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山田医院だより

第19巻第7号(第222号)

貧血について

貧血は日常診療においては多くの領域の医師が頻繁に診る病態ですが、その症状から原因、治療についても専門的治療を必要とするものからいわゆる鉄剤の補充で軽快するものまで多くのものがあります。患者さんの訴えとしては動悸、息切れ、めまい、耳鳴り、頭部痛などがあります。逆に患者さんが貧血であると訴えて受診する場合には1つは健診等の検査で貧血を指摘された場合ともう1つはいわゆる失神発作、脳貧血の症状を主訴に受診する場合です。一般に内科診察で貧血の診断は眼瞼結膜を見ることが基本のようですがこれについては 判断がむつかしいと言われておりそれ以上に手のひらをしっかりと開けてシワの色がピンク色であればヘモグロビン濃度は7g/dl以上と言われています。ただし貧血の診断には血算が必要になります。なお、貧血に伴い心不全があれば重症の貧血となり入院が必要です。また血 小板減少を示唆するような紫斑、血腫があれば造血器悪性腫瘍(白血病など)が疑われます。年齢では高齢者では悪性貧血あるいは骨髄異形成症候群などが、若い女性であれば鉄欠乏性貧血が多くなります。女性の鉄欠乏性貧血の原因は子宮筋腫などによる月経過多が多くなっています。なお外国人であれば鎌状赤血球症やサラセミアなども念頭に置必要があります。高度の鉄欠乏性貧血症では粘膜の萎縮が食道に及ぶために嚥下障害が起こることもあり特別にP;ummer -Vinson症候群とも呼ばれます。また異食症といい壁土あるいは氷などを食べる症状も出現します。なお、既往歴では慢性胃炎あるいは胃切除術があれば鉄欠乏性貧血あるいはビタミンB12欠乏性貧血、腎機能障害があれば腎性貧血、慢性炎症性疾患があれば慢性炎症に伴う二次性貧血、放射線、化学療法治療後であれば再生不良性貧血、白血病、骨髄位形成症候群などが疑われます。また菜食主義者ではビタミンB12欠乏性貧血が多く、慢性アルコール中毒では葉酸欠乏、ビタミンB12欠乏による貧血を疑います。また黒色あるいは赤色便があれば消化管出血による貧血、朝の尿がコーラ色だったら発作性夜間ヘモグロビン尿症を考えます。なお、貧血では微熱を認めることがありますが38度を超えるようであれば急性白血病あるいは再生不良性貧血を考えます。なお年齢の割に頭部の毛髪が白髪であれば悪性貧血(萎縮性胃炎に伴うビタミンB12欠乏性貧血)、髪の毛が薄い、眉毛の外1/3 が脱毛、浮腫状の顔貌であれば甲状腺機能低下症、リンパ節の腫大があればリンパ腫あるいは悪性腫瘍の合併、胸骨中央部の疼痛あるいは圧痛は白血病を疑います。その他脾臓の腫大があれば溶血性貧血、白血病、骨髄線維症などを疑い、爪がサジ状になっていれば鉄欠乏性貧血など、身体所見によりいろいろな貧血を考えることができます。なお、血液検査では血算ではヘモグロビン、ヘマトクリット、MCVなどを確認して貧血のタイプを小球性、正球性、大球性に分けて考えることが大切になります。専門医師が診る必要がある貧血は急速に進行 する貧血、白血球あるいは血小板など他の血球成分に異常がある場合、溶血性貧血の場合が 特に重要であると考えられています。なお、最近の貧血治療のトピックとしては造血器腫瘍 に対する分子標的薬も多数出てきています。今後治療の選択肢は広がると思われます。一般の人にとっても新しい話題としては鉄剤不応性の鉄欠乏性貧血(鉄剤を服用しても貧血が改善しない場合)にはピロリ菌が関与している場合がありピロリ菌の除菌が貧血にも有効であることが分かってきました。その他、現在は鉄剤の注射薬は40mgですが、今後は500mgという注射薬が発売されるようになります。なお、鉄剤の服薬方法は現在は連日投与をされていますが、実は1日おきの方が良いのではないかという報告もあり今後服薬方法が変化 する可能性もあります。その他、胃切除術後のビタミンB12欠乏症に対しては注射薬によるビタミンB12投与でしたが、ビタミンB12は内因子の関与なしに吸収されることも分かってきており経口のビタミンB12投与法が広がる可能性もあります。貧血は冒頭にも述べましたが頻度が高い疾患で女性においては特に健康診断では異常の指摘を受けて当院を受診される方も多くなっています。多くの場合が単純な鉄欠乏性貧血ですが一部消化管の悪性腫瘍あるいは他の血液疾患が紛れていることもあり注意が必要です。貧血を指摘された方はまたかかりつけ医師に検査結果を相談して治療法等を検討しましょう。今回は日本医師会雑誌の平成30年7月号から抜粋しました。 

