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山田医院だより

第19巻第6号(第221号)

職域における発達障害者への対応と支援について

職域における発達障害者への対応と支援について

発達障害とは胎生期に起因する脳の機能障害に基づく生まれつきの障害の総称でその特性は 生涯にわたり持続します。発達障害は大きく3つに分けられ、①コミュニケーションおよび相 互の関係障害、同一性のこだわりや興味・関心の狭さを主症状とする自閉症スペクトラム障 害(ASD)、②不注意、多動性、衝動性を主症状とする注意欠如多動性障(ADHD)、③読む、書く、計算するなどの特定の分野の習得と使用に著しい困難を示す限局性学習障害(LD)があります。小中学校での調査によるとASDが1.1%、ADHDが3.1%、LDが4.5%あ り、重複を含めて発達障害の特徴を示す児童生徒は約6.5%と言われています。発達障害は児 童精神科の分野と考えられてきたために知的能力に遅れがない発達障害は見過ごされてきた 経緯があり、現在もその傾向は残っているために自らの特性や対処法を学ぶことなく大きな問題なく学生生活が送れてきた者でも主体性やコミュニケーション力が求められる就職などの環境変化に伴いその特性から周囲に適応することができなくなることが認められるようになりました。そのような不適応で深く傷つきようやく「発達障害」という言葉に出会い診断を受けたというケースが少なくないのも現実です。この背景としては労働者に求められる仕事の質・量の変化で具体的には定型的な仕事は少なくなり状況に応じ対処が求められる仕事やコミュニケーション能力を要する仕事が多くなった、処理すべき情報が増えた、業務を最小限の人数で回すことが求められるようになったなど職場の変化と職場全体の余裕がなくなったことがあります。なお、職場で生じた実際の問題としてはコミュニケーションの問題(指示が通らない、言葉の意味が分からずに対処に時間がかかる)、仕事の段取りの悪さ(複数の業務を同時にできない、予定や計画が立てられない)、本人のこだわりによる問題(自己知識にこだわり周囲に耳を貸さない、分からないことが1つでもあると仕事が進まない)などがありますが、発達障害の障害特異性に加えて個人の状態も異なるために職場で生じる問題は 様々で定型化できません。なお、このような状況ではいわゆるパワハラが起こりやすい状態 でもあり注意が必要になります。ただし、発達障害者においては優れている面もあり正確 性、緻密性、創造性、集中力などがあり具体的には「正確で緻密な資料の作成」「単純作業 に集中して取り組み完成するのも早い」などが有ります。なお、発達障害の基本的な特性は 生涯を通して変わらないために発達障害を有する労働者への基本的な対応は「障害特異性に 応じて環境を調整する」と「本人が特性上できないことは求めず、できる工夫を行う」の2点になります。ADHDに対しては有効な治療薬があり劇的な改善を示すケースがありますがASD に対しては薬物による根本的な治療はありません。成人の発達障害においてはそれまでの生活で身についた自己肯定感の低さを改善させることは容易ではなく、自身の特性を理解して自己肯定感を改善させて精神的・社会的課題を解決することが大切になります。このためには心理社会的支援の持つ役割は大きくなっています。一般に就労あるいは職場定着に必要な能力はハードスキル(「教えられる能力」で仕事そのものの能力)とソフトスキル(仕事に直結しない日常生活能力や対人関係など)に2分されます。ASD者の離職理由の8割以上がソフトスキルの問題であり感覚過敏性のあるASD者にとっては仕事そのものよりもそのような職場環境に影響を受けやすく、とりわけ同僚・上司のASD者に対する関わり方は大きな影響を与えます。なお、ASD者の就労支援で最も大切なのは就労後の長期的なフォローアップです。地域障害者職業センターなどでは職業リハビリテーションサービスを含め職業相談、適性検査、講習会など支援を行っています。成人の発達障害に対する支援ニーズは高く多くは困難を抱え込みながらも発達障害の存在に気付かず、成人になり不調をきたして精神科受診をすることになります。この成人期の発達障害者は増えており支援の重要性は浸透しつつあるものの正しく診断して支援を行う医療機関は少なくその支援手法の確立と普及が求められています。今回は日本医事新報平成30年6月2日号から抜粋しました。

