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山田医院だより

第19巻第3号(第218号)

酸分泌抑制薬の長期投与について

初めての酸分泌抑制薬のH2受容体拮抗薬であるタガメットが発売された時の潰瘍治療の劇的な効果について以前脳外科の先生から聞いたことがあります。それまでは脳卒中あるいは術後にクッシング潰瘍といい消化性潰瘍を併発して大変苦労したようですがこの薬剤が出現してからその潰瘍が劇的に減少して感動したとのことでした。

現在、酸分泌抑制薬は先ほどのタガメット、ガスターなどのH2受容体拮抗薬から進歩してパリエット、ネキシウム、オメプラール、タケプロンなどのプロトンポンプ阻害剤(PPI)、最新のカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)であるタケキャブが発売されています。現在、これらの薬剤は急性期の潰瘍性病変などにも使用されていますが胃食道逆流症、バレット食道、アスピリン/NSAIDS潰瘍の診療に際して長期にわたり服用することが多くなってきました。(NSAIDSとは非ステロイド系の消炎鎮痛剤でロキソニン、ボルタレンなどの痛み止めの薬のことです。)長期服薬が必要となる疾患としては胃食道逆流症(GERD)NSAIDSあるいはアスピリン起因性消化性潰瘍があります。

まずGARDですが、いわゆる胃酸が食道に逆流する疾患で胸焼け症状を中心に胸痛、慢性咳嗽、咽喉頭部違和感などがあります。高齢になるほど多くなり男性が多い病態です。下部食道括約筋の機能低下、食堂裂孔ヘルニアに伴う食道内への逆流などが原因です。肥満、夕食後短時間での就眠などを避けることが大切ですが基本的には第1選択薬としてPPIの使用が推奨されています。

重症例には他の薬剤の併用を考慮してまた軽症例においては症状がある時のPPIの頓服使用が提案されています。NSAIDSあるいはアスピリンに伴う消化性潰瘍についてはとくに以前に潰瘍になったことがある、高齢者、ワーファリンなど抗凝固薬の服用、ステロイドの服用、複数のNSAIDSがあるときには注意が必要です。治療としてはもしNSAIDSを服用中であれば中止して潰瘍の治療を行うことですがアスピリンに対しては中止による脳血管疾患あるいは心血管疾患の発症のリスクがあるために可能な限り継続することが望ましいとされています。このNSAIDS起因性消化性潰瘍の予防のためにPPIの服薬が必要となっています。なお、ピロリ菌に関してはこれらの薬と関係なく消化性潰瘍のリスクになるのでまずピロリ菌の除菌が必要でありその上でPPIの服用が必要となります。

では、これらの酸分泌抑制薬を長期に服薬することに関連する疾患はあるのでしょうか。よく院内感染として話題となるクロストリジウム感染症がPPIの服用と関係あると言われています。機序は明らかではありませんがPPI服用中の方が腸炎症状をきたした際にはクロストリジウム腸炎も鑑別する必要があります。その他高ガストリン血症による異病変、総胆管結石に対して内視鏡的十二指腸乳頭切開術を施行した後の総胆管結石の再発の関与が示唆されています。

その他、カルシウムの吸収率低下に伴う骨粗鬆症、腸内細菌の変化に伴う小腸細菌異常増殖(SIBO)などについても関係する可能性があります。なお、他の薬剤との影響については薬効への影響として下剤であるマグネシウム製剤の効果低下、吸収の影響としてはジギタリス製剤、スルホニルウレアの吸収増加、抗真菌薬の吸収低下があります。薬物代謝の影響としては同じ代謝酵素であるP450のなかのCYP2C19関連で睡眠剤、抗不整脈薬、抗菌剤などにおいて薬物代謝の影響が有り薬剤により血中濃度が上がったり下がったりします。

クロピドグレルなどの抗凝固薬で問題となりました。胃酸分泌抑制薬は比較的容易に投与される薬であるために既存の服薬中の薬との総合作用については注意が必要です。相互作用は起こっていても実際には副作用として症状には現れないだけの事も有り常に投薬に際しては注意が必要であると注意喚起されています。最近ではお薬手帳を持参して受診する方も多くなっておりますが、特に高齢者においては服薬中の薬がわからないことも多く受診に際しては必ずお薬手帳を持参するようにしましょう。今回は日本医事新報の2018年2月号から抜粋をしました。

