先頃行われたシドニーオリンピックでも、女子体操でルーマニアのアンドレーア・ラドゥカン選手が金メダルを剥奪されたのをはしめ、幾人かの選手がドーピング検査により失格となりました。
そもそもドーピングとは、スポーツ選手が主に薬物服用などの不正な方法によって競技成績を上げようとする行為をいいます。これを防止する為に競技会の主催者が尿検査等を行うのがドーピング検査であり、禁止薬物が検出された場合には、それが故意であったかどうかにかかわらず競技者たちが処罰されます。
IOC(国際オリンピック委員会)医事委員会が決めたドーピング禁止薬物は以下のようになっています。
禁止薬物
@興奮剤(コカイン、エフェドリンなど)
A麻薬性鎮痛剤(ジヒドロコデイン、モルヒネなど)
B蛋白同化剤(男性ホルモン系蛋白同化ステロイドなど)
Cβ2刺激剤
D利尿剤
Eペプチドホルモン、糖蛋白ホルモンおよび同族体
使用制限のある薬物
@アルコール
A大麻
B局所麻酔剤
C副腎皮質ステロイド
Dβ遮断剤
かつて1988年ソウル大会でカナダのベン・ジョンソン選手は陸上の100mで世界新記録を出しカール・ルイス選手に勝ちましたが、金メダルを剥奪されました。この時のドーピング検査で検出されたのは蛋白同化ステロイド剤の一種であり、本来は再生不良性質血、腎性貧血、進行乳癌に対するホルモン療法に用いられるものですが、筋肉や骨の増強、赤血球産生の増大作用を目的として使用されました。今大会のラドゥカン選手の場合はエフェドリンの一種が検出されましたが、彼女はたまたま知らずに飲んだ風邪薬の中に含まれていたようです。
エフェドリンやβ2刺激剤は主に気管支喘息や鎮咳薬として用いられるもので、薬局で売られている薬にも含有されている場合があります。(ちなみに葛根湯中の麻黄にもエフェドリンは含有されています。)また、利尿剤は本来ならば腎臓や心臓などの機能低下により体にむくみを生じた時に水分のコントロールを必要とする時に利尿作用を利用して腎臓からの排泄を助けるものですが、いわゆる痩せ薬として体重のコントロールに使用したり、また薬物服用の事実を隠す為に使われる場合もあります。本来、薬とは人の命を助け病気を治す為のものであるはずにもかかわらず、検出されない薬物やその使用方法を開発する側と、禁止薬物検出にやっきになるIOCとのイタチごっこは今後も続くであろうと思われます。
山田医院 受付(薬剤師) 古川 実加 |