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山田医院だより

第18巻第9号(第212号)

死の三徴候について

「生」から「死」へはあるポイントを経てきっちりと区別ができるものだろうか?

昔から死の 三徴候というと「心拍停止」「呼吸停止」「瞳孔散大・対光反射消失(中枢機能停止)」を指 しています。本当にこの三徴候で死亡判定をしても良いのだろうか、、、。

この度は9月17 日、18日に東京の日本医師会で死体検案研修会があり参加してきました。法医学の世界の話題 提供をしたいと思います。

死の三徴候による死亡確認は在宅医療、一般の病院等において通常 は問題はありません。北海道の北見市で2005年に駆けつけた救急隊員が河川敷で倒れていた27 歳の女性の呼吸や心臓の停止を認め、また体の硬直を認めたために死亡と判断して警察署に安 置した後に検視に訪れた医師が女性の心拍動に気がつき直ちに病院に搬送になった新聞で騒が れました事例を覚えているでしょうか。

死の確徴とは心拍動、呼吸運動、中枢神経機能(瞳孔 反射)の3者の停止(死の三徴候)だけではダメでこれらの機能停止が永久的であることを証 明しなければなりません。具体的には15分以上持続する心臓及び呼吸機能の停止が必要です。なお死斑、死後硬直が揃うと死の判定がつきます。

話がそれますが救急隊員は死亡者を救 急車に乗せることはできませんが医師でない救急隊員が搬送者を死亡者と判断して良いのは

① 脳が頭部から脱出

②頭部と頸部の離断

③死斑の出現 いずれかがあれば良いとされています。

それ以外は救急車に乗せて救急搬送するべきとなっています。死斑ならびに死後硬直の出現は 死亡後1時間程度で始まります。生から死への間にある仮死を認めることもあります。この仮 死とは生命が保たれているのもかかわらず心拍動、呼吸運動、反射が不明な状態です。いわゆ る熊の冬眠状態で臨床的には低体温麻酔、催眠剤中毒、解熱鎮痛剤中毒、寒冷、溺水なので見 られることがあります。

先ほどの北見市での女性のケースはこの仮死であったと判断されま す。仮死を死亡と判定させた1つの死後硬直と紛らわしい現象としては脂肪硬化というものが ありこれは低温下に長時間放置されたために皮下脂肪が硬化して関節の動きが鈍くなるもので す。なお、死亡直後には全身の筋肉は緊張を失って弛緩しその後再び固くなり硬直します。こ れが死後硬直です。物を握ったままなくなっている人を見ることはほとんどないと言われてい ますが実は死後に起こる筋肉の弛緩のために掴んだ物を離してしまうからです。ただし、亡く なる直前に激しく筋肉を使うと弛緩せずにそのまま硬直すると言われているために希に物を掴 んだままなくなっている人もあるようです。これの究極が「弁慶の立ち往生」で法医学的には この状態はありえるようです。

まとめてみますと、あなたがもし道に倒れている人を発見して 死斑があれば死亡していると判断しても良いかもしれませんがそうでない時には息をしていな くても心臓が動いていなくても、対光反射が無くても体が硬くなっていても特に冬場において は仮死状態かもしれません。放置せずにすぐに救急搬送が必要です。

ところで急死と思われている窒息ですが実際にはどうでしょうか。首を絞められて直ぐに死んでしまっているのでしょうか。実は窒息後に8-10分程度しないと完全には死亡しないと言われています。もちろん、5 分以上経過すると元には戻りませんが医学的には呼吸困難期、痙攣期、無呼吸期、終末呼吸期 などを経て不可逆となる死亡に至ります。

なお酸素濃度は大気中では21%程度ですがどのくら いになったら生きていけなくなるのでしょうか。昔あった炭鉱での事故で怖いのが低酸素と落 盤ですが、低酸素については以前はロウソクを持ち込んでいたようです。ロウソクの火は酸素 濃度が12-15%程度で消えるようです。