山田医院 医師 山田良宏

身長を決めるのは遺伝か、環境要因か

身長を決めるのは遺伝か、環境要因か暖かい春の日差しに包まれて、いよいよ新学期がスタート。ドキドキの身体測定の時期がやってきましたね。何センチ伸びたかは、子どもにとって一番の関心事かと思います。
そんな「身長」と遺伝の関係には、有名な公式があるそうです。

●男性の場合=(父親の身長÷母親の身長+13)÷2
●女性の場合=(父親の身長÷母親の身長-13)÷2

この公式は父母の身長が子どもに影響することを意味しており、子どもの将来の身長を算出することができます。専門家たちの見解では身長は80%の確率で遺伝すると考えられているそうです。80%の確率で遺伝するんじゃ、自分はもうあんまり伸びないのかー…と思うかも知れませんが、まだまだ諦めちゃいけません。そもそも遺伝とは「似たものができるが、全く同じではない」という特徴があります。子どもが親の遺伝を強く受け継いでいるといった場合、親のコピー人間という意味ではなく、ものすごく親に似ている人ということになります。つまり、先天的に親とよく似ていても、残りの20%は遺伝以外の後天的な環境要因で決まるということ。だから「20%」という値は、両親が高身長ではないからと諦めるにはもったいない、大きな数字と言えるのです。

では、その20%のポテンシャルを最大限引き出すにはどうすればいいか。身長を伸ばすには、食生活の改善と運動が効果的とされています。「背が伸びる」ということは「骨が伸びる」と言うこと。骨を伸ばすというと、カルシウムをとればいいんだ!と思うかもしれませんが、実はカルシウムは骨に重要な影響を及ぼすものの、骨を伸ばす材料にはならないのです。骨の材料はタンパク質で、カルシウムは骨に何をしているのかというと、骨を固くしているのです。砂の城に例えると、砂の城はもろいので大きなものを作ろうとすれば、水をかける必要があります。カルシウムは砂の城における水の働きをします。しかし、水をかけても城は大きくなりません。材料である砂を大量に集めてこなければいけません。砂はタンパク質、つまり骨の材料はタンパク質なのです。カルシウムといえば牛乳ですが、タンパク質はマグロ、チーズ、牛肉に多く含まれています。

そして、タンパク質を多く取るだけでは骨はあまり伸びません。背をグンっと伸ばすにはやはり運動が欠かせません。バスケやバレーの選手に背の高い人が多いのは、ジャンプをすることが身長を伸ばすのに効果的だからです。ただ、ジャンプだけでは足りず、体をそらしたり伸ばしたりする運動を加えると骨は成長しやすいと言われています。また「寝る子は育つ」という格言は科学的に証明されており、骨の成長を促す成長ホルモンは、夜寝ているときに働きます。そして日中の運動は成長ホルモンの量を増やす働きがあるので、昼間走り回って成長ホルモンを増やし、夜にぐっすり眠って成長ホルモンを活発にすれば身長は伸びるということですね。日常生活を見直せば、身長の伸びにきっとプラスに働いてくれるはずです!頑張れー!

山田医院 医療事務 中町麻里

ノロウイルスの流行にご注意!

昨年は新型ノロウイルスが発見されました。ノロウイルスの変異は2006年や2012年にも確認されていて、いずれの年も多くの感染者が出ました。
新型のウイルスは、免疫を持っている人が少ないので、感染する人が多くなり、すなわち流行の恐れがあるということになります。現在、医院でも感染性胃腸炎の患者さんが増加傾向にあります。

今まで幾度となく流行した胃腸炎ですので、ご存知の方も多いと思いますが、予防策とかかった時の対処法をおさらいしたいと思います。まずは、手洗い。帰宅時、調理前、食事前、トイレの後には石鹸でよく手を洗います。家族がかかってしまった場合、汚物を処理するときは、マスクや手袋をし、次亜塩素酸ナトリウム(200ppm→500mlの水にキャップ1杯4mlのハイター)で消毒をします。食器、衣服等はつけ置き消毒、床などはペーパータオルに消毒薬をしみこませ清拭します。インフルエンザ対策としてアルコール手指消毒を使用する事も多いと思いますが、ノロウイルスにはアルコール消毒は効きません。