山田医院 医師 山田良宏

高齢者の熱中症対策

梅雨から、真夏にかけて熱中症に注意が必要な毎日が続きますね。 毎年、熱中症で亡くなる方が報道されていますが、今年もすでにニュースでは熱中症による死亡事故が報道されています。(そのうちの多数は、自宅にてクーラーをつけておらず、室温が上昇していたことが原因でした)統計によると、熱中症による死亡者の割合をみると80%は65歳以上の高齢者であることがわかっています。統計からもわかるように、高齢者は熱中症になりやすく、また重症化しやすいということです。では、なぜ高齢者は熱中症になりやすいのでしょうか。そもそも、高齢者は身体の水分量が少ないことが挙げられます。

成人では身体の60%ほどが水分で構成されていますが、高齢者では50%程度になります。 これは、高齢になると心臓への負担が少なくなるように、身体が自動的に、身体の水分量を減らし調整しているのですが、その一方で身体の水分貯蓄量が少なくなり、熱中症になりやすいと考えられています。

併せて、高齢者は喉が渇いたことを感じにくくなっています。 また、「夜中にトイレに起きたくない」といった理由で水分摂取を控えている方も多くみられます。 また、高齢になると暑さを感じる感覚も鈍ってきますし、「贅沢」と思い、クーラーの使用を控えている方が多くいることも原因のひとつです。体感で分かりにくい場合は、温度計をみて室内温度は28度を超えないように調整しましょう。事情によってクーラーが使えない場合は、公共施設や自治体のサービスを利用して日中は涼しい施設で過ごすことも一つのアイデアです。さらに、病気や、医師の指示により水分量を制限しておられる方もいます。

心疾患や腎疾患などで医師から水分制限を受けている方は、主治医と一日の水分量や、その内容、摂り方を相談していただきたいと思います。 熱中症対策には、こまめな水分摂取が第一です。目安は、一日に湯のみで10杯程度が最低量です。水やお茶(とくに麦茶がおすすめです)で水分補給を。 熱中症の症状は、まずめまいや、大量の汗が出たり、足がつったりします。その後、頭痛や嘔吐、倦怠感、集中力が低下します。この辺の症状が出た時には医療機関で適切な治療が必要となりますが、そうなる前にぜひご自身、ご家族によって熱中症を防いでいただきたいと思います。

山田医院 看護師 岩崎恵美子

朝、起きられない子ども・・・怠けている、ではないかも?

「はよ、起きや!いつまで寝てんの!」毎朝、繰り返される我が家の日常。みなさんのご家庭でもこのような朝の風景があるのではないでしょうか?でもこの、起きられない・体がだるくて動かない、という状況は必ずしも子どもが怠けてぐずぐずしている訳ではなく『起立性調節障害』(=OD)という病気が原因のことがあるようです。

思春期の子どもにおこりうるもので、小学生5%・中学生10%くらいの割合で患者がいるとも。原因はまだよくわかっておらず、思春期の体の成長に神経の成長がついていけなくて、自律神経のバランスが崩れることで起こるのではないかと言われています。人は立つと、重力で血液が下半身にたまり、血圧が下がります。健康な人なら、自律神経が働き血管が収縮することで血圧を保っています。しかし、自律神経が乱れていると、血圧の調節がうまくできずに血圧が低下、脳や全身への血流が弱くなります。その結果、起き上がれない、立ちくらみや胸がどきどきするといった症状が出ます。 これといった治療法は無いのだとか。水分と塩分の十分な摂取、適度な運動、血圧をあげる薬を服用することなどで症状は改善することもあるようですが、あとは自然に治るのを待つしかなく、思春期が落ち着くころには治っていくことが多いようです。

