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山田医院だより

第18巻第6号(第209号)

スポーツによる頭部外傷について

スポーツによる頭部外傷はイメージとしてはボクシングあるいは柔道において頭部を強打することによる意識障害ですが今回は最近話題になっている脳震盪(のうしんとう)を中心に日本医事新報平成29年6月号から抜粋しました。

スポーツによる頭部外傷は交通事故のような直線加速度を伴う強い直達外力が要因となるのではなく回転加速度が脳を揺さぶり脳実質を歪ませることによって生じると考えられています。実験的には神経細胞内外のイオン平衡が破綻することにより正常な神経伝達が行われなくなることによる機序が確認されています。

なお、加速度が強く脳表と硬膜を結ぶ架橋静脈が破綻して出血すると急性硬膜下出血になります。統計上、男性は女性の2倍程度で脳震盪が最も多くついで急性硬膜下出血、外傷性くも膜下出血、脳挫傷などが続いています。原因種目としては野球、ラグビー、サッカー、柔道、バスケットボール以外に日本ではスノーボードによる外傷も多くなっています。ヘルメットや防具の効果があるのは局所の直達損傷(ラグビー、アメフトなど)であり回転加速度による脳実質の損傷は防ぐことができません。

このために2016年のリオオリンピックではアマチュアボクシングではヘッドギアなしで試合が行われています。脳震盪とは頭部に外力が伝わることにより起こる意識障害や記名力障害を中心とした一過性の脳機能障害でこの症状は受傷前まで完全に回復します。意識がなくなるという印象が強くありますが意識障害の程度は様々で意識障害がない脳震盪もあります。

ただ意識障害がない場合でも意識内容の変化(記名力障害、見当識障害、反応時間の遅延、興奮あるいは感情鈍麻など)を認めます。スポーツによる脳震盪の特徴は意識消失を認めないことが多く注意が必要です。ただし症状として頭痛、霧の中にいるような感じ、健忘、易刺激性があるときには脳震盪として判断をする必要があります。脳震盪を起こしたことに気がつかず競技や練習を続けてしまうと脳震盪による脳の働きの鈍化のために繰り返し外傷を受けやすくなることが分かっており、もし脳震盪と判断できたら競技の参加は止めて、たとえ症状が消失しても受傷同日の復帰は禁止して、誰かが付き添い脳神経外科の受診が必要になります。意識障害あるいは麻痺などがある場合には無論救急搬送になります。

脳震盪の診断において重要なことは

①症状、

②記憶、

③バランスの3点です。

医療機関においては頭部CT/MRIを含めて画像検査が行われます。脳震盪ではこれらの画像診断では異常は出ないものの急性硬膜下血腫などにおいては異常を認めることができます。

通常脳震盪の急性期症状は多くの場合は受傷10日前後など短時間で消失するが時に継続することがあります。これらは脳震盪後症候群として捉えられていますが症状が持続する限り競技への復帰は禁止となります。なお脳震盪の治療の基本は急性期の症状が消失するまで肉体的、精神的な休息を十分に取ることで運動はもちろん、通学あるいは通勤も休ませることがあります。日常生活動作においてもネット、スマートフォン操作などは症状の悪化や回復の遅れを引き起こす可能性があるために中止が必要です。特に小児を含む若者、女性では回復期間の遅延が指摘されているために注意が必要です。脳震盪後の競技復帰は段階的競技復帰プロトコールに基づいて途中メディカルチェックを入れつつ段階的に復帰を行うことが大切です。なお、急性硬膜下血腫、脳挫傷などの器質的な脳損傷については基本的には頭部の頻回な衝撃や転倒による回転加速度損傷を伴いやすいスポーツ(ボクシング、空手、柔道、ラグビー、アメフト、スノーボードなど)への競技復帰は原則として許可すべきではないとされています。まとめると脳震盪は完全に治るまでは競技中止に、脳出血など脳損傷は原則として完全に治っても競技復帰は不可能というのが現時点の原則になります。子どものスポーツチームなどの指導者は特に気をつけておくことが大切です。

山田医院医師山田良宏

マダニに注意しましょう

近年、ニュースなどでもよく取り上げられるようになったマダニについてのお話です。

ガーデニングやキャンプ、お子さんと公園で遊んだり、畑仕事をされる方には特に注意していただきたいお話です。ダニといっても、小麦粉などの食品に発生しアレルギー症状を引き起こすことがあるコナダニや、布団や衣類に発生するヒョウダニなどと種類が異なり、マダニは固い殻に覆われた比較的大型のダニです。(ちなみに、コナダニを防ぐには、粉類をジップロックのような密閉袋に入れて冷蔵保存する。なるべく早く使い切るようにする。ヒョウダニを防ぐには洗濯&高温乾燥、天日干し、清潔を保つことが重要です。)マダニは、吸血する前で3mm~8mm。吸血後には10mm~20mmとなり大きくて肉眼でも容易に発見出来ます。

