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山田医院だより

第27巻 第3号(第314号)

癌と脳卒中(Stoke Oncology)について

がん患者さんが脳卒中になる、あるいは逆に脳卒中の方ががんになることは、日常診療において時々見受けることです。以前はたまたまの偶然が重なってしまったと考えておりましたが、2020年に「腫瘍脳卒中学(Stroke Oncology)」という、がんと脳卒中の合併における問題解決を目指した集会が初めて提唱され、現在は腫瘍脳卒中研究会が毎年開催されています。

がんと脳卒中の関係については、がんを合併する脳卒中では脳梗塞が多く、次いで脳出血となっています。がんの種類によって脳卒中の起こりやすさは異なり、肺がんや乳がんでは脳梗塞が多く、肝臓がんや腎細胞がんでは脳出血が多く、消化器がんや白血病ではその両方が多くなっています。一般にがん患者は脳卒中のリスクが高く、逆に急性期の脳卒中患者も10%程度ががんを合併していると言われています。また、初回の脳卒中後にがんを発症する割合も10%程度であり、がんと診断される前後数か月間は特に脳梗塞のリスクが高まります。さらに、がんを合併した脳卒中患者の死亡率は高くなる傾向にあります。

診断については、がんに伴う凝固亢進状態を背景とした動静脈血栓塞栓症を「トルーソー症候群」と呼びますが、がん治療に関連するものや偶発的な合併もあり、原因を調べることが重要です。通常の脳卒中と同様に血管病変などを評価しますが、原因がはっきりしない場合や、再発予防を行っているにもかかわらず脳梗塞を繰り返す場合には、潜在的ながんの存在を考慮する必要があります。原因不明の脳梗塞においてがんを疑う指標としては、Dダイマー値が2.0mg/L以上、2つ以上の領域での多発脳梗塞、あるいは体重減少や寝汗、不明熱といった古典的な「B症状」が挙げられ、疑わしいが見つからない場合にはFDG-PET検査が行われます。

治療の目標は通常の脳卒中と同様に、後遺症を軽減し再発を防ぐことです。急性期脳梗塞では、発症から4.5時間以内であればrt-PA静脈内注射療法や経皮的血栓回収療法が検討され、4.5時間から24時間以内であれば血栓回収療法が中心となります。がん自体はrt-PA療法の禁忌ではありませんが、出血のしやすさなどから実施割合は少なくなっています。一方で、経皮的血栓回収療法による血管再開通率はがん患者でも7〜9割と良好であり、非がん患者と同等です。

これらの治療は早期実施が重要であるため、顔(F)、腕(A)、言語(S)、時間(T)を意識する「Act-FASTキャンペーン」などの啓発が大切です。なお、入院中のがん患者が脳卒中を発症した場合、院外からの搬送よりも初期対応が遅れる傾向にあるため注意が必要です。再発予防については、がん患者の脳梗塞再発率は15〜30%と高いため、原疾患の治療に加えてヘパリンなどによる抗凝固療法が考慮されますが、自宅での注射が必要になるなどの課題もあります。また、医療保険制度の都合上、回復期リハビリ病院での抗がん剤治療が困難になるケースも少なくありません。緩和ケア段階の方であっても、脳卒中治療は可能な限り行うことが大切です。がんと脳卒中は共に頻度の高い疾患であり、今後は領域横断的かつ多職種による連携が求められています。

今回は日本医事新報令和8年2月4週号からの抜粋です。

山田医院 医師 山田良宏

食中毒について

食中毒とは、細菌やウイルス、有害な物質などが含まれた食品を摂取することで、下痢や嘔吐、腹痛などの健康被害を引き起こすことを指します。かつては寄生虫や伝染病を除外していましたが、現在ではこれらが食品を介したことが明らかであれば食中毒と見なされ、ヒスタミンなどの化学物質やキノコ毒による体調不良も同様に取り扱われます。食中毒は気温の高い夏に菌が繁殖しやすいイメージがありますが、実際には一年を通して発生するため常に注意が必要です。

秋から冬にかけてはウイルス性胃腸炎が多く、ノロウイルスやロタウイルスなどが原因となります。これらは感染者の排泄物からの経口感染や、汚染された二枚貝の摂取により発症し、予防には石鹸での丁寧な手洗いや塩素系漂白剤による消毒が有効です。対して夏は、カンピロバクターやO-157などの細菌性胃腸炎が増加します。細菌性はウイルス性よりも症状が重くなりやすく、激しい腹痛や高熱、血便を伴うことがあるため、症状が長引く場合は医療機関の受診が不可欠です。