この病気の辛さのひとつに、社会的認知度が低いため、周りの人に理解されず『怠けている・学校をさぼっている』などと誤解されやすいことがあげられます。いつか突然、わが子にもおこりうる可能性があると思うと…思春期に差し掛かる子を持つ親としては病気に対する周りの認知・正しい理解は本当に大切だと思います。

病気の悩みを共有したり、学校の先生や周囲の人に理解を深めてもらうなど、ODの子を持つ保護者らでつくられた団体が近くでは八尾で活動されているようです。

山田医院 医療事務 東川敏美

暑さに負けない快適ライフ

数年前より、この時期になると猛暑・酷暑、例年にない暑さと言う言葉が飛び交うようになりました。今年は新たに命に係わる危険な暑さなどとも言われています。この暑さの中でいかに工夫すれば少しでも快適に過ごすことができる のか考えてみました。

熱中症はどのようにして起こるのか
通常は、暑い環境や激しい運動などによって体温が上がると汗をかくなどして、体内から熱を放出して体温を一定に保ちます。この熱の放出がうまくできずに身体に変調を来した状態が熱中症です。症状はめまい、立ちくらみ、こむら返り、さらにすすむと頭痛、嘔吐、倦怠感、意識障害などがあります。
熱中症になりやすい人
代謝が活発で脱水を起こしやすい乳幼児や暑さや喉の渇きを感じにくい高齢者は、水分不足になり熱中症の危険が高まります。また、神経・血流障害などの持病のある人や筋肉が少なく発汗効率が悪い、脂肪が多い肥満の方々も注意が 必要とされています。

熱中症になりやすい場面
炎天下の屋外でのスポーツや野外活動、肉体労働に従事している者、室内でもエアコンをつけず窓を閉め切っていると高温多湿となり危険な状態です。短時間でも室温の上がりやすい車内に子供を放置するのはとっても危険です。
身体に優しい室内環境を
暑い室温では温度を下げることを考えますが・・・・・湿度を10%低くすれば温度は1度上げても体感温度は同じで、室温が30度でも湿度が低いと快適で涼しく感じます。 窓からの直射日光は室温を上昇させますので、窓にすだれやカーテンの使用で直射日光を当たらない工夫をしよう 外気温と室温の温度差が5℃以上だと自律神経に悪影響があるとされています。

暑さに負けない工夫は内側から
身体を冷やす作用にあるもの、夏が旬の食材や南国が産地の食材などを利用するのも良い方法です。そして特に意識して欲しいのが水分補給で、体温は汗をかくことで調整されるので、体内の水分が減少すると熱中症や夏バテにつなが る可能性があります。 ただし、一度に多量の水分を取ると、胃液が薄まって栄養素の消化吸収が低下します。こまめに補給するなど上手な 水分補給の方法を心がけましょう。もともと体力を養っておくことも大切です。

外出時のポイントや戸外での過ごし方
外出時の衣類は袖口・襟口が広くてゆったりしたもので空気の通りがよくて、体の熱を逃がすものが良いとされています。特に下着は吸水性に優れた綿などの素材を選びましょう。また、扇子や帽子などクールグッズを携帯しましょう。歩くときは日傘の使用や日陰を選んで歩きましょう。バス停や信号待ちの間もできるだけ日陰を利用しましょう。 特に子供は身長が低い分、大人より感じる温度が3度高いとされています。炎天下での働いている人は、涼しい場所で 体を冷やしたり水分補給して体調をリセットするなど適切な休息をとることを心がけましょう。まずは日頃から暑さに負けない体づくりが大切です。今年は、太平洋高気圧とチベット高気圧が日本列島を覆っているため、今月一杯は35 ℃ 以上の猛暑が続くとされています。昔と現代の夏では大きく違っており、現代の夏にあった対策・工夫が必要になっております。

