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山田医院だより

第16巻第2号(第181号)

小児科から成人科への移行について

医療の進歩が小児疾患領域にも及んだ結果、現在のわが国ではこれまで救命できなかった低体重児、白血病、重症先天性心疾患などの病気の子どもが救命されるだけではなく成人を迎えることができるようになりました。

しかし治療によってさまざまな合併症が生じたり医療や福祉面での支援が継続して必要な患者さんも少なくありません。また肥満、糖尿病、注意欠陥多動症、自閉症スプクトラム障害など小児期に発症して成人にかけて増加する疾病も増えてきました。

これら慢性的に身体、発達、行動、精神状態などに障害を持ち何らかの医療や支援が必要な子どもや青年はCYSHCN(children and youth with special health care needs)と呼ばれており成人科への移行を含めて大きな問題となっています。

昔から小児期発症の慢性疾患を抱えて成人する患者さんは存在しておりベテランの名医はそのような患者さんが何歳になっても診療を続けていましたがこのような名医の退職に伴い患者さんは今後どうすればよいのか悩むケースが多発しています。

一旦成人科に紹介をされた後になじます行き場の失った患者さんが増加してきた事実もあります。

なお、成人期特有の疾患(高血圧、がんなど)への対応が小児科医には困難なこともあります。

現在、診療科の移行を含めたプログラムも作成されており、患者さんの発達段階に合わせた年代別の目標の設定をしておりスムースな移行を目指しています。

出生体重が2500g未満で出生した児は低出生体重児と呼ばれますが我が国での低出生体重児は出生率の9.6%と高率です。これらの児は成人期に生活習慣病を発症するリスクが高い集団と考えられており今後は成人期も視野に入れた長期にわたるフォローアップ体制の整備を行い疾病が顕性化する前に対応ができるようになることが重要かと思われます。

先天性心疾患についても成人患者さんが増加しています。先天性心疾患手術の多くは根治手術ではないために特徴的な遺残症ならびに続発症を伴い生涯にわたる観察が必要で患者さんの多くは小児科あるいは心臓血管外科でフォローをされています。

酵素等の欠損、欠乏により代謝に異常が生じる先天性代謝異常症についても治療成績は大きく改善されましたが生涯にわたり食事療法あるいは服薬等が必要となっています。

ダウン症、ターナー女性などの染色体異常についても様々な合併症に対しての治療法が発達しており寿命は延びていますが心血管異常、内分泌異常など生涯にわたりフォローが必要になります。

小児がんについても長期生存率は70-80%になりますが、抗がん剤治療並びに放射線治療等に関連した晩期合併症は心臓、内分泌、腎泌尿器科、性腺機能、2次がんなどがありこれらは小児期だけに発症するのではなく若年成人に発症する可能性もあり予防的対応、健康管理が大切になります。このフォローアップについては最近では患者サマリーを作成して患者、家族に渡す動きが広まっています。

小児期に発症したてんかん等の神経疾患についても成人以降も継続した治療が必要なケースも多く妊娠、合併精神病等の対応が必要になり成人科でのフォローが必須になります。小児期に手術を受けた患児のうち、手術で病気が治癒して通常の日常生活を営むことができるものが多い一方で一部の患児は術後も排便、排尿障害、腎障害、運動障害などが継続して長期にわたる治療が必要なことも多く成人科への移行が問題となります。

なお、この診療科の移行問題は医療面についてだけではなく子どもの社会性を高めていくことも大切であり単一な方策はなく個人個人によってアプローチを変えて家族の環境も含めて変えていく必要があります。

小児科学会も2014年にこの問題に対しては提言を公表していますが、今後の緊急の課題と思われます。

山田医院 医師 山田良宏

コンタクトレンズの花粉症対策

花粉症の方は1年でもっとも憂鬱な季節がやってまいりました。花粉症の方でコンタクトレンズを装用されている方は、花粉がコンタクトレンズにどのような影響を与えているかご存じでしょうか?

■コンタクトレンズが目のかゆみなどを誘発させている涙の成分は、洗浄作用があり、異物やゴミなどが目に入った場合は洗い流してくれます。

しかしコンタクトレンズを装用していると涙による洗浄効果が低下し、アレルギーの元となる花粉が目の中に停滞しやすくなります。

コンタクトレンズは、装用時にタンパク質や脂質が付着し花粉の汚れも加わり、目の中は汚れの悪循環となっている可能性が大きいです。

■花粉症どう対策したらいいの?