マダニは、畑や草むら、森林や公園などの屋外に生息していて動物や人に嚙みつきます。マダニは一度噛みつくと、皮膚に口を突き刺して数日から10日ほど吸血し続けます。嚙まれても痛みやかゆみはほとんどありません。虫刺され、ホクロ、かさぶたなどに間違えることも多く無理に取ろうとするとマダニの一部が皮膚に残ることがあるので、吸血中のマダニに気付いた際は医療機関で除去するようにしてください。また、マダニにかまれた後に発熱などの症状があった場合は医療機関を受診するようにしてください。マダニによって媒介される感染症に「日本紅斑熱」「ライム病」「SFTS重症熱性血小板減少症候群」があります。とくに2011年に特定されたSFTSは6日~14日程度の潜伏期間を経て発熱、嘔吐、下痢などの症状が出て重症化すると死亡することもあります。

あまり聞きなれない病名ばかりですが、SFTSは2013年1月に国内の患者が初めて確認された新興ウイルス感染症で、九州、四国、中国、近畿地方の13県で患者が発生しています。近畿地方では、兵庫県で患者が確認されました。あまり、過敏になりすぎる必要はありませんが、屋外活動やキャンプなどでは、帽子、長袖長ズボン、手袋などを着用しマダニに噛まれないように注意しましょう。特にマダニは春から秋にかけて活動が盛んです。雨上がりの晴れた日は注意が必要との報告もあります。

夏にむけて、アウトドアの機会が増えますが注意しながら楽しんでください。

山田医院看護師岩崎恵美子

知っておきたい梅雨対策

6月から7月にかけて日本では北海道を除く地域に見られる梅雨。5月も後半にさしかかり6月はもうすぐです。すでに沖縄・奄美地方では梅雨入りが発表されました。

◆梅雨時の対策
・風通しを良くする
寒い冬や風の強い春にあまりで出来なかった家中に風を通すことは梅雨前にとても大切です。対角線上の窓を開けると効率的に風の流れが良くなります。

・洗濯機の中を除菌する
雨の日は湿度が上がり菌が増殖しやすくなります。梅雨前に洗濯機のメンテナンスをしましょう。

・キッチン用品を除菌する
水回りはカビが発生しやすいので特に注意が必要です。さらに食中毒の予防にもつながります。

・浴室のカビ対策をする
浴室のカビの原因は、湿度と温度の組み合わせで増殖します。入浴後は壁に冷水シャワーをかけて温度を下げることでカビ対策ができます。お風呂場から出る際は、窓を開ける、換気をするとさらに効果的!

・梅雨の湿度を利用して香りを楽しむ
天気が悪い日が続くと室内にこもりがちになり、気がめいってしまいます。手軽に気分をリフレッシュしたい方は、アロマがお勧めです。湿度が高いほど香りは空間に溜まりやすく、さらに香りが長時間にわたり感じられるという性質があるようです。アロマにはリラックス効果があるだけでなく高い抗菌作用もあります。

山田医院医療事務杉山恭子

だるい、イライラなどを引き起こす甲状腺の病気

「疲れやすい、イライラしやすい、暖かくなってきたのに寒がりになった…」よくありがちな不調なだけに、季節の変わり目だし…など、我慢していることもあるかもしれません。が、これらの症状は、実は甲状腺の病気が隠れていることもあるのです。

甲状腺は、のど仏のすぐ下にあり、そこで作られる甲状腺ホルモンは脈拍や血圧、全身の新陳代謝の調節などにかかわります。少ないと代謝が低下し、だるく、やる気が出ないなどの症状がしょうじ、逆に多すぎると常に運動した後の様な状態になるので強い疲労がたまります。

<甲状腺ホルモンが少なくなる症状> <多くなりすぎる症状>
無気力
寒がりで汗をかきにくい、むくみ
便秘 食欲があるのに痩せる
コレステロール値が高い
物忘れ、動作が遅い
月経期間が長く出血量が多い
皮膚が乾燥する
動悸、息切れ
暑がる、汗をかきやすい
食欲があるのに痩せる
血圧、血糖値が高くなる
イライラ、すぐに興奮する
月経期間が短く出血量が少ない
手が震える

血中の甲状腺ホルモン量は、脳の視床下部が制御しており、その量によって下垂体が甲状腺刺激ホルモンを出し、体内の甲状腺ホルモンの量を調節しています。こうした制御が利かなくなると上記のような症状を引き起こしてしまうのです。日本で甲状腺の病気がある人は240万人と推定されていますが、実際に治療を受けているのは約45万人にすぎず、自分が甲状腺の病気と気付いていない人も多いそうです。甲状腺の病気は女性に多く、更年期障害や認知症、うつ病などと間違えられやすいこともあります。甲状腺の病気は血液検査で調べることができますので、心当たりのある方は主治医に相談してみてください。