山田医院 看護師 畑中幸子

緑内障

目の機能も、加齢によって衰えてきます。そのため中高年になると目には様々なトラブルが起こりやすくなります。今回は緑内障について調べてみました。緑内障は、目と脳とをつないでいる視野が失われていく病気です。緑内障の多く は両方の目に発症しますが、同時進行することはなく、最初は一方の目だけに症状が出ます。視野の欠けは、周りから少しずつ現れます。見えていないところが一部なら、脳は両目からの情報によって視野を補正するため、自覚症状が出にくく、ほとんど気づくことができません。欠損部分が広がると見える範囲が狭くなる視野狭窄も現れます。さらに進むと視力も悪くなり、やがて見えなくなります。緑内障がなぜ起こるか、現在でもすべて解明されていませんが、眼圧が関与していることがわかっています。眼圧の上昇により視神経が圧迫、障害されて徐々に機能を損ない視野が欠けていきます。暗点の場所は個人差がありますが、最初は鼻側や中心よりやや上のほうに多く見られます。眼圧が正常値の範囲でも視神経に障害がおき、視野の欠損が生じることがあります。これを正常値眼圧緑内障といいます。眼球の構造や視神経の抵抗力が弱いために、正常な眼圧にも耐えられないとか、視神経に酸素や栄養素を送り込む毛細血管の血行が悪いなど、いくつかの理由が推測されています。また、眼圧の正常値は、あくまで目安なので視神経にダメージを与える圧力の強さは人によっても違います。

緑内障にかかる人には、眼圧が高い人です。眼圧が高いと視神経が圧迫されて傷つき、視野がかけてきます。ただし、日本では正常値眼圧緑内障も多いので、眼圧が正常でもリスクが低いとはいいきれないです。あと近親者に緑内障の人がいる人です。両親や兄弟などが緑内障にかかっていると、本人も発症しやすいです。予防するには眼球への強い圧迫、暗い場所での読書、パソコンの長時間使用、ストレス、喫煙など日常生活を見直して、目に悪い生活習慣を改善することです。

山田医院 医療事務 阿知波真弓

子どもの脱水について

夏は熱中症、年中起こる胃腸炎では脱水の危険があります。脱水症は水だけではなく体の中のミネラルも不足するために「脱塩水症」という造語もあります。一般に水分は体重の60%と言われていますが乳幼児では70%も占めています。体の中の水分は概ね細胞の中にある細胞内液と細胞の外にある(血管内あるいは細胞の間など)細胞外液に分けることができますが細胞内液は2/3で細胞外液は1/3です。検査してわかるのは細胞外液でまた点滴等の治療も直接できるのは細胞外液だけです。細胞内液はよく分からないですが、細胞外液と細胞内液を区切る膜は自由に行き来することができない膜で電解質特にNaを通して水の移動が行われるために細胞内液の状態を見るのには血液検査でのNaを参考にしています。大まかに血液検査でのNa値と身体状況から脱水の状態判断を医師はしています。脱水の始まりは 「水を補給したくなる気持ち」ですが、幼小児では訴えもなく脱水になりやすい脱水弱者になります。体重の3%以上の脱水では軽症の脱水症になりますがこのくらいになると口渇、涙の減少、口の渇きなどが出現します。脱水は一般には先ほど述べた小児以外にも筋肉量が少ない女性、元来体液が少ない高齢者が起こりやすくなっています。脱水の治療は軽症から中等症は経口補水療法(ORT)が体重が10%程減少する重症では経静脈輸液療法(点滴)となります。経口補水療法(ORT)は1970年代にコレラの脱水症治療目的でWHOがガイドラインを策定しましたが、その後一般の胃腸炎あるいは熱中症を含めた脱水症の治療に応用されています。ORTに使用するORS(経口補水液)は一般にはNa40-60mmol/L k20mmmol/L、炭水化物が1-2%となっています。ORSの特徴はNaとKが含有されていてかつグルコースが一定の濃度で含有されていることでNa,K,,グルコース、水の吸収が早くなります。昔から胃腸炎時に使われてきたお粥に梅干あるいはスイカに塩はこのORSに近い成分となっており昔からの習慣はあながち間違いではないということがわかります。脱水は予防が大切になりますので発汗が多い時あるいは胃腸炎時には早目の対応が大切にな ります。今回はチャイルドヘルス平成30年7月号から抜粋しました。

山田医院 医師 山田良宏