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山田医院だより

山田医院だより 第16巻第8号(第187号)

消化器内視鏡・腹腔鏡下治療について

1950年に日本人によって開発された胃カメラはファイバースコープから電子スコープを経て現在ではカプセル内視鏡まで進化しています。

治療としても1980年代にはEMR(内視鏡的粘膜切除術)が開発、1990年代後半からはESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)が登場、現在ではNOTES(経管経腔的内視鏡手術)という内規鏡を自然孔(口、肛門、膣、尿道など)から挿入して管腔壁を経由して腹腔内などに到達させて治療、診断を行う方法が開発されています。

腹腔鏡下手術とは腹腔内にCO2を8-12mmHgの圧で送気した状態で腹腔内の様子をモニターで観察しながら長い鉗子を用いて手術する方法ですが、1983年に外国において虫垂切除、その後胆のう摘出術が行われており、日本においては1990年に胆のう摘出術が初めて行われています。

現在は支援機器の開発も進み多くに手術において腹腔鏡が取り入れられています。これら内視鏡下治療に伴い食道、胃、大腸がんにおいても早期の場合には第1選択として内視鏡下治療が行われることが多くガイドラインもできています。各種の癌は癌の深達度、大きさ、形によってリンパ節転移の仕方が異なっており、治療に際してはこれらを診断、検討のうえで治療が行われます。また、内視鏡治療後の病理検査での評価も可能で必要に応じて追加切除を腹腔鏡下手術を行うこともあります。その他、内視鏡の発展に恩恵を受けた疾患としては閉塞性黄疸並びに膵嚢胞性疾患があります。

閉塞性黄疸は胆管が閉塞する疾患です。急速に進行して胆管炎を併発して死に至ることもあります。以前は開腹手術が必要でしたが、現在ではまず内視鏡的乳頭括約筋切開術を含む内視鏡的治療で改善することも多く治療の第1選択となっています。

膵嚢胞性疾患についても超音波内視鏡などを使用して病気の診断が可能となりまた嚢胞液のドレナージ等も可能となりました。なお、最近では手術中に消化器内視鏡を行い同時に腹腔鏡下手術を行う合同手術(LECS)も普及しつつあります。腹腔鏡下手術においても通常は3-4つ開ける孔を1つにするsingle port surgeryや孔を小さくするneedlescope surgeryなども行われるようになりました。なお、次世代の医療改革の一端を担う分野としていわゆるロボット支援手術があります。

現在使用されているのはda Vinci Surgical Systemで欧米を中心に1997年から臨床応用されており日本においても200台足らずが稼働しています。

現在保険収載は前立腺癌に対しての前立腺摘出術のみであり、一般消化器外科手術においては薬事承認のみ行われているために診療研究が行われている状態です。このロボット支援手術は患者さんから離れた場所でモニターを見ながら両手両足を使い操作を行います。外から見ているとまるでコンピューターゲームをしているような感じです。このロボット支援手術は3次元カメラを使用しており安定した視野が得られまたブレがなく10倍にも拡大され3次元の立体視野カメラにより直観的で精巧な鉗子操作が行われます。また、鉗子は7つの多関節による自由度の高い鉗子で操作性が極めてよくなっています。

腹腔鏡下手術あるいは開腹手術に比べて癌切除部位断端にがんが残る割合は低下、出血量の低下、神経温存率の向上がみとめられています。狭い空間である骨盤内にある前立腺、直腸、子宮等の手術においては今後発展していくと思われます。内視鏡下あるいは腹腔鏡下手術は侵襲が少なく簡単な治療と考えられがちですが、手技が未熟であったり、手術適応を間違えると開腹手術への移行あるいは死亡事故につながる危険もあり手技習得の研修あるいは手術適応についてのガイドライン化なども学会等では検討されています。今から数10年後、ブラックジャックのような外科医はなくなり、ロボットを操作する外科医になるかもしれません。

山田医院 医師 山田良宏

あまり聞かない病気「くる病」

私が子供の頃は小学校で「くろんぼ大会」と言うものがあって、男の子も女の子も、夏は色黒さんが健康の 象徴でした。同級生に真っ黒な女の子がいてどうしても優勝できずに悔しい思いをしたものです(笑)

題名にある「くる病」とは子供の骨が軟らかいまま十分に成長できず、手足の変形や発育不全を引き起こす 病気です。私が子育てする頃には「日光浴のし過ぎ注意」と言われていました。そして今では子供用の日焼 け止めも出ている時代です。

その昔、栄養が慢性的に不足していて、「くる病」が多くありましたが、ビタミンDの豊富な肝油を取った り、日光浴でビタミンDの合成を促すことの大事さが判明、栄養状態の改善に伴い戦後ほとんど見られなく なりましたが、その後1980年代以後少しずつ学会での症例が報告されるようになったそうです。 骨の元になるカルシウムを、体内に取り込むのに必要なビタミンDの不足が主な原因です。体内でのビタミ ンDの合成は、紫外線が皮膚に当たることで進みます。でも、紫外線が皮膚がんにつながることへの不安が 高まり、子供の外出を控えたり、日焼け止めを常に塗ったりして過度に紫外線を避ける習慣が広がりまし た。