もしノロウイルスに感染してしまったら。特効薬やワクチンもありませんので、ゆっくり休息をとり、胃腸を休ませることが第一になります。無理に食べようとするとかえって、嘔吐下痢を悪化させてしまう事もあります。嘔吐をした後、喉が渇き水分を欲しがることもありますが、嘔吐直後に飲んでもすぐに吐き戻し、胃酸などが出て脱水が進んだり、嘔吐することで体力も消耗します。嘔吐後、少なくとも1時間はうがいのみで何も飲まずに胃腸を休めます。その後、スプーン1杯のイオン飲料などから飲んでみます。これで吐かなければ15分ごとに量を増やしていきます。食事が摂れるようになれば、油分脂肪を抜いた柔らかい食事を少なめに食べます。ミカン、牛乳、酢の物は吐き気をひどくする場合があるので避けます。赤ちゃんは離乳食は一旦中止して授乳ミルクにするか、一段階下げた離乳食をあげましょう。

激しい下痢嘔吐では身体の水分が失われ、脱水症状を起こすことがあります。口渇感が強い、尿が濃くなり量が少なくなる。進行すると、けいれんを起こしたり、手足のしびれ、意識がもうろうとすることもあります。嘔吐下痢を繰り返すときは早めに受診しましょう。新型のウイルスと聞くと身構えてしまいますが、対応はこれまでのウイルスと同じです。まずは手洗い、うがいを心がけ予防していきましょう。

山田医院 看護師 盛田里穂

食後血糖値

血糖値とは、血液中に含まれるブドウ糖の濃度です。健康な人であれば空腹時の血糖値は110mg/dL未満に保たれており、これが常時126mg/dL以上になると糖尿病と診断されます。しかし、血糖値は常に変動していて健康な人でも食後の血糖値は140mg/dL以上になることも珍しくありません。この食後の血糖値の急激な上昇は「血糖値スパイク」と呼ばれ、血管にダメージを与え、動脈硬化や糖尿病の合併症を進めやすくします。放っておくと心筋梗塞や狭心症、脳卒中などの合併症のリスクが上昇するので注意が必要です。さらに、食後高血糖が認知症のリスクを高めるとする報告もあります。食品の種類によって、糖質がブドウ糖に分解されるスピードが異なります。速ければ速いほど食後の血糖値は急上昇、逆に遅ければゆるやかになります。

GI値の低い食品を選んで!
血糖値の上昇程度の指標となるのがGI値です。この値が低い食品ほど食後血糖値の上昇はゆるやかになります。(※血糖値の変動には個人差がありますので、GI値はあくまで目安です。)

ブドウ糖を100とした場合のGI値
【高GI】食パン91・じゃがいも90・精白米84・にんじん80
【中GI】スパゲッティ65・かぼちゃ65・中華麺61・生そば59・玄米56
【低GI】さつまいも55・全粒粉パン50・牛ロース肉46・豚ロース肉46・鶏もも肉45・マグロ40・納豆33・アーモンド33・トマト30・たまご30・大根26・牛乳25・マヨネーズ24・わかめ15・ほうれん草15

最初は野菜のおかずから!最初にご飯などの糖質を食べると食後血糖値が急上昇、野菜のおかずから食べましょう。野菜に含まれる食物繊維が血糖値の上昇をゆるやかにしてくれます。
三食きちんと!
糖質を摂り過ぎてはと食事を抜くのはよくありません。特に朝食を抜くと前の晩から昼食まで血糖値が低い状態が長時間続き、次の食事の時に血糖値が急上昇、血糖値スパイクが生じてしまいます。

高齢者の糖質制限に注意!
高齢になると食が細くなったり、吸収消化能力が低下していきます。そうした高齢者が糖質制限をすると必要なエネルギーが不足してしまい、それを補うために体内のたんぱく質が使われると筋肉が減少し、転倒などの危険性が高まります。血糖値が急激に上がりにくい食べ物や食べ方を知って上手に生活に活かすことが、肥満や糖尿病、その他様々な病気の予防、健康維持につながっていきます。

山田医院 医療事務 平賀怜奈

マザーキラーと呼ばれる癌

マザーキラーという言葉、聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?