山田医院 医師 山田良宏

水いぼについて

水いぼとは医学用語では伝染性軟属腫と言い、子供に多い皮膚のウイルスによる感染症の病気です。1から5mm程度の光沢のあるいぼが、胸やおなかの皮膚の薄い所や、腋の下、肘や膝の内側などこすれやす い所に良くできます。いぼの中央にはくぼみがあり、その中にある白い芯のような部分にウイルスが多く含まれています。水いぼを掻いたり擦ったりすることで、この伝染性軟属腫ウイルス粒子が拡散します。 このため、遊び相手の子、スイミングのクラスメイト、兄弟姉妹などで伝染します。プールの水ではうつりませんが、お互いの皮膚接触でうつる為、水着やタオルは共用しない、プールの後はシャワーを浴び る、水着で覆われていない肌は絆創膏をはっておくなどの配慮が必要です。水いぼは放置していても自然に治ります。この期間はまちまちで、6カ月から5年かかることもあります。それでも長期的には治るので、何もしない(取らない)という選択もできますが、その間にも自身に広がったり、他の子にうつしたりすることはありますので、アトピーや乾燥がちで皮膚の弱い子、スイミングに通っている子、兄弟姉妹にうつす可能性のある子は除去する治療を検討すると良いでしょう。 水いぼの除去は、専用のピンセットでつまみ取る方法が一般的です。このウイルスには潜伏期間が2~7週間ありますので、いったん治療して良くなっても、すでに感染し潜伏していたウイスルによって水い ぼがまた出てくることがあるので、数回の治療が必要になることがあります。 また、湿疹や乾燥肌など水いぼの悪化要因をおさえることも重要です。水いぼ自体はかゆみや痛みを伴うものではありませんが、アトピーや皮膚が乾燥していると、掻いて他の部分に広がったり、さらに掻き壊し、とびひ(細菌による皮膚の感染症)に移行する事もありますので、保湿剤などでスキンケアに努め ましょう。

山田医院 看護師 盛田里穂

水虫

水虫は専門用語では足白癬(あしはくせん)といい白癬菌という皮膚糸状菌(カビの1種)の皮膚感染症です。水虫という俗称は田んぼで仕事をしている農民が自分の足に小水疱ができてムズムズして非常に痒い のを田んぼの水の中にいる虫に刺されたと思い込んだことに由来します。ちなみに欧米では運動選手に患者が多いことより俗称Athlete Foot(アスリートの足)と呼ばれています。 水虫は痒いというイメージがありますが、症状や発症部位によって幾つかのタイプに分けられます。たしかに足の指の間の皮が剥けたり、白くふやけたりする趾間型白癬、足の裏に小さな水膨れが生じ、破れると皮が剥ける小水疱型白癬は痒みが強いですが、ヒビ、アカギレのように足の裏全体が硬くなる角質増殖型白癬、爪が肥厚変形し混濁する爪白癬のように自覚症状のないものもあります。痒みのある趾間型、小水疱型から難治性の角質増殖型に移行して慢性化するケースも多くなっています。 水虫は侮っていると皮膚の傷口から雑菌が入りやすく、局所の二次感染など「水虫は万病のもと」とも言えます。白癬菌は空気感染することはありません。水虫にかかっている人の足と直接触れ合ったとして も、すぐには感染せず白癬菌が皮膚の表面に24時間以上付着したまま高温多湿の環境下に置かれると感染の可能性が高くなります。スポーツジムや温泉施設、プールなど大勢の人がはだしで歩く所では床やカーペット、足拭きマット、スリッパなどに落ちている菌が足に付着し感染しやすくなります。毎日足の指の間をせっけんで丁寧に洗い、特に感染しやすい場所に行った場合は、帰宅後にすぐ石鹸で足をよく洗うようにすれば、感染はかなり予防できます。できるだけ通気性のよい靴や靴下を選ぶことも予防に有効 です。また、水虫のある人は他の人にうつさないようにすることも大切です。足拭きマットやスリッパを共有しない、素足で歩かない、掃除機などで床や畳をこまめに掃除するなど心がけましょう。なお、靴下など一緒に洗っても白癬菌は洗い流されるので感染の心配はありません。 水虫は自然に治ることはなく、一度治まったように見えて何度も再発するやっかいな疾患の一つです。白癬菌は症状がないところにも存在しているので風呂上がりで角質層が水分を含んで薬が浸透しやすい時 に、足趾の間から足の裏全体に外用剤をまんべんなく塗ることが必要です。最近の外用剤は白癬菌に対する効果が強く1週間ほどで痒みがとれます。そこでもう治ったと思い塗るのをやめてしまう人が多いですが、白癬菌はしぶとく生き残っているので、無症状でもさらに1ヶ月〜3ヶ月ほどは根気よく治療を続けることが重要です。水虫の症状に似ているからといって自己判断で水虫薬を使用すると、異汗性湿疹などのニセ水虫の可能性もあり症状を悪化させることもあるので危険です。専門の医師に相談しましょう。

