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山田医院だより

第26巻 第9号(第308号)

高齢者のうつ病について

うつ状態は気分・感情の障害ですが、様々な症状があります。 一般的には以下の4つがあります。

  1. 感情・気分の障害 基本は抑うつ気分で、はっきりとした原因や理由がなく気分の落ち込み、悲しみなどが現れ、それが長期に持続し、様々なでき事に興味や喜びを感じなくなります。
  2. 思考の障害 考えようとしても頭に浮かばないために考えが進まなくなります。また、思考内容については自責的となり、物事を悪い方にばかり解釈して悲観的で取りこし苦労をして、過去は後悔、未来は絶望的な事を考えてしまいます。これは最終的には自殺念慮になります。
  3. 行動障害 物事をしなくてはならないと分かっているのに、おっくうでどうしてもできなくなる症状です。ひどくなると1日中寝ている状態となります。
  4. 身体症状 睡眠障害が最も多く、また食欲低下、性欲低下も見受けます。

高齢者では脳の加齢性変化や血管性変化と、それに伴う認知機能の低下によりストレスに対して脆弱な状態となっている所に、喪失体験や心理・社会的な孤立などの負のライフイベントが負荷となり、うつ病が発症すると考えられています。

負荷となる喪失体験とは、近親者の死別だけではなく、老化や病気などによる身体機能の低下、社会的役割の縮小など多くの事柄が含まれます。

なお、高齢者うつ病において課題となるのが認知症との鑑別になります。認知症にうつ病やうつ症状が合併しやすく、アルツハイマー型認知症あるいはレビー小体型認知症などでは約半数で抑うつ状態を呈しており、うつ病については20~30%に合併すると言われています。

臨床的には、認知症とうつ病を鑑別するのではなく、その患者さんにうつ病あるいはうつ状態が存在するのかどうかの判断が治療の上で大切になります。

そこで重要なポイントは、抑うつ状態とアパシーの鑑別になります。この鑑別は治療に際して大変重要になります。

アパシーは認知症に限らず、脳卒中やパーキンソン病などの神経疾患でも高率に認められます。「意欲障害」と言われ、基本的には無感情、感情の平板化であり、喜怒哀楽の表出が乏しくなります。

うつ状態では好まない事あるいは不快な事に対しては過剰な拒否反応を示しますが、アパシーでは逆に好まない事あるいは不快な事に対しても無関心のままです。

同じ活動性の低下についても、抑うつ状態では「できれば行動をしたいと考えるものの、どうしてもできない」という状態で、行動できない状態に対して苦痛を感じますが、アパシーでは「やろうとも思わないからしない」という感じになります。

抑うつとアパシーは併存することもありますが、その場合には抑うつ状態への対応と治療が必要になります。

基礎的な介入として、まずは様々な喪失体験を背景とした老年期心性に対して、十分な受容的・共感的態度を示すことが重要です。高齢者のうつ病は自殺リスクも高いことを認識して、希死念慮がある場合には躊躇なく対応が必要です。

高齢者うつ病に対する薬物治療ですが、中程度から重症の場合には抗うつ薬が有効であり、また反応がよく寛解率も高い傾向にあるために、薬の副作用に注意をして使用することが大切です。

なお、高齢者うつ病は一般成人よりも再燃、再発しやすいことが知られています。初回のエピソードであれば1年間の改善で投薬をゆっくりと減らすことができますが、2回目のエピソードであればさらに1年以上は維持治療の継続を、3回目のエピソードであれば2年以上あるいは無期限での維持療法が必要になります。

なお、認知症に伴ううつ病に対しては抗うつ薬の効果は乏しい可能性は示唆されていますが、ミルタザピン、セルトラリンについては有効性が示唆せれています。抗うつ薬の副作用としては低ナトリウム血症、起立性低血圧、不整脈、消化管出血などがあり、投薬に際しては注意を払っています。

