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山田医院だより

第19巻第2号(第217号)

臓器移植における日本の現状と展望について

日本においては生体あるいは死体からの腎臓移植は1960年代から行われています。世界的には1978年に免疫抑制剤のシクロスポリンが臨床導入され移植後の生存率が80%以上となり世界中で脳死ドナーからの臓器移植が一気に加速されました。

日本においては1968年に施行された第1例目の心臓移植で脳死判定の問題が大きく取り上げられてその後は脳死の論議自体がタブーとなっていました。

脳死に関する研究班が脳死判定基準を作成したりするものの脳死に対する議論は進展することなく臓器移植を必要とする多くの患者さんは死亡してごく一部の方だけが海外での臓器移植に頼ることになっていました。

2004年にWHOが移植ツーリズムの防止を呼びかけの反響も後押しとなり1997年に臓器移植法が制定、脳死臓器移植が可能となりました。12年後の2009年に改正されそれまでは必要であった本人の生前の書面による意思表示が不要となり家族による承諾で脳死臓器移植が可能となり年齢制限もなくなりました。

臓器移植について考える場合には臓器の提供側と臓器の手術を含めた臓器を受ける側の2つに分けて考える必要があります。一般の人から見るとこれらは自然につながっているように思われますが、臓器移植については提供側と受け取り側のコーディネーターも異なり、とくに臓器提供に際しての提供側の施設の負担が問題となっています。

臓器提供施設は現在日本においては高度救急医療が行える施設の30%足らずの状況です。2名以上の判定医で時間をおいて2回の脳死判定を行った後に脳死とされうる状態を家族に説明、臓器提供の意思が確認された段階で日本臓器移植ネットワークのコーディネーターから具体的な情報提供を受けて臓器摘出に進みます。脳死下臓器提供者の原疾患としては脳血管障害、頭部外傷、蘇生後脳症が多くなっています。

2009年の法改正後は小児からの臓器提供が可能となり昨年までに15例ほどの小児からの臓器提供があります。ただし知的障害者ならびに被虐待者は臓器提供の対象外となっています。日本においては臓器提供側の精神的ケア(グリーフケア)はまだ未発達でありこの分野に対する対応も必要となっています。臓器移植後は基本的には一生涯にわたり免疫抑制剤の服薬は必要ですが、移植後は90%近い人は通常の生活が可能となります。次に各臓器の状況について説明します。

心臓移植は日本においては10施設で手術可能です。心筋症に伴う心不全を中心とした患者さんの待機期間は3年を超えておりほぼ全例が埋め込み型補助人工心臓を使用しての待機となっています。移植後10年生存率も90%以上です。小児においてはさらに提供者が少なく海外渡航移植に頼らざる得ない状況です。肝臓、肺、膵ならびに腎臓については生体移植が可能です。肝臓については現在生体肝移植は年間に400例、脳死肝移植は50例行われています。

非代償性肝硬変、急性肝不全を中心に移植が行われますが1年生存率は90%程度です。小児においては胆道閉鎖症を含めて胆汁鬱滞性疾患が多く生体移植が95%となっています。腎臓の移植は以前は透析療法の導入後に受けていましたが最近では1/3程度は透析前に受けるようになってきました。3時間程度の手術時間で翌日から経口摂取は可能で2-3週間で退院となります。

年間に1600件ほど行われており80%は生体移植となっています。肺移植は現在9施設で可能です。世界的には末期肺疾患の有効な治療法として脳死肺移植は定着しています。特発性間質性肺炎、肺リンパ管筋腫症、肺高血圧疾患などに対して行われ、これ以上待てない患者さんには生体肺移植が行われますが肺は肝臓などとは異なり提供により提供者の肺機能は低下するために負担が大きな移植となっています。膵臓移植は重症糖尿病の根治療法となっています。膵腎同時移植が膵臓移植の80%以上を占めています。