山田医院 医療事務 平賀玲奈

水分の摂り過ぎ?水毒とは?

先日、知人が「私、普段でもお水を1日、500㏄ぐらいしか飲めなくて。でも頑張って飲んでいたら、前に水毒になったことがあるんです。」と話していました。1日500㏄?!私は割とたくさん水分をとる方なので驚きました。水の摂りすぎ?水毒とはいったい・・・? 「水毒」とは東洋医学の考え方で、気・血・水のうち「水」の巡りが滞って体内に余分な水分が溜まった状態 のこと。全身がだるい、頭痛、めまい、肩こり、手足が冷える、全身のむくみ…など様々な症状を引き起こします。水分をとったほうが美容や健康にいいと思っている人は多いと思いますが、自分の排泄力が追いついてないと余分な水を溜めることになってしまうのですね。 そして、この梅雨の時期は湿度が高く、気温の高さと雨の冷たさが入り混じった状態で、体内に余分な水分がたまりやすく、冷えやすくなるそうです。気温が高い割に汗をかきにくく、摂り過ぎた水分を皮膚からうまく排泄できず、体内に水をためこんでしまうこともあります。そして体に水がたまると体が冷えやすくなり、代謝も 悪くなり、排泄機能も低下して、さらに悪循環になるというわけです。 では、どこからが水の摂り過ぎになるのでしょう?一般的に適量は1.5ℓ。夏場やスポーツをした時は2ℓぐらいが目安とされています。冷たい水を一気に飲まずに常温の水をこまめに摂取する方がいいのです。でも、適量は人それぞれなので、余分な水はしっかりと排泄できる体を作ることが大切です。
<体の水はけを良くする方法>
♢入浴や半身浴でしっかりと体を温め、汗をかくこと
♢運動をして筋力をつけること(筋力が不足するとリンパの流れが滞り、代謝がさがるから)
♢代謝をあげる食材をたべること
・利尿作用のある食材:小豆・冬瓜・きゅうり・トマト・すいか・あさり・シジミ・海藻類・緑茶・はと麦 茶など
・発汗作用ある食材:ネギ・しょうが・大葉・ニンジン・かぼちゃ・タマネギ・にら・山椒・ニンニクなど
夏野菜は体を冷やす食べものでもあるので、ショウガなど体を温める食材と組み合わせて摂りましょう。 水分はしっかり摂りつつ、しっかり出すことが大切です。余分な水分がなくなれば、全身の血液とリンパ液がスムーズに流れて、老廃物がたまりにくく、代謝も上がっていきますよ。

