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東日本大震災での医療について
1000年に1度という想定外の大津波を引き起こした東日本大震災では死者不明者が3万人近くあり、負傷者は5500人程度。 阪神淡路大震災では死者6434人に対して負傷者が4万4千人であった事を考えると今回の大震災では死者不明者の多さが際立ちます。大津波による溺死が死因の9割以上を占めており津波に巻き込まれることがなく避難できた被災者には外傷は少なく生死がはっきりと分かれたことが伺えます。 震災直後の医療ニーズは津波から救助された人の手当、津波肺(肺炎)の治療、水にぬれたままでの非難による低体温症の治療が中心でしたがこのような患者さんはさほど多くは発生せず、災害医療派遣チーム(DMAT)や日本赤十字社などの支援チームの役割は限られていました。 DMATは阪神淡路大震災を教訓に災害直後の『防ぎうる死』を減らす目的で整備されたために超急性期医療が対象ですが今回は実力を発揮する場が限定されていました。ただし地震発生の翌日にはおよそ1300人もの医療者が救援に参加した事についてはシステムの対応力が実証されたといわれています。 ただし、被災者の亜急性期ならびに慢性期の医療ニーズは予想外に多く、人手や物資、交通手段の不足によりその対応は困難を極めたようです。薬が津波に流されて服薬を中断して症状が悪化する人たちが続出し、また寒さ、食料不足による栄養状態の悪化、避難生活によるストレスなどで体調を崩す人たちが多くなりまた衛生状態の悪化によるウイルス性腸炎、粉塵などによる上気道炎なども発生しており現場の医療としてはこれらの対応が必要となりました。 なお、今回は被災エリアが広範囲におよび被災地の医療をより困難にしました。なお医療指揮系統には混乱もありました。震災5日目から派遣された日本医師会のJMATのほかにも個人のボランティア医師なども多く現地に入り医療チームが避難所などで重なることもおこったようです。なお、今回においては被災者が全国の医療機関で無料に医療が受けることが出来るような特例、日本の医師免許を持たない外国人医師が被災者を診療しても違法ではないとする事務連絡など多数の通知が厚生労働省から出されました。
一方、震災の影響は被災地だけではなく全国の医療機関にも及びました。
その1つが医薬品の供給不安で甲状腺機能低下症に使用されるチラージンSで国内市場の98%を占めるいわき市の工場が被災したために生産がストップして一時期混乱が生じました。 その他に栄養剤、抗ヒスタミン薬、湿布、漢方薬などの一部が供給不足になりました。また3月14日からの計画停電では関東近郊の医療機関圏内において病院や診療所の診療制限や在宅で使用している人工呼吸器あるいは酸素の機械などにおいての影響が懸念されました。ただし、現時点までは大きな事故は起こっていないようです。なお、今後被災者の間で表面化してくるとみられるのが外傷後ストレス障害(PTSD)です。恐怖感、無力感が1ヶ月以上持続する場合はこの疾患が疑われます。自然災害の場合には5-10%程度発症します。 これは被災者だけではなく救援者特に自衛隊、消防、警察などの救援者は救援活動で心的外傷を受けるために発症の危険性が高いといわれています。今後このような精神的なケアなどの対応も大切になります。被災地は徐々に診療体制が通常通りになりつつありますが復興については地域差が大きく今後個別に対応した復興支援等が必要になるといわれています。
山田医院 医師 山田 良宏 |