山田医院看護師盛田里穂

帯状疱疹と大人の水痘ワクチン接種

山田医院の待合室に帯状疱疹に関するポスターが登場したことで、度々患者様から質問を頂くことがあったので、帯状疱疹と大人の水痘ワクチン接種について調べてみました。

帯状疱疹は、水ぼうそうのウイルスが原因の、痛みを伴う皮膚湿疹のことです。

症状には個人差がありますが、体の左右どちらか一方にピリピリと刺すような痛み、紅斑(少し盛り上がったようなこ赤い湿疹)ができ、続いて水疱ができて破れ、皮膚ができて破れ、かさぶたができます。水痘の病原体(VZV)は、水痘が治っても体から消失せず、人間の神経に潜入し普段は休眠状態に入ります。

しかしその人が弱ると活動を再開し、潜入していた神経に沿って皮膚に発疹を形成します。水痘と同じ病原体なので、水痘と同じような水疱になり、いわば水痘の再発という現象です。主に中高年の方に、加齢やストレス、疲労、感染症、生活習慣病などによってからだの免疫力が低下すると出てくることが多いそうです。帯状疱疹と言えば厄介なのが疱疹後の神経痛で、帯状疱疹はいわば神経を舞台にVZVが暴れるため、多くの場合に神経痛を伴います。そして神経痛は後遺症として残りやすく、数年単位で灼熱痛が残ることもあります。

では水痘にかかったことのある高齢者に水痘ワクチンを接種すると、この帯状疱疹がでにくくなるのか、接種する必要があるのかという疑問には、実地の答があります。アメリカで行われた研究で、60歳以上の人で水痘ワクチンを接種した人、しない人に分け、両群でその後5年間にわたり帯状疱疹について差があるかを検討した結果、ワクチン接種者は帯状疱疹発生率がしなかった人の48.7%と約半数になったそうです。

また帯状疱疹にかかったひとのうち、その後の後遺症として神経痛を残してしまった人の数を比較しても、ワクチン接種者は神経痛後遺症が非接種者の33.5%、つまり3分の1であるとのこと。この結果をもとに日本でも50歳以上の人に水痘ワクチンの接種が推奨されることとなりました。ちなみに小児期にきちんと水痘ワクチンを接種しておくと、抗体ができて高齢者が出にくくなるのかというと、一応理論的にはYESだそうです。水痘ワクチンを接種した場合、水痘の病原体(VZV)が外界から体内に侵入した時点で迎撃し、神経まで届かせにくくなるので、将来帯状疱疹を起こす危険を減らせるだろうと考えられているそうです。

ただし、水痘ワクチンは早い国でも1985年前後から登場したものなので、この仮説が検証できるのは30年くらい後なのだそうです。

山田医院医療事務中町麻里

胎児を守るためのウイルス感染対策

妊娠中の感染症のうち、母体には重い症状を起こさないものの、胎児に感染して胎児の発育障害、小頭症、脳内石灰化、結膜・網膜炎、聴覚障害、皮疹、肝脾腫大などの症状あるいは障害をもたらす可能性がある疾患を総称してTORCH(トーチ)症候群といいます。具体的にはToxoplamosis(トキソプラズマ症)、Others(梅毒、パルボウイスルB19)、Rubella(風疹)、Cytomegalovirus(サイトメガロウイルス)、Herpessimplex(単純ヘルペス)です。今回はサイトメガロウイルスについて取りあげました。このウイルスはヒトにしか感染しません。

世界中のどこにでもあるありふれたウイルスでおもに幼児期に感染してほとんど無症状のままで潜伏感染します。成人において半数以上がすでに感染して免疫を持っている状態ですがまだ感染をしていない(抗体がない妊婦)に初感染するとその約40%において胎児に感染し、その胎児感染例の約20%において何らかの症状で出生します。胎児の症状としては先ほど述べた様々な症状がみられます。

子どもの唾液、尿の他に輸血あるいは性行為でも感染します。感染については血液検査で調べることができ、また妊娠中の胎児の状態については超音波検査等で診断ができます。大切なのが予防ですが、頻繁に石鹸と流水で手を洗う。おむつ交換、子供の食事、鼻水、よだれの処置、おもちゃを触ったあとは念入りに手洗いをする。同じ箸やスプーンは子供と共有しない。

妊娠中の性行為に際してはコンドームを使用する。敷物や布団は十分に乾燥させる。などが大切です。サイトメガロウイルスは飛沫感染ではなくあくまでも大便、尿、唾液などによる接触感染なので手洗いを中心に考えましょう。一般に妊婦検診においてはサイトメガロウイルスについては検査せれないことが多いので気になることがあれば主治医に相談をしましょう。なお、サイトメガロウイルスならびにトキソプラズマ症については家族会である「トーチの会」のサイトで詳しく説明されていますので参照されてもいいと思います。

山田医院医師山田良宏