確かに紫外線の浴び過ぎは良くないけど、完全に遮断してしまうとビタミンD不足になります。服を着 て手足、顔が出ている状態で夏は1日5~15分程度、冬は1時間以上を日光浴の目安にして下さい。日光浴 に加え、ビタミンDを多く含んだ食品も積極的に取り入れることも効果があります。卵黄や魚、キノコに多 く含まれていますが、アレルギーなどで接種困難な時は子供用のビタミンDのサプリメントも出ているそう です。くる病は早期発見により回復も早い病気なので、お子さんの体を良く見てあげて下さいね。 さあ、もう少しでお子さんの夏休みも終わりますね。宿題のラストスパート?それとも遊びのラストスパー ト?いずれにせよ、まだまだ暑い日が続くので、夏風邪、熱中症に気をつけて下さい(*^。^*)そして、少々 の日光浴も心がけて下さいね。

山田医院 看護師 冨嶋 友子

飲みかけペットボトルに注意!

まだまだ暑い日が続いていますが、熱中症予防としてこまめな水分補給に気をつけているでしょうか。

そ の際に水筒代わりに持ち運べるペットボトルはとても便利ですよね。しかし、みなさんは開封後どのくらい で中身を飲み切りますか?一気に飲みきってしまわずに、ある程度飲んでキャップをして、残りは後で飲む ケースが多いのではないでしょうか。

実はこの飲み方をすると、暑い夏は室内室外の温度差が激しい環境になるので、ペットボトルに直接口を 付けた際に付着する菌が、特に糖分を多く含んだジュース類の溶液の中で増殖してしまうのです。

通常「雑 菌」と呼ばれる一般細菌はほとんどが病原性のない物ですが、中には大腸菌・黄色ぶどう球菌・カンジタ菌 などが存在する事もあるので気を付けた方がよさそうです。

飲み物の種類にもよりますが、少なくとも3~4時間以上経過した場合は、もったいないと思ってしまい がちですが口にするのはやめて処分するようにしましょう。

赤ちゃんの哺乳瓶やストローを使用した場合に おいても同様です。感染症予防の観点からも衛生面からも1日経過したものは絶対避けたいです。特に、乳 幼児、高齢者、病中・病後の人などは抵抗力がないので要注意です。

飲み残しそうな場合はコップに移し替 える、もしくは糖質のないもの、出来れば純水を選ぶ方がいいですね。 そして、ペットボトル本体についても、洗えば大丈夫じゃないかと思われるかもしれませんが、1度だけ の使い切り目的で作られており、繰り返しの使用を想定されていません。

洗うことでペットボトル表面に傷 が入り、その傷に雑菌が繁殖しやすくなります。プラスチックなので熱湯消毒をすることも出来ません。な ので、ペットボトルの複数回使用は避けるようにしましょう。

山田医院 医療事務 中町麻里

酢玉ねぎの効果

毎日毎日暑い日が続きますね。うだるような暑さのなか、体調を崩された方もおられるでしょう…

そこで 今回は、夏バテにも効果がある「酢玉ねぎ」について簡単に紹介したいと思います。

巷で話題の酢玉ねぎ とは、酢にスライスした玉ねぎを密閉容器に入れて数日漬け込んだものです。もともと玉ねぎには血液を サラサラにしたり、血液中の余分な糖や脂肪を減らす効果がある硫化アリルという成分と、強い抗酸化作 用によって血管をしなやかに保ち血圧を下げたり動脈硬化を予防するケルセチンが含まれています。

また 酢に含まれる酢酸には血液をサラサラにし、脂質を分解、さらに疲労回復の効果もあり、玉ねぎと酢が一 緒になると、その効果がさらに上がるといわれています。

酢玉ねぎの主な効果は、高血圧、肩こり、めま い、疲労回復、便秘解消、ダイエット等々、、多岐にわたりまさに万能薬のようですね。(ただし食べ過 ぎには注意!)余談ですが、玉ねぎの歴史は古く、古代エジプトではピラミッド建設をする労働者たちが こぞって玉ねぎを食べていたそうです。

科学的根拠がなくとも、スタミナをアップさせるために本能で玉 ねぎを摂取していたんですね。中々興味深い話です。さて、酢玉ねぎの作り方はいたってシンプルです。 玉ねぎを薄くスライスして容器に入れた後、お酢やハチミツ等を加えて数時間~数日置けば完成です。詳 しいレシピは雑誌等に沢山掲載されているので、興味のある方はぜひ試しに作ってみてください。酢玉ね ぎを食べて暑い夏を元気に乗り切りましょう!