山田医院 看護師 三栖佳子

加熱式電子タバコと受動喫煙

 最近、燃焼式の煙草に比べて目に見える煙も出ず、においも少ないという点で関心を集め、「加熱式電子タバコ」に変える喫煙者が増えています。葉タバコを燃焼させず、直接加熱してニコチンなどを含んだミスト状のエアロゾルを生成・吸入することでニコチンを接種する製品で、日本ではアイコス、グロー、ブルームテックなど が有名です。公式HPでは「紙タバコとくらべて、においが少なく、素早く消えて屋内環境に悪影響を及ぼしません。」「禁煙スペースであっても使用を認めている飲食店等もあります。」と、なんとなく害が少なく安全だと謳われているように感じます。
しかし、日本禁煙学会や日本呼吸器学会は、ニコチン・アクロレイン・ホルムアルデヒド・ポロニウム・アセ ナフテンといった有害物質が、燃焼式タバコとほぼ同レベルで確認されたことで「悪影響がある」との見解を発表しています。最近では日本医師会連合が、加熱式タバコの健康に及ぼす影響について公開シンポジウムを開催し、人間の呼吸器には、吸い込んだ息の一部を肺に届かせないまま吐き出す性質があることをふまえ、「一度吸い込まれ、吐き出されたニコチンなどを含んだエアロゾルの一部は2~3メートル先まで拡散している。加熱式タバコでも周囲の人に健康被害を生じさせるリスクはある」と、あたらしい受動喫煙と呼ぶべき問題が予想されると示唆しています。
非喫煙者にとって煙草の煙やにおいは気分のいいものではありません。その煙やにおいがないことで、吸って いる本人は害がないと思い込みどんどん喫煙をし、周囲の人間は気づかないうちに受動喫煙をする機会が増える。例えばタバコを吸った人とその後30分間向かい合って話していると、その瞬間タバコを吸っていなくても有害な成分を浴びていることになったり、さらに喫煙者の手や髪の毛、衣服、ほかにもカーテンやソファ、壁など に付着した有毒成分を浴びる「三次喫煙」の危険性まで考えると、本当に恐ろしいですね。 ただ、今や喫煙者の割合は20%を切っており、近年は減少の一途をたどっていることから、あと5年もすればよほど依存度の高い一部の人しか吸っていなくなると言われています。そのことに期待しつつ、たばこの害につい て正しい知識を持って、自身の健康を守るための対策をしていきましょう。

山田医院 医療事務 中町麻里

変貌する子どもの細菌感染症

 この数年で子どもの細菌感染症疫学と診療において大きな変化があります。この理由としては第1としては海外で使用されていたワクチンが国内で導入されいわゆる「ワクチンギャップ」が埋まったこと。第2としては多くのウイルスあるいは細菌疾患に対する迅速診断の開発と普及で診断が容易になり抗菌剤の適正使用につながったということ。第3としては近年の薬剤耐性菌の出現によりその治療の選択が困難となり抗菌薬の適正使用の重要性が問われてきたことです。ワクチンギャップについては2008年にヒブワクチンが導入されてから肺炎球菌、髄膜炎菌、4種混合などが次々に導入されました。ヒブワクチン導入後はヒ ブによる侵襲性感染症は激減しました。肺炎球菌については当初は7価ワクチンが導入され3年後からは 13価ワクチン導入となりました。肺炎球菌による侵襲性感染症は減少しましたが13価ではカバーでき ない血清型の感染症が増えつつあり今後の対応が検討されています。個別に疾患を見ていくと細菌性髄膜炎ではヒブ感染症はほぼゼロの状態が持続していますが肺炎球菌感染症についてはゼロにはならない状態 に激減しましたが現在はワクチンでカバーできていない肺炎球菌による髄膜炎が横ばいの状態となっています。これは菌血症といい血液中に細菌が入り込む状態についても認められています。ヒブ、肺炎球菌ワクチンによりヒブと肺炎球菌による菌血症は減りましたが肺炎球菌についてはワクチンカバーできていない菌による菌血症が残っています。なおその他大腸菌などによる菌血症では耐性菌が問題となっていま す。耐性菌については急性中耳炎についても問題となっています。急性中耳炎の主な原因菌は肺炎球菌とインフルエンザ菌(ヒブを含む)ですが、薬剤耐性化が大きな問題となっています。肺炎球菌のワクチンカバー出来ていない菌種への対応としてはさらなる価数の多いワクチンで対応するか、全く別の貴女を持ったワクチンを開発研究研究を進めていくか検討されています。

山田医院 医師 山田良宏