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多剤耐性菌について 帝京大学付属病院で多剤耐性菌アシネトバクターの院内感染が広がり死亡者が続出したり、「KPC」産生多剤耐性菌、インドで発生した「NDM-1」産生多剤耐性菌などもすでに日本での感染例が判明しておりマスコミなどの報道で気にされている方も多いと思います。多剤耐性菌とは多くの抗菌薬(抗生剤)が効かなくなった細菌の事で、一般には健康な方については体の中に入ったり皮膚や粘膜に付いたりするだけではすぐに病気になるわけではありませんが体の抵抗力が低下している時には多剤耐性菌による感染症にかかることがありこの場合には抗生剤が効かないために治療が困難になります。耐性菌については1970年代以降MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)、多剤耐性結核菌などさまざまのものがこれまでにも知られており実際に臨床上問題となっています。 なお、この多剤耐性菌は一部のウイルスなどとは異なり空気感染はせずに基本的には接触感染で広がります。手などについた細菌が何かのきっかけで口などから入って感染します。予防は基本的にはうがい、手洗いです。O-157、サルモネラ菌などと同様に加熱やアルコール系の消毒が有効です。 この度はマスコミによく出るNDM-1、アシネトバクターについて説明をします。細菌の中にはセフェム系の抗生物質を分解する酵素であるメタローβ―ラクタマーゼ(MBL)を産生するものがあります。このMBL産生菌は現時点でも感染症領域では問題となっています。ただし多くのMBL産生菌は緑膿菌やアシネトバクターなどで産生されており、大腸菌あるいは肺炎桿菌などでは少数でした。 この度発見されたNDM-1(ニューデリー・メタロ-β-ラクタマーゼ1)産生多剤産生菌は人の腸管に定着しやすい大腸菌や肺炎桿菌において多く見つかると言う特徴があり問題となりました。緑膿菌あるいはアシネトバクターは通常は免疫力の低下した人に対して感染症を起こして問題となりますが健康な人では通常問題とならなかったからです。ただし、大腸菌あるいは肺炎桿菌は尿路感染症などの一般的な原因菌でもあり健康な人でも問題になる可能性があるためにNDM-1産生菌の発見は問題となっています。マスコミ等では「スーパー耐性菌」などといわれていますが病原性が通常の菌と比べて強いわけではなく多くの抗生物質が効かないことを意味しています。このNDM-1はインド、パキスタン、バングラデッシュなどの流行地からの帰国者については注意が必要です。 ただし、この菌が発見されても大騒ぎをする必要はなくとくに症状がなければ経過を見るだけでよく、通常の生活をしている範囲では手洗い、うがいに気をつけていれば感染もしないでしょう。 なお帝京大学で流行したアシネトバクターは土壌あるいは水の中によく見られる細菌で健康な人でも25%程度は皮膚に保持している菌です。通常は病原性は少なく病院外で肺炎を起こすことは少ないのですがアルコール多飲者、免疫不全者、などでは時々肺炎を起こし注意が必要です。基本的には院内感染の重要な病原体ですが乾燥にも強く手についた菌が運ばれて感染を起こすために他の細菌同様、 多剤耐性菌はインフルエンザのように爆発的な流行を起こすことはありませんが、逆に感染者が減る事も少ないために今後は増加する可能性があると言われています。繰り返しになりますが多剤耐性菌については過度に恐れる必要はなくきっちりとした手洗い、うがいで予防可能な病原体です。 山田医院 医師 山田 良宏 |
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