・花粉の時期だけ、メガネを使用する。
・症状が出る前の早目の受診(初期療法)
花粉飛散期にもコンタクトレンズを継続したい方は早めに眼科医に相談し、症状の出ないうちから目薬をつけておきましょう。
・花粉を目に留めないように、毎日のケアで「レンズを清潔に保つ」ことが最も重要なポイントです。
そのためにも1日分の花粉を一緒に捨ててしまえる1日使い捨てタイプに切り替えることをお勧めします。
・最長でも12時間以上連続使用しない。
・目に入った花粉を洗い流そうと水道水や洗眼水で目を繰り返し洗う人が多いようです。目の粘膜を刺激してかえって
症状を悪化させたりかゆみが増すこともあります。

また眼科以外の科で目薬をもらい続ける事もありますが、コンタクトレンズの装用に関して適切なアドバイスができませんので、必ず“眼科”を受診してください。

山田医院 医療事務 杉山恭子

健康寿命を伸ばすためには!

昨年9月に健康ファーラムセミナーを聞く機会がありました。

寝たきりを予防するにはメタボとロコモ(運動器症候群)の対策が大事であることのお話でした。 よく知られているように、我が国は世界に類を見ない速さで高齢化が進行しています。

高齢者の健康上の特徴は、老化と罹病率の高さでありそれがQOL(生活の質)を下げています。

健康寿命とは、日常的に介護を必要としないで自立して生活できる生存期間の事です。

加齢変化は誰にでも起こりますので、加齢変化のあることと健康ではないという事とは別の事です。

WHO(世界保健機構)の定義では「健康とは単に病気ではないとか、身体が弱くなるということではなく、何事にも前向きな姿勢で取り組めるような肉体的、精神的、および社会的に完全に調和のとれた状態」としています。

この中で「何事にも前向きな姿勢で取り組める」と言う、主観的ではあるが個人の健康状態(健康感)を維持することが大事と言えます。

厚生労働省が発表した2011年5月(WHO発表)の平均寿命は男性80歳、女性は86歳自立して日常生活をしながら、何年生きられるかを表す健康寿命は2010年では男性は71.4歳、女性は75.8歳となっています。平均寿命と健康寿命の差が男性は約8年、女性は約10年あります。

この健康寿命を伸ばして平均寿命との差を縮める必要があります。長生きするだけでなく長生きを楽しめなければ意味がありません。 歳を重ね中高年になり多くの人は体力の衰えに気がつきます。

これは老化による体力の衰えに加えて、快適さや便利さがあふれた現代の生活環境が身体を動かす機会を奪っていることが体力の低下につながっているのです。

老化による感覚機能の低下→室内への引きこもり→運動不足→食欲の減少→更なる老化の促進→諸機能低下→社会的コミュ二ケーションの減少→更なる引きこもりというように悪循環を起こすとされています。

この悪循環を断つことが必要であり、その一つに運動が良いとされています。

ただでさえ動きにくくなった体を、どのように運動を始めたらよいのか、いつでも、どこでも始められる運動のやり方、さらに高齢者に多い慢性疾患に罹ってもできる運動方法を考えなくてはなりません。

毎日8000~10000歩の歩行が一つの目安とされていますが、これは60歳代の人までに適応されるものです。

70歳以上の方も、これを参考に個々人の状況にあわせて身体活動を行えば生活習慣病の予防、介護予防にも有効です。運動が健康づくりに有益であることが分かっていても、ほとんどの人は運動不足であることを感じているのが現状です。運動は時間や場所がなければできないものではありません。生活の中で運動する機会はいくらでもあります。スポーツだけではなくて日常の生活動作も運動になります。

例えば、掃除や炊事、洗濯といった家事も運動になります。膝や腰の痛みで、歩くのが難しいなら立位だけでも効果があります。テレビを見ながら、何かをしながらでも手足の運動はできます。背筋を伸ばして姿勢を整えるだけで背中の筋肉が鍛えられます。 老化によってもっとも衰えやすい筋肉は、太ももの前の筋肉大腿四頭筋と後にある大腿二頭筋、それからお腹の腹直筋です。太ももの二つの筋肉が衰えると転倒しやすくなり、歩行幅が小さくなります。腹直筋が衰えると腹部のたるみ、見た目だけでなく腹圧が弱くなり便秘になりがちです。 歩行能力は、自立した生活にとって最も基本的で大切な能力です。歩行能力の低下は、日常生活や社会生活の低下にもつながりやすいと言われています。

