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山田医院だより

山田医院だより 第16巻第10号(第189号)

難病ならびに小児慢性特定疾病について

難病対策のきっかけとなるのは昭和39年頃から各地で大流行した原因不明の奇病として恐れられた「スモン」対策に始まります。

これは下痢、腹痛などの腹部症状に引き続き足先からしびれが上行して重症になると歩行障害、視力障害、けいれんなどが出現する重篤な神経疾患で「腹部症状を伴う亜急性脊髄・視神経・末梢神経障害(Subacute Myelo-Optico-Neuropaty SMON)」と命名されたものです。

昭和44年に厚生省はスモン調査研究協議会を発足させて研究班形式で研究が開始、昭和45年にキノホルムの副作用説が発表されました。このころは水俣病、イタイイタイ病などの公害被害も多発、社会的対応も要望されるようになり、スモン入院患者さんには月額1万円が支給されるようになりましたがこれが指定難病の医療費公費負担の始まりとなりました。

なお、昭和46年に厚生省内に難病対策プロジェクトチームが設立、「調査研究の推進」「医療施設の整備」「医療費の自己負担の解消」を3本柱とする難病対策要綱が昭和47年にまとまられました。当初8疾患で開始された事業は130疾患に増え予算も400億円を超える状況となり予算事業としての限界を迎えており、また公平性の問題から医療費助成の対象疾患のさらなる拡大と見直しが求められていました。この中で平成26年にいわゆる難病法が可決、平成27年1月から施行となりました。同時に児童福祉法が一部改正となり小児慢性特定疾病の医療助成の体疾病の拡大、自立支援事業などの福祉施策の充実、小児の成人期移行に対する支援う事業などの取り組みがスタートしました。

難病については医療費助成については消費財などの財源が充てらえることになり事業が安定になりました。医療費助成の対象とする疾病は新たに指定難病といわれるようになりました。

難病とは

①発病の機構が明らかではなく、

②治療法が確立していない、

③希少な疾病であり、

④長期の療養を必要

とするものという4条件を必要としており、指定難病とは難病の4条件に①人口の約0.1%程度に達しないこと、

②客観的な診断基準が確立していることとなりました。現時点においては指定難病は合計306疾病が対象となっています。なお、今後は難病指定医のみが指定難病の新規診断を行うことになり、指定難病の更新については協力難病指定医も行われるようになりました。なお、研究体制についても実用化研究事業については厚生労働省から日本医療研究開発機構(AMED)に一本化されて運用されるようになりました。なお、平成25年の障害者総合支援法の改正により、この法律の対象に難病等が加わりました。この結果、障害者手帳を持っていない方、指定難病になっていても医療費助成の対象とならない方も障害福祉サービス等が受けられるようになりました。

なお、児童福祉法改正についての小児慢性特定疾病は

①慢性に経過する、

②生命を長期にわたって脅かす、

③症状や治療が長期にわたり生活の質を低下させる、

④長期にわたって高額な医療の負担が続く

の4条件を満たす疾病であり18歳未満が対象となります。

現在704疾病が認められています。その他自立支援事業として相談支援を必須事業として療養生活支援事業、相互交流支援事業、就職支援事業、介護者支援事業など学校生活などでの教育や社会性の学習に遅れが生じ自立を阻害されている児童等について必要な支援を行います。なお、難病患者さんと家族への支援で最も重要なものは正確かつ最新の情報といえます。海外で希少疾患関係の最大の情報データベースはOrphanetでEU全体に広がっており約6000の疾患についての情報等を掲載しています。日本においては難病情報センターあるいは小児慢性特定疾病情報センターが公的な情報提供を行っています。今後の問題として難病診療体制の構築、難病患者さんのデータベースの構築、管理、指定難病の追加検討、難病研究費の充実などが課題となっています。今回は日本医師会雑誌9月号から抜粋しました。

山田医院 医師 山田良宏

思秋期ってなに?