なお、高齢者うつ病においては、認知症への移行を視野に入れての経過観察が大切になります。うつ病がアルツハイマー型認知症あるいはレビー小体型認知症のリスクになることが分かってきました。

アルツハイマー型認知症の場合は病初期から記憶障害が認められます。記銘力が強く障害されるために、近似記憶がよく障害されます。これは物忘れではなく「物覚え」の障害です。同じことを何度も質問したり、繰り返し話をする現象が起こります。

アルツハイマー型認知症を疑ったら、時計描画テストが有用です。これは時計の文字盤を記載してもらい、10時10分など時計の長針と短針を記載してもらうテストです。

うつ病は高齢者においても発症するもので、治療により改善するために診断並びに鑑別は大切です。

今回は日本醫亊新報令和7年8月号から抜粋をしました。

山田医院 医師 山田良宏

片頭痛とは?

片頭痛は、ズキズキ・ドクドクと脈打つような痛みが頭の片側(時には両側)に起こる、非常につらい頭痛の一種です。吐き気や光・音への過敏、においの刺激でも悪化することがあり、日常生活に大きな支障をきたします。

  • 脈を打つような中等度〜重度の痛み
  • 光・音・におい・運動で悪化
  • 吐き気・嘔吐
  • 光がチカチカする、視野の異常(前兆)
  • 気分の変動、首のこり、眠気などの「予兆」が出る人も

以下のような場合は、重大な病気が隠れていることもあるので、すぐに受診を!

  • 突然激しい頭痛(雷鳴頭痛)
  • 50歳以降に始まった頭痛
  • 頭痛がだんだん悪化している
  • 発熱・錯乱・首のこわばりを伴う
  • 感覚の麻痺や言葉のもつれなどの神経症状

片頭痛の原因は、脳の神経が過敏で刺激に弱いことが関係しています。さらに、以下のような要因が「引き金」になります。

  • 睡眠不足や不規則な生活
  • 空腹や脱水
  • チカチ-カする光、強いにおい、騒音
  • ストレスやホルモン変動(特に女性)
  • 食べ物(赤ワイン、熟成チーズ、チョコレートなど)

片頭痛が起きてしまった時の対処法は以下の通りです。

  • 頭を冷やす、または頭を温める
  • 暗く静かな場所で安静にする
  • 可能であれば一眠りする(寝すぎには注意)
  • 一眠りできない場合は、椅子に座って静かにする
  • 適切な鎮痛剤の使用

片頭痛を悪化させないための予防法は以下の通りです。

  • 睡眠の過不足を避け、適切な食事を心がけるなど生活習慣を整える
  • 日差しが強い時はサングラスをかける
  • 片頭痛を悪化させる食べ物を把握して避ける

片頭痛は「ただの頭痛」ではなく、医学的な治療が必要な疾患です。適切な治療と生活管理によって、日常生活を取り戻すことができます。

山田医院 医療事務 増田教恵

口の衰えは、心身に通ずる(オーラルフレイルについて)

 

オーラルフレイルとは、食べる、飲み込む、話すなどの口の機能の軽微な衰えが重なった状態のことを言います。

自分がオーラルフレイルであるか確認できるチェックリストを日本老年医学会が公開しています。

オーラルフレイル・チェックリスト (OF-5)

  • 半年前と比べて硬いものが食べにくい
  • お茶や汁物でむせることがある
  • 口の渇きが気になる
  • 自身の歯が19本以下
  • 普段の会話で言葉をはっきり発音できないことがある

5項目のうち、2つ以上当てはまれば、オーラルフレイルの可能性があります。

オーラルフレイルの何が重要かというと、それが死亡や要介護のリスクにつながることが分かってきたからです。死亡のリスクは1.9倍、要介護のリスクは2.4倍にもなります。