運動は、自分の身体の機能を維持することに重点を置いた方法で行うことが望ましいと言えます。

以上は健康寿命を伸ばす手段として運動について述べました。健康寿命を伸ばすには、運動だけでは不十分で食生活にも目を向けてメタボ対策などについても考える必要があります。

日頃足腰の衰えを感じている方は、今の健康状態を低下させないためにも、身近な運動から始められては如何でしょうか。

山田医院 看護師 畑中幸子

子どもへの粉薬の飲ませ方

子どもが病気になったときに一番困るのは、処方された薬をいやがって飲んでくれないことですよね。

最近の薬は昔よりかなり飲みやすくなっているものの、子どもがなかなか薬を飲んでくれなくて心配になる保護者の方も多いかと思います。

薬は水か白湯で飲むか溶かして飲むことが基本ですが、薬嫌いの子どもに飲ませるのは至難のワザですよね。

そこで、山田医院でよく処方される散剤について、

①それぞれの薬の特徴

②混ぜると飲みやすくなるといわれているもの

③逆に混ぜることにより飲みにくくなったり、薬のききめに影響を与える相性の悪いものなどを調べてみました。
●ワイドシリン細粒200

①桃色、甘味、ミックスフルーツ風味、ペニシリン臭あり

②牛乳・アイスクリーム・果汁の少ないオレンジジュース

③酸味のある物(ヨーグルト・スポ-ツ飲料・果汁ジュース・乳酸菌飲料など)
●クラリスドライシロップ小児用

①白色、甘味、イチゴ風味、原末は苦みが強い

②牛乳・アイスクリーム・練乳・ココアパウダー・プリン・お砂糖・ピーナッツクリームなど ③酸味のある物(ヨーグルト・スポ-ツ飲料・果汁ジュース・乳酸菌飲料など)、酸性の薬

●小児用ムコソルバンDS1.5%

①白色~微黄色、甘味、ヨ-グルト味、わずかに苦み感じることあり

②牛乳・スポ-ツ飲料・麦茶

③特になし

●ザジテンドライシロップ

①白色、甘味、イチゴ風味

②何に混ぜても比較的飲みやすい粉薬

③何か飲み物
(ジュースなど)混ぜるよりも水で溶かす方が飲みやすい

●ナウゼリンドライシロップ

①白色、甘味、無臭

②水(砂糖のような甘さがり、そのままでおいしい薬)

③酸味のある物(ヨーグルト・スポ-ツ飲料・果汁ジュース・乳酸菌飲料など)

●カロナール細粒20%

①淡橙色、甘味、オレンジ風味、溶かすと苦いことあり

②どうしても飲めない場合は、アイスクリームに混ぜたり、牛乳・ジュースなどに溶かして服用してください。ただし、効果は変りませんが吸収が遅れることがあるそうです。

③ヨーグルト・スポ-ツ飲料・果汁ジュースなど

●タミフルドライシロップ3%

①白色~微黄色、甘味、フルーツミックス風味、苦みが強い

②チョコアイス・ココア・オレンジジュース・スポ-ツ飲料・ヨーグルト・イチゴヨーグルト

③バニラアイス・リンゴジュース・乳酸菌飲料ただし、どのお薬にも共通することですが、主食のミルク、おかゆ、うどんなどに混ぜるのは止めましょう。

薬を混ぜると、その食べ物自体の味が変わって嫌いになり、食べなくなってしまうかもしれません。

まだまだ寒い日も続くかとは思いますが、出来る限り風邪などに罹らないよう、体調に気をつけてお過ごし下さい。

山田医院 医療事務 中町麻里

ほってはいけない物忘れ

小学生のころ、『忘れ物』ばかりしていました最近は忘れ物もするけど、『物忘れ』もするようになってきました。

それで先日、松原徳洲会病院主催の“ほってはいけない物忘れ”という公開医療講座のチラシを見たので聴いてきました。

同病院の脳神経外科のドクターのお話しでした。

“年相応の物忘れ”と“病的な物忘れ”の違いについて説明がありました。

記憶に関しては“年相応の物忘れ”では自覚があり、“病的な物忘れ”では自覚がないそうです。

“記憶”というのは、
①情報を憶えようと『集中する』
②新しい情報を脳に取り込み『記銘』する。一時的な『短期記憶』。
③情報を保持して『長期記憶』として保存する。記憶を『長期記憶』 という倉庫にしまい込む作業を『固定』
④長期記憶を想起して再び取り出す(検索と取り出し)。