あまり聞きなれない移植としては小腸移植があります。原疾患の半数は腸管運動障害で1/3は小児外科疾患における小腸大量切除後による短腸症によるものです。小腸移植は静脈栄養での生命維持を行う事が困難な患者さんに行うもので海外では十二指腸や膵臓も含めた多臓器移植が一般に行われています。この小腸移植のみが保険収載されていないために全額自己負担となります。移植についてはまだ症例数は少ないものの成績については海外と比較して遜色のないものとなっています。移植医療については免疫抑制剤の進歩、薬物のモニタリングの確立、遺伝背景を考慮した個別化医療なども進んできています。今後はiPS細胞などを含めて再生医療の発展への期待が大きくなっています。

山田医院山田良宏

“ 睡眠 ”について

もうすぐ3月、とても寒かった今年の冬も去っていきます。春の日差しに学生時代に習った漢詩の一節を思い出しました。“春眠暁を覚えず、処々,啼鳥を聴く、夜来風雨の音、花落つること知る多少。”という詩です。まさにこの暁を覚えずの季節がやってきました。

ヒトは何故眠るのか? それはよくわかっていないそうです。睡眠中に脳の老廃物が掃除されるという仮説があるそうです。また春はどうして眠いのか? 寒い季節からだんだんと暖かくなる季節には、体の中では季節に合わせようといろいろな器官が調整をおこなっています。

春になると皮膚の表面血流量が増え、交感神経が活発になり、日中の活動量が増えるという生理現象が起きやすくなります。その結果疲労感やだるさがでやすく、夜はもちろん昼間も強い眠気におそわれることが増えるようです。

睡眠は心身の休息、身体の細胞レベルでの修復、記憶の再構成などに深くかかわっています。下垂体前葉は睡眠中に2時間~3時間の間隔で成長ホルモンを分泌していて、子どもの成長や、創傷治癒、肌の新陳代謝は睡眠時に特に促進されます。睡眠不足は身体にとってストレスになり、眠らないと体に変調をきたし、妄想や幻聴があらわれることもあるようです。

日頃睡眠不足だからといって、休日前に夜更かしして、休日は昼すぎまで長寝をする、つまり、寝だめをする。これでは寝る時刻や睡眠時間が平日と休日で大幅にずれ、体内時計もずれてしまう。このずれを「社会的ジェットラグ(時差ぼけ)」というそうです。この社会的ジェットラグが続くと毎週弾丸海外ツアーをしているようなものだそうです。

ヒトに必要な睡眠量には個体差があり、高齢者は、夜明け前に目がさめ、十分に眠れない人が多く睡眠が途切れ途切れになり、体内時計のリズムがずれて早寝早起きになりやすい。メリハリの付いた生活が重要で、運動を習慣付け、日中はなるべく外出するようにしましょう。

こどもは大人より睡眠を長くとる必要があります。新生児は18時間以上も寝ているそうです。成長するにしたがって睡眠時間は短くなります。そもそも休日に長寝してしまうのは、普段から睡眠時間がたりていないから。理想は寝だめをせずに平日、休日問わず規則正しく十分に眠ることをこころがけましょう。

山田医院 助産師 清水ユタカ

かかと水虫に要注意!

2月も半ば過ぎ、寒い日が続きますがみなさまいかがお過ごしでしょうか。

相変わらずインフルエンザが流行しております。

引き続きうがい手洗い等して体調管理には気をつけて下さい。さて、冬の時期になると空気が乾燥して、痒くなったりひび割れたりと肌のトラブルが多くなりがちです。お手入れを怠ると特
にかかとはがさがさになってしまいます。その対策として保湿をする、古い角質を削るなどが挙げられますが、そのがさがさ、もしかすると単なる乾燥ではなく水虫が原因かもしれません。

そもそも水虫とは白癬菌というカビが足などに繁殖しておこる皮膚の病気です。水虫のタイプとして足の指の間にできるもの(趾間型)、足の裏にできるもの(小水泡型)等がありどちらも痒みが強いイメージがありますが、水虫の多くは痒みの症状がでないタイプで、かかと水虫(角質増殖型)もその中に含まれます。かかとのがさがさの半分は乾燥ではなく水虫ではないのか、とも言われています。ではただの乾燥と水虫の見分け方はというと、、、