なお以前オウム真理教のサティアンを警察が探索した 際に鳥かごを持って探索をしていましたが鳥は10-12%程度の酸素濃度で生きていけなくなる ようでヒトも10%をわると生きていけないと考えられていましたが最近の知見では犬と同様で 2.5%が限界ではないかと言われています。洞窟など管理されていないところに入るときには この点に注意が必要です。

現在、死亡者を発見した際には警察へ連絡となります。警察は明ら かな事件性があるときには司法解剖を行います。その他変死あるいはその他の死亡者の場合に は大阪においては監察医制度があるので監察医による行政解剖あるいは最近できた病名解明の ための調査法解剖となります。今後高齢化社会となり自宅等において亡くなって発見される ケースの増多が予測されておりそのために検案等の必要性が増えてくることは確実であり法医 学においては問題となっています。

山田医院 医師 山田良宏

喫煙・禁煙について

喫煙者の方には耳の痛い話題です。

今までも何度か取り上げられている話題ですが、喫煙は本当に体に悪く、ご自身だけでなく、その煙を吸ってしまう周囲の人にも影響がありますので、今一度見直してみてはいかがでしょうか?

私の主人も喫煙者です。体調が悪いときはほとんど吸わないので、このままやめてくれたらいいなと思っていても元気になると、また吸い始めます。

私も娘もうるさく言うので、最近は「電子タバコ」を併用し始めましたが、電子タバコも紙巻きタバコと同様にニコチンが含まれていますので呼気にもニコチンが含まれ、受動喫煙のリスクも変わりないようです。また紙巻きタバコと違い、発生する有害物質が見えにくいため、周囲の人々は受動喫煙を避けられずかえって危険であるともいわれているようです…(*_*)

当医院では禁煙外来を勧めています。禁煙外来では禁煙をしようと思われる方に、改めて喫煙のリスク禁煙のメリットをお話し、内服薬やパッチなどを使って禁煙できるようにサポートさせていただきます。

<喫煙のリスク>タバコの煙には、4,000種類の化学物質が含まれています。その中には、200種類以上の有害物質が含まれ、発がん性物質は50種類にのぼります。肺がんをはじめ、食道がん、胃がん、子宮頸がんなど、さまざまながんを引き起こし、ほかにも脳卒中や心筋梗塞、動脈硬化、高血圧、糖尿病、メタボリックシンドローム、胃潰瘍、COPD、肺炎、喘息、うつ病、バセドウ病、骨粗鬆症、EDなど、全身の病気のリスクを高めることがわかっています。また病気のリスクだけでなく、妊娠・出産への悪影響もあります。子どもの受動喫煙による健康被害は、乳幼児突然死症候群(SIDS)、呼吸器症状(せき、たん、息切れなど)・気管支炎、肺炎、中耳炎などです。

なかでもSIDSは、それまで元気だった赤ちゃんが突然死亡してしまう病気です。タバコはSIDSのリスク因子であり、父親と母親が喫煙者である場合は、リスクが10倍になるといわれています。また子どもが成人になってからも、胎児のときの受動喫煙の影響が続くと考えられ、成人になってからの肥満、糖尿病、メタボリックシンドロームに関連があることがわかってきました。

<禁煙のメリット>禁煙を続けることができれば、タバコでダメージを受けた体も健康に近づいていきます。禁煙を1ヶ月続けると、咳やたん、喘鳴などの呼吸器の症状が改善し、1年後には、COPD患者さんの肺の機能に改善がみられます。2~4年もすれば、狭心症や心筋梗塞などの心臓の病気のリスクが、タバコを吸う人と比べて著しく低下します。10年を経過すると、がんのリスクも低下します。10~15年経つと、咽頭がんのリスクが、タバコを吸う人と比べて60%も低下します。また、10~19年で、肺がんのリスクが、タバコを吸う人と比べて70%も低下します。さらに、20年で口腔がんのリスクが、タバコを吸わない人と同レベルになります。

このように、禁煙の生活が長くなればなるほど、タバコを吸わない人と同じ健康状態に近づきます。健康状態の改善だけでなく、タバコをやめた直後から、家族や周囲の人が受動喫煙を受けるリスクがなくなります。数日後には、味覚や嗅覚が鋭敏になり、食べ物をおいしく感じるようになります。その他、口臭がなくなる、部屋や服のにおいがなくなるなど、日常生活の中で効果を実感できるようになるといわれています。金銭面のメリットもありますので違う楽しみをみつけられるかもしれませんね。

山田医院看護師三栖佳子

秋バテ

まだまだ暑い日もありますが、朝晩はだいぶ涼しくなってきましたね。夏バテの次は秋バテに注意してください!!

