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山田医院だより

第20巻第2号(第229号)

胆石症治療の現状について

胆石症を有する人は成人人口の8%に達しており年間9万件以上の胆嚢摘出術が行われています。なお胆嚢摘出術の9割程度は腹腔鏡下に行われています。この腹腔鏡下手術もさらに低侵襲化のために以前から行われてきた腹壁に4箇所に切開を入れてきた標準的腹腔鏡下胆嚢摘出術から切開を減らす減孔式手術(RPS)、切開を1箇所だけにする単孔式内視鏡手術(TANKO)、さらには腹壁には孔を開けずに膣や直腸、胃などの管腔壁を切開して行う究極的低侵襲手術である経管腔的内視鏡手術(NOTES)などの進化(変化?)が見られます。腹腔鏡下胆嚢摘出術は日本では1990年に日本で最初の手術が行われました。私自身は大学を1991年に卒業、大阪府立病院(現在の大阪急性期総合医療センター)で研修しましたが研修時にちょうどこの手術が開始され、見学した記憶があります。当初はこんな手術は危険だ、外科医としては本望ではないとの話も多く有り将来的にはどうなるのかなと思いましたが現在はがん手術を含めて腹腔鏡下手術が主流となった感じでロボット手術まで出現しており、将来的にはAIが手術をしてしまうような気もします。話はそれましたが、標準的から減孔式しいては単孔式への移行は低侵襲というよりは美容面からの移行の側面が強くあります。単孔式は臍だけを使用するために術後は傷がほとんどわからない状態となります。臍には脂肪がなく皮膚と筋膜が接しているためにくぼみとして認識される状態でありその部位の切開では傷は全くと言っていいほどわかりません。なお、減孔手術の問題点としては孔が少ないために視野展開と動作制限の問題があります。これらの克服のためにデバイスの開発等がどんどん進んできていますが手術時間、出血時間はどうしてもまだ標準式に比べると劣ると言われています。ただし術式の選択のアンケートでは若年層を中心に単孔式を選ぶ傾向があるようです。腹腔鏡手術の手術方法は確立してきましたがまだ一定の割合で胆管や血管の損傷が発生している状態です。胆嚢を切除していく層は確立しており、また胆管、血管などの走行異常などのデータもありますが、胆嚢壁の虚血や結石嵌頓による胆嚢壁の潰瘍形成により瘢痕組織の形成などがあると剥離が困難になることがあり、このために血管あるいは胆管が損傷することもあります。以前は胆嚢壁を残したままでは良くないということで肝臓の一部を切除してまで胆嚢壁を全て取り除いていましたが肝臓は血管の塊でもあり出血しやすい臓器なので手術が大変でしたが今は胆嚢壁の一部が残存しても悪性所見がなければ問題ないと考えられており手術困難な症例に対しては胆嚢壁を無理に剥離せずに残す方法も取られています。以前は胆嚢炎の急性期には手術はせずに抗菌剤投与などの保存的加療を行い安定してから手術をしていましたが腹腔鏡手術では逆に急性期の方が手術は容易であり発症後1週間ほどすると繊維化が起こるために手術が困難になるために現在は胆嚢炎の急性期に手術加療を行うケースも多くなっています。なお、胆嚢からつながる総胆管の結石の治療については現在は内科的治療としての内視鏡的総胆管結石除去を行ったあとに2期的に外科的治療としての胆嚢摘出術を行うことが最も一般的になりました。高齢者で状態が良くない場合には内視鏡的に総胆管の結石のみを除去する方法もありますが胆嚢が残っていると結石が繰り返して形成されるために基本的には胆嚢摘出術を行うことが王道となります。なお肝臓内に結石ができる肝内結石症は良性疾患ですが完治が難しく再発を繰り返すことが多くまた胆管炎、肝膿瘍、肝内胆管癌、肝硬変などの重篤な合併症を併発することも多く臨床経過において大きな問題となることもあり治療対象となります。内視鏡の開発発展にて内視鏡的に結石を除去する方法も増えてきましたが、再発あるいは残存結石が大きな問題点となっています。外科的治療においては現在は肝切除が標準的治療となってきました。肝内結石の場合には胆道狭窄や拡張を併発するために結石のみではなく結石発生の母地となるこのような胆管の狭窄、拡張部位も合わせて切除を行うことが一般的になっています。やはり手術においては腹腔鏡下の手術が可能となっています。肝内結石については全くの無症状であれば治療は不要ですが癌を示唆する肝萎縮、肝内胆管癌を示唆する所見、胆管拡張、狭窄、胆管炎の所見があれば手術の適応になります。今回は日本維持新報平成31年2月号から抜粋しました。

山田医院 医師 山田良宏

 

 

乾燥の季節

今年もインフルエンザ流行の時期に入りました。インフルエンザウィルスは湿度が下がると活発になるそうです。目下、大流行中です。今回はインフルエンザではなくて、特に湿度が下がるこの時期に高齢者に多くみられる「皮脂欠乏性湿疹」についてお話したいと思います。