・かかとに白い線のひび割れ、シワがある

・かかとに白い出来物、丸い斑点がある

・カサカサして角質が硬くなっている

などが挙げられますが、正直素人目では判別するのは難しいと思います。。

目安として保湿のお手入れを継続しているにも関わらず症状が全く改善されない、気付けば一年中がさがさしている、、という場合一度水虫を疑って皮膚科に受診することをお奨めします。

間違っても自己判断で対処しないように、医師のもと適切な治療を行って下さい。痒みがないため慢性化した水虫になり、それを知らないまま白癬菌を周囲にばらまいてしまっているかと思うとちょっと怖いですね(汗)早速足のかかとががさがさになっていないかチェックしてみましょう!

山田医院 医療事務 川村理恵

骨を守り丈夫にするためには!

皆様の中には、一度は転倒や骨折を経験している方もいるのではないでしょうか?

骨はどうして弱くなってしまうのか?またどうすればそれを食い止めることができるのか?骨の強さを決めるのは骨量と骨質からなります。
骨は鉄筋コンクリートとよく似ています。骨量はコンクリート(カルシウム、ミネラルなど)で骨質は鉄筋(コラーゲン)です。

1)骨量・骨質はなぜ減るのか
人の細胞は破壊と再生を繰り返しております。骨においても古い骨を壊し新しい骨を作ることを繰り返しています。このバランスが崩れると骨の形成より壊れるスピードが早くなるため骨量が減ってしまいます。また骨質も年齢とともにコラーゲンの減少や変性が始まります。骨量には増える時期と減る時期があり、10代で増加20歳前後でピークがあります。最大骨量が多ければ骨粗鬆症にもなりにくいので、若い時期に骨量を増やしておくことが重要です。男女とも40代後半から減少します。特に女性は閉経を境に急激に低下します。骨量が減っていく時期をいかに維持するかが課題です。また骨折のリスクが高まるのは女性で60歳代から男性は70歳代からと言われています。

2)骨粗鬆症の症状と原因
骨粗鬆症とは骨がスカスカになり骨折しやすい。自覚症状はなくて検査で始めて指摘、骨折して気づくことが多い疾患です。身長が縮み背中が曲がり腰や背中・下肢の痛みもでてきます。閉経後は骨形成を促し骨破壊を抑制しているホルモンの減少、加齢に伴う消化・吸収力の低下でカルシウム不足、骨の強化になる運動量の減少も原因とされています。このほかに、骨量が増える若い時期の無理なダイエットによるカルシウム、タンパク質の摂取不足、喫煙、過度の飲酒習慣と生活習慣病などが関係していると考えられています。

3)骨を強くする栄養素には
骨量のカルシウムとその吸収を高めるためのビタミンDとビタミンKが必要です。また骨の構成成分のマグネシウム、女性ホルモンとよく似た働きをするイソフラボンなどを摂取することです。骨質の為にはタンパク質とビタミンCの摂取です。これはコラーゲンの材料となります。合わせて取りたい栄養素は、葉酸などビタミンB群とポリフェノールです。これはコラーゲンの劣化を防ぎます。

4)日頃から心がけたい事
閉経や加齢でどうしても骨量は減っていくので、元々骨量を多くしておくことが大切です。若いうちから骨貯金をしておくことです。骨粗鬆症の原因は若いうちから潜んでいるそうです。
高齢者もあきらめないで骨はついでも強化できます、食事と運動によって、骨量を維持したり増やすことができます、体質によっても難しい場合もありますが、今は効果的な治療法もたくさんあります。転倒などによる骨折を防ぐことです。骨粗鬆症による骨折は、寝たきりのきっかけになることがあります、骨折しないことが一番ですが、万が一の場合も軽くてすむよう日頃から骨の強化に努めましょう。

山田医院看護師畑中幸子

スマートフォン症候群

最強寒波も抜け、冬の寒さも少しは和らいできましたが、皆様体調はいかがでしょうか?

