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山田医院だより

第19巻第12号(第227号)

溶連菌について

溶連菌は咽頭炎の代表的な原因微生物であり流行疾患の1つとして学校等から連絡がある為に名前を聞いたことはある方が多いと思いますが、今回は古くて新しいこの溶連菌についての話題を日本医事新報平成30年12月号から抜粋しました。溶連菌は連鎖球菌の1つですが、連鎖球菌は一般的には口腔、上気道、皮膚などに常在している菌です。この菌の分類は血液寒天培地という培地で培養した際に溶血性によってα、β、γの3種類に分けることができます。αで有名なのが肺炎球菌(肺炎の最も多い原因菌)と感染性心内膜炎の原因となる緑色連鎖球菌です。βは菌株の抗原性によってLancefield分類を行いA群からV群まで分類されます。いわゆる溶連菌はA群β溶血性連鎖球菌というのが正式な名称です。実はこのA群β溶血性連鎖球菌が連鎖球菌の中では最も病原性のある菌種で人食いバクテリアと言われた劇症型連鎖球菌感染症、髄膜炎、腹膜炎などの侵襲性感染症の原因、有名な咽頭炎、皮膚炎などの非侵襲性感染症の原因となります。その他B群β溶血性連鎖球菌は新生児敗血症の起因菌であり、C/D群β溶血性連鎖球菌は皮膚軟部組織あるいは成人の咽頭炎の原因菌となります。一般には溶連菌といえば咽頭炎というイメージが強いと思いますが実は咽頭炎の原因のほとんどはウイルスであり、細菌の中で一番多いA群溶連菌は成人では10%、小児では30%程度です。溶連菌による咽頭炎は極めて強い痛みを訴えることがしばしばありますがほとんど痛みがないこともあり臨床診断は困難なこともありますがCenter scoreという予測手法があります。38度以上の発熱、咳嗽がない、痛みを伴う前頚部リンパ節腫脹、白苔を伴う扁桃腫大が基本的には特徴的な症状であり15歳未満の小児が多く成人では稀になります。なお、最近では溶連菌以外に特に成人においてはC/D群連鎖球菌、Fusobacteriumによる咽頭炎も多くなっています。A群溶連菌はそもそも自然軽快する疾患ですが抗菌剤の使用により1日早く治ると言われています。また小児においてはペニシリンの使用によりリウマチ熱の予防効果があるものの最近では先進国ではリウマチ熱を発症するタイプは少なくなってきていると言われていること、成人においてはリウマチ熱予防効果が不明であることから治療については抗菌剤が必ずしも適応とは言えなくなってきています。なお、咽頭炎に皮疹があればEBウイルス、HIVウイルスなども鑑別が必要になります。(これらは抗菌剤は不要。)なお、麻疹等のウイルス感染症については一度罹患すると通常はもう罹患しないのが普通ですが溶連菌については複数回感染する可能性はあります。溶連菌についてはキャリア(保菌者)が特に小児においては一定数いると言われていますが保菌の状態ではリウマチ熱等の発症はないために通常は治療は不必要であると言われています。そのために学校あるいは家族間において接触を通じて再発が起こることがあると考えられています。なお、再発予防のための扁桃腺摘出術は効果が明らかではなく推奨されていません。溶連菌の合併症としては溶連菌感染後糸球体腎炎が知られていますが、溶連菌による上気道炎の10日後、皮膚感染症から21日後に発症するもので浮腫、血尿、血圧高値で発症するもので小児に多い疾患です。小児においてはほぼ治癒しますが成人においては10年以降してから高血圧、腎障害を有する例が多くなっており注意が必要になります。この溶連菌感染後糸球体腎炎は抗菌薬では予防できないと言われています。溶連菌感染後の尿検査については予後に変化がないために推奨はされていません。また、溶連菌に伴うその他の合併症としてはリウマチ熱があります。これは溶連菌感染後3週間ほどして発症するもので関節炎、心炎、皮下結節、遊走性紅斑、舞踏病などの症状が起こります。先進国ではその発生率は著しく減少していますが発展途上国においてはまだ公衆衛生上の大きな問題となっています。このリウマチ熱とよく似た疾患としてはリウマチ熱の症状に心炎がない溶連菌感染後反応性関節炎というものがあります。あちこちの小さな関節が3週間程度腫脹して痛みを伴う症状で予後については心炎がないために良好です。その他稀な精神疾患としては連鎖球菌感染性小児自己免疫神経精神障害という疾患があります。これは将来健康だった思春期前の小児が溶連菌に感染した後に突然発症する強迫性障害(何度も何度もてを洗ってしまう。何度も何度もドアの鍵を締めたかどうか見に行くなどの症状)やチックです。溶連菌感染症は咽頭炎がよくある疾患ですが、治療の問題、再発の問題、合併症としての腎炎の問題、その他リウマチ熱、反応性関節炎、自己免疫性精神障害について紹介をしました。よくある疾患ですが結構奥が深い疾患でもあります。また疑問点等がありましたらかかりつけ医師に相談をしましょう。

