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山田医院だより

第16巻第5号(第184号)

炎症性腸疾患について

広い意味では原因のはっきりしたいわゆる感染性胃腸炎も含まれ炎症性腸疾患について広い意味では原因のはっきりしたいわゆる感染性胃腸炎も含まれますが通常、炎症性腸疾患(IBD)は潰瘍性大腸炎とクローン病の総称として用いられます。

この2つの疾患は原因が不明であり共通の症状があること、再燃(ぶりかえし)、寛解(よくなること)を繰り返すこと、治療法に共通するものが多いなどから合わせて炎症性腸疾患と総称されます。

今回は日本医師会雑誌4月号からこの炎症性腸疾患について抜粋をしました。この疾患は合わせて20万人います。厚生労働省が指定している難病の中で最も患者さんの数が多い疾患となっています。

欧米と比べるとまだ少ない傾向ですが世界的にも増加傾向であり比較的若い世代に多い疾患です。遺伝的因子と環境因子が重なり発症すると言われています。

日本においての遺伝因子は3%程度で生活の欧米化という環境因子が関与して発症すると言われています。遺伝については疾患関連遺伝子といい単一の遺伝子によるものではなく複数の遺伝子が関与していることがわかっています。

これらの疾患の病態は腸管を主とした免疫能の異常亢進による病気で比較的若年者において下痢が持続して血便あるいは体重減少などがある場合にはこの炎症性腸疾患の疑いが強くなります。

潰瘍性大腸炎は直腸から連続して口側に広がる慢性炎症で通常は比較的緩徐に持続性あるいは反復性の粘血便を認めることが多く腹痛、下痢を伴うこともあります。便はトマトケチャップ様になり夜中や朝方に排便が多く、排便の前後に腹部痛を伴います。

一般に若年発症ですが中~高齢での発症もまれではなく注意が必要です。クローン病は10歳代後半から20歳代の発症が多く病変は口腔から肛門までの全消化管に及びますが小腸と大腸に高頻度に認めます。

腹痛、下痢、体重減少、発熱などが多く、症状は潰瘍性大腸炎よりも多彩です。なお肛門病変は多く、裂肛、痔ろう、痔核など難治性肛門病変があればクローン病を強く疑います。

なお、潰瘍性大腸炎もクローン病も腸管外合併症として皮膚、目など全身に問題を生じることがあります。これまではこの炎症性腸疾患に対しては臨床的効果のみを考慮して症状が治まればこれでよいと考えられていましたが生物学的製剤である抗TNF-α抗体製剤が出現してからは腸管の粘膜の治癒(腸管の粘膜の病変を治してしまう)ことが病気の再燃を防ぐうえで大切であることがわかりました。現在では免疫調整剤あるいは抗体製剤というような新規治療薬によって改善を図ることが可能となりました。

血液検査を含む臨床症状と大腸内視鏡検査での所見を考慮して治療方針、判定を決めることが多く治療目標は寛解の早期導入と再燃防止の長期維持となっています。確実に寛解状態にすることによって長期経過は良くなり、また再燃してもできるだけ早期に判断をして積極的に治療をすればその後の増悪進展も抑制可能なことがわかっています。

なお、炎症性腸疾患においては問題の1つとして大腸がんなどの発がんのリスクも高く定期的な大腸検査も必要となります。クローン病では腸管の狭窄や肛門部の病変(痔ろう、痔核など)もあり手術について考慮することもあります。

前述のように抗TNF-α抗体製剤が出現してからは炎症性腸疾患の治療が劇的に変化して現在は炎症性腸疾患の治療は全く新しい時代に入ったと言えるようです。ただし一部に難治性の疾患もあり今後の新薬開発に期待も寄せられています。持続する下痢等がある場合には大腸がんを心配すると思いますが、上記のような炎症性腸疾患が隠れていることもあります。放置せずに主治医と相談をしましょう。

山田医院 医師 山田良宏

子どもと性暴力の問題

先月号の山田医院だよりで山田先生が性暴力について書かれていたことから、子どもと性暴力の問題についてもう少し掘り下げてみたいと思いました。

今回は、私が在学中に受講していた、助産師でもある鈴井江三子教授の講義で教わったことを参考にお話したいと思います。

「子どもを狙った性暴力」というと、年頃の女の子がターゲットになるイメージがありますが、女の子だけでなく男の子、そして未就学児が性暴力の被害にあうケースも後を絶ちません。

「知らない人にはついていかないように」と、親や学校などから注意された経験は誰しもあるかと思いますが、残念なことにそれでは子どもを守ることはできません。いくら「知らない人にはついて行っちゃダメ!」と教えても、例えば「話をしたことはないけどよく見かける人」は、子どもにとっては「知らない人」ではないからです。それに犯罪を犯すのは知らない悪い大人だけではなく、とても身近な大人達であったり、悲しいことに子ども同士でも性暴力は起こっています。被害を受ける場所も通学路または公園などの遊び場だけでなく、子どもが暮らす自宅や顔見知りの加害者の家など、普段子どもたちが安心して過ごせるはずの生活圏内でも起こります。

