
慌ててしまい味噌汁のかかったTシャツを脱がせ、胸の皮膚がはがれてしまいました。幸いにも瘢痕なく治りました。

水難事故では、知人の子どもが通う学校で校外学習中に引率の先生が亡くなられました。皆で水辺を散歩している時に流されたサンダルを追いかけた生徒が流され、先生は救助に向かわれて痛ましい事故となりました。

子どもを思わぬ事故から守るため日常に潜む危険と具体的な予防策について、小児科医山中龍宏氏(子ども家庭庁で重大事故防止策を考える有識者会議委員)お話しから抜粋しました。

今までに聞いたことがある内容かもしれませんが改めて振り返ってみましょう。子どもの死亡事故は救急医療体制の進歩で減少しているそうですが、事故発生数は減っていません。

子どもの事故が起こるのは「発達」するからです。
昨日できなかった事が今日できるようになる。寝返りしない子がソファーに置いた後寝返りが出来るようになり落ちてしまうなど、成長して行動が活発になることで事故につながります。

『転倒・転落』は日常生活事故の中で50~70%を占めます。
「転倒(倒れる)」は1~2歳ごろ、「転落」は好奇心が旺盛になる3~5歳ごろに多いです。
住宅の窓やベランダからの転落は死亡事故につながりやすいので「補助鍵」を付ける、室外機は手すりと60㎝離すなど環境の配慮が必要です。階段、ベビーカー、抱っこひもからの転落も多いので、ゲートや安全ベルトで固定しましょう。発達をイメージし「転ばぬ先の杖」の予防が大事です。

万が一事故が起きた時は、意識がなければ救急車を呼ぶ、困ったときには「#8000」に電話すると小児科医や看護師の適切なアドバイスを受けられます。

『水難事故』について。
レジャーで水辺や川などに出かける機会も有るでしょう。
水難事故は年間1,500件、行方不明者を含む年間800人が死亡しています。特に川には要注意です。浅い川でも子供は溺れやすく、座った姿勢は立った姿勢より流される力が2~5倍となります。滑って尻もちをつくと水圧のかかる面積が広いために流されやすいのです。「ライフジャケット」を着用させましょう。

もし子供がおぼれているのを見た時は泳いで助けに行くのではなく、「119」「大声で助けを呼ぶ」「浮く物を投げる」ことが大切です。「サンダルが流されても拾いに行かない」「叱らない」という「サンダルバイバイ親子条約」という取り組みも有効です。

『やけど』について。

夏の「やけど」は1位花火、2位屋外の遊具、金属製品、3位車やバイクの金属部分、4位アスファルトです。
猛暑で屋外の遊具などが思った以上に熱くなっているため、チャイルドシート、シートベルトの金属部分も大人が触れて確認してください。

子どものやけどは「重症化しやすい」特長があります。皮膚が薄く体が小さいため、身体の表面積の10%以上のやけどを負うと「脱水症状」や「ショック症状」を起こす危険があります。
万が一「やけど」をした時は、すぐに流水で15~30分冷やして進行、痛みをを止めましょう。
流水がない時は保冷剤も有効です。服の上からお椀やカップ麺をこぼした時などは、慌てて脱がせず服の上から流水を30分かけ続ける
ことが原則です。

受診の目安は「水ぶくれ」「手のひら以上の範囲」「顔や手足の関節部分」です。

『窒息・誤飲』について。

気道に詰まる「窒息」、異物を飲み込んでしまう「誤飲」は命を失う事態となりかねません。
子どもの「のど」「気管」は約1㎝と狭く「噛む力」や「咳き込む反射」も未発達の為に気道をふさいでしまいます。
誤飲の上位は「タバコ」「保護者の薬」「ボタン電池」です。ボタン電池は食道や胃の粘膜を溶かし短時間に穴が開き、大出血の可能性が有り「飲んだかも!」と思ったら緊急受診が必要です。

子どもの口に入るサイズ(直径4㎝)を通る物は危険です。
危険なものは大人が責任を持って手の届かないところに管理し、ミニトマトやブドウなども調理方法を工夫して安全に楽しく食事をしましょう。子どもの発達段階に応じた適切な環境づくりと見守りで、大切な命を守ってください。