山田医院 医師 山田良宏

パニック障害について

最近、芸能人でも発症したりと、テレビでも耳にすることが多くなってきました。パニック障害とは、突然次のような症状が出ます。
【症状】動悸 めまい 呼吸が速まって息苦しくなる 胸のつかえ感・手足の震え しびれ 吐気 発汗
【症状が多く出る場所】・電車の中 ・エレベーターの中 ・高速道路を運転中
・デパートやスーパーなど人が多い場所 ・会議や、発表などの緊張する場面パニック障害の症状が出ると、自分ではコントロールできません。そして、不安が強くなるため、命の危険を感じます。パニック障害は、どなたにでも起こりうる症状です。特別なことではありません。これは、人間が持っている、自分を守ろうとする機能の1つです。人は、交感神経の働きにより身体をコントロールしています。主な働きは、心臓をドキドキする、呼吸を早くする、胃腸の働きを抑えるなど、身体を活動的にする時に働きます。例えば、大きな恐怖を感じた時、緊張している時、ストレスを感じている時は、交感神経の働きが活発になり、心拍数が増え、呼吸も激しくなります。パニック障害の原因は、この交感神経が過剰に働くことで症状が出るのです。しかしながら、心臓・脳・血液検査など様々な検査をしても異常がでず、原因はわからない事が多いのです。そのため、パニック障害の不安が更に大きくなります。また、うつ症状を引き起こすのが特徴でもあります。その結果、精神的な問題とされることが多いのです。
【交感神経が敏感になるパニック障害の原因】
・家族の問題 長時間の仕事 プレッシャー 人間関係のストレス 不規則な生活習慣 睡眠不足 体調不良など
色々なストレスが引きがねとして考えられます。
パニック障害をそのままにしておくと症状がさらにひどくなる場合があり日常生活ができなくなることもあります
・家事ができない ・仕事を休みがちになる ・外出ができない ・学校にいけない
・家に引きこもってしまうなど様々な問題を引き起こします。
さて、ここまでで、パニック障害の症状、原因についてお話ししてきましたが、他人事ではなく、とても身近に感じられた方もおられたのではないでしょうか。誰にでも起こりうる可能性があるものなので、この機会に知識を深めて頂けたらと思います。治療法については、少し先になりますが、次の機会にお話しできたらと思います。

山田医院 看護師 川上 啓

咳エチケット

咳エチケットとは厚生労働省が提唱している感染予防策のひとつです。
風邪やインフルエンザなどの呼吸器感染症は、感染者の咳やくしゃみなどに含まれるウイルス・細菌を他の人が吸い込むことによる飛沫感染で広がっていきます。マスクをせずに咳、くしゃみをするとウィルスが2m~3m飛ぶと言われその範囲にいる方が感染を受ける可能性があるということになります。そこで必要なのが咳エチケットです。
3つの正しい咳エチケットとして
①マスクを着用する
②ティッシュ・ハンカチなどで口や鼻を覆う
③上着の内側や袖で覆う
厚生労働省が推奨している具体的な咳エチケットの方法は、
◎咳・くしゃみの際はティッシュなどで口と鼻を押さえ、他の人から顔をそむけ1m以上離れる。
◎鼻汁・痰などを含んだティッシュをすぐに蓋付きの廃棄物箱に捨てられる環境を整える。
◎咳をしている人にマスクの着用を促す。
マスクはより透過性の低いもの、例えば、医療現場にて使用される「サージカルマスク」がより予防効果が高くなりますが、通常の市販マスクでも咳をしている人のウイルスの拡散をある程度は防ぐ効果があると考えられています。健康な人がマスクを着用しているからといって、ウイルスの吸入を完全に予防できるわけではないことにも注意が必要です。
◎マスクの使用は説明書をよく読んで、正しく着用する。
マスク着用やティッシュなどで口を覆うことが大切だと思われているかもしれませんが、正しい咳エチケットとしてはマスクの選び方や、適切な使用(鼻からあごまでを覆い隙間がないようにつける)、使ったティッシュの捨て方まで配慮が必要です。
また、咳やくしゃみをした際に押さえた手や腕にもウイルスが付着しているので、直ちに洗うことも大切とされています。手を洗う前にドアノブなど周囲にあるものを触ると、それらを介して接触感染の原因になる可能性があるためです。
インフルエンザが流行する季節となってきました。 待合室には他の患者様もおられますので、咳やくしゃみなどの呼吸器症状がある方は、感染を防止するためにも咳エチケットにご協力ください。