どうしてリスクになるのか? むせ、噛みにくいなどのトラブルで食欲が低下し、低栄養や筋力の低下を引き起こします。さらに進行すると、身体機能が落ちるサルコペニアにつながり要介護状態になります。また低栄養は、免疫も低下するので、誤嚥性肺炎になることもあります。

「硬いものが食べにくくても死ぬわけではない」と放置してしまう人もいますが、それは間違いで、口腔内の環境を良くすることが心身にも良い影響を及ぼすのです。

では、オーラルフレイルを防ぐにはどのようにしたらよいのでしょうか。

  • よく話す、声を出す。
  • 噛み応えのあるものを食べる。
  • たんぱく質をとる。
  • 口腔内の衛生を心がける。
  • 定期的に歯科でメンテナンスをする。
  • 嚥下、咀嚼機能の筋力トレーニングをする。

トレーニング方法の例

1. 「パ・タ・カ」発音トレーニング 「パ」「タ」「カ」とそれぞれ続けて発音し、1秒間に6回以上発音できるように目指します。

  • 「パ」: 口の周りの筋肉を鍛え、食べこぼしを防ぎます。唇をしっかり閉じてから発音するのがコツです。
  • 「タ」: 舌先の動きを良くし、口の中で食べ物が転がる機能を高めます。舌先を口蓋(上顎)に着けて発音します。
  • 「カ」: 舌の根元の動きを良くし、嚥下機能を高めます。口蓋の奥に舌の付け根付近を着けて発音します。

2. 首の筋力トレーニング 嚥下機能を向上させます。額に手のひらを当てて、ゆっくりと額で手を押し出します。5秒力を入れて5秒休憩、これを3回繰り返します。これを額だけでなく、後頭部、左右の側頭部の合計4か所で行います。

オーラルフレイルが要介護状態につながるのは主に高齢者ですが、40代の人でも、両方の奥歯でしっかり噛めないと感じている人は25%にも及んでいるそうです。些細な積み重ねで気づかないうちに歯を失う状態になったりするため、若い人でも日頃から口腔内の健康に留意することが必要です。

私も半年に1回、歯科に通っています。虫歯や歯肉炎の早期発見もできますし、歯磨きでは取り切れない歯石も取ってもらえます。さぼって1年間あいてしまっていた時に歯肉炎が進んでいましたが、歯石除去してもらい改善しました。

早めにオーラルフレイルに気がつくために、チェック項目(OF-5)を活用したり、定期的に歯科受診を計画し、口腔内の健康に注目してみましょう。

山田医院 看護師 盛田里穂

蓄積型熱中症とは…

今年の夏は、まだまだ終わりそうにないようで、この暑さがもうしばらく続くようです。そして、夏の猛暑だけでなく秋でも熱中症にかかる人が増えており、その中でも注目されているのが「蓄積型熱中症」です。

皆さんはこの言葉を聞いた事があるでしょうか?

蓄積型熱中症とはどんなものなのか。 従来の熱中症は炎天下で突然発症するイメージが強いですが、蓄積型熱中症は熱い環境での生活や作業によって、知らないうちに身体に疲労や熱が少しずつ蓄積し、時間をかけて発症するのが特徴です。

通常の熱中症が数時間のうちに急に発症するのに対し、蓄積型は数日間の疲労・睡眠不足・水分不足などが積み重なって体調不良を引き起こします。そのため、不調を起こした時に蓄積型熱中症が原因だと気づく人も少なく、つい症状を放置してしまうという事があります。

 

原因

 

簡単に言うと「身体が熱に適応できない状態」が続く事で起こると言われています。

  1. 睡眠不足 夜間の室温が高いと深い睡眠がとれず、身体の回復が妨げられます。その結果、自律神経の働きが乱れ、体温調節がうまくいかなくなります。
  2. 水分・ミネラル不足 発汗で失われた水分や塩分を補給できないと、体温を下げるための汗の質が悪化し、熱がこもりやすくなります。
  3. 疲労の蓄積 連日の仕事や運動で身体に疲労が蓄積すると、体温調節機能が低下しやすくなります。特に屋外作業やスポーツを行う人は要注意です。
  4. 高温多湿の環境 エアコンを使わずに過ごし、風通しの悪い部屋で寝るなど、高温多湿の環境が続くと、身体の熱が放出されず蓄積していきます。