段々秋も深まり、朝晩寒くなりました。風邪を引かないように注意したい季節です。

先日、本屋で「思秋期」という言葉を目にしました。思春期はよく知ってるけれど、思秋期って?

皆さんご存知の通り、思春期は小学生~中学生の年代におこる第二次性徴の発現、子供から大人の身体に変 化する時期とあります。そして、思秋期。生殖能力の成熟期から生殖不能期への移行の時期とあります。

更 年期と言われている40~50代。加齢によるホルモン分泌の減少から更年期障害と言われる自律神経失調症を 主にした心身の変化を自覚することが多い時期でもあります。実はこの思秋期をどう過ごすかによって、そ の後の老年期をいかに健康に、有意義に過ごすかのひとつのポイントになっているようです。

加齢による変 化を感じるこの時に、老いによる変化を受け入れ、生活習慣を見直し、今後の人生設計、老いとは?家族や 周りとの関わり方は?と深く考え、見つめなおすよいチャンスになります。食生活や、喫煙、飲酒を改め る、運動習慣を取り入れる。人生80年と言われる現代に、思秋期からの約30年を心身共に健やかに過ごすた めに思秋期真っ只中の方も、これから迎える方も、そしてそんな家族がいる方も自分の身体の変化に伴う、 心の変化にも一度目を向けてみるのも良いのではないでしょうか?

また更年期障害症状の程度によっては治療が必要な場合もあります。生活習慣の改善によっても症状がつら い場合は、一度かかりつけの医師に相談し適切な治療を受けるようにしましょう。また、女性だけに特筆さ れることが多いですが、男性にも更年期障害はあります。更年期障害では、不安や不眠、気難しくなる、ほ てり、のぼせ、多汗、息苦しさ、動悸、めまい、疲れやすさ、だるさ、手足のしびれ、性欲の減退など。こ れらは男女共にみられる主な更年期障害症状です。

一時的な疲労や、ほかの疾患による症状も考えられます ので自己判断せずに適切な時期に適切な治療を受けることも必要です。食欲の秋、読書の秋、スポーツの 秋、様々な趣味を楽しみつつ健康に元気に過ごしましょう。

山田医院 看護師 岩崎恵美子

「嘔吐時の食事について」

10月に入って、全国各地でノロウイルスの集団感染が相次いで発生していますが、今年は新型のノロウイル スが国内で増えているという調査結果を川崎市健康安全研究所がまとめているそうです。

「病原性はこれま でと同程度とみられているが、多くの方は免疫がないために、流行期の秋から冬にかけて患者が急増する恐 れがある」とのこと。皆さんもトイレ後や食事前の手洗いの徹底など、感染防止に気を付けてくださいね。 今回はもしも胃腸炎にかかってしまった時、嘔吐のある時の水分摂取や食事について調べてみました。

①吐いた直後1時間は何もとらず、胃腸を休ませる。嘔吐するときは飲んだ水分だけでなく、胃液も一緒に 嘔吐するので、吐けばはくほど脱水しやすくなります。しかし、脱水防止にと吐いた直後にすぐに水分補給 させると、それが刺激となってまた嘔吐を誘ってしまうことがあります。嘔吐直後は口を漱がせるだけにし て、1時間ほど胃を休ませましょう。

②吐き気が収まったら、室温に戻した経口補水液や薄めたスポーツドリンク、湯冷ましなどを少量ずつ。20 ~30分ほど様子を見て、大丈夫なら様子を見ながらだんだんと量を増やしていきましょう。水分がとれるよ うになったら重湯、あっさりした汁物、おかゆそのものへと進めていきます。

③おかゆで嘔吐なく受け付けて、食欲良好な時は、おじや、やわらかく煮たうどん、パンなどにステップ アップしていきます。フル ーツは、りんごのすりおろしや、バナナも少しずつならOKです。いちご、梨、 柿、みかんなどの柑橘類は控えましょう。

④回復期のおかずは、油もの・生もの、香辛料、コーヒー、炭酸など刺激の強いものを控えましょう。やわ らかい野菜(食物繊維の多いものは控える)や湯豆腐など、動物性たんぱく質では白身魚やサケ、鶏のささ みなどのよく加熱されたものがオススメです。 ①~④へとステップアップした場合も、食事と食事の間で、こまめな水分補給は続けましょう。

山田医院 医療事務 中町麻里

季節の変わり目に体調を崩すのはなぜ!