山田医院 看護師 石田知子

脂肪肝から肝硬変、肝臓がんにならないために

〈病態〉
健康診断や人間ドックの所見で、脂肪肝と指摘された方は少なくないのではないでしょうか?
生活習慣病による、過食や運動不足で余ったエネルギーが脂肪として肝臓に蓄積された状態を脂肪肝といいます。人間ドックを受けた人の30~40%に脂肪肝が見つかったという調査結果もあるほど身近な病気です。

肝臓に脂肪がたまっただけなら、単純脂肪肝という状態で症状は出ませんが、その10~20%がMASH(代謝障害関連脂肪肝炎)という状態に移行します。
肝臓が炎症を起こし、炎症で傷ついた組織を修復する過程で繊維成分に置き換わります。線維化した部分は血液を通さないため肝臓としての機能は果たせません。されにそれが進行すれば、肝臓全体が硬くなり、肝硬変や肝臓がんになるリスクが高まります。

そこで脂肪肝の人が心掛けたいのは、線維化対策です。以前は一度線維化した組織は回復しないと考えられていましたが、食事の改善や運動で体重を減らし、脂肪肝を改善すれば、線維化が部分的に改善することも分かってきたそうです。

〈検査〉
血液検査でALTの値が30以上の時はかかりつけ医に相談してください。
ALTは肝臓の組織が死滅するときに血液中に現れる酵素で、上昇しているときは肝臓に異常が生じている可能性があります。

まずは、ウイルス性肝炎、アルコール性肝炎、薬の副作用などではないことを確認します。
超音波エコーなどで脂肪肝が見つかれば経過を観察して、線維化の疑いが高まれば、さらに追加の検査をします。最も精密な検査は入院して、肝臓に針を刺して組織の一部を取り出す肝生検です。最近では血液検査でも線維化の指標となる、FIB-4インデックスを算出したり、TIMP-1という線維化マーカーを調べることができるようになりました。
また、特殊な画像検査により線維化の程度も調べることができます。
トランジェントエストグラフィー、磁気共鳴エラストグラフィー、音響放射カインパルス撮影という検査で、結果が数値で報告されるため客観的な評価が可能になります。

〈治療〉
早期MASHで重要なのは生活改善です。内容は、食事、運動、睡眠などほかの生活習慣病と変わりありません。
例えば運動は、有酸素運動でも筋トレどちらも線維化抑制効果があります。久留米大学と佐賀大学が共同開発したヘパトサイズ(肝炎運動)もおすすめです。
肝炎体操→おじぎ運動(背筋)10回、スクワット(下肢、臀部)10回、タオル運動(両手でタオルの端を持ち万歳して首の後ろまで下げる)10回、つま先立ち10回

残念ながら薬で脂肪肝を改善する方法はなく、脂肪肝の原因を取り除くことが治療になります。
線維化を抑えられる可能性のある薬物や、コーヒーが肝臓を保護するなどの研究は進められていますが、まだ科学的根拠が十分ではないそうです。

山田医院 看護師 盛田里穂

膀胱炎について

膀胱炎でよく見られる症状は、次のようなものです。

膀胱炎の主な症状
• 排尿するときに痛い
• しみる
• トイレが近くなる(頻尿)
• 急に強い尿意が出る(尿意切迫感)
• 尿を出し切れていない感じがする(残尿感)
• 尿が濁る
• 尿のにおいがいつもより強い
• 血尿が出る
• 下腹部が重い
• 痛い

さらに、閉経後の女性では女性ホルモン(エストロゲン)の低下によって、尿道や膣周辺の防御力が弱まり、膀胱炎を繰り返しやすくなることがあります。
膀胱炎では、通常は高い熱は出ないことが多いです。

こんな場合は早めに受診してください
38℃前後以上の発熱、悪寒、背中・脇腹の痛み、吐き気・嘔吐などがある場合は、感染が腎臓まで広がった「腎盂腎炎」の可能性があります。早めに医療機関を受診してください。
また、血尿がある、症状が強い、何度も膀胱炎を繰り返す場合も、泌尿器科、内科などで尿検査を受けることをおすすめします。
膀胱炎の治療は、細菌が原因の急性膀胱炎なら、基本的には抗菌薬(抗生物質)で治療します。市販薬だけで長く様子を見るのはおすすめしません。