という4つの仕組みで成り立つそうです。

ど忘れは想起する機能が一時的に停止した状態だそうです。病的な物忘れは

②の記銘から③の保持までの過程がうまくいかないのだそうです。

ここでは2つの物忘れの違いを記憶の面からだけみましたが、時間、場所の認識、言語能力、学習能力などにも2つの物忘れの違いがでてきます。

ほってはいけない物忘れはそれをひきおこす原因が多く、心配なら一度は専門医のアドバイスをうけましょうとしめくくられました。また、暮らしのヒントとして頭を使う趣味を持つ、ひとと接する、ウォーキングのような適度な運動、野菜、果物、魚を摂る、すみません、あとメモをとれませんでした。総人口に対して65歳以上の高齢者人口の占める割合を高齢化率といいます。

WHO、 国連の定義によると高齢化率が21%を超えた社会を“超高齢社会”といいます。日本は2007年に超高齢社会に入り、今後も日本の高齢化率の上昇が続きます
『物忘れ』がひどくなっても、現代では治療や環境整備により、生活の質の向上がもとめやすくなりつつあると信じて楽しくすごしましょう。

余談ですが、今、京都大学総合博物館で“医は意なり”という医学史展が開催されてます。なかなか興味深かったです。4月12日までやってます。お花見がてら見にいくのも気分転換になるとおもいますよ。

山田医院 助産師 清水ユタカ

ヘルペスウイルスについて

ヘルペスウイルスは現在9種類存在しています。

有名なものとしては水痘帯状疱疹ウイルス、単純ヘルペス、サイトメガロウイルス、EBウイルスなどがありますが、今回は突発性発疹の原因となる6型、7型について説明をします。

日本におけるヘルペスウイルス感染症は生活の変化に伴い一部のウイルス感染症で初感染年齢が高年齢化する傾向があります。なかでも突発性発疹は昔は乳児期のほとんどの子どもがHHV(ヒトヘルペスウイルス)6Bの初感染により発症する疾患でしたが最近では3、4歳の突発性発疹患児も時々見受けます。

HHV6Aは遺伝子構造の相動性は高く生物学的性質も類似していますが初感染像は不明で日本ではHHV-6Aに感染する人は少数といわれています。「突発性発疹はHHV-6(A,B)あるいはHHV-7の感染による病気で一般に予後の良い疾患とされていますが合併症として熱性けいれんが比較的高率にありまたまれに脳炎、肝炎、心筋炎などの報告もあります。

特発性発疹は臨床診断をされており小児科定点からの報告があります。感染に季節性はなく1年を通して発症します。年ごとの流行の変化もなくまた毎年ほぼ同様の発生パターンを示します。

HHV-6B初感染は母親からの移行抗体が消失した生後6か月から1歳にかけて好発し、HHV-7の初感染はHHV-6Bより遅れて生後2-4歳頃で一般に2度目の特発疹がHHV-7初感染によることが多くなっています。

先ほど示したHHV-6Bの初感染が最近では3,4歳になる症例も見受けるようになっています。一般にHHV-6Bの初感染は両親を含む既感染者の唾液を介した水平感染と考えられています。(母乳からの感染は否定的です。)最近では乳児期に口移しで離乳食を与えるようなことは減っておりこのような生活様式の変化が高年齢化発症に関与している可能性もあります。

なお、HHV-6は初感染後に末梢の単球系、唾液腺、中枢神経などに潜伏しており、造血幹細胞あるいは臓器移植などの免疫不全宿主あるいはある種の薬剤などで再活性化し脳炎、脳症などの中枢神経合併症あるいは肝炎、肺炎などの病状を起こします。HHV-6の再活性化は重篤な皮膚アレルギーとの関連もあり臨床的に研究も盛んにされています。

山田医院 医師 山田良宏