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転倒・転落について
子どもあるいはアスリートにとっての転倒は日常茶飯事ですが、高齢者にとっての転倒はさまざまな併発疾患を惹起し、また閉じこもりを含めて生活の質を低下させ、医療あるいは介護に大きな負担をかけると言う社会問題にもなっています。転倒は前期高齢者〔65歳から75歳〕は5人に1人、後期高齢者〔75歳以上〕では3人に1人の割合で毎年転び、転倒者の1割が骨折をしていると言われています。男女比では女性に多くなっています。地域差ははっきりとしていないようです。なお、諸外国に比べると日本での転倒の発生は少ないようです。転倒による大きな外傷は頭部外傷を思い浮かびますが、屋内においての転倒では重症の頭部外傷はほとんどないと言われています。最も頻度が高く有名な外傷は慢性硬膜下血腫です。この外傷は軽微な頭部外傷(場合によっては本人が覚えていない程度)後1から3ヶ月を経過して徐々に発生する血腫で進行する認知症あるいは歩行障害で発症します。簡単な手術で治るために診断が大切ですが、一般に頭部CTあるいはMRIで診断はすぐにつくことができます。次に転倒で問題となるのが骨折です。高齢者の4大骨折と言われる[脊椎骨折][大腿骨近位部骨折〔足の付け根の骨折〕][前腕骨折][上腕骨近位部骨折[肩の骨折]]は転倒が原因の骨折です。このうちもっとも発生率が高いのが脊椎骨折で大腿骨近位部骨折がそれに次ぎます。脊椎骨折は安静加療が中心ですが、大腿骨近位部骨折は入院により手術が必要、上腕骨近位部骨折、前腕骨折はギプス固定が必要になり、しばらくの間は生活が極めて不自由となります。血液検査等で転倒と関連があるものとしてはアルブミン値の低下とビタミンDの低値が転倒のリスクとして知られています。なお、一般に医療あるいは介護の現場で留意する必要がある転倒・転落の危険者は以下の5つに集約されます。@最近1年間で転倒の既往がある。Aめまい/歩行不安定/バランス障害のいずれかがある。B記憶障害あるいは認知障害がある。C下肢の筋力低下がある。D車椅子の使用者。 この中で特に「最近の転倒歴」が極めて高い転倒危険の因子となります。以前から高齢者は転倒・骨折によって認知症を生じると誤解されていましたが、この考えは逆で認知症が転倒の危険因子となり注意が必要です。俗に「ヒトは足から老化する」といわれ、自身も歩行速度の低下をもっとも自覚すると思います。筋力低下、バランス障害、歩行障害により転倒をしやすくなります。一般に体力は20歳前後をピークに年齢に伴って低下する事が知られています。特にバランス能力は他の筋力に比べると加齢に伴う低下が強いと言われています。強度の強い運動が効果的ではあるものの体力維持には軽い運動でも効果があることが分かっています。なお、バランスについては太極拳、気功、社交ダンスなどを行っているものが特に優れていると言われます。このような運動を取り入れてもいいかもしれません。なお、薬剤特に神経系に機能する薬剤は転倒に関連すると言われています。ふらつき等がある場合には現在服用している薬剤もチェックする事が大切です。たかが転倒、されど転倒。下肢筋力を増強して気をつけましょう。 山田医院 医師 山田 良宏 |
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