一般的な治療
1. 医療機関で尿検査
o 尿に白血球や細菌、血液などがないか確認します。o 必要に応じて尿培養検査を行い、原因菌を調べます。
2. 抗菌薬を処方
o 医師が症状や検査結果などを考慮して薬を選びます。
o 処方された場合は、症状が良くなっても自己判断で中止せず、指示された期間飲むことが大切です。
3. 水分を適度にとる
o 尿を我慢せず、こまめに排尿しましょう。ただし、心臓・腎臓の病気などで水分制限がある場合は、医師の指示を優先してく
ださい。
4. 痛みが強い場合
o 医師に相談して、痛みを和らげる薬を使用することがあります

膀胱炎を予防するためのポイント
1. 水分をこまめにとる
o 水や白湯などを適度に飲み、尿をしっかり出すことが大切です。尿の色が薄い黄色くらいを目安にするとよいでしょう。
o ただし、心臓や腎臓の病気などで水分制限を指示されている場合は、主治医の指示を優先してください。
2. 尿を長時間我慢しない
o 尿意があるのに長時間我慢すると、膀胱に細菌が増えやすくなるため、できるだけ我慢しないようにします。
3. 排尿時は、できるだけ膀胱を空にする
o 急いで途中でやめず、ゆっくり排尿しましょう。「尿が残っている感じ」が続く場合は、泌尿器科に相談することをおすすめ
します。
4. トイレの後は前から後ろへ拭く
o 特に女性は、排便後に前から後ろへ拭くことで、肛門周辺の細菌が尿道に入りにくくなります。
5. 性交渉後は排尿する
o 尿道に入った細菌を排尿で流すことにつながります。
6. 便秘にも気をつける
● 便秘は尿路の健康にも影響することがあります。食物繊維、水分、適度な運動などで便通を整えることも大切です。

山田医院 医療事務 大上壽美子

経鼻のインフルエンザワクチンについて

インフルエンザワクチンと言えば注射のワクチンが中心でしたが2年前から経鼻のインフルエンザワクチン「フルミスト®」が日本においても発売されました。
当院も昨年から採用をしています。

このフルミスト®は左右の鼻腔内に0.1mlずつスプレーで噴霧する生ワクチンです。インフルエンザの検査はとても痛いのですが、このフルミスト®の接種は全く痛くありません。
なお、米国では49歳まで、英国では17歳まで、日本では2歳から18歳までに適応があります。(国によって接種年齢が異なります。)フルミスト®は生ワクチンであるために抗がん剤治療をしているなど免疫力が極めて低下している人、妊娠中の人などは使用できませんがその他鼻閉が強くなど以外の場合には使用できます。

接種してから2週間ほどで効果が発現、1シーズンの効果が期待できます。
なお接種後1週間程度は水平伝播の可能性があるために重度の免疫不全者との接触は避けることが必要ですが、母親が妊婦であっても子どもは接種については問題ありません。
なお数%に接種後感冒症状が出現することはありますが鼻咽頭炎、発熱、咽頭部痛などでインフルエンザ自体の発症はありません。
なお他のワクチンとの同時接種も可能です。
臨床的に重要な点としてはタミフル/リレンザを服用して2日内の接種、ゾフルーザを服用しての17日内の接種、あるいは接種後2週間以内のタミフル/リレンザ/ゾフルーザの服用を行うとフルミスト®の効果が期待できなくなります。
なお、逆にフルミスト®を接種すると7日間はインフルエンザ抗原迅速検査では陽性になる可能性が高くなります。
インフルエンザのピーク時の接種は避けたいのが本音です。

当院では基本的には注射がどうしてもいやな人、注射ワクチンが2回必要な人(9歳未満で過去2シーズンに注射ワクチンをしていない方)に勧めています。そのために価格も注射ワクチン2回分にしています。興味がある方はお聞きください。

山田医院 医師 山田良宏