山田医院 医療事務 川村 理恵

高齢者における排尿障害

健常者と比べて高齢者の排尿の特徴は、1日の総尿量は減り、排尿回数が増え、1回あたりの尿量が減少し ていく傾向があります。

また、昼に比べて夜の尿量が増えるのも高齢者に見られる一般的な傾向です。 排尿障害とは尿失禁(尿をためることの障害)と尿排出障害(尿を出すことの障害)に分けられます。

尿失禁は高齢者では極めて頻度が高い状況で約400万人の高齢者が尿失禁を有しており、在宅高齢者では 10%、施設入所者では50%に尿失禁がみうけられます。

尿失禁は次の4つのタイプに分類されます。

① 切迫性尿失禁(蓄尿時に膀胱が勝手に収縮し尿がしたくなると我慢できずに漏れる)原因は尿路感 染、過活動膀胱(脳血管障害、パーキンソン病、脳脊髄疾患など)です。

② 腹圧性尿失禁(尿道の抵抗が低下し咳やくしゃみ、重い物を持つなどの腹圧がかかる時に漏れる) 原因は尿道括約筋障害(内因性括約筋不全、前立腺手術など)、骨盤底弛緩(膀胱下垂、出産、便秘、肥 満)です。

③ 機能性尿失禁(膀胱、尿道機能に関係なく認知症やADL(日常生活動作)低下によりトイレで排尿 が出来ずに漏らしてしまう)原因は四肢運動障害(脳血管障害、脊髄疾患、整形外科疾患など)、知能精 神障害(痴呆、譫妄、錯乱など)です。

④ 溢流性尿失禁(多量の残尿がある為尿が尿道よりあふれて常にチョロチョロと漏れる)原因は低活 動膀胱(脊椎疾患、骨盤内手術、糖尿病性末梢神経障害など)です。

尿排出障害は高齢男性では前立腺肥大症が頻度の高い原因疾患で、60歳台の男性の約70%に前立腺肥大が 見受けられます。女性においても尿排出障害がみられることも稀ではありません。

尿排出障害は大きく分けて次の2つに分類されます。

① 膀胱収縮障害(低活動膀胱)。これは糖尿病性末梢神経障害、椎間板ヘルニア、腰部脊椎管狭窄 症、骨盤内臓器手術(直腸癌、子宮癌)が原因です。

② 尿道通過障害。これは前立腺肥大症、前立腺がん、尿道狭窄、膀胱頸部硬化症などが原因です。 どのタイプの排尿障害でも尿が出にくい、尿が漏れる、尿の回数が多い、尿が出るときに痛いなどの排尿 のトラブルは日常生活の質を著しく低下させ嫌な気分にさせます。気になる症状がある時は一人で悩まず 主治医や泌尿器科で気軽にご相談ください。・

山田医院 看護師 中島早苗

学校健康教育について

日本の学校保健が果たしてきた役割としては感染症対策への貢献、健康診断、学校給食、健康教育などが ありますが平成26年4月に学校保健安全法の改正が行われ、来年4月から実施されるようになりました のでこの点について解説をします。

①座高検査の削除。座高の測定値のみでは児童生徒の発育を評価する 指標にはならず上節下節比[座高/(身長-座高)]に換算する必要があるがこの計算は面倒である上、成長曲 線がもたらす情報の方が重要であることから座高測定は削除となり成長曲線を活用することになりまし た。

②寄生虫卵検査の削除。衛生状態の良い現代ではこの10年間検出率は1%以下で推移しており、また寄 生虫は通常の衛生教育(手洗いや清潔の保持)を引き続き徹底することで検査は削除してもよいと判断され ました。

③四肢の状態を必須項目にする。現代の子どもは過剰な運動にかかわる問題あるいは逆に運動が 不足していることにかかわる問題と2極化しており、学校での対応の1つとして運動器に関する検診を行う ようになりました。具体的には保健調査票を活用して家庭内での観察を踏まえた上で学校側が学校医に伝 えて学校医が診察するという対応になります。具体的には脊柱側弯症、腰椎分離症、ペルテス病、大腿骨 頭すべり症、オスグット病、野球肘などを対応として考えられています。

④保健調査を小学校、中学校、 高校においては全学年において施行となりました。その他に留意事項として今まで希望者のみであった色 覚検査については事前の同意の上で個別に検査、指導を行い必要に応じて適切な対応ができるようにとさ れました。希望者のみ施行であった現状においては色覚検査が行われることは実際にはほとんどなく教職 員の色覚異常に対する理解や配慮が薄れるという問題が生じ、また生徒自身も色覚検査を受けなかったた めに自身の色覚の特性を知らず様々な不利益を受けていることがわかり改正されました。これらの改正に ついては平成28年4月からの施行となっており現在は学校医への周知、研修も行われています。

山田医院 医師 山田良宏