胃腸炎にかかった際は、こまめな水分補給と安静が回復への近道ですが、脱水に陥りやすい乳幼児や高齢者は特に注意が必要です。高齢者の場合は、嘔吐物が肺に入ることで誤嚥性肺炎を引き起こし、重症化するリスクもあります。また、季節を問わず発生するアニサキスなどの寄生虫による食中毒は、天然魚の内臓から筋肉へ移動した個体を摂取することで起こり、重篤なアレルギー発作を招くこともあるため油断できません。同居人がいる場合は、使い捨て用品の活用や徹底した手洗いで二次感染を防ぐことも重要です。

治癒のサインとしては、食事をしても吐き気や腹痛が起きないこと、食欲が回復すること、そして排便の回数や色が通常通りに戻ることが挙げられます。
症状が続いている間は感染を広げないよう仕事や学校を休み、食事面では食物繊維の多いものや脂っこいもの、刺激物を避け、胃腸に負担をかけない工夫をしましょう。アルコールやカフェイン、柑橘類、乳製品なども胃酸の分泌を促したり消化に負担がかかったりするため、回復までは控えることが推奨されます。

山田医院 医療事務 亀川 莉々彩

花粉症と食物アレルギー

今月も花粉症のお話です。今年の花粉症はどうしてこんなにひどいのでしょうか?
私は花粉症ではないのであまり気にしていませんでしたが、夫は1月下旬ごろからずっと鼻がひどく、しんどいしんどいといっています。

スギ花粉の飛散量は前年夏の気温・日照時間・雨量に強く影響されますが、2025年の夏は気温が高く、6月は全国的に日照時間が多く、7月はさらに空梅雨で日照時間が平年比40%以上増えたそうです。
この「高温・多照・少雨」の三拍子がそろった気象条件はスギの雄花の形成にとって最高の環境となり、結果として2026年の花粉飛散量は気象条件だけ見ると2025年より「非常に多い」と推定されているそうです。
そして、飛散中の花粉が大気中の排気ガス粒子(ディーゼル微粒子)やPM2.5・黄砂を表面に吸着します。
この「汚れた花粉」はクリーンな花粉に比べて鼻粘膜を強く刺激し、アレルギー反応を起こしやすいとされています。

また、花粉症と食物アレルギーの関係についても、特定の花粉と似た構造を持つ食べ物がアレルギー反応を引き起こす「口腔アレルギー症候群(OAS)」というものがあります。これは花粉と食物に共通するアレルゲン(タンパク質)が存在し、免疫システムがそれらを同一視して反応するために起こります。
アレルゲン(タンパク質)が存在し、免疫システムがそれらを同一視して反応するために起こります。特に下記の花粉症を持つ人はアレルギー症状が出る可能性があるので注意が必要です。

<スギ・ヒノキ>春
・トマト・メロン・スイカ

<シラカンバ・ハンノキ> 4月~6月
・バラ科の果物(リンゴ、モモ、サクランボ、ナシ、イチゴ)
・ナッツ類(アーモンド、ヘーゼルナッツ、クルミ)
・豆類(大豆、ピーナッツ)・ニンジン、セロリ、ジャガイモ

<カモガヤ・アワガエリ> 5~7月
・トマト
・スイカ
・メロン
・オレンジ

<ブタクサ> 秋
・ウリ科の果物(メロン、スイカ、キュウリ)
・バナナ
・ズッキーニ
・ハーブ(カモミール)

<ヨモギ> 秋
・セロリ
・ニンジン
・ハーブ(カモミール、パセリ)

これらの交差反応には個人差がありますが、加熱することでアレルゲンが壊れることもあるため、調理方法を工夫してみましょう。
まだしばらく花粉症は続きそうですが、マスク・メガネの着用、手洗い、うがい、花粉を室内に入れない、適切な服薬などの対策をして過ごしていきましょう。

山田医院看護師 三栖佳子

夜間頻尿について

夜間、排尿のために1回以上トイレに起きなければならない症状を夜間頻尿といいます。 年齢を重ねると、夜中にトイレに起きる頻度が高くなります。

2023年に日本排尿機能学会が行った疫学調査によると、50歳を過ぎると60%以上、70歳以上では90%以上の人が夜に1回以上、さらに80歳以上では2人に1人が3回以上トイレに起きているそうです。

夜間頻尿の原因は、大きく3つに分けられます。
1 夜間多尿(睡眠中に尿が大量に作られる)
2 蓄尿障害(過活動膀胱や前立腺肥大症によって尿をためられない)
3 睡眠障害(睡眠が浅くて目がさめやすくなる)