健康な皮膚はみずから分泌する皮脂が表面を覆い水分の蒸発を防いでいます。皮膚には病原体のような外敵や、寒さや乾燥といった刺激から体を守るバリヤー(防御壁)としての働きがあります。皮膚の潤いがバリヤーには重要です。加齢とともに皮脂や天然保湿因子が減り皮膚が乾燥してきます。乾燥すると、バリヤー機能が低下して、外部の刺激に弱くなり、炎症がおきる。それが「皮脂欠乏性湿疹」です。バリヤー機能の衰えを補うには保湿が基本。夏でもエアコンなどにより保湿は1年中、必要だそうです。私は毎年冬にはすねの辺りが粉をまぶしたようになり、かゆみもある為ボリボリ掻いて傷つけて血まで出ることがありました。今年は液状の保湿剤を入浴後皮膚が湿っているうちに塗るようにしています。それがより効果的な塗り方だそうです。

今までは乾いてから塗っていたのですが、乾く前にぬるほうが効果的ということを実感しました。試してみてください。保湿のほか,湯の温度と洗い方にも注意が要ります。冬は浴室をあたため湯温は38度がいいそうです。が、浴室が温まりにくくて、38度は私にはぬるま湯過ぎて、実行できていません。また洗い方ですが、中高年にはナイロン製のタオルより手のひらで洗うこと。特別に体が汚れた時を除けば、お湯で流し軽くこするだけ。中高年になったら、必要以上に皮膚をこすったり皮脂をとったりするとバリアー機能が損なわれてしまいます。春はそこまで来ています、乾燥に打ち勝って残りの冬を過ごしましょう。

山田医院 助産師 清水ユタカ

認知症の方との関わりについて

先日、本屋さんで認知症関係の本を探していたら「家族のためのユマニチュード」という本に出合いました。「ユマニチュード」とはフランスの専門家が考案した「その人らしさを取り戻す」優しい認知症のケアの技法です。認知症の人と関わるとき、お世話や介護をするとき、イライラしたり困ったりしたこともあると思います。そんな時どうしたらいいか、この本を読んで前向きになるように思ったので紹介させていただきます。介護の方法もいろいろあると思いますが一つの方法として読んでもらえたら…と思います。

介護で最も大切な二つのこと
「相手とよい関係を結ぶ」ことと「その人が持っている力を奪わない」こと簡単そうでなかなかできないことだと思います。

介護をする人が親や配偶者だったら、大切な人とわかっていても、つい怒ってしまったり、待っていられない、危ないからと手を出してしまったりすることもあると思います。

◎相手とよい関係を結ぶために
「あなたを大切に思っています」と心で思っているだけでは相手に受け取ってもらえません。そう思っていることを相手が理解できる形で表現することが必要です。そのためにユマニ
チュードではケアするときに、4つの柱「見る」「話す」「触れる」立つ」を用いて行います。

介護の作業としてではなくコミュニケーションの機会であると心がけます。実は私たちは自分が大切だと思っている相手に対してはこの4つの柱を無意識に行っているそうです。大切な存在の象徴として赤ちゃんとの関わり方を考えてみてください。

これは自然な反応です。しかし、介護をする場合このような反応を自然に行うことは誰にとっても難しいので意識的に行うようにします。「見る」目を合わせる。相手の視線に入る。「話す」低めの声で穏やかに話す。いつもの3倍くらい話しかける気持ちで。無言は存在を否定されているように感じさせる。「触れる」大原則はつかまないこと。触れるときは下から支え、ふれる面積をできるだけ広くすること。「立つ」1日合計20分くらいたつことができれば、寝たきりにならない。立つときは不安定にならないように支えたり手すりにつかまったりして転倒しないように気を付ける。

◎その人が持っている力を奪わない
何かできることがあればそれをできるだけご自身でやってもらうようにします。
最後に介護は一人で頑張りすぎないで遠慮せずに周囲に助けを求めましょう。上記はほんの一部の紹介です。ご参考までに…。

山田医院看護師 三栖佳子

傾眠傾向の原因と対策

傾眠とは、昼間に強い眠気を感じて度々居眠りをする状態のことを言い、傾眠状態では食事や排泄をするとき以外をほとんど眠って過ごします。深い眠りではないので、大きな音などで目を覚ましますが、しばらくするとまた眠ってしまいます。高齢者の傾眠傾向の原因はいくつかありますが、その中で代表的なものを5つ紹介します。

1.認知症
認知症の症状で、「無気力傾向が強くなること」があります。この無気力によって、起きている時間に脳の興奮作用が起きにくくなり、傾眠傾向がつよくなります。

2.脱水症状
高齢者は体内に水分をためておく機能が弱くなっているため、脱水症状が若い世代より起きやすいのです。脱水状態になると脳や全身の機能が低下し、傾眠傾向に繋がります。

3.内科的疾患
臓器などに何らかの問題が起きているとき、例えば発熱のような基礎的症状から、代謝異常のような重度の症状まで、いずれも傾眠傾向の原因となります。特に風邪のような軽度の場合、体が治癒のために睡眠を求めている可能性もあります。こういったケースでは、傾眠傾向を阻害するより、本格的に睡眠をとる方が良いこともあります。