2005年に木下あいりちゃんが暴行の末殺害された事件のあった広島県では、2000年に県内の600人の若者を対象に実態調査を基にした実態と分析が行われ、18歳までに「女子の5人に1人、男子の7人に1人」の割合で痴漢などの公然わいせつ、強姦など、何らかの性暴力被害にあっているとの結果が報告されています。ちなみに、後に鈴井先生が行った別の聞き取り調査によると、被害者の年齢は「小学生」が最も多く65.5%(小学校低学年女児が最多)、次いで「保育園児」16.3%、中学生、高校生と続くそうです。事件の前にこうしたデータがでていながら、なぜ活かすことができなかったのか。それは今までにも子どもを対象とした性暴力は連綿と存在していましたが、それらは「タブー」としてフタをされてきたからです。子どもの性に対する人権侵害への意識に、ようやく社会の認識がついてきたばかりで、学校でのきちんとした性暴力教育もなかなか普及が進んでいないのが現状かと思います。

特に小さな子どもさんは性暴力についてまだ意味がよくわからず、抵抗する力も弱いため、相手の言いなりになってしまうことがほとんどです。性暴力自体への理解は難しくても、「水着を着て隠れる場所は、見せてもダメ、触らせてもダメ」と教えてあげて下さい。知っている人とであっても、どこか出かける前に電話でもいいから必ず親に許可をもらうようにするなど、「わが家のルール」を決めて下さい。子どもが自立していく為には、きちんと危険をかぎ分ける観察眼と、そして万が一の時には自分を守り対処する方法を身に付けることが必要です。

山田医院 医療事務 中町麻里

喫煙が及ぼす影響

たばこの悪影響は数え切れず…

それは、吸っている人も分かっているはず。それでもやめられない、止めたくなかったりするのが喫煙者の言い分ですよね。具体的にたばこがどんな悪影響を及ぼし、喫煙をやめてどのくらいすれば何が改善されるかをまとめてみました。
たばこの煙には4000種類以上もの化学物質が含まれており、そのうち、発ガン性物質はなんと、60種類も!ビックリですよね。たばこがやめられない原因の1つがニコチンによる依存。禁煙を始めて3日程で体内のニコチンは排泄されるがこの頃に禁断症状の強さがピークに達します。重度の場合、頭痛・吐き気・痙攣など起こすことも…禁煙を断念してしまう理由はここにあるかもしれないですね。この禁断症状を乗り越えると2-3Wで肺の機能も良くなり、禁断症状も徐々に消えてきます。1ヶ月程すると咳や息切れが驚くほど改善され、どんなヘビースモーカーでも禁断症状は数か月でなくなるといわれています。心臓病のリスクは喫煙者の半数に減少、5-15年で非喫煙者と同じレベルに!!そして、たばこが由来する病気の中でも、最も致死率が高いといわれている肺ガンは、禁煙後10年も経つと喫煙者の半数に減少。その他にも、味覚・嗅覚が鋭くなり食べ物が美味しく感じるようになったり、肌の調子が良くなったりと禁煙することでのメリットが沢山あります。

最近、テレビやCMなどでも喫煙・禁煙についての事がちょくちょく取り上げられていますよね、当院でも禁煙外来をおこなっていますので、気になる方は、お気軽にご相談ください。

山田医院 看護師 川上啓

髪の紫外線対策

頭皮は顔と同じく日焼けをし、髪は顔の3倍も紫外線を浴びていることが証明されています。紫外線のピークは5月以降ですが、特に頭皮は顔や他の部分に比べて高い位置にあるため紫外線が当たりやすい部分です。にもかかわらず髪の毛や頭皮は、他のところに比べると紫外線対策を意外に意識していないのではないでしょうか?頭皮はUVケアもアフターケアもしないことが多いので、頭皮が傷み、将来的に毛髪に悪影響を及ぼす可能性があり、枝毛、切れ毛、かゆみ、フケ、抜け毛に繋がることもあります。
修復しにくい部分でもある髪こそ、しっかりと紫外線対策を行う必要があります。

■対策■
・髪の分け目に気をつける
常に同じ位置から分け目を作っていると、その場所の頭皮が紫外線にさらされることになります。できるだけ毎日分け目を変える工夫が必要です。

・帽子、日傘で紫外線を避ける
紫外線から頭を守るには、帽子と日傘は欠かせません。特に紫外線対策に有効な帽子はツバの広い帽子が最適です。色は実は黒の方が紫外線対策に適しており、遮断する効果がより強まります。
・女性の場合、妊娠中・生理前は要注意
女性は生理前や妊娠中に多くなる黄体ホルモンが紫外線に反応しやすくなり、シミやソバカス、肝班などでやすくなります。
・抗酸化ビタミンと呼ばれるビタミンA、Eを積極的に摂りいれましょう。
・毛髪や頭皮の日焼けを防ぐには、紫外線カット効果のあるヘアケア用品を使用するのも良いでしょう。
スプレータイプであれば、出かける前にさっとスプレー出来て大変便利。
紫外線を防ぎながらトリートメント効果も得られるのでおすすめです。

山田医院 医療事務 杉山恭子

頭痛について

私はいわゆる頭痛もちで、よく頭痛が起きます。「あー頭痛いなあ」と思っていたら「それは雨が降るからだよ」と言われたこともあります。雨が降ることと頭痛は関係があるのでしょうか?