朝晩は寒ささえも感じさせる今日この頃、急激な気温や気候の変化に身体がついて行けないなど、雨の日や季節の変 わり目には決まって「体調がすぐれない」と感じる人も多いようです。

このように、季節や天気で体調が変わるのは 自律神経と白血球の免疫システムが常に気圧の変化に影響されているためです。

雨の日はリラックスが進行する 雨の時には、低気圧に支配されて酸素が少なくなるので体内に入る酸素の量も当然減ります。

酸素の量が減ると、 自律神経の休息をつかさどる副交感神経が優位になりリラックスできます。リラックスが進むと副交感神経がコント ロールするリンパ球も増えるのです。

こうしてリンパ球が過剰になれば治癒反応としての痛みやこり、倦怠感などの 不快症状も出ることになり、病気でないのはわかっていても、なんとなくけだるく、体調がすぐれないわけです。

雨の日は低気圧によって副交感神経が優位になりすぎて、気分や体調もすぐれないのだと理解すれば、体調不良に 対する漠然とした不安も軽減して受け止め方も違ってきます。 雨の日はじっとしていると体調がますます優れません。積極的に身体を動かし、部屋を明るくするなど交感神経が 優位になる工夫をしましょう。

季節の変わり目は自律神経が大揺れ 日本は季節ごとの気圧や気温の変化に上手に対応しながら生きてきました。衣替え、室温の調節、旬の食べ物を楽し むなど、四季のある国ならではの季節ごとの対応を知っています。そんな日本人の身体の中では、自律神経が絶えず 変動して黙っていても季節ごとの気温や気圧の変化に身体が順応するようになっています。

自律神経は交感神経と副交感神経のどちらか一方に大きく傾かず、揺れ動きながらバランスをとっているので、偏 りを防ぐためのいくつかのリズムがあります。昼間は交感神経が優位に傾き、休息の夜は副交感神経が優位に傾き、 これが「日内リズム」です。日内リズムのおかげて、私たちは朝になると目が覚めて、夜になると眠くなるわけで す。

副交感神経が優位で起きる喘息の発症が夜中や明け方にかけて起き、リウマチの人の関節が痛む時間帯が明け方 に集中するのも日内リズムが関係しているとも言われています。四季の気圧や気温の変化に対応するのが自律神経の 「年内リズム」で、春先や秋口など季節の変わり目の不調に影響します。

年内リズムの基本は、夏はリラックスする 副交感神経が優位で暑さをかわし、冬は寒さに備えるために交感神経が優位になります。

こうして季節ごとに緊張と リラックスを切り替えます。春と秋はその中間で春は冬の交感神経優位から夏の副交感神経に移るプロセス、秋は夏 の副交感神経優位から冬の交感神経優位にうつるプロセスです。季節がかわるプロセスでは、ストレスがかかった時 と同じように自律神経の揺さぶりが起きるわけです。そうした揺さぶりは健康な人ほど少なく体調面への影響も 小さいのですが、もともと自律神経のバランスが崩れている人は揺れが大きくなります。過度に揺さぶら れる分だけ体調が不安定になり気分もすぐれません。自律神経のバランスが崩れやすい季節の変わり目 は、なおのこと体調管理が必要となります。

山田医院 看護師 畑中幸子

体温が下がると免疫力が低下する

あなたは自分の平熱を知っていますか?