4.薬の副作用
薬を飲むと眠くなるというのは、若い方でも経験したことがあると思います。同じように、高齢者の場合も飲んでいる薬の副作用によって傾眠傾向が出ることがあります。

5.慢性硬膜下血腫
これは、「頭を打ったことが原因で起こる病気」です。硬膜とは頭蓋骨下にあるものです。この硬膜と脳の間(血腫)と言う状態が慢性的に続くことを「慢性硬膜下血腫」といいます。頭を打った直後は何もなくても、1~2ヶ月程度経過してから症状が出ることも多く、注意が必要です。血腫が小さい場合には自然治癒の可能性もありますが、一定以上の大きさであれば、外科手術などの治療が必要となります。

傾眠傾向への対応で真っ先にすべきことは、医師や医療機関に相談することです。とくに慢性硬膜下血腫のように手術を必要とする原因の場合、少しでも早く治療を行う必要があります。そういった外科手術などの治療が必要でない場合でも、原因がわかれば本人も家族も安心でき、医師からの適切な助言ですぐに症状改善に取り掛かることができます。また、適切かつこまめに水分を意識することも大切です。熱中症の予防にもつながりますし、特に午前中の早い時間に意識して水分を摂取すると、日中の覚醒度合いが高まりやすくなります。

高齢になれば、多少は傾眠が自然に起こることがあります。急激に傾眠傾向が出てきたというわけではなく、その他の部分の健康で特に問題がなければ、単純に高齢になったためという可能性もあります。焦らずに傾眠傾向を受け入れ見守り、医師のアドバイスを受けるようにしましょう。

山田医院 医療事務 中町麻里

今シーズンのインフルエンザについて

今シーズンのインフルエンザは、大阪市では2018年12月24日~12月30日に流行発生注意報レベル を 超 え、2 0 1 9 年 1 月 7 日 ~ 1 月 1 3 日 に 流 行 発 生 警 報 開 始 基 準 値 を 超 え ま し た。
2月4日~2月10日時点で警報レベルは下回りましたが、まだその流行が終わっていない可能性があることを示す注意報レベルは上回っています。インフルエンザの流行はピークを過ぎ去りつつあると考えられます が、ま だ し ば ら く は 流 行 に 警 戒 が 必 要 に な り そ う で す。お 気 を つ け く だ さ い ね!

なお、今シーズンはA型が中心でしたが、そのA型についても当初はH1N1パンデミック型が流行していましたが年明けからは香港型の流行となり、当院においても数名は2回インフルエンザAに罹患していました。

最後に、私 ご と で は あ り ま す が 3 月 で 山 田 医 院 を 退 職 さ せ て い た だ く こ と に な り ま し た。6年間勤務させていただき、たくさんご迷惑もおかけしたと思いますが、温かく見守っていただき感謝しております。顔を覚えてくださる患者さんもいて、お言葉をかけてくださったり何気ない会話など、とても楽しく嬉しく山田医院での6年間はとても充実したものになりました。本当にありがとうございました。

山田医院 医療事務 平賀怜奈

子どもへのかかわりについて

乳児が危機的な状況(といっても命に関わることではなくお腹すいた、ねむい、不安、、、など)を察知して特定の対象(多くは療育者)に接近を求めてそれを維持しようとする生まれながらに備わった行動システムがアタッチメントと言われる行動ですがこのアタッチメントについては子どもの臨床の現場から発想されその後に心理学的な研究がなされ再び臨床に戻り相互交流が活発している分野になっています。この理論に基づくと子どもが大人に求めるものは「安全基地」と「確実な避難場所」の2つの機能、役割です。子どもが公園などで遊ぶ場合母親が見えていると安心してウロウロとできますが(母親という安全基地が見えている)が、見慣れない虫などが出てくると母親のもとに駆け寄る(母親という安全な避難場所)などはこの2つの機能の簡単な例です。子どもが安心感を持って様々な活動に取り組めるようにする安全な基地と子供が不安や怖さを感じた時にそれを受けとめて保護し子どもの立ち直りを支える確実な避難場所という2つの役割が大切になります。なお、この機能がきっちりと発揮するためには大人が敏感で応答的な役割を行うこと、関わり方が構造的であること、侵入的ではないこと、子どもに敵意を向けないことの4つのポイントが大切となります。特に3点目の侵入的ではないこととは子どもが自分の活動に向き合っていて大人の関わりを必要としないときにはかかわらない、必要以上の関わりはしないことです。大人は物理的に子どものそばにいる、何かをしてくれる、という意味だけではなくこの大人は自分と気持ちを通じ合わせ自分の心のそばにいてくれる、というような情緒的な意味での利用可能性(頼りにできる、当てにできる、といった感覚)を持っている存在でいることが大切です。アタッチメントの形成が不十分な子どもは将来的に対人関係のトラブルを持つ可能性も高く、またその子が親になった時にその子どもに対してもアタッチメントの形成が困難となる問題もあります。今回はチャイルドヘルス平成31年2月号から抜粋しました。

山田医院 医師 山田良宏