今回は現代人が日夜持ち続けている「スマートフォン」に関するお話です。便利な道具なので多くの人が利用しているのですが、その反面悪影響となってしまう点もあるのです。

◇眼精疲労(ドライアイ)
瞳はしっかりとした睡眠をとることで疲労を回復することができます。眼精疲労になると目のかすみ、痛みやドライアイも深刻化してきます。

◇巻き肩
スマホ利用により前傾姿勢で猫背を作り出します。肩こり、偏頭痛、目のかすみといった症状も起こりうるので早めの改善を。

◇ストレートネック
人は本来なら緩やかなカーブをえがいているのが普通です。スマホの長時間利用によって、下を見る時間が長くなり、首の骨のカーブが最終的になくなってしまいます。頭痛、筋肉痛、肩こり、吐き気、耳鳴りに悩まされるようになり、整形外科でのアイシングやリハビリによって、少しづつもとに戻していくしかありません。

◇体にも影響が!!
◎美容に悪影響◎スマホ顔◎体重の増加のこの三点が危険視されています。うつむき続けることによって、顎ラインにしわができたり、ブルーライトによる脳細胞に与える効果が食欲を増加させることがわかっています。日常的に手元にあるスマートフォンですが、健康との結びつきを考えると長時間の使用はどうしても悪影響を及ぼすという結果になります。便利な道具だからこそ使い方を決めて上手に付き合っていく必要があるのではないでしょうか。

山田医院 医療事務 杉山恭子

新型ノロウイルスの流行について

感染性胃腸炎の原因ウイルスの第1位を2000年以降はノロウイルスが占めています。

このウイルスは物理的に安定性が高くエタノール、逆性石鹸、塩素を含んでいる水道水でも失活せず人には

①ウイルスに汚染された飲食物

②感染者の吐瀉物

③吐瀉物の飛沫により容易に感染します。

ゲノム配列によりgroupⅠ~Ⅴのグループに分けられ、人への感染はⅠ.Ⅱ.Ⅳが感染します。なおそれぞれのgroupもさらに分類されており人へ感染するノロウイルスは30種類以上になります。

胃腸炎患者さんから検出されるGroupⅠとGroupⅡの割合は2:8で圧倒的にGroupⅡが多く、またタイプとしてはGroupⅡの2、3、4、6、17の型が多くなっています。

なお、現在、小児の急性胃腸炎からはGroupⅡの4が主体であり、食中毒患者さんからはGroupⅡの17が主体となっています。GroupⅡの17は今までの流行しノロウイルスとは抗原性が大きく異なるために注意が必要です。

このウイルスは主として嘔吐、下痢の症状が潜伏期間としては12-48時間(中心は24時間)で出現します。半数程度に発熱が有り、また嘔吐のみの場合も15%程度あります。便中のウイルス排泄は感染後2-5日が最大ですが症状改善後には減少します。

なお25%程度の患者さんでは便中のウイルスは3週間程度は持続します。なお、無症候性感染も15-35%程度あります。閉鎖空間での感染は特に高くなるので吐瀉物は早急に拭き取り0.1%の次亜塩素酸を使用しての消毒が大切です。(ペットボトル500mlにキャップ3杯分の家庭用漂白剤を混入)あるいは温熱加熱(85-90以上で90秒)による消毒が必要です。なお、85cmの高さから嘔吐すると半径1.6m程度広がるようなので広範囲の消毒が大切です。

ノロウイルスの診断については迅速キットがありますが保険適応としては3歳未満あるいは65歳以上、悪性腫瘍になっている、臓器移植後、抗がん剤や免疫抑制剤を服用しているなどの縛りもあります。なお、近年においてはGroupⅡの2あるいは17において変異株が出現しており新型ノロウイルスとして注意喚起があります。

山田医院 医師 山田良宏