秋バテとは過ごしやすいはずの秋になっても体がだるい、食欲が出ない、疲れる、やる気が出ない、など夏バテと同じような症状がでるものだそうです。夏と違い秋は涼しくなり、食欲の秋、スポーツの秋と呼ばれ過ごしやすくなり、バテるということに無縁のように思いますが、最近秋バテを訴える人が増えているそうです。

その原因は、秋特有の気候です。昼と夜の気温差が激しく、真夏のような日もあれば、冬の訪れを感じさせるような日もあり、気温が定まりません。そのため体温を調節する自律神経のバランスを崩しやすくなります。

また、台風や秋雨前線で低気圧になると、空気中の酸素濃度が少し低い状態になります。すると体を休ませようと、通常昼間は活動モードである交感神経が優位になるものが、休息モードである副交感神経が優位に働き、だるさや疲れなどを感じてしまいます。

その他にも夏の生活習慣を続け、冷えたものばかりを摂取したり、冷房を効かせすぎるといった行動から体に冷えが生じ、だるさや疲労感、食欲不振といった夏バテと似た状態に陥るそうです。秋バテは日頃の心がけである程度予防できます。体を温める食材や温かい飲み物を積極的にとり、知らず知らずのうちに負担をかけていた胃の調子を整えましょう。

エアコンの設定温度を1〜2度高めたり、使用時間を工夫して、体の冷やしすぎには注意してください。身体の芯から温まるのようゆっくりとお風呂に入りましょう。入浴によるリラックスは、安眠にも効果的です。体は温められ血流が良くなり、自律神経が整えられるので、とにかく体を冷やさないで温める生活に尽きるそうです。秋ならではの楽しみを満喫するためにも、日々の生活習慣をもう一度見直してみましょう。

山田医院医療事務平賀怜奈

QRコードを利用した身元確認

今から8年後の2025年には、認知症患者は65歳以上の高齢者の5人に1人の約700万人、認知症の予備軍である軽度認知障害(MCI)も含めると1300万人になるのではともいわれていますね。そして認知症の方の介護でよく取り上げられるのが、家の中や外を歩き回るといった徘徊行動。家のなかだけであれば対応がしやすいのですが、家の外にでて徘徊がみられると、行方不明と言う事態になりかねません。

行方不明になった認知症の人は、2016年全国で1万5432人に上るといいます。認知症がすすんでいる場合、たとえ地域住民や警察に保護されたとしても、自分の名前や住所などを的確に答えられないことも多いため、どこの誰なのかを探し出すのは難しくなってしまいます。この課題に対して、近年ではスマートフォンを活用し、認知症で徘徊し行方不明になった人を見つけるシステムが自治体で普及しているといいます。

そのなかで、お隣の東大阪市で実際に行われている取り組みを紹介します。「SOSオレンジネットワーク」ネットワークに登録すると、QRコードが印刷された見守りトライくんシールが配布されます。このシールは衣類や靴などに熱圧着することができます。

徘徊発生時に、本人の身なりやその時の状況を指定のメールで協力員へ配信し、それらしい人物を見かけたら情報提供に協力してもらうという。保護した方がこのQRコードを読み込むと、SOSオレンジネットワーク事務局の連絡先が表示され、事務局に連絡することによって早期に身元確認を確実に行える仕組みだそうです。

他にも爪に貼るQRコードや、掲示板やアプリを活用して発見者が家族と直接やり取りできるシステムなど、自治体によってさまざまな形態でとりいれられつつあります。現在進行形で広まりつつあるこの取り組み、もっと多くの認知症を患う高齢者とその家族が安心して暮らす手助けとなることに期待したいですね。