山田医院 医療事務 平賀玲奈

病原ホコリの清掃術

年賀状書きやクリスマスの準備、お子さんは冬休みに入り、年越しの用意もしなければと何かとばたばた忙しい日々を送られているかと思います。そんななかでの年末の大掃除。あっという間に時間が過ぎて行ってしまうものですね。年末の大掃除といえば、神社の神事として、1年のすすを払ってお正月に神様を迎え入れる準備である「煤払い」が原型といわれてますが、現代では今年の汚れは今年の内に…という趣旨で行われているかと思います。きれいにして、気持ちをひきしめて清々しく新しい年を迎えようとするその掃除。実はやり方を間違えてしまうと部屋中にダニやカビといった病原体をまき散らしてしまうことになりかねないというのです。
ホコリの主成分は衣類から離脱した繊維や綿。これだけなら病気の原因にはなりにくいものですが、堆積するとそこに細菌やカビ、ダニが繁殖するようになります。それが「病原ホコリ」です。たかがホコリ、されど病原ホコリ。病原体濃度が濃くなったホコリは、肺炎や喘息などの呼吸器関係の病気を引き起こす原因にもなりかねず、注意が必要です。そんな危険な病原ホコリを正しく掃除する、病院の清掃指導を長年行っている専門家・松本忠男さんが病気にならない清掃術を紹介されており、その中で5つのポイントをピックアップしてみました。
●掃除の際に窓を開けてはいけない
掃除をする際、換気のためと部屋の窓をあけながらする人が多いかもしれませんが、窓を開けると風が入ってきて、部屋の中のホコリが飛散し、ホコリを集めて取り去ろうとしているのに、まき散らすことになってしまいます。換気は掃除終了後にするのが〇。
●フローリングの床を掃除するときは素早く動かさない
ホコリは人の体が動いたときに起こる風によっても飛散します。
●隅から掃除するのはNG
先に隅を掃除しても、中央を掃除した時に人のうごきで風が起こると、ホコリが再び隅に追いやられてしまいます。掃除は中央を先に!
●フローリングワイパーは1方向にゆっくりと
フローリングの床は、フリーリングワイパーのドライシートで掃除する。ワイパーを自分の体から離すように持ち、先端にホコリを集めながら、床面を一筆書きしていく要領でゆっくり静かに前へ前へと滑らせます。
●濡れた雑巾でホコリを拭くのはNG
濡れた雑巾でホコリを拭くと、床に塗り広げることに。乾いた汚れは、乾いたシートかクロスでとるのが正解です。この冬、見た目のきれいさだけではなく、快適に健康に過ごすための清掃法に取り組んでみてはいかかでしょうか。

山田医院 医療事務 中町麻里

子どものけがの対処法(歯や口をけがした時)