 

症状

 

身体のだるさ、疲労感、食欲不振、軽い頭痛や眩暈、立ちくらみ、微熱、身体の熱っぽさ、集中力の低下などがあります。

ここから更に重症化すると、吐き気や意識障害、痙攣といった危険な症状に至ることもあり、命に関わる危険な状態に陥る恐れもあります。

 

今から実践できる対策

 

  1. 睡眠を整える エアコンや扇風機を活用し、室温は25~28℃程度に保ちましょう。吸湿性・通気性の良い寝具を選ぶことも大切です。入浴後は2時間程経ってから寝ると質の良い睡眠に繋がります。
  2. 水分・塩分補給をこまめに行う 喉が渇く前に水分補給することが基本です。大量に汗をかく場合はスポーツドリンクや経口補水液を利用しましょう。カフェインやアルコールは利尿作用があるため、摂りすぎに注意してください。
  3. 食事で栄養をしっかり摂る
    • ビタミンB群 → 疲労回復に役立つ (豚肉、納豆など)
    • ビタミンC → ストレス対策 (果物、野菜)
    • 塩分 → 汗で失われやすい (味噌汁、梅干し)
  4. 日常生活での工夫 日中の外出は日傘や帽子を活用し、吸湿速乾性のある服を着ましょう。帰宅後はシャワーや冷却グッズで身体を冷やすのが効果的です。クーラーを我慢せず、快適に過ごしてください。

高齢者や子供、持病のある方は、周囲の人が注意する事が必須です。日々の生活習慣を少しずつ整える事で予防していく事が大切です。

山田医院 看護師 川上 啓

小児期逆境体験とは

「逆境」とは一般に思うようにならず苦労の多い境遇を示す言葉です。しかし、誰もが経験するような「回復力を培うために避けて通れない子どもの時代の小さな挑戦」とは明らかに異なるレベルで、子どもの健全な成長発達の妨げになるような子供時代の有害な体験があります。

これを「小児期逆境体験 (Adverse Childhood Experiences (ACEs))」と呼び、その長期的影響について注目が集まっています。

具体的には、18歳までに経験する以下のような、子どもの心身の発達に有害な影響を与える可能性のある体験を指します。

  • 虐待
  • ネグレクト
  • 家庭の機能不全(親の精神疾患、暴力、死別など)

これらの体験は、体験したその時だけに問題が起こるのではなく、子どもの健やかな発達を阻害し、将来の心身の健康を脅かすほどの結果につながることを意味しています。

子どもの頃に逆境体験、特に複数の逆境体験がある人ほど、成人期に以下のような問題のリスクが高くなることが分かってきました。

  • 身体疾患 (心臓病、脳卒中など)
  • 精神的問題 (うつ、不安障害、自殺など)
  • 行動上の問題 (薬物依存、自傷行為など)

すなわち、小児期の逆境的環境での育ちや体験が、成人後の健康や行動にまで長期的な影響を及ぼすことが実証されています。さらに、寿命の短縮世代間伝達といった問題も引き起こすことが分かってきました。

従来は身体疾患や障害、精神的な問題においての治療では心理社会的要因はともすると軽視されてきましたが、逆境体験などの問題についての考察も必要であるという考え方ができてきました。

我々治療者においても個人の疾患について立ち会う際には、頭の片隅にはその人が「何を経験してきたのか」を考えることが大切という事が注目されてきました。

今回はチャイルドヘルス令和7年9月号から小児期逆境体験という新しい概念について抜粋をしました。

山田医院 医師 山田良宏