山田医院医療事務中町麻里

中年期からの歯の管理

暑い夏も過ぎ、ようやく過ごしやすい秋になりました。

いよいよ食欲の秋です。美味しく食べて、元気を保つには「歯」が必要です。以前新聞に歯の管理についての記事がありましたので書いてみました。

80歳で自分の歯を20本以上保つことを目標とする「8020運動」の開始から30年ほどたち、達成した人の割合が5割を超えたそうです。かむ力を維持することは栄養摂取の偏りを防ぎ、歯周病の進行や筋力の低下を招かないために重要です。歯が少ない人は栄養の摂取量も少なくなり、歯が20本未満の人は動物性たんぱく質、亜鉛などのミネラル、ビタミン類の摂取量が少なかった。一方で、炭水化物はあまり差がなかったそうです。

歯科大学のある教授は「十分に噛めない人は自分の歯の調子に合わせて柔らかい食べ物を選んで食べる傾向があり,高カロリーで太っているのに低栄養の状態となる」と指摘されています。また別の歯科の先生は

①適正な栄養摂取が出来ず、血清アルブミン濃度が低かったり、ビタミン、ミネラル類が不足したりしている人は歯周病が進行しやすい。

②上下のかみ合わせが悪い人は身体のバランスを保つ力や筋力が低下するリスクが高まる。

高齢になってもかんで食べられるようにするには、40歳以上の人が心がけることとして

①一口30回かむ習慣をつける。

②歯みがきだけでなく歯間ブラシも使う。

③かかりつけの歯科医院を持ち、定期的に健診を受ける。

④歯が減ってしまったら入れ歯などで噛む力を維持する。食欲の秋、「歯」の管理をしながら、美味しく食べて、健康寿命を延ばしましょう。

山田医院助産師清水ユタカ

気が付きにくいアレルギーについて

食品添加物によるアレルギーは多くはなく過度に心配する必要はありません。大きく分けて2つのタイプがあります。

既存の食物アレルギー(たとえば牛乳)の関与する食品添加物(乳糖)によるものと既存の食物アレルギーとは関係なく症状を誘発する添加物自体によるアレルギーです。

乳酸菌は乳という字がありますが牛乳アレルギーでも摂取可能、一方ラクトグロブリンは乳の字がありませんが牛乳の蛋白の1つで注意が必要です。医薬品については子どもについては15歳以上の大人に比べると低くなっていますが中枢神経系用薬(解熱剤、抗けいれん剤など)が最も多く次いで抗菌剤などが続きます。

固形薬疹の形での反応が多く、服薬して30分から8時間以内に円形の紅斑で発症して色素沈着を残して治ります。初回の服薬で起こることはなく通常は1-2週間後に発症することが多いとされています。卵系統、牛乳系統が含まれている薬剤もあり食物アレルギーがある場合には注意が必要です。

学童期以降におこる食物依存性運動誘発アナフィラキシーは原因となる食物を摂食した2時間以内に運動をすると誘発されるアナフィラキシーショックです。原因食物としては小麦が最も多くその他甲殻類、果物となります。

通常は運動(どちらかと言えば運動負荷の高い運動の方が起こりやすい)により蕁麻疹などの皮膚症状が出現、喘鳴、呼吸困難などの呼吸器症状や血圧低下などのショック症状も認めることがあります。なお、消炎鎮痛剤、疲労、ストレスなどが重なると起こりやすくなります。花粉症の低年齢化に伴い最近では口腔アレルギー症候群が増えてきました。

これは花粉症のある人がその花粉と交差反応を持つ果物や野菜を食べると起こすアレルギー反応です。(たとえばスギ花粉症とトマト、ブタクサ花粉症とメロン、スイカ、バナナなど)摂食直後から1時間以内に口腔、咽頭の違和感、浮腫、その後鼻症状、皮膚症状などが出現しますが、1-2%においてはアナフィラキシーを起こすことがあります。これらのアレルギー症状は子どもにおいては比較的わかりにくいこともあるので大人が注意をしてみてあげることが大切です。

今回はチャイルドヘルスH29,8月号から抜粋しました。山田医院医師山田良宏