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胎児期の栄養について 日本においては若い女性の「やせ」願望は強く、やせている女性の頻度が先進工業国の中でも著しく高くなっています。BMI(体重kg÷身長m÷身長m)が18.5未満の痩せ型の女性をみると(BMIの標準は22です。)20歳代は最近ではこの比率が25%になる地域もあります。(20年前は12%程度)一方小児の肥満は増えていると一般に言われています。平成18年度においては肥満児の出現は幼稚園児で2.8%、小学1年生で5.3%となります。なお男児では9歳以降、女児では11歳以降で10%を超える結果となっていますが最近10年ほどは就学前ならびに小学生ならびに中学生でも肥満児の増加は頭打ちになっているようです。この小児肥満の傾向は日本のみではなく世界的な傾向のようです。なお、子どもの肥満度は大人で使用されるBMIは使用されず過体重度(肥満度)を使用します。この過体重度は標準体重(年齢、性別、身長別の体重表に記載。簡単には身長(m)の3乗×13、ただし5歳以上)を用いて計算、20%以上の肥満を小児肥満とします。肥満における内臓脂肪の蓄積はメタボリックシンドロームにつながり、将来的な動脈硬化の危険因子となります。最近話題のメタボリックシンドロームについては小児も診断基準があり腹囲は80cm以上(あるいは腹囲/身長が0.5以上)となっています。小児肥満の数%から20%にメタボリックシンドロームが存在するといわれています。では、太っている子どもは成人後の肥満につながるのでしょうか。英国では9歳までの肥満は中年以降の肥満と関連がないという報告もありますが3歳児での肥満は成人肥満のリスクになると言われています。ただしこの場合でも3割程度の関連性しかありません。小児肥満について最近の話題は成人病胎児期発症説です。これは栄養学分野のノーベル賞と言われているダノン国際栄養学術賞を2005年に受賞したbarker先生が唱えたものです。「受精時、胎児期、または乳児期に低栄養または過栄養に暴露されると成人病の素因が形成され、その後間違った生活習慣が負荷されると成人病が発症する」と言うものです。出生体重が低下すると冠動脈疾患・高血圧・糖尿病・脳梗塞・高脂血症の成人病発症リスクが高くなり、一方巨大児も成人病リスクは高くなります。糖尿病発症のリスクについての解析では出生体重が3800g前後が最もリスクが少ないと言われています。日本においては最近は低出生体重児(出生体重2500g以下)の増加があり10%程度が低出生体重児であると言われています。また同様に3000g未満の児も増加、3000g以上の児は少なくなっています。やせた状態での妊娠自体が胎児の発育を妨げる可能性となり低出生体重児のリスクが高くなるといわれています。現在のやせ願望が低出生体重児増加の原因の1つと言われています。今までは妊婦皆同一の食生活指針でしたが2005年からの指針では妊娠前の体格に基づいてやせ群、普通群、肥満群と個別化して各群ごとに低出生体重児を生まないための体重増加量を示しています。ただしこの指針は2500g以下の低出生体重児を生まないための視点で策定されたもので理想的な出生体重時の分娩をするためのものではありません。小児肥満は将来の成人病のリスクを高くしますが低出生体重児が肥満になった場合と出生体重が3000−3800gの範囲内の子どもが肥満になった場合は同じ肥満でも成人病になるリスクが異なります。低出生体重児は糖尿病になるリスクが高いにもかかわらず通常の出生体重児では糖尿病になるリスクが少ないと言われています。現在の社会的な風潮としては「小さく生んで大きく育てる」事が妊娠育児の上でよいとされていますが、この考え方は一方では児の予後を悪くして成人病のリスクを急増させる危険性があります。出生人口をいかに増やすかと言う視点以上に健康な次世代を確保すると言う事が最重要課題としてあげることができます。これからは妊娠前、妊娠中、授乳期の栄養指導の重要性は想像以上であり成人病対策はお母さんのおなかの中からしていく必要があるかもしれません。 山田医院 医師 山田 良宏 |
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