中でも最も多いのは、夜間多尿です。

1) 夜間多尿

  • 1多尿による夜間頻尿について ⇒ 1日の尿量が40ml/kgを超える場合(例えば60kgの体重の人は2400ml)がこれに当たります。水分の過剰摂取、尿量を増加させる薬剤を内服しているため、糖尿病などの内科の病気によるものがあります。

  • 2夜間多尿 ⇒ 夜間のみ尿量が多くなり、夜間トイレに何度も起きるものです。目安としては、65歳以上の人では、夜間尿量が1日の33%を超える場合が、夜間頻尿と考えられます。加齢により睡眠中の抗利尿ホルモンの分泌が減る、下半身の筋肉が衰えると血液が上に戻りにくく、夕方以降に血管の外に水分が染み出て足がむくみ、この足にたまった水分が横になって寝ると血管に戻り、尿にかわることが夜間多尿です。

2) 畜尿障害

膀胱容量の減少は、少量の尿しか膀胱に貯められなくなるもので、膀胱が過敏になるために起こります。一般的には、昼にも頻尿になることが多いです。

  • 1過活動膀胱 ⇒ 膀胱に尿が少量しか溜まってないのにもかかわらず尿意を感じてしまう病気で、膀胱が勝手に収縮してしまう病気で、トイレに急いで駆け込む症状があるものです。脳卒中、パーキンソン病などの脳や脊髄の病気で引き起こされる場合もあります。

  • 2前立腺肥大症 ⇒ 男性特有の疾患で、前立腺が大きくなることで排尿がしにくくなり、結果として膀胱が過敏になることがあります。

  • 3その他 ⇒ 間質性膀胱炎や骨盤臓器脱などで夜間頻尿になることがあります。

3) 睡眠障害

眠りが浅くて、すぐに目がさめてしまうために、目が覚めるごとに気になってトイレに行くものです。

セルフケアで改善方法

  • 夕方にウオーキングなどの運動でふくらはぎの筋肉を動かす。

  • あおむけに寝た姿勢から、高さ10〜50センチのクッションなどに30分ほど足を乗せておく。

  • 足のむくみを防ぐ弾性ストッキングをはく。

  • 骨盤底筋運動 ⇒ 呼吸を止めずに、5秒間肛門を閉める。何回かに分けて、毎日45回以上。

  • ぼうこうトレーニング ⇒ 尿意を感じた時に、1分間だけトイレに立つのを我慢する。慣れてきたら3分、5分、10分と、我慢して時間を延ばす。

  • 睡眠薬の内服も有効ですが、日中に光を浴びて運動する。 睡眠リズムを整えるなど、睡眠の質を高めることが重要である。

一度、自分の排尿パターンを知り、原因を見つけることも大事なことです。 2〜3日、いつ・どれくらい排尿したかチェックしてみるのもよいかと思います。その結果によって、治療が必要か、生活習慣の改善が必要なのかなどが明確になるかと思います。

夜間に複数回トイレへ行って支障が出る場合は、医療機関の受診をお勧めします。

山田医院 看護師 橘 智子

急性虫垂炎の治療について

急性虫垂炎(いわゆる「もうちょう」)の治療については、手術を受けるか、抗菌剤で「散らす」のか、どちらがよいのかというスタディがあります。
これについて『チャイルドヘルス』令和8年3月号で論文紹介がありましたので、今回は急性虫垂炎の治療についてお知らせします。

当院の外来診療においても、月に1〜2名程度の急性虫垂炎疑いの方が受診されます。急性虫垂炎の問題点は穿孔による腹膜炎ですが、長期的には再発についても検討が必要になります。
16歳までの子どもにおける結論としては、「手術がよい」との結果が出ました。抗菌剤の投与では、症状の悪化や再発によって結局手術が必要となるケースが約3分の1程度あり、治療の確実性および入院期間の短さでは手術が優位となりました。

ただし、抗菌薬治療がうまくいけば回復はむしろ早く痛みも少ないことや、逆に3分の2は手術を避けることができるというメリットもあります。なお、大人においても抗菌薬治療のみでは、3分の1において3か月以内に手術が必要になると言われています。特に「糞石」が虫垂にある場合は、うまくいかないことが多いようです。

子どもにおける急性虫垂炎の標準治療は手術であり、抗菌剤単独治療は失敗率の高い治療ではあります。しかし、現時点においては「手術を避けたい」等の理由があれば、リスクを承知の上で承認可能な治療となります。一般外来では、状態(発熱、腹痛、元気の良さ)に加えて、腹部の状態(腹膜刺激症状の有無など)や血液検査での炎症反応の程度で治療方針を決め、必要に応じて病院へ紹介しています。