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糖尿病診療をめぐる動きについて
糖尿病治療薬としてはほぼ10年ぶりに新しい作用機序の薬剤が今年中にも登場する事になります。食事の摂取に伴い消化管から分泌されて膵臓のβ細胞(インスリンという血糖を下げるホルモンを出す部位)に働くホルモンである「インクレチン」に関連した薬剤です。この薬剤は肥満や低血糖を起こしにくいといった特徴があり一般の糖尿病非専門医師においても期待が高まる薬剤です。 ブドウ糖を経口投与すると同じ量を経静脈的投与した場合よりもインスリンの分泌量が2倍以上も多くなる事がわかっています。また健康な人がブドウ糖を25g摂取してもあるいは100g摂取しても血糖値の上昇にほとんど変化がないことが分かっています。このことはインスリンの分泌を促すホルモンが消化管から経口摂取した量に応じて分泌されるためであると考えられていました 。このホルモンが消化管ホルモンであるインクレチンです。 インクレチンは消化管上部から分泌されるGIPならびに下部小腸から分泌されるGLP−1という2つが本体であるといわれています。このインクレチンは通常の糖尿病薬であるSU剤とは作用機序が異なる事、グルコース濃度依存性であるから高血糖の時のみ作用するために低血糖を起こしにくいことが分かりました。生体内においてはこのインクレチンはぺプチドホルモンであるために蛋白分解酵素であるDPP−Wによって分解されるために半減期が数分程度となっています。 インクレチンの作用は糖尿病に有用であるために薬剤としての開発には蛋白分解酵素であるDPP−Wの働きを阻害する事によってインクレチンを長く作用させるようにする事(DPP−W阻害薬)、あるいはDPP−Wによって分解されない
ようなインクレチン(GLP−1受容体作動薬)を開発する事になりました。これらの薬剤は比較的軽症の糖尿病の方を中心に選択薬の1つとなりそうです。
なお、これらの薬剤は他の薬剤とは異なり1日1回ならびに2回の投与での対応が可能、薬剤量は固定量で対処が可能、低血糖が起こりにくい等の特徴があります。今後は他の薬剤との併用も考慮されます。
なお、今年7月には米国を中心とした専門家がHbA1c6.1%以上で糖尿病の診断をすべきという勧告をまとめました。現在日本においての糖尿病の診断は空腹時血糖が126以上あるいはブドウ糖負荷試験での2時間血糖値が200以上、随時血糖値が200以上にくわえてHbA1cが6.5以上あるいは網膜症の存在あるいは口渇等の症状で糖尿病の診断となっておりHbA1cは補助的な点が強くまた値も6.5と今回の勧告の6.1より大きな値でした。今後日本の基準も変化する可能性が高くなりました。なお、HbA1cは1-2ヶ月前の血糖値の平均の指標となりますが測定方法により値がかなり異なり国際間のみならず国内での違いも問題となっていました。データ比較が国際間では難しく混乱も多くありました。
このたび表記を国際法(NGPS法:A1C)で記載することになりましたが、日本での値(JDS法:HbA1c)よりも0.4高い値になります。専門誌においてはしばらくは併記するようです。今回はかなり専門的なお話で申し訳ありませんでした。
山田医院 医師 山田 良宏 |