1か月ほど前、1歳になったばかりの孫を預かった時のことです。私がちょっと油断したすきに孫が階段から転げ落ち(3-4段)、額を打撲、口の中をけがし結構出血するという苦い経験があります。次の日山田医院で診てもらい、歯も少し奥に入っていたので歯科を受診し、孫は大事には至らなかったのですがその時は「どうしよう」と焦り、うろたえてしまいました。孫や娘夫婦には本当に申し訳ないことをしたと深く反省しました。
そこで今回は「歯や口をけがした時の対処法」について調べました。
くちびるや口の中の粘膜は柔らかくて出血しやすい部位です。まずは傷口を圧迫して様子を見ます。15分くらいたっても血が止まらなかったり傷口が大きく開いているようなら縫い合わせる必要がある場合もあるので受診しましょう。子供は転んだ時に上唇小帯という上くちびるの裏側の真ん中あたりにあるひものような部分が切れることがよくあります。かなり出血することがありますが、慌てず上くちびるを上から指で圧迫すると普通は数分で血が止まります。孫も上唇小帯が切れてかなり出血し慌てましたが10分ぐらいで血が止まりました。
舌をかんだ場合は唾液と混じって出血量が多く見えますが慌てずガーゼで舌を挟むように圧迫します。傷が深い場合は縫い合わせることもあるので口腔外科か歯科を受診しましょう。
竹串や割りばしが刺さった場合は無理に抜かず受診しましょう。傷が深い場合が多いです。
口の中をやけどした場合はまずは水や氷を口に含んで冷やします。程度がひどかったら受診しましょう。
頬や唇をかんで腫れたときは氷をほおばって冷やしたり、濡れたタオルで冷湿布することで腫れがひいて膨んだところを何度もかんだりしないですみます。
口をぶつけて歯が抜け落ちたときは歯を拾ってすぐに歯を牛乳の中に入れて歯科を受診してください。歯の根の部分に触らないこと、水道水で洗わないこと、歯を乾燥させないことが大切です。牛乳がない場合は飲み込まないように注意して口腔内で保存します。歯医者で抜けた歯をきれいにして元に戻すとうまくつく場合もあります。
歯がぐらぐらしたり、かけた場合は歯科を受診しエックス線検査などによる正確な診断を受けましょう。場合によっては歯の固定などの処置が必要になる場合があります。
子どもは好奇心が旺盛です。子供の目線で危険なものがないか家の中を点検し、不用意に転んだり、やけどをしたりしないように環境を整えましょう。我が家もさっそく階段に転落防止柵を取り付けました。可愛い子供がけがなくすくすく育つよう配慮していきたいですね。

山田医院看護師 中島早苗

頭部打撲のホームケアについて

子どもの頭部打撲は救急外来の受診理由で最も多いものの1つのようですが、当院においても月に1-2名程度の方が頭部打撲を主訴として受診されます。子どもの頭部打撲においては①意識の状態②受傷後の活気、機嫌③打撲部位の同定と状態④受傷のエネルギーの大きさの確認が大切になります。意識の状態は打撲直後に一時的あるいは継続して意識がなくなる場合があります。呼びかけると起きるけれども直ぐに寝てしまう場合などは意識が低下していると考えます。一過性でも意識の消失がある場合あるいは意識が低下している場合には病院の受診が必要になります。なお、意識は普通でも1-2時間ほど経過しても活気がない、機嫌が悪い場合にも受診が必要になります。一方、受傷直後は機嫌が悪くても経過とともに通常通りになれば自宅での経過観察も可能と思われます。その他、複数回の嘔吐が持続する場合、頭の痛みが強い場合あるいは増強する場合、打撲部位の腫脹(たんこぶ)が大きくなってきたとき、逆に凹んでいるときは頭蓋内骨折の可能性もあるために受診が必要です。なお頭皮の発赤や腫脹が軽度でありいつもどおりに元気であれば受診の必要はありません。なお、高エネルギー外傷(高速物体との衝突、交通外傷、高所からの転落など)では一見外傷がないように見えても頭蓋内の出血あるいは損傷の可能性が高くなるために診察が必要です。軽症の頭部外傷のうちで頭蓋内損傷が存在するのは10%未満であり、緊急手術などの緊急対応が必要なのは0.1-0.6%程度です。以前の救急外来では頭部打撲においては子どもにおいても頭部CT検査を比較的頻繁にしていましたが被爆に伴う脳腫瘍の危険性等があるために最近では適応を見て行うようになりました。一般的な基準としては大まかには意識状態の低下が5分以上持続、痙攣発作、激しい頭痛あるいは嘔吐、頭部の陥没あるいは大きな皮下血腫などの骨折を疑う場合、高エネルギー外傷による受傷の場合です。頭部打撲は予防が可能とも言われており大切なことは「目を離さない」ではなく「環境と体制を整備すること」が大切になります。子育て中においては1-2度は経験することと思います。心配なときにはかかりつけ医師あるいは最近では#7119への電話での相談をおすすめします。

今回はチャイルドヘルス平成30年12月号から抜粋しました。

山田医院 医師 山田良宏