関係はあります。急な気圧の変化によって、脳の血管を抑えていた圧力が下がるため血管が広がりやすくなり、血管が広がることで周囲の神経を刺激してしまうため、片頭痛を誘発してしまう場合があるそうです。

また気圧が下がることで「自律神経」のバランスが乱れ、体調の変化が起きることもあるといわれています。私は湿度も苦手なので、これから梅雨の季節が憂鬱ですが、体調管理に気を付けたいと思います。先ほど、片頭痛と出てきましたが、頭痛には種類があります。大きく分けると、脳や全身の病気が原因の頭痛(症候性頭痛)とそうでないもの(慢性頭痛)に分類されます。症候性頭痛は脳腫瘍やくも膜下出血、脳梗塞が代表的で生命に重大な危険をもたらします。いつもと違う痛み、強い痛みや手のしびれなどを感じたときはすぐに医療機関を受診しましょう。そのほかには副鼻腔炎・髄膜炎・側頭動脈炎などその他、全身の病気によって起こる頭痛もあります。慢性頭痛は主に①片頭痛②緊張型頭痛③群発頭痛にわけられます。
①片頭痛:脈拍に合わせてズキンズキンとした痛みや、頭の片側が痛む(両側の場合もある)・痛みのピークに吐き気がすることもあります。対処法は安静、こめかみや痛む部分を冷やす、こめかみや痛む部分の血管を圧迫する・鎮痛薬を服用するなどです。

②緊張型頭痛:頭をギューッと締め付けられるような痛み、圧迫感、重い感じがいつからともなくはじまりダラダラ続き、後頭部を中心に両側が痛くなったり、首や肩のコリや目の痛みを伴います。対処法は入浴や、こっている部をホットパックなどで温める、マッサージや指圧、ストレッチでこりをほぐすなど。

③群発頭痛:男性に多く、1カ月くらいの間、毎日のようにほぼ決まった時間に、片方の目の奥が激しく痛む・決まった片側が痛み、特に目の奥をえぐられるように痛い。持続時間は1~2時間、ある期間毎日のように決まった時間に起こる・目の充血、涙目、鼻水などの自律神経症状を伴うこともあります。対処法は症状が出るときはアルコールを避ける、鎮痛薬の服用や、100%酸素吸入が有効な場合もある(市販の酸素スプレーでは代用できない)など。
以上、自分がどのタイプの頭痛か知り、それにあった対応が必要ですね。

山田医院 看護師 三栖佳子

子どもの病気のトリアージについて

災害等に際して重症度や緊急度に応じて搬送、治療を行う優先順位を決める災害トリアージということは聞いたことがあると思います。

2010年度の診療報酬改定において小児救急患者の院内トリアージ加算が導入されてからは院内においてのトリアージにも関心が寄せられるようになりました。

最近では多数の外来受診者がいる場合に患者さんの状態を速やかに評価して診療の優先順位付けを行う院内トリアージを採用する病院が増えました。

とりわけ小児科領域では多くの子どもは軽症患者さんですが中にはごく少数の重症患者さんがまぎれて受診しています。

このウオークインで来院するようなまぎれている生命の危機的状況にある患者さんや危機的状況に陥る患者さんをピックアップして適切な治療へ結び付けていくことが目的となっています。

CTAS(シータス)といわれるカナダにおいて10年ほど運用歴がある救急患者緊急度判定支援システムをもとに日本においてはJTASという日本版の救急患者緊急度判定支援システムがもっと使用されています。

これは救急外来の入り口に常在した看護師が重症度の評価、感染管理、来院時症状の把握、バイタルサインの測定と評価、緊急度の判定と待機場所の選定の順にトリアージを行うものです。

一般的には重症がレベル1となっていてレベル5は緊急性なしとなります。

災害トリアージにおいては死者を黒として重症順から赤、黄、緑となっていますが、院内トリアージにおいては蘇生レベルは青色で重症から軽症にかけては順に赤、黄、緑、白となっています。日本救急看護学会においてはこの認定制も行っており公認されるとトリアージナース認定をうけます。

子どもは自ら症状や苦痛を訴えることができない、訴えが不明瞭、重症に見えても軽症あるいは逆のこともあり、予備能力が少ないから変化が速い等の特徴がありまた子どもは成人と異なり月齢によっても呼吸数、心拍数、血圧等のバイタルサインが異なっておりこのトリアージについてはかなりの熟練も要します。

小児専門病院等の救急外来等においてはこの制度もかなり進んできているようです。皆さんも救急外来を受診した際にこのような看護師さんがいたらトリアージナースと考えて積極的に協力をしましょう。

山田医院 医師 山田良宏