手術で子宮を摘出されるだけでなく、若い母親が幼い子供を残して亡くなる悲しみを意味するこの言葉は、古くから欧米諸国では「子宮頸がん」の別名としても広く知られている言葉です。
マザーキラーと呼ばれる癌、子宮頸がん。子宮の入り口に出来る癌で、1970年代までは日本女性がかかる癌では、胃がんに次いで多い癌でした。

2000年代に入って特に20代~30代の若年層を中心に増加傾向にあり、特に性交渉開始の低年齢化や、食生活の欧米化などにより、近年出産前の女性の罹患も増えている癌です。
まず、子宮頸がんは「ヒトパピローマウイルス(HPV)」の感染が関連しています。これは、性交渉で感染することが知られているウイルス。このウイルスの感染はとくに稀なものではなく、感染しても多くは症状のないうちに排除されると考えられています。(ちなみに性交渉経験のある女性のうち50~80%はHPVに感染する機会があるため誰でも発症する危険性がある癌と言われています)これが排除されずに感染した状態が続くと、前癌状態から癌へと移行すると考えられます。

性交渉のほか、喫煙も癌の危険因子であることが分かっています。感染経路と危険因子がわかっている癌、これを予防する方法が、検診とワクチン接種。検診は、市区町村で2年に1回無料で検診を受けられる制度があったり、職場健診でもオプションとして婦人科子宮がん健診を受けられる制度があったりと、予防と早期発見に対しての重要性が訴えられています。(お住いの地域や職場によって異なります。)

ワクチン接種に関しては、ご存じの方も多いですが、2013年4月に公費で受けられる定期接種になったものの、接種後に体調不良を訴える声が相次ぎ、国は積極的に勧めることを中止しました。この時以降、安全性への不安が高まり接種する人はほとんどいなくなりました。

一方、患者、死亡者数は増加傾向にあり、子宮頸がん患者を日常的に診ている日本産婦人科学会はウェブサイトで「子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために」という情報ページを公開し、ワクチンの効果や安全性について解説しています。ご興味のおありの方は、ぜひ学会ページをご覧ください。

HPVには、複数の型がありますが、日本では子宮頸がんに進みやすい、HPV16型と18型への感染を防ぐ2種類のワクチンが承認されており、「初めての性交渉を経験する前に接種することが有効」と説明されています。ワクチン接種者でHPV感染率が減少していることはオーストラリア、イギリス、アメリカ、北欧で確認され、国内でも新潟県、大阪府の研究で感染率の低下が示されています。子宮頸がんにかかった場合、女性は子宮を摘出したり、出産をあきらめることになったり、何より辛いのは幼い子供を残し命が絶たれるということです。早期発見早期治療に加えて、予防としてのワクチン接種。接種をするのかしないのかは、ご本人、ご両親、ご家族の判断となりますが、知識として、ただやみくもに怖がるのではなくワクチンについて理解を深めておくのも良いかもしれません。

山田医院 看護師 岩崎恵美子

ファーストシューズの購入について

ひとりで歩けるようになるのは1歳が過ぎてからで1歳半ではほぼひとり歩きが可能となります。

大人が歩くときにはかかとで着地をしてつま先に向けて足の裏全体を転がすように体重を移動させて最後につま先で蹴り上げるように歩くローリング運動を行いますが乳幼児ではローリング運動がまだできず足の裏を1枚の板のように使ってぺたぺたと歩きます。また足の親指と小指はとても大きく上下左右によく動くために靴を履いた状態でも足指を上下左右に自由に動かせることが大切です。

ファーストシューズはつま先が少し上がってちょっとした物に引っかかりつまずいて転ばないように、靴底の前1/3で曲がり、地面からの衝撃を和らげるクッション性のある靴底が大切です。またかかとから足首までしっかりと包み込んで固定したハイカットタイプの靴がおすすめです。実際の選び方ですが、まずは足長、足幅、足回をきちんと測り足のサイズにあったただしいくつを選ぶことが大切です。

最近はメーカーのホームページから足形のサイズがダウンロードできます。
3歳くらいまでは半年に0.5-1cm程成長するのでチェックが3ヶ月ごとに行うのが理想です。正い靴を履かないと足の変形をきたすこともあり注意が必要です。
靴選びのポイントとしては
①かかと周りがしっかりとしている
②靴底の前1/3で曲がること③つま先に0.5-1cm程度の余裕があること
④マジックテープで足の甲をしっかり止められるもの
⑤足の甲に靴がしっかりとフィットしていることです。

足元からの健康づくりということで歩くことは高齢者だけではなく乳幼児においても大切です。
欧米ではたったらすぐに靴を履かせるようですが日本でははだしで歩き方の練習をしてから靴を履いてのデビューです。ファーストシューズはデビューに向けての大切な道具です。きっちりと選びましょう。

今回はチャイルドヘルス2018年3月号から抜粋しました。

山田医院 医師 山田良宏