健康な人の平熱は36.5~37.1度。現代人は、運動不足などの理由から低体温 の方が増えています。手元に体温計がある方は自分の体温を測ってみてください。

36度にみたなかった方は、「免疫力」が減少している合図です。

◆免疫力が下がると、かかりやすい病気

免疫力(自然治癒力)は、私たちの健康を維持するために必要不可欠なもの。そのため免疫力が低下するとウイルス や細菌の侵入を受けやすくなります。もっとも可能性が高いのが風邪やインフルエンザといった感染症です。免疫力は、体温が1度下がると30~40%低下すると言われています。

◆現代人は平均体温が全体的に下がってきている?!

現在の平均体温は、36.20度。約50年前の日本人の平均体温は、36.89度。昔と比べて、体温は0.7度近くも下がって います。下がった理由の1つとして、現代のライフスタイルが、明らかな運動不足であることが挙げられます。家事 ひとつをとっても、50年前はすべて手作業で掃除、洗濯、料理など行い、そのうえ畑仕事をするなど、日常的な運動 量が大変多かったのです。現代の生活は、乗り物や家電の充実により日常生活における運動量が低下しているのが原 因です。

◆「体温を上げる」には、どうしたらいいの? ・歩く量を増やす!体温が低い朝にウォーキングを行うことで、0.7~1.0度体温が上昇します。 さらに朝一気に体温を高めると1日の体調が良くなるそうです。 ・入浴 1日1回、お風呂に入って体温を1.0度上げます。 朝でも夜でも自分の生活リズムに合わせて入浴するよう心がけましょう。 ・薄着はしない 女性に限らず冷えは大敵です。おしゃれでお腹や腰を出す服装は体を冷やすだけです。

山田医院 事務 杉山恭子

出生前診断について

1997年に母体血において胎盤由来のDNA断片が含まれていることが分かり、高速度にDNA配列を読む装置 が開発されており、この装置を使用することにより母体血漿中のDNA遺伝子配列を解読して胎児の染色体数 の異常が検出できるようになりました。これが無侵襲的出生前遺伝子学的検査(NIPT)で2013年に我が国 においても認定機関において臨床研究としてハイリスク妊婦のみに行われています。

2015年8月現在では認定を 受けたのは全国で53施設で大阪では大阪大学医学附属病院、市立総合医療センター、府立母子保健総合医療セ ンターなどです。この検査においての対象疾患はダウン症(21トリソミー)、18トリソミー、13トリソ ミーのみとなっています。これまでは超音波検査で外表、内臓奇形、機能障害などの診断、母親の採血でのウ イルス、異常代謝産物、酵素活性などの測定などを組み合わせて診断を行い、確定診断として絨毛検査、羊水 検査が行われてきました。

羊水検査あるいは絨毛検査は確定診断にはなりましたが、流産のリスクもある侵襲 的な検査となっています。このNIPTは日本においては高齢妊娠などのハイリスク妊娠を対象としています が国際出生前診断学会ではすべての妊婦に対して提供される検査として考えるとの見解も出されています。現 在、NIPTの認定を受けた施設は検査前に適切な遺伝カウンセリングを行うことが必要になっています。こ の検査を受ける前には検査をして何を知りたいのか、結果を知ってどうしたいのかを妊婦やパートナーそれぞ れが自身の気持ちに向き合ったうえで、互いの認識を共有して出生前検査に対して今後どのような姿勢で向き 合っていくのかを話し合い、意思決定するプロセスが前提となります。

現在、何らかの出生前遺伝子学的検査 を受けている人の割合は約5%程度になっていますが、この実数を見ると日本においての高齢妊婦の8割以上 は出生前遺伝子学的検査は受けていないことになります。この出生前遺伝学的検査の取り扱いについては産婦 人科医だけではなく社会全体で考えるべき事象となっています。今回の出生前診断については日本医事新報9 月号から抜粋をしました。

山田医院 医師 山田良宏